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知っているようで知らない楽器・木琴の音楽会

投稿日:2022年06月18日 10:30

木琴ほど「知っているようで知らない楽器」と呼ぶにふさわしい楽器はないかもしれません。おもちゃの楽器や教育用楽器として触ったことのある方は多いはず。でも、シロフォンとマリンバの2種類の違いがなにかと言われると考えこんでしまいます。番組冒頭で演奏された「チョップスティック」でわかりやすく比較されていましたが、乾いたシャープな音がシロフォン、柔らかく深みのある音がマリンバなんですね。
 シロフォンがヨーロッパ出身、マリンバがラテンアメリカの出身の楽器だというお話も興味深いと思いました。どちらかといえば身近に感じていたのはマリンバのほうだったのですが、よく考えてみると、クラシックの有名曲で出番が多いのはシロフォンのほう。サン=サーンスの「動物の謝肉祭」や「死の舞踏」、ショスタコーヴィチの交響曲第5番、ストラヴィンスキーの「火の鳥」、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」など、みんなシロフォンが使われています。マリンバですぐに思いつくのはライヒの「ナゴヤ・マリンバ」など、現代の曲が多いような気がします。
 カバレフスキーの「道化師のギャロップ」やハチャトゥリャンの「剣の舞」といった曲は、運動会でもよく使用される曲です。シロフォンの歯切れよく軽快な響きが運動会にぴったりということなのでしょう。カバレフスキーはもともとは児童劇のための組曲として「道化師」を作曲しました。そう考えると学校の運動会に使われるのも無理はないのかも。一方、ハチャトゥリャンの「剣の舞」はバレエ「ガイーヌ」の一場面。こちらはサーベルを持った戦いの踊りを表現した音楽です。後ろから追い立てられるようなムードがあって、やはり体を動かしたくなります。
 「実験!もしもシロフォンでヴェルディのレクイエムを演奏したら?」には爆笑。あの重々しく恐ろしい音楽が、すっかり陽気な音楽に変身していました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ドアの向こうの音楽会~ウェディング~

投稿日:2022年06月11日 10:30

6月といえば「ジューン・ブライド」。古くから欧米では6月に結婚すると幸せになれるという言い伝えがあります。一説によれば、6月は結婚と女性の守護神とされるジュノー(=ギリシア神話でのヘラ、主神ゼウスの妻)にちなむ月であることから、そのように言われるようになったそうです。今回はウェディングをテーマに、一流音楽家のみなさんにドアの向こうの仮想現実のなかで演奏していただきました。
 オルガニストの石丸由佳さんが演奏したのはメンデルスゾーンの「結婚行進曲」。よく耳にする有名な「結婚行進曲」には2種類あります。ひとつがこちらのメンデルスゾーン。晴れやかな曲想で有名ですよね。シェイクスピアの「夏の夜の夢」の上演に際して作曲されました。もうひとつはワーグナーがオペラ「ローエングリン」のために書いた「結婚行進曲」。こちらはゆっくりと歩くような曲調で、新郎新婦入場の場面でよく使われます。実用性が高いのがワーグナー、気分が盛り上がるのがメンデルスゾーンと言えるでしょうか。
 ピアニストの萩原麻未さんとヴァイオリニストの成田達輝さんは「ハウルの動く城」より「人生のメリーゴーランド」を演奏してくれました。著名音楽家同士のカップルとして話題を呼んだおふたりですが、プロポーズにそんなロマンチックな逸話があったとは。本当に素敵なおふたりだと改めて感じます。
 ソプラノの鈴木玲奈さんが歌ったのは讃美歌429番「あいの御神よ」。清澄な歌声は軽やかでいて厳かでもあり、軽井沢高原教会にぴったりの雰囲気だったと思います。緑に囲まれた外観といい、木の温もりが感じられる内部の空間といい、本当に美しい場所で、讃美歌に心が洗われるようでした。
 スイスを拠点にするチェリストの新倉瞳さんはアルプス湖畔を舞台にユダヤの伝承音楽をルーツに持つ「ウェディング・ホラ」を演奏してくれました。クラリネットはコハーン・イシュトヴァーンさん、アコーディオンは佐藤芳明さん。クラシックとは一味違った濃厚な味わいがありましたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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熱くドラマチックなオーケストラの音楽会 後編

投稿日:2022年06月04日 10:30

今週は先週に引き続いて、檀れいさんと水谷豊さんをゲストにお招きして、オーケストラの魅力に迫りました。指揮は「炎のマエストロ」の愛称でおなじみ、小林研一郎さんでした。
 さまざまな個性を持ったプレーヤーたちが一堂に会することから、よく「オーケストラは社会の縮図」と言われますが、水谷監督の映画「太陽とボレロ」でも、オーケストラのメンバーたちがその楽器にふさわしいキャラクターで描かれています。オーボエ奏者がリードを削っている姿が映像にありましたが、いかにも職人的な気質が伝わってきます。
 そんな水谷監督にとって忘れられない名曲が、映画のタイトルにもなっているラヴェルの「ボレロ」。小太鼓が延々とボレロのリズムを刻む中で、各々の楽器が順々にメロディを受け継ぎ、曲全体で大きなクレッシェンドが築かれます。マエストロいわく、「ボレロはそれぞれの楽器が自分の人生を語り尽くす」。輪廻転生にたとえて表現していたのが興味深かったですよね。
 今ではラヴェルの代表作として知られる「ボレロ」ですが、曲は急場しのぎから誕生しました。親交のあるダンサーから「スペイン風のバレエ音楽を書いてほしい」と依頼されたラヴェルは、当初、スペインの作曲家アルベニスのピアノ曲「イベリア」をオーケストラ用に編曲するつもりでした。ところが諸般の事情から、バレエ初演の直前に編曲を断念し、自分のオリジナル曲を書くことになってしまいます。短期間で新曲を書けるのかと気を揉む依頼者に対して、ラヴェルは「ごく単純な譜面を考えるほかない」と言い、急いで「ボレロ」を書きあげました。
 なるほどパターンの反復で曲ができているという点では単純かもしれませんが、音色の多彩な変化が豊かな表情を生み出し、退屈する瞬間はまったくありません。生前のラヴェルはこの曲がオーケストラのレパートリーに定着するとは思っていなかったそうですが、今ではラヴェルの最高の人気作となっています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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楽器は役者!熱くドラマチックなオーケストラの音楽会 前編

投稿日:2022年05月28日 10:30

6月3日より公開される水谷豊監督の映画「太陽とボレロ」では、アマチュアオーケストラを巡るさまざまな人間模様が描かれます。今回はこの映画で主演を務める檀れいさんと水谷豊監督をゲストにお招きして、オーケストラの魅力を指揮者の小林研一郎さんとともにお届けしました。
 小林研一郎さんといえば「炎のマエストロ」の愛称でおなじみ。今や大巨匠となったマエストロですが、その情熱は衰えることがありません。音楽は熱い一方で、お人柄は誠実で謙虚とあって、絶大な人気と尊敬を集めています。「オーケストラのみなさまは天才の集団なのです。そういう方々のじゃまをしないのが指揮者の役割です」とにこやかに話していましたが、これほどの大家にしてこの言葉。なかなか聞けるものではありません。
 最初に演奏されたのはビゼーの組曲「アルルの女」より「ファランドール」。この曲はアルフォンス・ドーデの戯曲を上演するにあたってビゼーが作曲したものです。田舎の富農の息子が都会の見知らぬ女(アルルの女)に恋をしたことから身の破滅を招くという悲しい物語なのですが、「ファランドール」は元気いっぱいの踊りの音楽。ビゼーが早世した後、親友のギローがオーケストラ用の組曲に仕立てました。2種類の民謡が組み合わされて、熱狂的なクライマックスへと至る様子は迫力満点です。
 「ベルサイユのばら」より「薔薇は美しく散る」は、檀れいさんと石丸幹二さんのデュエットで。オーケストラの厚みのあるサウンドとおふたりの声がきれいに溶け合って、とてもゴージャスなサウンドが生まれていました。マエストロもなんだか嬉しそうに見えましたよね。
 最後はマエストロの十八番、ベートーヴェンの交響曲第7番より第2楽章。かつてワーグナーはこの楽章を「不滅のアレグレット」と称えましたが、その逸話を思い出させるような絶美の名演だったと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ピアノの連弾を楽しむ休日

投稿日:2022年05月21日 10:30

今週はピアノの連弾の魅力をお伝えいたしました。連弾といえば、プロのコンサートよりも家庭やピアノ教室などで楽しむイメージが強いと思いますが、名手たちの連弾ともなるとこんなにも華やかで迫力があるものなのかと改めて感じます。
 レ・フレールの手を交差させる奏法や「千手観音」「椅子取り」といった奏法は、耳のみならず目も楽しませてくれます。ふたりの演奏による「ルパン三世のテーマ’78」は実にゴージャス。アニソンの古典ともいえる名曲ですが、ピアノの広い音域を使い切った厚みのあるサウンドが意外なほど曲調にマッチしていました。小林萌花さんが話していたように、オーケストラを連想させますね。
 芝田奈々さんと佐藤和大さんが演奏してくれたのは、ブラームスのハンガリー舞曲とドヴォルザークのスラヴ舞曲。この両曲はオーケストラによる演奏で親しんでいる方のほうが多いかもしれませんが、原曲はピアノの連弾曲です。ブラームスはロマの民族音楽を素材に用いて、ピアノ連弾用にハンガリー舞曲を作曲したところ、これが爆発的なヒット作になりました。当時は現代と違って録音再生技術がありませんので、曲が売れるとは楽譜が売れるということ。ピアノの普及に伴い、ピアノ連弾用の楽譜の需要が高まっていたんですね。
 今でこそ大作曲家として知られるドヴォルザークですが、ドヴォルザークの才能を見出したのはブラームスです。無名時代のドヴォルザークは生計のために奨学金に応募していたのですが、その際に審査員を務めていたのがブラームス。ブラームスは親切にも出版社にドヴォルザークを紹介します。ブラームスのハンガリー舞曲集で一儲けした出版社は、ドヴォルザークにも同様の曲を書いてほしいとリクエストしました。そこで誕生したのがスラヴ舞曲集。この「2匹目のどじょう」狙いはまんまと成功し、ドヴォルザークの名は一躍知られることになりました。出版社としても、なかなか演奏されない交響曲よりも、みんなが弾きたがる連弾曲のほうがビジネスになったのです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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不思議!歌がないのに言語を感じる音楽会

投稿日:2022年05月14日 10:30

今週は音楽と言語のつながりをテーマにお届けいたしました。言葉のない器楽曲であっても言語を意識して演奏するというお話が興味深かったですよね。日本語だけではわからない西洋音楽の奥深い世界を垣間見たように思います。
 ブラームスですばらしい演奏を聴かせてくれたのは岡本誠司さん。昨年、第1位をなかなか出さないことで知られるミュンヘン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で、見事第1位に輝きました。不思議に思われる方もいるかもしれませんが、クラシックの音楽コンクールではあえて第1位を出さず、第2位を最高位とすることがあります。そのコンクールの第1位とするふさわしい才能が見出せなかった場合に、やむを得ず第1位を空白にするわけです。たとえば、あのショパン国際ピアノ・コンクールでも、1990年と1995年は2回連続で第1位が出ませんでした。
 せっかく若手にチャンスを与えるために開催しているのに、第1位を出さないのではなんのためのコンクールなのかわからない。そんな批判的な見方もあるでしょう。昨今の趨勢としては、なるべく第1位を出す傾向が強くなっていると感じますが、それでもミュンヘンのヴァイオリン部門はなかなか第1位を出してくれません。なにしろ第1位が出た回より、出なかった回のほうが多いのです(!)。前回2017年も、前々回2013年も第1位が出ませんでした。2009年以来、12年ぶりに与えられた第1位が岡本誠司さんだったのですから、これは快挙というほかありません。
 その岡本さんが演奏してくれたのはブラームスの2曲。最初の「F.A.E.ソナタ」は3人の作曲家が楽章ごとに分担して作曲するという珍しいアイディアにもとづく作品ですが、現代ではブラームスが書いた第3楽章が単独で演奏されることがほとんどだと思います。エネルギッシュな「F.A.E.ソナタ」、そして最後に演奏された滋味豊かなヴァイオリン・ソナタ第3番、ともにブラームスの魅力がたっぷり詰まっていたと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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歌う楽器・フルートの音楽会

投稿日:2022年05月07日 10:30

今週は新進フルート奏者Cocomiさんをお招きして、フルートの魅力をたっぷりとお届けしました。いずれもよく耳にする名曲ばかりでしたが、共通するキーワードは「歌」。Cocomiさん、髙木竜馬さん、佐藤晴真さん、金子三勇士さんにより、歌心あふれる演奏がくりひろげられました。
 バッハ~グノーの「アヴェ・マリア」は、シューベルトと双璧をなす「アヴェ・マリア」の名曲として広く親しまれています。原曲は鍵盤楽器のために書かれた平均律クラヴィーア曲集第1巻の前奏曲ハ長調。グノーはこのバッハの前奏曲に「アヴェ・マリア」の歌詞を乗せて歌曲に仕立てました。分散和音が連続する原曲に伸びやかなメロディラインを見出したグノーの柔軟な発想力が、新たな名曲を生み出しました。
 プーランクの「愛の小径」はもともとは劇の付随音楽として作曲され、初演当初より評判を呼んで、単独で歌われるようになった楽曲です。シャンソンのような曲調ですので、ジャンルを超えて多くの歌手により歌われています。器楽曲に編曲される機会も多く、今回はフルート、チェロ、ピアノによるトリオで。三人の音色がひとつに溶け合って、ニュアンスに富んだ音楽になっていました。
 メキシコの作曲家ポンセの「エストレリータ」も本来は歌曲ですが、ヴァイオリン曲としてなじんでいる方のほうが多いかもしれません。歴史的大ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツのヴァイオリン編曲で一躍世に知られることになりました。こちらも多くの楽器用に編曲されています。
 ラフマニノフの「ヴォカリーズ」も原曲は歌曲。今回はフルートとピアノでの演奏でしたが、この曲もありとあらゆる楽器のために編曲されている思います。これほど美しい旋律を歌手だけのものにするのはあまりにもったいない。そんなふうに器楽奏者たちが考えるのも無理はありません。ラフマニノフならではの寂寞とした味わいはフルートからも存分に伝わってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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楽器の可能性を引き出す音楽会

投稿日:2022年04月30日 10:30

この楽器にこれほどの表現力があったとは。今週は鍵盤ハーモニカ、大正琴、ミュージカルソーの3種類の楽器に着目して、そのポテンシャルをさまざまなアレンジで引き出しました。
 鍵盤ハーモニカは学校教育用の楽器として広く用いられていますので、ある意味でもっとも身近な楽器かもしれません。ただ、あまりに教育用としての印象が強く、鑑賞する楽器として鍵盤ハーモニカに接する機会はまれ。そこで、今回は弦楽四重奏との共演で「森のくまさん」をピアソラ流のスタイルにアレンジしました。鍵盤ハーモニカがぐっと大人びた雰囲気の楽器に変身! 鍵盤ハーモニカは薄い板に空気を送って振動させるフリーリード楽器です。発音機構としてはバンドネオンやアコーディオンの仲間に分類されるので、これは納得のアレンジですね。
 大正琴は習い事で学ぶ楽器として広く親しまれています。もともと家庭用の楽器として、名古屋の楽器発明家森田吾郎が考案したもので、1912年(大正元年)に発売されました。大正元年生まれだから大正琴と呼ぶんですね。驚くべきは、U-zhaanさんがおっしゃっていたように、大正琴がインドの音楽に取り入れられているということ。『新編音楽中辞典』(音楽之友社)の「大正琴」の項目にも「インドなどのイスラム賛歌でも使われる」と記述されています。まさかインドに渡るとは、発明者は夢にも思わなかったことでしょう。
 ミュージカルソーは200年以上の歴史があるといいますから、斬新な音色に反して意外と古い楽器です。音から音へなめらかに移るポルタメントが特徴的です。サキタハヂメさんが演奏してれたのはサン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」より「水族館」。原曲も独特の楽器法がおもしろい響きを作り出していますが、ミュージカルソー版は水族館から海へと飛び出して、一段と幻想的な光景を表現していました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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SixTONESとクラシックの音楽会

投稿日:2022年04月23日 10:30

今週はアイドルグループSixTONESのみなさんをお迎えして、クラシックの音楽家たちとのコラボレーションをお届けしました。ソリストにはチェロの宮田大さん、箏のLEOさんが登場。三ツ橋敬子さん指揮のオーケストラはヴァイオリンの林周雅さんをはじめとする気鋭の実力者ぞろい。SixTONESとの共演は豪華というほかありません。
 クラシック音楽のイメージについて、ジェシーさんが「ひとりでウイスキーを飲みながら間接照明を落とした中で聴く」と表現していたのが、おもしろかったですね。実際のクラシック音楽ファンはもっとカジュアルな姿勢で音楽を楽しんでいる人も多いと思うのですが、やはりクラシックには大人の音楽というイメージがあるのでしょう。
 演奏された4曲はそれぞれ異ジャンルとのコラボレーションならではの新鮮さにあふれていたと思います。「Everlasting」では、SixTONESのボーカルとまろやかな弦楽器の音色がきれいに溶け合って、透明感のあるハーモニーを作り出していました。
 「Lifetime」では今や世界的奏者として大活躍する宮田大さんがソリストとして参加。独奏チェロが加わることで、ぐっと奥行きのある音楽になっていたと思います。みずみずしいボーカルと深く豊かなチェロの音色が無理なく調和していました。曲中に織り込まれていたのはシューマン作曲の「トロイメライ」。曲名はドイツ語で「夢みごこち」といった意味です。原曲はピアノ曲集「子供の情景」なかの一曲で、子供そのものを表現したというよりは、大人の心の中にも残る子供心が描かれています。
 「Imitation Rain」では箏のLEOさんが共演。箏のきらびやかな音色によって、ぐっと華やかさが増していました。最後の「マスカラ」は宮田さん、LEOさんのソロも加わったゴージャスなアレンジで。SixTONESからオーケストラのひとりひとりまで、全員が輝く華麗なサウンドを堪能できました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ボーダレスなピアニスト角野隼斗を知る音楽会

投稿日:2022年04月16日 10:30

今週はボーダレスなピアニスト、角野隼斗さんの魅力に迫りました。角野さん、本当にすごかったですね。角野さんの音楽的な引出しの多さに驚かされっぱなしでした。クラシックあり、ジャズあり、独自の「シティ・ソウル」あり。楽器を弾けばトイピアノや鍵盤ハーモニカ、キーボード、アップライトピアノまで駆使して、次々と新鮮な音楽を披露してくれました。
 これまでもジャンルの垣根を越えて活躍するすぐれたピアニストはいましたが、角野さんはこれまでのだれとも違った独自の道を歩んでいると思います。そもそも彼の存在を最初に知ったのは、人気YouTuber「かてぃん」として。アカデミックな経歴もあって、いったいこれからどうするのだろうと思っていたら、あっという間にボーダレスな音楽家として活躍するようになり、しかも昨秋のショパン国際ピアノ・コンクールではセミ・ファイナリストに名を連ねました。これは経験としてはもちろんのこと、国際的に通用する経歴を得たという点で大きな意義があったと思います。
 つい数日前、ドイツのハンブルク交響楽団の演奏会に角野さんがソリストとして出演して、バルトークのピアノ協奏曲第3番を演奏しました。指揮は番組でもおなじみの鈴木優人さん。会場は伝統あるライスハレでした。オーケストラの公式サイトには角野さんのプロフィールも掲載されているわけですが、そこにはショパン・コンクール等での純粋なクラシックでの経歴のみならず、YouTubeでCateenとして人気を得ていることや、東京大学大学院情報理工学系研究科で学んだこと、フランスの有名なIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)で研究したことも記されていました。ドイツの聴衆もいったいどんな才能が現れたのかとびっくりしたことでしょう。
 「根底にあるのはクラシック」と語る角野さんですが、これからどんな方向に向かっていくのか、まったく予測が付きません。ワクワクしますね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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