新世代のイチ推し!新しいクラシックの音楽会2025春

投稿日:2025年04月12日 10:30

 クラシック音楽とは決して何百年も前の曲ばかりを指すものではありません。現在も多くの作曲家たちが新作を生み出しており、演奏家たちは新たなレパートリーに挑んでいます。今回は「新しいクラシック音楽」と呼ぶべき作品を、ヴァイオリンの辻彩奈さんとピアノの阪田知樹さんに演奏していただきました。
 最初の曲はブラジルの作曲家、フランシスコ・ミニョーネによるソナチネ第4番。ブラジルの大衆音楽の要素を取り入れているというお話がありましたが、聴きやすい一方で、リズムにおもしろみがあって、斬新なテイストがありました。カッコいい曲でしたよね。
 2曲目はアルフレッド・シュニトケの「古い様式による組曲」より「パントマイム」。シュニトケは現代音楽の世界ではよく知られた作曲家です。ロシアに生まれドイツに移った作曲家で、その作風はしばしば「多様式主義」という言葉で説明されます。特定の語法に頼らず、さまざまな様式が渾然一体となったところに特徴があります。今回の曲も、いかにも古風な体裁で始まり、途中で聴く人の予測をくつがえすような展開が用意されていました。おしまいで少し不穏な余韻を残して終わるあたりも現代的です。
 3曲目はイギリスの作曲家、ジェラルド・フィンジの「エクローグ」より。フィンジは20世紀前半の人ですので時代的には新しいとは言えないのですが、まだ日本では十分に知られていないという意味では「新しいクラシック音楽」です。イギリスの田園地帯を思わせるような安らいだ楽想が印象的でした。これから再評価が進む作曲家ではないでしょうか。
 最後はスコット・ウィーラーの「アイソレーション・ラグ」。アイソレーション、すなわち孤立。コロナ禍におけるロックダウンをきっかけに書かれたという点で、まさに今の時代の音楽です。過去の協奏曲の一部が引用されるのは、他者と共演することへの憧れの表現でしょう。外出を自粛していた頃を思い出しながら聴き入りました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

コメントはこちらからどうぞ

ニックネーム
コメント

※必ず注意事項をお読みの上、送信して下さい。

フォトギャラリー

フォトギャラリーを詳しく見る≫