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ありそうでなかったデュオ!ギターとマリンバの音楽会

投稿日:2024年11月30日 10:30

 今週は村治佳織さんと出田りあさんによるギターとマリンバのデュオをお楽しみいただきました。ギターは小さな空間に適した楽器、一方マ
リンバは大編成のオーケストラのなかからも音が突き抜けてくるほど大きな音が出る楽器です。本来なら共演困難なはずの楽器ですが、音響機器の発達のおかげでこういった組合せも可能になりました。
 最初に演奏されたのは映画「ディア・ハンター」より「カヴァティーナ」。カヴァティーナとはもともと簡潔で単純な形式の歌を指す言葉ですが、転じて抒情的な器楽曲を題するようにもなりました。たとえば、ベートーヴェンの後期の傑作、弦楽四重奏曲第13番の第5楽章もカヴァティーナと題されています。でも、この映画の大ヒット以来、カヴァティーナといえばこの曲が思い出されるようになったのではないでしょうか。ギターとマリンバの音色の組合せが絶妙で、幻想的な味わいがありました。
 2曲目はイギリスの作曲家ジェラルド・フィンジの「フォルラーナ」。これはかなり意外性のある選曲でした。フィンジはだれもが知る作曲家とは言えませんが、イギリス音楽ファンには根強い人気があります。ヴォーン・ウィリアムズやホルストに続く世代の作曲家で、ロンドン生まれながら都市の喧騒を離れ、イングランド南部に移って田舎暮らしを送りました。フィンジならではの田園情緒とみずみずしいリリシズムが、このフォルラーヌにも感じられました。
 おしまいの曲はラヴェルの「道化師の朝の歌」。こちらは人気曲ですね。原曲はピアノ曲ですが、ラヴェル本人の編曲によるオーケストラ版でも盛んに演奏されます。組曲「鏡」のなかの一曲で、フランス人のラヴェルはこの曲の題をあえてスペイン語で記し、ピアノでギターを模倣させてスペインの情景を想起させます。これを本物のギターで演奏しているのが今回の編曲のおもしろいところ。軽快でダイナミックなマリンバが加わって、道化師の情熱がよく伝わってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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