今年も人気企画「夢響」の模様を2週にわたってお届けします。オーケストラと共演するという夢をかなえるのがこの企画。今週はその前編といたしまして、多数の応募者のなかから選ばれた4名が、田中祐子さんの指揮による東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団との共演を果たしました。
1人目は藤田一槻さん。とてもはきはきした話しぶりで「夢はミュージカル俳優」と語ってくれました。歌とオーケストラの共演で、曲は音楽座ミュージカル「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」より「ドリーム」。のびやかで、澄んだ声がすばらしかったですね。歌に想いが込められていて、言葉の意味がまっすぐに伝わってきます。
2人目はフルートの小沼ナビラさん。曲はバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」の「角笛の踊り」でした。バルトークは各地で採集した民謡をもとに独自の作風を開拓した作曲家で、この曲もそんな民謡由来の一曲。ナビラさんはオーケストラと一体となって、この曲に込められた土の香りを表現してくれました。フルートの爽快な音色も心に残ります。
3人目はピアノの黒川奏翔さん。「ポーランドに行ってショパン・コンクールに出てみたい」と力強く将来の夢を語ります。お兄ちゃんとのやりとりが微笑ましかったですよね。曲はシューマンの「子供の情景」より「見知らぬ国」。しっかり指揮とオーケストラとアイコンタクトをとりながら演奏していたのが印象的でした。やさしくて、のびのびとしたシューマンだったと思います。
4人目はマンドリンの飯田徹さん。一年間の準備を経て、満を持してのチャレンジでした。曲はモンティの「チャールダーシュ」。哀愁を帯びたゆったりした部分と、速いテンポの情熱的な部分のコントラストが鮮やか。味わい深く成熟した「チャールダーシュ」でした。
次回の後編でも4名の応募者が登場します。どんな夢をかなえてくれるのか、楽しみです。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)