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嫌われているけど大人気!ブルックナーの音楽会

投稿日:2024年07月06日 10:30

 ブルックナーは今年生誕200年を迎えたオーストリアの作曲家です。一般的な知名度という点ではベートーヴェンやブラームスにかなわないでしょうが、熱心なファンの人気という点では負けていません。ブルックナーの交響曲はオーケストラのコンサートに欠かせないレパートリーになっています。日本のオーケストラはもちろんのこと、海外から来日する有名オーケストラもよくブルックナーをとりあげます。
 どれも大曲ですので、聴き終えた後の充足感は並大抵ではありません。コンサートでは70分や80分もあるブルックナーの交響曲が終わった後、客席に完璧な沈黙が訪れることがよくあります。これは、すぐに拍手をするのではなく、余韻をしばらく味わいたいという意思のあらわれでしょう。読書にたとえるなら、大長編小説を読み終えた後、パタリと本を閉じてすぐに現実に帰るのではなく、少しの間だけ物語世界に浸っていたくなるようなものです。
 沼尻竜典さんのお話にもありましたように、ブルックナーの人気はなぜか男性に偏っています。男性側のトイレにだけ長蛇の列ができる「ブルックナー行列」は本当の話です。どうしてそうなるのか、不思議ですよね。
 今回、沼尻さんと神奈川フィルが演奏したのは、交響曲第5番の第4楽章より。この曲をぜんぶ演奏すると80分くらいになってしまいますので、抜粋でしかお届けできませんが、お聴きいただいた部分だけでも、ブルックナーの音楽の荘厳さや重厚さはよく伝わってきたのではないでしょうか。交響曲第5番はブルックナーの9曲の交響曲のなかでも、とりわけ構築的な作品といえるかと思います。それゆえに第5番がもっとも好きというファンもいますが、よく演奏されるのは抒情性が際立った交響曲第7番、あるいは第4番「ロマンティック」でしょうか。最晩年の第8番、第9番も大傑作として知られています。機会があれば、ぜひ一曲を通して聴いてみてください。新たな喜びに出会えるかもしれません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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