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フィギュアスケートの見方が変わる音楽会

投稿日:2023年12月09日 10:30

 今週はグランプリファイナルの開催に合わせて、町田樹さんをお招きしてフィギュアスケートと音楽の結びつきについて解説していただきました。町田さんは2014年世界選手権で銀メダルを獲得し、現在は國學院大學の助教としてフィギュアスケートをはじめとするスポーツ文化を研究しています。
 町田さんいわく、音楽に込められた思想や感情も表現するのがフィギュアスケート。フィギュアスケートは音楽を表現するアートフォームのひとつだと断言します。おもしろかったのは、フィギュアスケーターのリンク上の動きを記した舞踊譜「フィギュア・ノーテーション」。こういう記譜法があったんですね。想像よりもずっと細かなところまで記されていることに驚きました。過去の名演技と音楽の関係についての町田さんの解説を聞くと、そこまで選手たちは突きつめた表現をしていたのかと、目から鱗が落ちた思いがします。
 本来、フィギュアスケートでは録音された音楽に合わせて選手が演技をするわけですが、当番組では演技の録画に合わせて音楽家たちが演奏するという試みを行っています。今回はピアニストの小井土文哉さん、ヴァイオリニストの辻彩奈さんが見事な演奏を披露してくれました。ふつうであれば、音楽家は自分なりのテンポや表現で楽曲を演奏しますので、既存の映像に合わせて曲を演奏することはあまりありません。それでも、おふたりとも選手たちの演技を汲んだうえで、映像にふさわしい情感豊かな演奏をしてくれたように感じました。
 町田さんのお話に出てきた「二段階選曲論」も興味深かったですね。演技曲を選ぶ際、まずはどの作品にするか、次にだれの演奏を選ぶかを二段階で考えるというのですが、これは音楽ファンにとってのクラシックの楽しみ方と同じでしょう。まずは曲の魅力を知るところから始まって、次に演奏による違いに関心が向くというプロセスとそっくりだと思いました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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