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「ウエスト・サイド・ストーリー」“対立”が仕掛けられた音楽会

投稿日:2021年12月04日 10:30

今週は「ウエスト・サイド・ストーリー」の音楽をお楽しみいただきました。作曲者バーンスタインが作品に込めたさまざまな仕掛けに、改めて名作の名作たるゆえんを知った思いがします。
 ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」が初演されたのは1957年。もう今から半世紀以上も前なんですね。多くの方は1961年製作の映画で親しんでいることでしょう。スピルバーグ監督によりリメイクでまた新たな話題を呼びそうです。そもそも「ウエスト・サイド・ストーリー」はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を20世紀のアメリカによみがえらせたもの。モンタギュー家とキャピュレット家の対立が、ジェッツとシャークスの対立に置き換えられています。ですからこの作品自体が古典のリメイクとも言えるのですが、不朽の名作になったのはなんといってもバーンスタインの音楽の力があってこそでしょう。
 バーンスタインの舞台作品のおもしろいところは、ミュージカルでもありオペラでもあるところ。「ウエスト・サイド・ストーリー」に限らず「キャンディード」や「オン・ザ・タウン」なども、ミュージカルとして上演される一方、オペラとして上演されることもあります。作曲者自身が指揮した「ウエスト・サイド・ストーリー」のレコーディングでもオペラ歌手が起用されています。今回の番組でもそうでしたが、オペラ歌手もミュージカルの歌手も歌うのがバーンスタインの音楽。ジャンルの枠に収まらない傑作だと思います。
 そんな野心作だけに「ウエスト・サイド・ストーリー」の最初のオーディションには苦労したと言います。バーンスタインによれば、「マリア」の増4度は誰も歌えなかったし、ミュージカルには音域が広すぎると言われたそうです。「だいたい第1幕が終わってふたつの死体が転がってるミュージカルなんて誰が見たいんだ?」。そう揶揄されたそうですが、結果は歴史的ヒット作となりました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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