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オーケストラの黒幕楽器を知る休日

投稿日:2021年05月22日 10:30

「黒幕」とは辞書によれば「表面には出ないで、指図をしたり、はかりごとをめぐらしたりする者」(デジタル大辞泉)。本日はオーケストラを操る黒幕楽器として、ヴィオラの須田祥子さん、ファゴットの長哲也さん、ユーフォニアムの外囿祥一郎さん、テューバの山岸明彦さんに集まっていただきました。
 「メロディが生きるか死ぬかは私たち次第」とおっしゃるのは、ヴィオラの須田祥子さん。ヴィオラの「刻み」の例として、モーツァルトの交響曲第40番が紹介されていましたが、そういえばこの曲は冒頭でヴィオラが一足早く登場して、ヴァイオリンを先導しています。
 ファゴットは木管アンサンブルを支える土台。弦楽器とファゴットがいっしょに演奏する場面として、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」序曲の冒頭が例に挙げられていました。この部分、とても軽快でチャーミングなのですが、ファゴットの少しくすんだ音色が効いています。全体の音色に深みを与えるとともに、喜劇のはじまりにふさわしいほのかなユーモアも漂わせています。
 ユーフォニアムは表にも裏にも回れるユーティリティ・プレーヤー。ユーフォニアムが目立つ曲といえば、ホルストの吹奏楽のための第2組曲。朗々と歌うような落ち着いたメロディが印象的ですが、実はあそこは裏から表に瞬時に早変わりするという、意外とあわただしい場面だったんですね。
 テューバは最低音域を担当。リズムを刻んで曲のキャラクターを表現します。まさにキング・オブ・黒幕。他の楽器への影響力はわたしたちが思っているよりずっと強いようです。
 最後に演奏されたのはベルリオーズ作曲の「幻想交響曲」より。本来なら100名規模の大編成によるカラフルでド派手な曲を、あえて黒幕楽器だけで演奏してしまうという逆転の発想です。一大スペクタクルが親密な音楽に変身していました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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