今週は1990年モスクワ生まれの気鋭のピアニスト、ルーカス・ゲニューシャスの独奏で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をお聴きいただきました。
ゲニューシャスはこれまでにたびたび来日公演を行なっておりますので、日本の聴衆にとってはなじみのあるピアニストです。今年開催されたラ・フォル・ジュルネTOKYO2018では、ショパンのピアノ協奏曲第1番やピアノ・ソナタ第3番、ヒンデミットの「ルードゥス・トナリス」といった曲を披露してくれました。
ゲニューシャスの魅力は、なんといっても磨き抜かれたテクニック。ショパン・コンクールとチャイコフスキー・コンクールという二大コンクールで2位入賞を果たしただけあって、技巧を技巧と感じさせないような洗練された技術の持ち主だと思います。パワーも十分でオーケストラと共演しても聴き映えがしますが、決して自己顕示欲の強い演奏ではなく、作品の本質に迫ろうとする姿勢が伝わってきます。今回のチャイコフスキーも、改めて作品の雄大さや情感の豊かさに気づかせてくれるような秀演だったのではないでしょうか。
ゲニューシャスのおもしろいところは、チャイコフスキーやショパン、ベートーヴェンといった中心的なレパートリーに取り組む一方で、ヒンデミットの「ルードゥス・トナリス」を十八番にしていたり、現代作曲家のデシャトニコフの作品を広めることに尽力したりといったように、レパートリーに対して強い探求心を持っている点です。お祖母さんが名教師ヴェーラ・ゴルノスターエワということで、音楽一家出身のサラブレッドという印象が強いのですが、活動ぶりは決して保守的ではありません。
ちなみにラ・フォル・ジュルネでヒンデミットを演奏した際、ゲニューシャスは譜面台にタブレットPCを置いて、フットスイッチで楽譜をめくりながら演奏していました。このあたりは若い世代ならではですね。
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王道のピアノ協奏曲に熱くなる音楽会
投稿日:2018年07月14日 10:30
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