今週は番組60周年記念企画として、世界遺産の街、福岡県宗像市からお届けしました。反田恭平さん指揮のジャパン・ナショナル・オーケストラが、宗像ユリックスのハーモニーホールを訪れて「宗像の方々とともに音楽を楽しむ」をテーマに演奏を披露してくれました。
最初に演奏されたのはモーツァルトの「劇場支配人」の序曲。この曲は石丸幹二さんが司会に就任した際に、番組オープニングテーマに用いられた曲ですね。モーツァルトの「劇場支配人」は少し珍しい作品で、オペラではありません。当時の皇帝ヨーゼフ2世がモーツァルトとサリエリのふたりの作曲家に、同じ祝宴用の音楽を依頼したのですが、モーツァルトには音楽劇を、サリエリにはオペラを依頼したのです。モーツァルトが書いたのは芝居の合間に使われる音楽にすぎませんので、「劇場支配人」は序曲と劇中の4曲しかありません。したがって、現在実際に上演されることは稀。この精彩に富んだ序曲を聴くと、どうせなら皇帝はモーツァルトにもオペラを依頼してくれたらよかったのに……と思わずにはいられません。
反田さんにとって思い出深い企画である「振ってみまSHOW!」では、ブラームスのハンガリー舞曲第5番が演奏されました。反田さん指揮によるお手本演奏に続いて登場したのは、後藤芽衣さんと谷﨑彩優さん。おふたりとも9歳にして、オーケストラの指揮を体験することに。後藤さんは元気いっぱいにオーケストラをリード。谷﨑さんはテンポを動かして豊かな表情を描き出します。振り終えた後の感想は「ちとムズい」。でも、どちらも本当に立派な指揮ぶりでした。
おしまいは宗像市の小学3年生、折尾晴香さんが「秋祭りの日のロンディーノ」で反田さん指揮ジャパン・ナショナル・オーケストラと共演。日本の祭りの情景が伝わってくるような生き生きとした演奏でした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)