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一流の音楽家が夢のマッチング ドリームデュオ 第2弾

投稿日:2020年06月13日 10:30

今週は日本を代表する名手たちが、ここでしけ聴けないデュオを組むドリームデュオ第2弾。意外性のあるデュオからオーソドックスなデュオまで、多彩な顔触れがそろいました。
 最初のデュオはチェンバロの鈴木優人さんとマリンバの塚越慎子さん。この楽器の組合せは普通では考えられません。チェンバロは本来バロック音楽など古い時代の音楽を演奏するための楽器。ピアノの普及とともに18世紀末にいったん姿を消しますが、20世紀になって古楽復興運動により復活を果たしました。一方、マリンバは20世紀の新しい楽器。雅やかなチェンバロとモダンなマリンバというギャップが新鮮です。でも、一緒になると意外にも心地よい響きが聞こえてきます。フランス・バロック期の作曲家クープランの「神秘的なバリケード」が斬新な音楽に生まれ変わりました。プログレッシブ・ロックの「タルカス」に、チェンバロがすっかりなじんでいるのもおもしろかったですよね。
 チェロの岡本侑也さんとピアノの藤田真央さんはいずれも国際音楽コンクールで脚光を浴びる若き実力者。チェロとピアノのデュオは伝統的な組合せですので、名曲がたくさん書かれています。おふたりが選んだのはドビュッシーが最晩年に書いた難曲、チェロ・ソナタ。チェロとピアノのデュオから清澄で流麗な音楽が生み出されました。
 最後に共演したのは尺八の藤原道山さんとタブラのユザーンさん。こんな楽器のデュオはまずないだろうと思いきや、それぞれの師匠筋がかつて共演していたとは。曲はバッハの「バディネリ」。日本とインドの楽器でドイツの音楽を演奏するという、まったくボーダーレスなデュオになりました。「バディネリ」とは、ふざける、冗談といった意。遊び心のある陽気な音楽に添えられた曲名です。即興の要素もふんだん加わって、世界でただひとつの「バディネリ」が誕生しました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ひとり(ソロ)を楽しむ音楽会

投稿日:2020年06月06日 10:30

今週はひとりで演奏する「ソロ」の曲にスポットを当てました。
 ヴァイオリンやチェロのような弦楽器はメロディを奏でる楽器なので、ほとんどの場合、ピアノ等の伴奏が付きます。弦楽器ひとりだけでは音楽にならない……と思いきや、その常識を覆したのがバッハ。さまざまな工夫を凝らして、ヴァイオリン1本、あるいはチェロ1本だけでも、十分に奥行きや立体感が伝わってくる音楽を書きあげました。その代表作が、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ、そして無伴奏チェロ組曲です。
 バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータは、3曲のソナタと3曲のパルティータ(組曲の意)からなります。今回、三浦文彰さんが演奏してくれたのは、パルティータ第3番の「ガヴォットとロンド」。ヴァイオリン1本だけの演奏なのに、ときには和音が響いたり、2本のメロディが同時に鳴っているように聞こえませんでしたか。
 無伴奏チェロ組曲は第1番から第6番までの6曲が書かれています。古川展生さんが第1番よりプレリュードとサラバンドを披露してくれました。特にこのプレリュードはCMなどでもよく使用される人気曲。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇中では、碇シンジがこの曲を弾いていました。
 一方、ピアノはソロで弾く機会の多い楽器です。萩原麻未さんが選んだのはアメリカ民謡「シェナンドー」。これは意外な選曲でしたね。自分自身を見つめなおすような音楽という意味で、「ひとり」にふさわしい楽曲だったと思います。
 TiAさんが歌ってくれたのは「アメイジング・グレイス」。伴奏なしで歌うことをアカペラと言います。アカペラとは本来「ア・カペッラ(礼拝堂風に)」。まさしく祈りの音楽になっていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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石丸幹二が選ぶ名演(2)ベストパフォーマンス

投稿日:2020年05月30日 10:30

先週のベストソング集に引き続き、今週は石丸幹二さんがセレクトしたベストパフォーマンス集。国内外で活躍する多彩な顔ぶれのアーティストがそろいました。
 高嶋ちさ子さんは12人のヴァイオリニストとスーパーチェロ8のみなさんと共演。チェロの江口心一さんによる「熊蜂の飛行」ならぬ「ぐるん蜂の飛行」はインパクト抜群でした。ヴァイオリンの速弾き曲として人気の高い「熊蜂の飛行」をチェロで速弾きするだけでもすごいのですが、まさか電動立ち乗り二輪車上で弾いてくれるとは! エルガーの行進曲「威風堂々」第1番では、耳だけでなく目も楽しませてくれる華やかなステージがくりひろげられました。
 ラン・ランはクラシック音楽界のスーパースター。オレンジを使ったショパンの「黒鍵のエチュード」にはびっくりしましたね。この秘技をラン・ランに教えてくれたダニエル・バレンボイムは、ピアノと指揮の大巨匠。近寄りがたい雰囲気のあるバレンボイムにそんな茶目っ気があったとは意外です。発表会で人気の「エリーゼのために」を世界的ピアニストが弾くという場面も貴重でした。
 坂本龍一さんは自身が音楽監督を務める東北ユースオーケストラを率いて、Merry Christmas Mr. Lawrence を演奏。子供たちのピュアな表情が印象的でした。同楽団は東日本大震災の被災県の子供たちを中心に結成されたオーケストラです。ウィルス禍でことごとく演奏会が中止・延期となっている今、改めてオーケストラのすばらしさを痛感せずにはいられません。
 最後に登場した2CELLOSはステファン・ハウザーとルカ・スーリッチのふたりのチェリストによるユニット。チェロふたりでユニットを組むという発想が斬新です。このカッコよさはチェロのイメージを一変させたと言ってもいいのでは。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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石丸幹二が選ぶ名演(1)ベストソング

投稿日:2020年05月23日 10:30

今週は石丸幹二さんがセレクトしたベストソング集。これまでに登場した多彩なボーカリストたちの歌唱をふりかえりました。どれも記憶に残る名演でしたね。
 ディズニー公式アカペラグループのディカペラが歌ったのは「アナと雪の女王」の「レット・イット・ゴー」&「雪だるま作ろう」。ボイスパーカッションが効果的で、アカペラとは思えないほど豊かな表現力があります。声に透明感と清涼感があるところも魅力です。
 「美女と野獣」の「ひそかな夢」を歌ったのは山崎育三郎さん。とてもエモーショナルな歌唱で、野獣の内面の葛藤がひしひしと伝わってきました。
 RPGゲーム「ファイナルファンタジーVIII」の「アイズ・オン・ミー」では、ソプラノの森麻季さんとギターの村治佳織さんが共演。こちらは番組55周年を記念してサントリーホールで収録された演奏です。国際的に活躍する山田和樹さんが55周年祝祭オーケストラを指揮しました。このオーケストラのメンバーがありえないほど豪華! 名だたる国際コンクールで受賞した気鋭のソリストたちがずらりと顔を並べています。ゲームミュージックがトップレベルの音楽家たちによって演奏されること自体がひとつの事件といっても過言ではありません。
 「マイ・ウェイ」を歌ってくれたのは、イタリア人男性オペラ歌手3人によるユニット、イル・ヴォーロ。3人の個性がうまくひとつに融合するユニットですが、ここに石丸さんがまったく違和感なく溶け込んでいることにびっくり。
 最後に登場したイル・ディーヴォは男性ボーカルユニットの先輩格。こちらは4人全員の出身地が違う多国籍ユニットです。「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」で披露してくれた輝かしい声は圧巻。この日の収録では、いつにも増して客席に熱気が渦巻いていたのを思い出しました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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夢をかなえた音楽家たちの休日

投稿日:2020年05月16日 10:30

どんな音楽家にも初めての演奏体験があったはず。今週は現在大活躍中の5人の音楽家に初めての発表会や、プロへの第一歩について語っていただきました。
 反田恭平さんがギロックの「ガラスのくつ」を弾いたり、村治佳織さんが「ちょうちょう」を弾く場面は新鮮でした。子供が発表会で弾くような曲でも、やっぱりプロが弾くとなにかが違います。吉田誠さんは本職のクラリネットではなく、3歳で始めたというピアノを演奏。びっくりしましたが、管楽器の場合はある程度身体の成長が必要なので、先にピアノを学んでいるケースも少なくないのでしょう。上野耕平さんの初舞台が「水戸黄門」だったというお話がおかしかったですね。
 反田恭平さんのデビューのきっかけについてのお話も印象的でした。桐朋学園の学生たちが出演するカフェで演奏したところ、デビューの声がかかったということでしたが、デビュー前から反田さんに注目していた人はたくさんいたはず。私が反田さんの演奏を聴いたのは、おそらくその学生カフェの場面だったと思うのですが、客席に音楽業界関係者がたくさんいて驚いたことを記憶しています。そこから、瞬く間にコンサートデビューやCDデビューが決まり、反田さんの快進撃が始まりました。
 その反田さん、吉田さん、宮田大さんの3人によるトリオが、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第4番「街の歌」で実現しました。高度な技術を持った3人ならではの親密で精彩に富んだ演奏を堪能できました。一般にピアノ三重奏といえば、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの編成ですが、この曲はピアノ、クラリネット、チェロという珍しい編成で書かれています。本日お聴きいただいたのはその第1楽章。この曲の第3楽章では当時の流行歌のメロディが使われています。街で流行の歌を使っているということから、付いた愛称が「街の歌」。機会があったら、ぜひ全曲を聴いてみてください。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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Toshl ディズニーをオーケストラで歌う音楽会

投稿日:2020年05月09日 10:30

今週は先週に引き続き、Toshlさんが原田慶太楼指揮東京フィルと共演。フル・オーケストラをバックにディズニーの名曲を歌ってくれました。Toshlさんのパワフルな歌唱と大編成のオーケストラならではの重厚なサウンドの組合せがゴージャスでした。
 「アラジン」の「ホール・ニュー・ワールド」は、アラジンを石丸さん、ジャスミンをToshlさんが歌うという新鮮な男声デュオ・バージョンで。石丸さんの温かみのある声とToshlさんの輝かしい声の組合せは絶品です。
 「美女と野獣」からは、ロウソクの燭台ルミエールが歌う「ビー・アワ・ゲスト(おもてなし)」と、主題歌「美女と野獣」の2曲をお届けしました。これも名曲ですよね。指揮の原田さんから「昔のディズニー・ソングはシンプルだったけど、今のディズニー・ソングは歌唱力がないと歌えない」というお話がありましたが、ディズニーの名曲はどれも親しみやすいだけではなく、音楽的にも聴きごたえがある曲がそろっています。
 これには「アラジン」「美女と野獣」をはじめ、数々のディズニー映画に曲を書いてきた作曲家アラン・メンケンが大きな役割を果たしたことはまちがいありません。もともとブロードウェイのミュージカルで活動していたアラン・メンケンを起用したことで、ディズニーの音楽は新しい時代を迎えました。
 「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」は、「アナと雪の女王2」で登場した名曲です。Toshlさんの伸びやかな声で聴くと、今まさに未知の旅へと赴こうとする高揚感が伝わってきます。前作の「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」に続いて、この「イントゥ・ジ・アンノウン」もインパクト抜群。いずれも作詞・作曲はクリスティアン・アンダーソン=ロペス&ロバート・ロペスの夫妻です。ロペス夫妻は次代のアラン・メンケンになるかもしれません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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Toshl オーケストラで歌う音楽会

投稿日:2020年05月02日 10:30

今回はToshlさんがフル・オーケストラと共演するという豪華企画。原田慶太楼さんが指揮する東京フィルとともに、名曲の数々を歌い上げてくれました。指揮の原田さんは数多のオーケストラから引っ張りだこの気鋭です。Toshlさんと原田さんの相性はぴったり。互いにリスペクトしあっている様子が伝わってきました。
 「残酷な天使のテーゼ」はアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマとして一世を風靡した名曲。「エヴァンゲリオン」自体もさまざまな形で語り継がれる名作ですが、この曲もアニメソングの枠を超えて歌い継がれています。Toshlさんの歌声は気持ちがいいほどパワフル。圧倒的な高揚感がみなぎっていました。
 Toshlさんと石丸さんが共演した「闇が広がる」はミュージカルの名作「エリザベート」からの一曲。オーストリア皇后エリザベートの息子である皇太子ルドルフと、黄泉の皇帝トートが対峙します。トートとはドイツ語で「死」の意。石丸さんのトートがToshlさんのルドルフを誘惑するという男声同士の二重唱は迫力満点。ヴェルディの「オテロ」でのヤーゴとオテロの二重唱に相通じるものがありますね。
 そしてクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」は、Toshlさんがロックシンガーを目指すきっかけとなった曲。ひとつの曲の中にいろんなスタイルの音楽が混在する難曲で、原田さんいわく、「オペラのようにいろんな物語がある」。Toshlさんは名曲から起伏に富んだドラマを紡ぎだしてくれました。
 収録は3月9日、東京オペラシティのコンサートホールで行われました。本来であれば、曲が終わったところで客席がドッとわき上がるところですが、この日は無観客での収録。できることならこのすばらしい歌唱を客席のみなさんと一緒に聴きたかったと思わずにはいられません。一日も早いウィルス禍の終息を願うばかりです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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本気でプロを目指す!題名プロ塾~葉加瀬太郎編 後編

投稿日:2020年04月25日 10:30

今週は葉加瀬太郎さんによる「題名プロ塾」の後編をお届けいたしました。前回、一次審査を通過した武田さん、林さん、出垣さんの3名が最終審査で日本のトップレベルのプロ・ミュージシャンたちと共演。アドリブ付きの「情熱大陸」に三者三様の個性が発揮されていました。
 最初の武田さんは、流麗な演奏スタイルによる「情熱大陸」。アドリブ部分にも優美さが感じられました。最初に葉加瀬さんから「リズムがこけている」という指摘がありましたが、もう一度やり直すとぐっと引きしまった演奏になりました。
 2番目の林さんはアドリブでの奇策がぶっ飛んでました。楽器を置いたときにはなにが始まるのかと思いましたが、まさか風船を引っ張り出すとは! 風船から出る空気で音程を作ってくれた場面には思わず爆笑。あっけにとられる葉加瀬さんの表情がよかったですね。ユニークなアイディアでしたが、オーボエの最上さんからは厳しい指摘も。でも、メロディ部分は切れ味鋭く、勢いがありました。
 出垣さんの持ち味は全身の動きを生かした魅せるスタイル。演奏も思い切りがよく、伸びやか。アドリブにも工夫が感じられて、とてもすばらしかったと思います。なにより演奏姿のにこやかさがいいですよね。聴いている人がハッピーになれるヴァイオリンと言えばいいでしょうか。バンドのメンバーを引き込む力もあって、得難い資質を感じさせます。
 そして注目の結果発表で選ばれたのは林さん! アドリブが物議を醸すものだっただけにどうなることかと思いましたが、結果的には演奏力の高さが評価されることになりました。ぜひ本番の舞台でキレッキレのヴァイオリンを披露してほしいものです。出垣さんも高評価でしたが、ご本人がおっしゃていたように「ここからがスタート」。きっと別の形でまたお名前を目にする機会があると期待しています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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本気でプロを目指す!題名プロ塾~葉加瀬太郎編 前編

投稿日:2020年04月18日 10:30

今回は新企画「題名プロ塾」として、葉加瀬太郎さんが音楽家志望者の方々にプロの極意を伝授してくれました。しかも、教えるのみならず、これは葉加瀬さんのコンサートで実際にステージに立つためのオーディションも兼ねています。
 ヴァイオリンの場合はどうしてもクラシック音楽をベースとした教育を受けることがほとんど。葉加瀬さんが教えるポップスを弾くための実践的なノウハウは、塾生のみなさんにとって新鮮だったのではないでしょうか。第一次レッスンに参加してくれた塾生は、池永さん、林さん、永田さん、出垣さん、武田さんの5名。みなさんしっかりした演奏技術をお持ちの方ばかりで、個性豊かな「情熱大陸」を披露してくれました。そして、葉加瀬さんのアドバイスで演奏がこんなにも変わるのかという驚きがありました。
 池永さんとのレッスンで葉加瀬さんは「ビートを感じているか、感じていないか。行間にビートがある」とおっしゃていました。これはポップスならでは。クラシックでは常にソリストが主役で、伴奏はソリストに付いていくもの。ソリストは一定のビートを刻むのではなく、微妙なテンポの揺れによって音楽に自然な呼吸感を与えます。でも、ポップスの原則はビートありき。同じヴァイオリンの演奏でもずいぶん違うんですね。
 林さんの勢いのある「情熱大陸」はインパクト抜群。ここで葉加瀬さんが求めたのは「インテンポ」(一定のテンポ)の演奏。クラシックであれば、曲想に応じて部分的にテンポが走っても、スリリングな演奏として歓迎されることも多いのですが、ここでもジャンルの違いがあらわれていました。
 永田さんの「情熱大陸」は、葉加瀬さんとはまったく異なり、エレガントでノーブルなスタイル。葉加瀬さんは永田さんに自分の解釈を押し付けるのではなく、グラッペリを例に出して、永田さんのパーソナリティを尊重していたのが印象的でした。葉加瀬さんの名教師ぶりが伝わるシーンだったと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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和楽器女子たちの休日

投稿日:2020年04月11日 10:30

今回は「和楽器女子たちの休日」。「ハーモニカ女子たちの休日」「低音楽器女子の休日」に続く「女子たちの休日」シリーズ第3弾をお届けしました。登場したのは箏の吉永真奈さん、尺八の辻本好美さん、鼓の安倍真結さん。本来、自国の文化ではあるのですが、こうしてお話をうかがうと、知らないことばかりで新鮮な感動がありました。西洋楽器との共通点もあれば、まったく違うところもあって興味が尽きません。
 箏の裏側に穴があるなんて、ご存じでしたか。楽器の内部は空洞になっていて、そこで響いた音が穴から出てきます。だからマイクが穴のそばに置いてあったんですね。柱(じ)を動かして音程を変えるあたりも含めて、ついギターを連想してしまいます。エレガントな印象のある箏ですが、実は腕の筋力が必要だというお話にも驚きました。
 尺八の指穴は表に4つ、裏に1つという説明がありました。これだけであんなにいろいろな音が出せるとは。形状だけを見れば学校の音楽の授業で習ったリコーダーと似ています。しかし、リコーダーのような歌口が付いていませんので、音を出すのはとても難しそう。石丸さん、一瞬、きれいな音が出ていました!
 鼓でおもしろかったのは、音程について。大鼓が高い音、小鼓が低い音を出すというのが意外でした。西洋楽器では弦楽器でも管楽器でも小さな楽器ほど高い音、大きな楽器ほど低い音を出すものだと思いますが、鼓はちがうんですね。大鼓は熱で乾燥させて甲高い音を出すのに対し、小鼓は適度に湿らせなければならないといいますから、ずいぶんと湿度に対してデリケートな楽器だと感じます。
 また、鼓は代々継承するものであって、値段が付けられないという点は、オールド・ヴァイオリンの名器を思わせます。あの「カン!」という突き抜けるような音色が気持ちよかったですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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