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こんな楽器でも7人制吹奏楽!ブリーズバンドの音楽会

投稿日:2021年01月16日 10:30

今週は7人だけの小編成吹奏楽「ブリーズバンド」の第2弾。吹奏楽の魅力は大編成だけではありません。わずか7人でも多彩な表現が可能、しかも7人全員が主役になれるのがブリーズバンド。前回の放送に寄せられた反響をふまえ、今回のテーマは演奏の難度を下げること、そして普段メロディを奏でる機会の少ない楽器も主役になれること。それぞれ異なる編成の3曲から、ブリーズバンド独自の魅力が伝わってきました。
 一曲目は Make you happy。ピッコロ、アルトサックス、バスクラリネット、ホルン2、ユーフォニアム、パーカッションという7人編成から生まれる音色はとても色彩感豊か。しかも柔らかい雰囲気があったと思います。フルートではなくピッコロというのが、かわいいですよね。パステルカラーの色鉛筆を連想させるような、爽やかなテイストがありました。
 二曲目は「ソーラン節」。フルート、オーボエ、クラリネット2、ファゴット、バリトンサックス、ピアノという、木管楽器中心の編成でした。これはカッコいい! たしかにソーラン節なのですが、ゆったりとたゆたうような前半からしてモダンでスタイリッシュ。後半はピアニストの一声でがらりと雰囲気が変わって、疾走感あふれる「ソーラン節」に。鮮やかでした。
 三曲目は吹奏楽の古典、ホルスト作曲の吹奏楽のための組曲第1番。イギリスの作曲家ホルストといえば、オーケストラのための組曲「惑星」が有名ですが、吹奏楽のためにも作品を残しており、特にこの組曲第1番は広く親しまれています。今回はこれをフルート、アルトサックス、トランペット2、トロンボーン、テューバ、パーカッションの7人で。原曲の持つ格調高さと輝かしさをそのまま保ちながら、少人数ならではの軽快さ、小気味よさが加わっていたと思います。足技が登場するのも楽しいですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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石丸幹二が忘れられない名演ベストパフォーマンス

投稿日:2021年01月09日 10:30

今週は石丸幹二さんが選ぶ2020年の「忘れられない」ベストパフォーマンスをお届けしました。村治佳織さん他によるヴィヴァルディと、藤田真央さんの自作自演は今回が初公開。名演がずらりとそろいました。
 高嶋ちさ子さんはデュカスの名曲「魔法使いの弟子」で手品を披露。この曲はディズニー映画「ファンタジア」で使われ、ミッキーマウスが見習い魔法使いを演じたことで、一躍人気を高めました。ミッキーマウスは魔法に失敗してひどい目にあってしまうのですが、高嶋さんのマジックは大成功でしたね。
 村治佳織さんが鈴木優人さん指揮東京フィルとともに演奏したのは、ヴィヴァルディの「四季」より「冬」第1楽章。以前の放送では「秋」をお楽しみいただきましたが、「冬」も負けず劣らず名曲です。曲の冒頭で静かに「ブルッ、ブルッ、ブルッ、ブルッ」とくりかえされる部分が、いかにも寒さにぶるぶると震えているかのよう。ほかにも寒さで歯がカタカタと震えている部分が出てきたりと、冬は意外とリズミカルです。こういった冬の情景を舞曲的な躍動感に結び付けるあたりに、ヴィヴァルディの卓越した創意を感じます。
 藤田真央さんが演奏したのはご自身が作曲した「パガニーニの主題による変奏曲」。ここでいう「パガニーニの主題」とは、パガニーニが「24の奇想曲」の終曲で用いた主題を指しています。パガニーニ以降、この主題で変奏曲を書くことが一種の流行のようになり、ブラームスやリスト、ラフマニノフをはじめ数多くの作曲家たちが「パガニーニの主題による変奏曲」を書いています。藤田真央さんもその伝統にのっとって、ジャズの語法を盛り込んだ現代的な感性にもとづく変奏曲を書きあげました。それにしてもこれが高校時代の作品とは。
 最後を飾ったのは、Toshlさんがフルオーケストラをバックに歌った「ボヘミアン・ラプソディ」。これは文句なしの名演でしょう。圧巻でした!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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鉄道を音楽で楽しむ休日

投稿日:2020年12月26日 10:30

今週の「鉄道を音楽で楽しむ休日」では、熱心な鉄道ファンとしても知られるサクソフォン奏者、上野耕平さんが大活躍。鉄道視点から見た音楽の楽しみ方に目から鱗が落ちました。
 なにより驚いたのは、上野さんによるドヴォルザーク「新世界より」の新解釈。ドヴォルザークが大変な鉄道好きだったという逸話はよく知られています。駅にでかけては飽きもせず機関車を眺め、車体番号を記録したり、模型を作ったりと、その姿は現代の鉄道ファンと変わりません。そんなドヴォルザークの代表作が交響曲第9番「新世界より」。作曲者本人は明言していませんが、「新世界より」の第4楽章は、蒸気機関車が加速して、やがて爆走する様子を連想させます。
 そこまでは比較的よくある解釈なのですが、上野さんはさらに一歩踏み込んで、この傑作に秘められた鉄道モチーフを明らかにしてくれました。第4楽章でたった一度だけ鳴らされるシンバルの音は、蒸気機関車のブレーキ音。しかも、これに続く管楽器のフレーズを「ブレーキ後の煙」とおっしゃるのには、思わず膝を叩いてしまいました。なるほど! シンバルという楽器は、普通なら強烈な一撃でクライマックスを盛り上げてくれそうなものですが、ドヴォルザークはメゾフォルテ(やや強く)というやや不思議な指示を楽譜に書き込んでいます。映像で実際の蒸気機関車のブレーキ音を確かめてみると、たしかにこれはフォルテでもピアノでもなく、メゾフォルテくらいのニュアンスだとわかります。
 さらに上野さんの指摘で納得したのは、第3楽章の解釈。一般的には、この楽章は農民舞曲風、民謡風の音楽だと受け取られているかと思います。でも上野さんによれば、冒頭部分は汽笛を表現し、トライアングルの連打が発車ベル、弦楽器のリズムは「ガタンゴトン」をあらわすのだとか。しかも弦楽器による「プシュー」という蒸気音まで登場するのですから、これは蒸気機関車そのもの。今後、この曲の聴き方が変わってしまいそうです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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日本ポップス 冬の協奏曲の音楽会

投稿日:2020年12月19日 10:30

もしもクラシックの大作曲家たちが日本のポップスを協奏曲にアレンジしたら……。今回はそんな発想から生まれた実験的シリーズの第5弾。日本の冬を感じさせるポップスの名曲が、本條秀慈郎さん、實川風さん、村治佳織さんの豪華ソリスト陣の演奏で、協奏曲に生まれ変わりました。
 第1楽章は「もしもヴィヴァルディが石川さゆりの『津軽海峡・冬景色』をアレンジしたら?」。イタリアのヴェネツィアで活躍した作曲家ヴィヴァルディの代表作といえば、協奏曲集「四季」。その中の「冬」第1楽章が「津軽海峡・冬景色」と融合しました。ヴィヴァルディと石川さゆりでは曲調がぜんぜん違いますが、震えるような冬の厳しさなど、表現している情景は意外と近いかもしれません。しかもソロ楽器は三味線。三味線とオーケストラの共演ということで、楽器編成も和洋混合になっていたのが、おもしろかったですね。
 第2楽章は「もしもショパンがglobeのDEPARTURESをアレンジしたら?」。ショパンは自身がすぐれたピアニストでしたので、作品はもっぱらピアノ曲ばかり。ピアノ協奏曲は2曲残していますが、できればもっとたくさん書いてほしかったなと、よく思います。その願いをかなえてくれるような巧みなアレンジで、DEPARTURESがショパン風の流麗でノスタルジックな音楽に仕立てられていました。一般に協奏曲の第2楽章には抒情的なメロディが登場しますが、DEPARTURESはぴったりです。
 第3楽章は「もしもヘンデルが山下達郎の『クリスマス・イブ』をアレンジしたら?」。クリスマス・シーンに欠かせない日本のポップスが山下達郎の「クリスマス・イブ」であるように、クラシック音楽ではヘンデルの「メサイア」がクリスマスの定番曲。「ハレルヤ・コーラス」があまりに有名ですが、ほかにも名曲がぎっしりと詰まっています。時代を超えた両曲が重なり合って、華やかなフィナーレを築きました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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滅危惧種!?蛇腹楽器の秘密を知る休日

投稿日:2020年12月12日 10:30

今週はバンドネオンの小松亮太さん、アコーディオンの田ノ岡三郎さん、小春さんの3人の蛇腹楽器奏者のみなさんをお招きいたしました。
 蛇腹楽器にもずいぶんいろんな種類があります。アコーディオンはなじみがあるようでいて、実はよく知らない楽器かもしれません。そもそもアコーディオンには鍵盤式とボタン式があるのをご存じでしたか。石丸さんもおっしゃっていましたが、昔、学校に鍵盤式のアコーディオンが置いてあったのを覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。学校にあったのは教育用のアコーディオンだったと思いますが、今は鍵盤ハーモニカが普及しているので、昔ほど出番はないかもしれません。
 これに比べるとボタン式のアコーディオンを見かける機会は少ないと思いますが、実は歴史が古いのはこちらのほう。一見、鍵盤があったほうがわかりやすくて便利なようにも見えますが、小春さんの「ボタン式は同じ指遣いでキーを変えられるので、歌の伴奏に適している」という解説を聞いて、目から鱗が落ちました。なぜあんなにたくさんのボタンがあるのか不思議だったのですが、これならキーが変わっても、まったく同じ指の動きで対応することができます。
 バンドネオンは蛇腹楽器のなかでも独自性の強い楽器だと思います。絶滅危惧種などと言われるくらいですから、実物を触ったことも見たこともない人が大半でしょう。しかし、さまざまな名曲を通して、バンドネオンの音を耳にする機会は決して少なくありません。これはまさに小松亮太さんのおかげでもあるのですが、鑑賞するための楽器として確固とした地位を築いています。そして、なんといってもバンドネオンの世界にはピアソラという大音楽家がいます。ピアソラの「リベルタンゴ」や「アディオス・ノニーノ」といった数々の名曲が忘れ去られない限り、この楽器が廃れることはないのではないでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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藤田真央がモーツァルトのピアノ・ソナタを弾く音楽会

投稿日:2020年12月05日 10:30

今週は国際的に活躍する若手ピアニスト、藤田真央さんの演奏によるモーツァルトのピアノ・ソナタをお楽しみいただきました。以前、辻井伸行さんにベートーヴェンのピアノ・ソナタに独自の視点からタイトルを付けてもらいましたが、今回も同様に真央さんならではの視点で名曲に新たなタイトルが添えられました。
 実はモーツァルトのピアノ・ソナタは同じ曲でもいろいろな名前で呼ばれています。たとえば、今回最初に演奏されたピアノ・ソナタ ハ長調K.545。モーツァルトに詳しい方は「ケッヘル545」などと呼びます。ケッヘル番号とは一種の作品番号で、この番号があれば確実に曲を特定できます。でも3桁の数字って、なかなか覚えられないんですよね。CDではこの曲を「ピアノ・ソナタ第15番ハ長調K.545」と表記することが多いと思います。ところが、同じ曲を最近「ピアノ・ソナタ第16番」と表記するケースも目立ってきました。数え方の違いで番号が変わってしまったのですが、これでは混乱してしまいます。番号ではなく、「ハ長調ソナタ」のように調で区別する方法もあります。でもモーツァルトのソナタにはハ長調がいくつもあって、これだけでは曲を特定できません。
 そんな事情もあって、この曲に愛称がついていればいいのにな……と思うこともしばしば。これからは真央さん流に、この曲を「天真爛漫」と呼ぶことにしたい!と思ってしまいました。
 しかも真央さんの演奏は「天真爛漫」と呼ぶにふさわしい自然体のモーツァルト。歯切れよく軽快で、しかも情感豊か。モーツァルトを得意のレパートリーとするピアニストは限られていますが、真央さんはそのひとりとして今後ますます活躍の場を広げてくれそうです。
 ピアノ・ソナタ イ短調K.310は「満身創痍」、ピアノ・ソナタ 変ロ長調K.281は「温故知新」。これも真央さんの説明を聞いて納得。四字熟語でそろえているのがおもしろいですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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一流音楽家が自ら持参!人生に影響を与えたレコードを聴く音楽会 後編

投稿日:2020年11月28日 10:30

今週は先週に引き続き、各分野で活躍するトップレベルの音楽家のみなさんに、レコードの思い出を語っていただきました。名盤がいくつも登場して、懐かしかったですね。
 宮田大さんが選んだのは、シンセサイザーの第一人者、冨田勲の組曲「惑星」。これは歴史的名盤といってもいいでしょう。初期のアナログ・シンセサイザーの可能性を極限まで追求した先駆的な野心作です。原曲はイギリスの作曲家ホルストのオーケストラ曲。ホルストがイメージしていたのは占星術的な意味での惑星でしたが、冨田勲さんのシンセサイザーによってSF的なイメージの楽曲に生まれ変わっていました。チェリストの宮田さんが「このアルバムから物語性を踏まえた音楽表現を心がけるようになった」とおっしゃるのには納得。冨田さんの「惑星」には、まるで宇宙空間を旅するようなストーリー性があるんですよね。
 村治佳織さんの「ハイフェッツ・オン・TV」、こちらも名盤です。完璧な技巧により神格化されていたハイフェッツですが、すでに第一線を退いていたところにフランスのテレビ局からのオファーを受けて、70歳にしてこの演奏が実現しました。テレビ収録と並んで、このレコードが制作されたので「ハイフェッツ・オン・TV」というタイトルが付けられています。
 服部隆之さんが挙げたのは映画「アンタッチャブル」サウンドトラック。これが「半沢直樹」に影響を与えていたとは! 作曲は「ニュー・シネマ・パラダイス」で知られるエンニオ・モリコーネ。服部さんの「ハーモニカにマカロニウエスタンの味が少し出ている」という解説には目から鱗が落ちました。
 最後に演奏された「テーマ・オブ・半沢直樹~Main Title~」は、この日のためのスペシャルアレンジ。日本を代表する名手たちがずらりと顔をそろえました。このクォリティの高さ、カッコよさ、そして格調の高さ。最高の「半沢直樹」でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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一流音楽家が自ら持参!人生に影響を与えたレコードを聴く音楽会 前編

投稿日:2020年11月21日 10:30

今週は第一線で活躍する音楽家のみなさんをお招きして、レコードについての思い出を語っていただきました。
 今年9月、アメリカレコード協会は上半期の売上げについて、アナログレコードがCDを上回ったと発表しました。このニュースにはびっくりしましたね。背景にはストリーミングサービスなどの音楽配信が優勢になって、CDで音楽を聴く人が減ってしまったことがあるわけですが、レコードには依然として根強い支持があることがわかります。やはりレコードにはCDにない趣味性があるということなのでしょう。
 服部隆之さんが持参したLPレコードは、ミシェル・ルグラン作曲の映画「火の鳥」サウンドトラック。「40年ぶりにLPレコードをかけた」とおっしゃる服部さんですが、レコードに針を落とす場面に懐かしさを覚えた方も多いのでは。レコードをかけるときって、緊張するんですよね。よく見ないと、思わぬところに針を落としてしまいます。自動で針を落としてくれるプレーヤーもありますが、やはりこの「儀式」のようなひと手間こそが、レコードの魅力でしょう。
 レコードはCDよりもずっと手のかかるメディアです。盤面に埃が付いていたり傷があったりすると「パチパチパチパチ……」というスクラッチノイズが乗ってしまいます。棚にしまうときも注意しないと盤が反ってしまいます。なにかと手がかかるわけですが、それだけに一枚一枚への愛着がわいてきます。
 石丸さんの「ヤマト愛」もひしひしと伝わってきました。1978年に公開された映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」サウンドトラック。これは懐かしいですね。そして、アルバムには収録されていなかったと石丸さんを落胆させた、テレビ版のエンディングテーマ「真赤なスカーフ」を、石丸さん、村治佳織さん、宮田大さんの演奏でお届けしました。なんともいえない寂寥感が漂ってくる、すばらしいアレンジ、そしてすばらしい演奏だったと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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トップギタリストたちが集まる休日

投稿日:2020年11月14日 10:30

今週はジャンルの異なる3人のトップギタリストのみなさんをお迎えしました。ギターほどあらゆるジャンルで使われ、なおかつ歴史のある楽器もないでしょう。文献や図像では13世紀にはすでににギターらしき楽器が登場すると言います。弦の数や材質など、時代とともに形を変えて、19世紀には現代のようなアコースティック・ギターが誕生しますが、この楽器の特徴はそこからさらにエレキギターへの発展を遂げたことでしょう。もともと音の小さな楽器だったギターが、電気的な増幅によりパワフルな楽器に生まれ変わり、ポピュラー音楽の急速な発展に寄与しました。エレキギターは20世紀の象徴的な楽器のひとつといってもよいと思います。
 村治佳織さん、押尾コータローさん、マーティ・フリードマンさんの三人が共演する機会など、普通であればまずなさそうなもの。マーティさんは「サックスとピアノくらい違う」とおっしゃっていましたが、同じギターといっても、ずいぶん奏法が違うことに改めて驚きます。特にマーティさんのお話でおもしろかったのは、使用楽器「ジャクソン マーティ・フリードマン・モデル」について。全世界どこに行ってもまったく同じものが手に入るので、楽器を持ち歩く必要がないというのですから、これには目から鱗。アコースティックな楽器と違って、寸分たがわぬ同一の楽器が量産できてしまうんですね。クラシックの楽器とは事情がまるで違います。
 三人がいっしょに演奏したのは、ラヴェルの名曲「ボレロ」。もともとボレロとはスペイン舞曲の一種ですから、この曲がスペインゆかりの楽器であるギターにアレンジされることには納得。おなじみのメロディがギターで奏でられると、ぐっと南欧的な雰囲気が漂ってきます。原曲でも斬新で色彩的なオーケストレーションが聴きどころですが、今回の異種ギター共演からも、ふだんは耳にすることのない新鮮な響きが聞こえてきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ヴィヴァルディ「四季の秋」を楽しむ音楽会

投稿日:2020年11月07日 10:30

今週はヴィヴァルディの「四季」より「秋」をお楽しみいただきました。「四季」といえばなんといっても「春」が有名ですが、「秋」にも親しみやすく美しいメロディがたくさんあります。
 この「四季」とは、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」に収められた全12曲の協奏曲のうち、最初の4曲「春」「夏」「秋」「冬」のこと。ちなみに残りの協奏曲は「海の嵐」や「喜び」など、季節感とは関係のない作品が続きます。これらも十分にすばらしい作品ではあるのですが、やはり「四季」の4曲はとびきりの傑作です。
 ヴィヴァルディは生涯に600曲を超える協奏曲を書きました。大変な多作家だったんですね。ほとんどの作品は協奏曲のお約束通り、「急─緩─急」のテンポからなる3つの楽章で構成されています。どれも一定のパターンに従っていることから、20世紀の大作曲家ストラヴィンスキーは「ヴィヴァルディは600曲の協奏曲ではなく、同じ協奏曲を600回書いたのだ」と揶揄しました。しかし、現代ではこの意見に賛同する人は少数派でしょう。むしろ約束事に従いながら、これだけ多彩な表情を持った楽曲を600曲も書いたことに並外れた創意を感じずにはいられません。
 ヴィヴァルディは生まれ故郷のヴェネツィアで活躍しました。ということは、「四季」で表現されるのはヴェネツィアの季節感のはず。でも、意外と日本の季節感と変わりがありません。そのせいもあってか、この曲は昔から日本での人気が高く、昭和の高度成長期にはステレオ装置の急速な普及にともなって「四季」のレコードが爆発的に売れました。以来、「四季」はバロック音楽屈指の人気を誇っています。
 今回は村治佳織さんが加わったギター入りアレンジによる「四季」。なじみ深い名曲から新鮮な魅力を引き出してくれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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