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世界最大級!クラシックの音楽祭を知る休日

投稿日:2018年04月21日 10:30

今週はフランスのナントからクラシックの音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」の模様をお届けいたしました。5月の連休中に日本でも開催される「ラ・フォル・ジュルネ」ですが、発祥の地はナント。この音楽祭は音楽プロデューサーのルネ・マルタンさんが創設したもので、従来のクラシックの音楽祭とはまったくスタイルが異なります。短時間で低料金の公演が、朝から深夜まで複数の会場で同時並行で開催されます。格式ばった音楽祭ではなく、だれもが気軽に足を運べるカジュアルな音楽祭なのです。
 「ラ・フォル・ジュルネ」という名前を日本語に訳せば「狂った一日」。これはモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」の原作のタイトルに由来します。「フィガロの結婚」には貴族階級への批判が込められています。「一部のエリートのためではなく、みんなのためのクラシックの音楽祭」を目指したマルタンさんの狙いが、音楽祭の名称にも反映されているんですね。
 ナントのメイン会場はシテ・デ・コングレ。約2000人収容の大ホールのほか、大小の講義室や会議室がいくつもあります。東京・有楽町のラ・フォル・ジュルネに足を運んだことのある方は、番組を見て「あれ、なんだか東京国際フォーラムと雰囲気が似ているな」と感じたかもしれません。実際に行ってみると、本当によく似ています。おなじみの八角形の赤いステージもあって、一瞬、有楽町にいるのかと錯覚しそうになるほど。
 「ラ・フォル・ジュルネ」は万人向けのフレンドリーな音楽祭ですが、中身はあくまで本格派。わかりやすい曲だけを並べるなどといったことは決してしません。有名曲と並んで知られざる作品も多数あります。ギドン・クレーメルが演奏したカンチェリの作品もそのひとつ。挑戦的なプログラムを平気で組むのですが、こんなプログラムでも客席はほぼ満席。むしろ、未知の音楽との出会いが歓迎されているような雰囲気がありました。

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クラシック界が注目する若き才能の音楽会

投稿日:2018年04月14日 10:30

今週は気鋭の若手奏者、ピアニストの藤田真央さん、ヴァイオリニストの木嶋真優さんに協奏曲を演奏していただきました。
 藤田真央さんは1998年生まれ。まだ在学中なんですね。東京音楽大学1年生で第27回クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝を果たしました。すでにCDもリリースされています。若き才能がひしめく日本の音楽界ですが、ここまで若くして脚光を浴びる人はめったにいません。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の第3楽章を鮮やかに弾ききってくれました。切れ味のあるテクニックと作品にふさわしい豊かなパッションと推進力。加えて抒情的な表現も巧みで、大変に聴きごたえがありました。最後のカデンツァからの怒涛の終結部は迫力がありましたよね。
 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番を例に、作曲時の年齢をイメージした演奏を披露してくれましたが、19歳でありながら仮想51歳となって弾くという発想法はかなりユニーク。
 木嶋真優さんは「練習が大嫌い」というお話が意外でした。しかしお話を聞くと、練習嫌いであるがゆえに、少しでも練習の効率を高めるべく、一回一回、自分の感覚を確かめながら考えて弾くというのですから、練習に対する集中力を大切にされているのでしょう。この世界、すごい練習をしてきた人が練習嫌いを自認することはままあること。
 木嶋さんが演奏したのはショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。ショスタコーヴィチが活躍していた頃のソ連では、芸術家は自由な創作を許されていませんでした。当局の意図に合致する、わかりやすくて、体制を賛美するような作品が求められたのです。ショスタコーヴィチはヴァイオリン協奏曲第1番を1948年に完成しましたが、このような野心的な作品を発表するのは危険だと考え、スターリンが亡くなって2年後の1955年まで発表を控えました。難曲にして大曲ですが、近年は演奏機会が増えているように感じます。今や20世紀を代表するヴァイオリン協奏曲のひとつになったといってもよいでしょう。

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新時代を切り開いた作曲家ドビュッシーの音楽会

投稿日:2018年04月07日 10:30

今週は没後100年を迎えたフランスの作曲家ドビュッシーの魅力に迫りました。まったく独自の形式、ハーモニー、色彩によって、20世紀音楽の礎を築いた作曲家ドビュッシー。その革新性は「後世の作曲家でドビュッシーの影響を受けていない者はほとんど見られない」(ニューグローヴ世界音楽大事典)と言われるほど。「亜麻色の髪の乙女」のような作品は、今やテレビCMなどでも使用されるほど広く親しまれる名曲になっていますが、その響きの性質や柔軟なリズムはそれまでの古典的な音楽とは一線を画しています。
 ドビュッシーの音楽にはさまざまな特徴がありますが、異国趣味もそのひとつ。本日お聴きいただいたピアノ曲集「版画」第1曲「パゴダ」(塔)からは、ガムラン風のアジア的なムードが漂ってきます。ちなみにこの曲集の第2曲は「グラナダの夕べ」で、スペイン趣味が反映されています。以前、番組で交響詩「海」を取りあげた際には、スコアの表紙に葛飾北斎の浮世絵が使用されているといった日本趣味についてご紹介しました。「子供の領分」の第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」はアメリカ風。ドビュッシーの視野はとても広いのですが、素材はあくまで素材にすぎず、そのすべてに彼ならではのオリジナリティが発揮されています。
 最後にお聴きいただいた「花火」は、前奏曲集第2巻からの一曲。ピアノ一台の曲なのに、色とりどりの花火が目に浮かぶような色彩感が伝わってきます。ドビュッシーの作品には、光や波、水、風など、不定形で時々刻々と変化する現象を題材にした曲が多いですよね。ちなみこの曲のおしまいの部分で、さりげなくフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の断片が登場するのに気づかれたでしょうか。この曲はフランス革命記念日の情景を描いたものと言われています。先週の「ワールドカップの音楽会」でご紹介した国歌の名作がこんなところにも。

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ワールドカップの音楽会

投稿日:2018年03月31日 10:30

今年は4年に1度のワールドカップ・イヤー。ロシアを舞台に6月中旬から約一か月にわたるサッカーの熱戦がくりひろげられます。本日はそんなワールドカップを彩る名曲と国歌をお届けいたしました。
 サッカーと縁の深いクラシックの名曲はいくつもありますが、その代表格といえるのがイギリスの作曲家エルガーの「威風堂々」。もともとはオーケストラのための行進曲ですが、中間部は歌詞を付けて「希望と栄光の国」の題で愛唱されています。このメロディはイギリスはもちろんのこと、Jリーグを含む各地のスタジアムでサポーターたちのチャント(応援歌)として歌われています。プレミアリーグの中継などで耳にしたことがある方もいらっしゃることでしょう。スタジアムではかなり早いテンポで手拍子を打ちながら歌われることが多いと思います。
 ワールドカップではふだんなじみのない国の国歌もたくさん耳にすることになります。海外サッカー・ファンであればブラジル国歌やイタリア国歌に他国の国歌とは思えないほどの親しみを覚える方も少なくないはず(イタリアは出場権を逃してしまいましたが……)。
 しかし有名さにかけては、イギリスの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」とフランスの「ラ・マルセイエーズ」にかなう国歌はないでしょう。この両曲はほかの曲から引用されたりカバーされたりすることも少なくありません。クラシックの作曲家では、「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」をベートーヴェンが変奏曲に仕立てていますし、ドビュッシーは「ピクウィック殿をたたえて」で引用しています。また「ラ・マルセイエーズ」は、チャイコフスキーの大序曲「1812年」やドビュッシーの「花火」に登場します。
 作曲者の名声という点では「ドイツの歌」が最強です。なにしろあのハイドンが作ったのですから!
 さて、今回の大会の決勝で歌われるのはどこの国の国歌でしょうか。ドイツ、フランス、イングランドといった国は有力候補かもしれませんね。

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レナード・バーンスタインの音楽会

投稿日:2018年03月24日 10:30

今年生誕100年を迎えるレナード・バーンスタインは、作曲家としても指揮者としても活躍した音楽界の巨人でした。
 多くのクラシック音楽ファンにとって、生前のバーンスタインは第一にスター指揮者だったと思います。カラヤンと双璧をなす巨匠として音楽界に君臨しました。ニューヨーク・フィルでの活躍の後、ウィーン・フィルとも緊密な関係を築き、カラヤンが率いるベルリン・フィルとはライバルのように見なされていました。かつてバーンスタインは一度だけベルリン・フィルの指揮台に招かれたことがあります。マーラーの交響曲第9番を指揮して語り草となる壮絶な名演を披露したところ、その後、なぜか二度とこのオーケストラから招かれることはなく、その理由についてさまざまな憶測が語られました。この逸話は昨年ベルリン・フィルが来日した際の記者会見でも話題に出たほどで、バーンスタインの存在感がいまだに大きいことをうかがわせます。
 1990年にバーンスタインが亡くなった後は、次第に作曲家としてのバーンスタインに光が当てられるようになってきたように思います。もちろん、「ウエスト・サイド・ストーリー」や「キャンディード」といったミュージカル作品は以前より人気が高かったのですが、交響曲第1番「エレミア」、交響曲第2番「不安の時代」、オーケストラのためのディヴェルティメント等、シリアスな作品も次第に演奏頻度が高まってきました。とりわけ、生誕100年の今年は、彼の作品を聴く機会が多くなっています。
 ただ、それでも上演の機会が限られているのが「ミサ」。昨年、井上道義さん指揮の大阪フィルが大阪のフェスティバルホールで上演したのが、日本国内では23年ぶりの演奏となりました(前回の指揮者も井上道義さんです)。バーンスタイン本人にとって特別な思い入れのある作品であるにもかかわらず、特殊な大編成を要するため、上演は非常に稀なこと。本日はそのごくごく一部をお送りしました。全曲では正味100分を超える大作。次の上演の機会が早く訪れることを願わずにはいられません。

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カバーポップスの音楽会

投稿日:2018年03月17日 10:30

海外のヒット曲に独自の日本語歌詞を付けて、日本の歌手が歌ったカバーポップス。今週は1950年代後半から60年代前半にかけて大ブームを起こしたカバーポップスの名曲を、さまざまなアレンジでお届けしました。
 「ラストダンスは私に」「ダイアナ」「可愛いベイビー」「ヴァケーション」といった曲はそれぞれ時代の空気を伝えるヒット曲であると同時に、当時をまったく知らない者にとっても耳なじみのある名曲だと思います。
 ポール・アンカの「ダイアナ」に平尾昌晃盤と山下敬二郎盤があったように、当時は同じ曲を同時期に別の歌手が歌うことも盛んに行われていたのがおもしろいですよね。カバー曲であるがゆえに、だれの持ち歌でもないということなのでしょうか。ひとつの曲を別の歌手で聴き比べることができるのは、まるでクラシックの名曲のようです。
 海外のヒット曲がわずか数か月のタイムラグで日本に入ってきたというのも驚きです。インターネットが発達した現代であればなんの不思議もありませんが、50年代後半から60年代前半という時代を考えれば、これは驚異的な情報の伝達速度だといえるでしょう。
 「レモンのキッス」と「情熱の花」はどちらもクラシック音楽が原曲です。「レモンのキッス」の原曲は、ポンキエッリのオペラ「ジョコンダ」より「時の踊り」。オペラ「ジョコンダ」は人気作とはいえませんが、この「時の踊り」の部分だけはディズニー映画「ファンタジア」で使用されたこともあって、広く親しまれています。この曲、どういうわけか、テレビCMでよく使われる印象があります。ナチュラルで清潔感のある曲調が好まれているのかも? 「情熱の花」はベートーヴェンの「エリーゼのために」が原曲。こちらはピアノ学習者が憧れる超有名曲ですね。

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題名のない音楽会を知る休日

投稿日:2018年03月10日 10:30

今週は青島広志さん、田中祐子さん、上野耕平さんをお招きして、番組アーカイブから発掘したVTRをご覧いただきました。
 最初のVTRは指揮台の高さについて。山本直純さんの指揮姿を懐かしく感じられた方も多いのではないでしょうか。山本直純さんが破格の音楽的才能に恵まれつつも、若き日に同門の小澤征爾さんに対して「オレは音楽のピラミッドの底辺を広げる仕事をするからお前はヨーロッパへ行って頂点を目指せ」と語った話はよく知られています(「山本直純と小澤征爾」柴田克彦著/朝日新書)。見上げるほどの高さまでせりあがった指揮台からダイナミックな動きでオーケストラを指揮する様子に面目躍如といった感がありました。
 2つめのVTRは長調(メジャー)と短調(マイナー)を入れ替える試み。結婚行進曲としておなじみの「ローエングリン」の「婚礼の合唱」が、短調バージョンで歌われていました。陰々滅々として、これではまるで葬送行進曲のよう。もっとも、オペラ「ローエングリン」では、この結婚は不幸な結末に至りますので、ストーリーを先取りしているともいえるのかも!?
 最後のVTRは、美空ひばりさんが歌った、オペラ「トスカ」より「歌に生き愛に生き」でした。オペラ的な歌唱法にとらわれず、こぶしを効果的に効かせた美空ひばりさん独自の歌に昇華されていました。声の音色の多彩さも印象的。
 オペラ「トスカ」はプッチーニが作曲した人気作です。政情不安に揺れるローマを舞台に、歌姫トスカとその恋人の過酷な運命が描かれています。敬虔なキリスト教徒であるトスカは、試練に直面して、「芸術と神への愛に生きる私に神はなぜこのような苦難を与えるのでしょう」と、このアリアを歌います。もともとの役柄が歌姫ですから、美空ひばりさんが歌うのは納得ですね。

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卒業ソングを深く知る音楽会

投稿日:2018年03月03日 10:30

卒業式には合唱が欠かせません。今週は「卒業ソングを深く知る音楽会」。古くから歌われる名曲から平成の定番曲まで、さまざまな卒業ソングが登場しました。
 番組冒頭で歌われたのは、おなじみの「蛍の光」。編曲は合唱界で大人気の信長貴富さん。この曲ってこんなに美しい曲だったのかという新鮮な感動がありました。考えてみれば、世界的な指揮者とプロフェッショナルな合唱団の組合せでこの曲を聴くチャンスなど、普段はまずありません。
 この曲は日本の歌かと思いきや、実はスコットランド民謡だったんですね。原題は「オールド・ラング・サイン」(久しき昔)。歌詞には旧友と再会し、杯を交わしながら思い出話をする様子が描かれています。聞いていても外国の音楽だという気がまったくしないのは、曲調が日本人にもなじみやすいからなのか、日本語訳詞があまりにもよくできているからなのか……。ちなみにベートーヴェンは「スコットランド民謡集WoO 156」のなかの一曲として、この曲を編曲しています。スコットランドに留まらず、世界中で愛される民謡といっていいでしょう。
 「旅立ちの日に」は今や卒業ソングの大定番となっています。といっても、この曲ができたのは1991年ですので、ある世代以上の方にとってはなじみの薄い曲かもしれません。埼玉県秩父市の中学校の先生が作った曲が全国へと広まりました。有名作曲家ではなく、学校の先生が作った曲がここまで歌われるようになったのですから、音楽の持つ力に驚かずにはいられません。
 森山直太朗「さくら」が大ヒットしたのは2003年のこと。ヒット曲が卒業ソングに定着し、歌い継がれるという現象が今風だなと感じます。季節感といい歌詞といい、情感豊かなメロディといい、卒業ソングにはぴったり。なにより生徒たちにとって、「ぜひ歌いたい!」と思わせてくれる名曲なのではないでしょうか。

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舞うヴァイオリニストの音楽会

投稿日:2018年02月10日 10:30

近年、スケート・シーズンに合わせて、フィギュアスケートの人気曲を集めたコンピレーション・アルバムをレコード会社がリリースするようになりました。これは荒川静香さんがトリノ・オリンピックで金メダルを獲得した際に、プッチーニの「誰も寝てはならぬ」が大ヒットした影響が大きいのでしょう。フィギュアスケートをきっかけに曲に親しむファンが増えてきました。有力選手たちが新シーズンにどの曲を採用するのかは、ファンのみならず業界関係者も気になるところです。
 今週の「舞うヴァイオリニストの音楽会」で独自の美の世界を披露してくれたヴァイオリニストの川井郁子さんは、そんなフィギュアスケートの世界で大人気のアーティスト。羽生結弦、ミシェル・クワン、村上佳菜子、荒川静香といったそうそうたる顔ぶれのスケーターたちが、川井さんの楽曲を使用してきました。
 なぜそんなに人気があるのか。番組中で荒川静香さんが「(川井さんの楽曲は)スケートの伸びと重なりやすい」というスケーターならではの表現で理由を説明してくれました。これは実際に滑ってみて体感できる感覚なのでしょう。「ヴァイオリンと和楽器の組み合わせによって、強さと繊細の相反する要素が重なり合う」とも。ヴァイオリンとピアノのような純然たる西洋楽器の組合せよりも、性格の異なる楽器を組み合わせたほうが表現の可能性が広がるのは、なんとなくわかるような気がします。
 川井さんのオリジナリティは、音楽的に踊れる曲であるというだけではなく、奏者自らがダンサーと共演して舞うところ。最後に演奏されたピアソラの「リベルタンゴ」は、鬼才ギドン・クレーメルがヴァイオリンで演奏したことがきっかけで、クラシック音楽界でも広く演奏されるようになった曲ですが、この曲で演奏しながら舞ったヴァイオリニストは川井さんだけではないでしょうか。

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ジャンルを超えた仲間たちの音楽会

投稿日:2018年02月03日 10:30

普通だったら絶対に共演しないようなアーティストが、いっしょになってひとつの作品を生み出す。刺激的ですよね。今週の「ジャンルを超えた仲間たちの音楽会」では、異ジャンルのアーティストたちが集った、ふたつのユニットに登場していただきました。
 この両ユニットは10年以上にわたってコラボレーションを継続しています。ジャンルを超えるコラボレーションというと、一回性のものはたくさんあるのですが、こうしてずっと続いている例は決して多くはありません。
 ひとつめはピアノの上原ひろみとタップダンスの熊谷和徳。ピアノとタップダンスとは、相当に意外性のある組み合わせです。最初はタップダンスにピアノで音楽の伴奏が付くのかなと思いましたが、実際に目にするとそう単純なものではないことがよくわかります。タップダンスが一種のリズム楽器のように機能して、ピアノと対話をくりひろげます。タップダンスが音楽的であると同時に、ピアノにもどこかダンスの要素が感じられて、音楽とダンスの境界線が見えなくなってくるような一体感が印象的でした。
 もうひとつは古武道。チェロの古川展生、ピアノの妹尾武、尺八の藤原道山、三人の名前から一文字ずつを取って「古武道」と名付けられました。これほどジャンル違いの音楽家たちが10年以上にわたって活動を続けていることには驚かずにはいられません。
 本来ならフル・オーケストラを必要とするラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を、3人で演奏するというアイディアがおもしろかったですよね。原曲が持つロシア流の濃密なロマンティシズムに代わって、清涼感のあるサウンドや、トリオならではの親密な雰囲気が生み出されていました。既存の曲から新しい魅力を引き出す。こういった大胆な編曲も、異ジャンル・コラボレーションの醍醐味といえるでしょう。

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