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神童が一流アーティストと共演する音楽会

投稿日:2020年01月25日 10:30

才能豊かな子供たちの姿って、まぶしいですよね。今週は個性豊かな神童たちが、それぞれトップレベルで活躍する大人のアーティストたちと共演してくれました。著名アーティストを前にしても、ものおじすることなく、のびのびと演奏する子供たちの姿が印象的でした。
 ナニワの高速ウクレレ少年こと、近藤利樹さんは、押尾コータローさんのギターと共演。すらりと長身の近藤さんですが、まだ12歳。ギターの奏法をウクレレに取り入れるなど、テクニックのすばらしさに加えて、楽しそうに弾く演奏姿がインパクト抜群。幼いころの映像が紹介されていましたが、ニコニコしながら弾く姿は今と変わりません。聴く人をハッピーにする力があります。
 富樫美玲さんと音葉さんは双子のヴァイオリニスト。ヴァイオリンは子供用の2分の1サイズで、表情もあどけないのですが、出てくる音は大人顔負け。ふたりでぴたりと息の合った演奏を披露してくれました。話しぶりも10歳とは思えないほどしっかりしていて、びっくりします。金子三勇士さんと共演したのはモンティの「チャールダーシュ」。チャールダーシュとはハンガリーの酒場で踊られた民俗舞曲のことで、哀愁を帯びたゆったりとした部分と、速いテンポの活発な部分とコントラストが特徴。ハンガリーと日本にルーツを持つ金子三勇士さんと共演するにはうってつけの曲でした。
 ドラムのよよかちゃんも10歳。思い切りがよく、ダイナミックでキレのある演奏姿に目が奪われます。ROLLYさんの熱い解説のおかげで、そのテクニックのすごさの一端が伝わってきたのではないでしょうか。バスドラムの「頭抜き三連符」の部分、ぱっと見ではなにをやっているのかわかりづらいでしょうが、解説を聞いてから見ると「ンタタ ンタタ……」がわかります。あまりに自然にできているので、解説してもらってはじめて凄さに気づきます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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高嶋ちさ子のわがまま音楽会~チェロ&ヴァイオリン!スーパーコラボスペシャル

投稿日:2020年01月18日 10:30

今週は高嶋ちさ子さんがプロデュースする2組のグループ、12人のヴァイオリニストとスーパーチェロ8のみなさんにご登場いただきました。曲はいずれも親しみやすい名曲ばかり。それぞれヴァイオリンとチェロによる華麗なテクニックが散りばめられていて、聴きごたえがありました。
 なかでも驚かされたのは、チェロの江口心一さんによる「熊蜂の飛行」ならぬ「ぐるん蜂の飛行」。ヴァイオリンの速弾きで人気の高いリムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」を、電動立ち乗り二輪車上で演奏する離れ技を披露してくれました。チェロで速弾きするだけでもすごいのですが、まさかあんなふうに回転しながら弾けるとは! 江口さんはこれまでにも番組で、通常の速弾きや、立って演奏する速弾き「立ちん蜂の飛行」を成功させてきましたが、驚異の新技が誕生しました。熊蜂→立ちん蜂→ぐるん蜂の「速弾き三部作」の完成です。
 最後に演奏されたエルガーの「威風堂々」は、高嶋ちさ子さんと12人のヴァイオリニスト、スーパーチェロ8の総勢21名によるアンサンブルでした。もうこれだけの人数になると、ほとんどオーケストラといってもいいくらいの音の厚みが出てきますね。
 「威風堂々」の作曲者はイギリスのエルガー。行進曲として書かれた曲ですが、中間部のゆったりしたメロディが特によく親しまれており、この部分のみを取り出して「希望と栄光の国」の題で歌われることもよくあります。もちろん「希望と栄光の国」とはイギリスを指しているのですが、日本人であっても曲が持つ威厳と高揚感に思わず背筋が伸びます。
 クライマックスではスーパーチェロ8が立ち上がって演奏。チェロが立って演奏する姿を彼らのほかに見たことはありませんが、ひょっとすると、これから流行するのかも!?

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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高嶋ちさ子のわがまま音楽会スペシャル

投稿日:2020年01月11日 10:30

今週は恒例となった高嶋ちさ子さんの「わがまま音楽会」。いま大人気の「高嶋ちさ子と12人のヴァイオリニスト」のコンサートを番組内で再現してお届けしました。パッヘルベルの「カノン」を筆頭に、だれもがどこかで耳にした名曲がぎっしり。「クラシックメドレー」では、5分弱でクラシックの超名曲が9曲も凝縮されていました。お客さんを楽しませるための工夫が随所に凝らされていました。
 おもしろかったのはヴァイオリンの聴き比べのコーナー。ひとつは数億円もするイタリアの名器、ストラディヴァリウス。もうひとつはわずか数万円のヴァイオリン。AとB、どちらがストラディヴァリウスだったか、分かりましたか。
 石丸さんと松尾さんで意見が見事に分かれてしまいましたが、これは簡単な問題ではないんですよね。AとBが「違う」ことはわかります。でも、どちらが「よい」かとなると、答えは自明ではありません。収録時には、AとBのどちらがストラディヴァリウスか、会場のみなさんに手を挙げてもらったのですが、ぱっと見たところでは五分五分に近い割れ方でした。
 最初に聴いたAは艶やかで豊か、そして陰影に富んだ音色だったと思います。これに比べると、Bは硬質で、くっきりしたストレートな音が鳴っていたのではないでしょうか。Aのほうがニュアンスが豊かだけれど、でもBのほうが明瞭ですっきりしていて好きだ、という感じ方もまったくおかしくありません。そもそもヴァイオリンはだれが弾くかが肝心。高嶋さんの技術があったから、数万円のヴァイオリンが美しく鳴り響いたとも言えます。
 最後の「天国と地獄」序曲は、通称「フレンチカンカン」として知られる名曲。振付までついて、華麗なショーになっていました。ヴァイオリンって、あんなに動きながらでも弾けるものなんですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ピアノ工場を楽しむ休日

投稿日:2020年01月04日 10:30

今週は静岡県掛川市のヤマハ掛川工場を訪れて、ピアノ製作の現場を見学させていただきました。
 ピアノは弦楽器や管楽器、打楽器などに比べると、格段に「機械」のイメージが強いと思います。「工房で作られる」というよりは、「工場で生産される」のがピアノ。一台8000点ものパーツから作られると聞くと、ますますそう感じます。
 しかしこうして工場の様子を見せていただくと、ピアノとは機械化された技術と人間の職人技の絶妙のバランスから成り立っているのだと痛感せずにはいられません。
 接着剤で長方形の板を何枚も重ねて貼り付けて、これを型にはめてピアノの側板を作る場面などは、まさに工場そのもの。洗練された技術の粋が込められているのでしょう。しかし、弦を張るのは手作業による重労働。マンツーマンで張り方を教わる職人技の世界です。
 もっとも印象的だったのは整音の場面です。この工程は習得に10年以上かかる熟練の技。ハンマーに針を刺す前と刺した後の音の比較がありましたが、ずいぶんと違っていましたよね。刺す前は硬くて金属的で、そっけない音がしていました。ところが針を刺した後は、一気に柔らかく、ニュアンスに富んだ音に。これが聴き慣れたピアノの音でしょう。
 おもしろいのは同じ工場でも職人によって微妙な差があるということ。職人の佐原さんが、3台のピアノのなかから自分が整音した1台を音だけを聴いて見事に的中する場面がありました。こういったことの積み重ねから、ピアノ一台一台の個性が生まれるのでしょう。
 藤田真央さんが最後に弾いてくれたのは、シューベルト~リスト編曲の「ウィーンの夜会」より。工場で作られたばかりのピアノに、魂が注入される場面を目の当たりにした思いがします。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ディズニーのプリンセス~アナと雪の女王の音楽会

投稿日:2019年12月21日 10:30

今週は「ディズニーのプリンセス~アナと雪の女王の音楽会」。スクリーンに映された本編の映像に合わせて、注目の若手女性奏者たちが「アナと雪の女王」の名曲を演奏するという趣向でお届けしました。
 ソリストにはモントリオール国際音楽コンクール第1位のヴァイオリニスト、辻彩奈さんをはじめとする豪華メンバーが集結。オーケストラのメンバーにもNHK交響楽団や東京交響楽団などで活躍する日本のトップレベルの奏者たちがそろいました。
 こうして聴いてみると、「アナと雪の女王」がいかに名曲に恵まれた作品であるかを改めて痛感します。「レット・イット・ゴー~ありのままで~」でエルサが自身の強大な力を開放する場面は、ディズニーが描く新時代のプリンセス像を表しているかのよう。「雪だるまつくろう」で描かれるアナの孤独には胸が締めつけられます。アナの喜びとエルサの不安が交錯する「生まれてはじめて」、期待感に満ちた「とびら開けて」、オラフのユーモラスなキャラクターを体現する「あこがれの夏」、いずれも音楽と物語が緊密に絡み合っていて、しかも思わず口ずさみたくなる曲ばかりです。
 作曲はクリステン・アンダーソン=ロペス、ロバート・ロペスのロペス夫妻。ふたりは「アナと雪の女王2」でも音楽を担当しています。この続編では、完成された脚本を読んでふたりが曲を作るのではなく、まずは監督のジェニファー・リーとクリス・バックと話し合いをしながらストーリーが作られ、ストーリーが変われば曲が変わり、曲が変わればストーリーも変わるような制作方法がとられたといいます。
 こうしてできあがった新曲が、エルサが歌う「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」。ディズニーに抜擢された中元みずきさんが、のびやかで芯のある声で歌い上げてくれました。新たな名曲の誕生です。

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音楽でスター・ウォーズを楽しむ休日

投稿日:2019年12月14日 10:30

いよいよ映画「スター・ウォーズ」の新作がまもなく公開されます。42年にわたる全9部作の完結編ということで、心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。
 この「スター・ウォーズ」シリーズで大きな役割を果たしているのが、ジョン・ウィリアムズの音楽。彼の名曲の数々がなければ、「スター・ウォーズ」がこれほどの名作になることはなかったでしょう。今回は「スター・ウォーズ」の音楽に隠された秘密を、指揮者の原田慶太楼さんに教えていただきました。
 原田さんがおっしゃっていたように、「スター・ウォーズ」はSF映画であるにもかかわらず、音楽はクラシック音楽の伝統に深く根差しています。特に顕著なのは、ワーグナーばりの「ライトモティーフ」(示導動機)の使い方。「ライトモティーフ」とは、特定のメロディがある人物や感情、現象などに結び付けられ、作品中にくりかえしあらわれるという手法を指します。ワーグナーはこの手法を代表作「ニーベルングの指環」などのオペラで活用して、音楽と物語を緊密に結びつけることに成功しました。
 こういった「ライトモティーフ」が活用された作品では、必ずしも聴く人がどのメロディが何のテーマかを知っている必要はありません。知らなくても、半ば無意識に曲と情景が結び付いて、なんらかの感情を引き起こすものだと思います。「スター・ウォーズ」の「メイン・タイトル」を聴くときに、ここは「ルークのテーマ」、ここは「反乱軍のテーマ」だ、などと意識しなくても、音楽によってふさわしいイメージが喚起されるのと同じことです。
 市川さんがお好きだという「フォースのテーマ」はホルンで奏でられていました。フォースとはごく限られた者が生まれ持つ超常的な力。このテーマがどこか物悲しく響くのは、フォースを持つ者に待ち構える過酷な宿命を暗示しているのでしょうか。

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フィギュアスケートの音楽会2019

投稿日:2019年12月07日 10:30

今週は毎年恒例の「フィギュアスケートの音楽会」。フィギュアスケートの演技映像に合わせて、独自の編曲が施された生演奏をお届けしました。
 近年、フィギュアスケートで使用される音楽もずいぶん多様化してきたなと感じます。フィギュアスケートで歌詞が入った音楽が解禁されたのは2014/15シーズンから。それ以前は、たとえばトリノ五輪でプッチーニの「だれも寝てはならぬ」を使用した荒川静香さんのように、たとえオペラ・アリアを使う場合でも、ヴァイオリン・ソロ用に編曲された音源を使っていました。その頃に比べると、今は本当に自由になりました。
 今回の楽曲のなかで、もっとも独自性が強いのは紀平梨花選手が使った「インターナショナル・エンジェル・オブ・ピース」でしょう。この曲は世界各地のさまざまな宗教音楽を組み合わせて編曲したというオリジナル曲。宗教の違いも時代も超越した音楽です。冒頭で登場するのは、中世ドイツの女子修道院長であり作曲家のヒルデガルト・フォン・ビンゲンの「おお、智慧の力よ」という曲。ヒルデガルトは作品が現在でも演奏される最古の女性作曲家と言えます。今回はメタル尺八や民族楽器を加えたマルチカルチャーなスタイルのアレンジで演奏されました。それにしてもメタル尺八、見た目に反してちゃんと尺八の音がするのにはびっくり。
 楽器のおもしろさという点では、羽生結弦選手の使用曲「オリジン」のウィンド・マシーンもインパクト抜群。現代であれば、風の音のような効果音はシンセサイザーで作れるわけですが、これを生の音で実現するのがウィンド・マシーン。風や嵐を表現した音楽は多いので、鈴木優人さんがおっしゃっていたように、意外と歴史のある楽器(?)です。ワーグナーの「さまよえるオランダ人」や、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・キホーテ」といった名曲にも使われていますので、耳にする機会は少なくありません。見ていると、自分もぐるぐると回したくなりますよね。

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管楽器職人に会いに行く休日

投稿日:2019年11月30日 10:30

今週は静岡県磐田市にあるヤマハ豊岡工場を訪問しました。ヤマハの管楽器製造の拠点である豊岡工場では、トロンボーンやサクソフォン、トランペット、フルートなどが作られています。
 音楽ファンのための工場見学といった趣でしたが、これはもう驚きの連続だったのではないでしょうか。まさか、あそこまで職人の手作りで楽器が作られていたとは!
 トロンボーンの製造工程では、まずイチョウ型をした真鍮の平らな板が出てきました。てっきりあれを機械で変形するのかと思いきや、よもやの手作業。職人が手で二つ折りにして、つなぎ目を溶接して、ハンマーで叩きながら丸い形に成形する。なるほど、これは職人技です。そして、楽器ごとにひとつひとつ個性があるということにも納得。手作りである以上、完全に同一の楽器はどこにもありません。
 サクソフォンの表面に彫刻が施される場面もおもしろかったですよね。こちらも機械化されているのかと思ったら、まったくの手作業。自作の工具まで使って、グリグリと表面を彫り進めます。「もしも失敗したらどうなってしまうんだろう……」とドキドキせずにはいられません。楽器工場では異色の工程といいましょうか、まるで工芸品を見ているかのようです。
 最大の驚きは、トロンボーンのスライド管をまっすぐに調整する力技。長さ70cmの管がわずか0.2mm曲がっただけでもNGという繊細さが求められる場面で、太腿を使ってグイッと手で曲げて、わずかなズレをなくしてしまいました。これは熟練の技でしょう。到底まねできるものではありません。
 最後は中川英二郎さんと上野耕平さんと豊岡工場のみなさんが「聖者の行進」を演奏してくれました。楽器を奏でる人と作る人との共演。なんだかいい雰囲気でしたよね。

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有名作曲家のひねりすぎた楽曲を楽しむ休日

投稿日:2019年11月23日 10:30

今週は作曲家たちがとびきり独創的な工夫を凝らした楽曲をご紹介いたしました。
 ハイドンの交響曲第45番「告別」は演奏される機会の多い人気曲です。ゲストの作曲家川島素晴さんが解説されたように、これは一種の「ストライキ」。長期出張中の楽員たちが家族のもとに帰りたがっていることを雇い主である侯爵に伝えるために、ハイドンは曲の終楽章にひとりひとり退出する仕掛けを作りました。ちなみに、このメッセージは正しく侯爵に伝わり、すぐに楽員たちには休暇が与えられたそうです。ホワイトな職場でよかったですね。
 アンディ・アキホのピンポン交響曲「リコシェ」は2015年に作曲されたばかりの作品。作曲者は1979年、アメリカ生まれ。以前、スティーヴ・ライヒが来日した際のトーク・セッションで、注目すべき若手作曲家として彼の名前を挙げたことがありました。そのライヒの古典的名曲が「クラッピング・ミュージック」。今回は拍手ロボット「ビッグクラッピー」が演奏してくれました。リズムのおもしろさという点で、ライヒとアキホの両作には一脈通じるところがあります。
 バッハの「逆行カノン」は、「音楽の捧げもの」と題された曲集のなかの一曲。バッハがフリードリヒ大王に面会した際、大王から与えられたテーマに基づいて作られたという曲集です。「逆行カノン」でもその大王のテーマが題材となっています。バッハの作曲技法にもびっくりですが、テーマをさらっとバッハに与える大王も相当な音楽的教養の持ち主なんですよね。
 ジョン・ケージの「Organ²/ASLSP」は怪作です。ASAP(As Soon As Possible)ならぬASLSP(As SLow aS Possible)。理論上は無限に遅く演奏できることになります。それにしても演奏に何百年もかかるとは。いったいだれが聴くんでしょうね……。

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低音楽器女子の休日

投稿日:2019年11月16日 10:30

大きなサイズの低音楽器は、男性が演奏するものと思われがちです。ところが最近では低音楽器を演奏する女性奏者が珍しくありません。今回はそんな低音楽器の女性奏者たちに集まってもらい、楽器の魅力や特徴、低音楽器ならではの苦労について語っていただきました。
 通常、ソロでもアンサンブルでも目立つのは高音楽器です。弦楽器ならヴァイオリン、木管楽器ならフルート、金管楽器ならトランペット。オペラでも主役はテノールかソプラノ。それなのに「目立ちたいから」という理由でコントラバスを選んだのがYu-Kaさん。ヴァイオリン奏者は大勢いるから、あえてコントラバスを選ぶという逆転の発想です。コントラバスは地味な楽器という先入観を覆して、華やかな演奏を披露してくれました。ボッテジーニの「夢遊病の女」による幻想曲での鋭く機敏な演奏にはびっくり。コントラバスって、ソロ楽器としても魅力的だったんですね。
 ふだん、ソロ楽器として聴くチャンスがないのはテューバも同じ。テューバの福本恵子さんはユーフォニアムの新井秀昇さんといっしょに「グリーンスリーブス」を演奏してくれました。低音楽器だからゴツい雰囲気になるのかと思いきや、マイルドで暖かみのある音色がノスタルジックな曲想とマッチしていて、新鮮な感動がありました。
 サクソフォンのなかで低音部を担うのはバリトンサックス。高尾あゆさんのお話にあったように、メロディと伴奏のどちらでも活躍できるという強みを持っています。豊かで深い響きが魅力的です。
 ファゴットも低音楽器でありながら、意外とソロの活躍も多い楽器と言えるでしょう。低音を生かしてユーモラスな味わいを出すこともできれば、愁いを帯びたメロディを奏でることもできます。福士マリ子さんが演奏してくれたのは、父親であり高名な作曲家である福士則夫作曲の「竜夢」。ファゴット一本だけでこれだけ多彩な表現が可能なんですね。

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