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辻井伸行と三浦文彰がモーツァルトを弾く音楽会

投稿日:2021年07月10日 10:30

今週は辻井伸行さんと三浦文彰さんをお招きして、モーツァルトの名曲に独自の題名をつけて演奏していただきました。
 モーツァルトのピアノ協奏曲第21番の第2楽章は、かつてスウェーデン映画「みじかくも美しく燃え」に使われたことから世界的に有名になりました。といっても1967年の映画ですから、今では知らない方がほとんどでしょう。海外のCDではたまにこの曲に「エルヴィラ・マディガン」という題が付いていることがありますが、これが「みじかくも美しく燃え」の原題なんですね。
 辻井さんはこの曲に静かな夜のイメージを感じ取って、「ノクターン」と題してくれました。清澄で抒情的なメロディで人気の高い名曲ですが、明るいばかりではなく、どこか内省的な雰囲気が漂っています。曲の陰影の豊かさが伝わってくる命名だと思いました。
 三浦文彰さんがソロを務めたのは、ヴァイオリン協奏曲第3番の第3楽章。三浦さんの命名は、みんなで乾杯するような音楽であることから「シャンパーニュ」。たしかにこの曲には浮き立つような、祝祭的な雰囲気が感じられます。この曲は少し風変わりな構成になっていて、途中でがらりと曲想が変わって、弦楽器のピッツィカートを伴奏に独奏ヴァイオリンがしっとりとしたメロディを奏でます。三浦さんの表現によれば「中休み」。優雅な舞曲風にも聞こえます。その後、「ふたたび乾杯して盛り上がる」部分で、民謡調のメロディが登場します(当時、ポピュラーだった「シュトラスブルガー」という民謡だと考えられています)。そして、また最初のメロディが帰ってきます。
 モーツァルトはどうしてこんな異質な曲想を途中に挟んだのでしょうか。たぶん、当時の人々には通じる何らかのユーモアが込められているのかなと想像するのですが、本当のところは知りようがありません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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