今週は番組60周年記念企画第6弾として、上野耕平さんとぱんだウインドオーケストラのみなさんをお招きして、吹奏楽の魅力に新たな角度から迫りました。
番組では以前より「吹奏楽を少人数でも楽しもう!」という発想のもと、7人制吹奏楽ブリーズバンドを提唱してきました。ブリーズバンドのベースにあったのは、7人全員がソリストであり、ひとりひとりが主役を務めるという考え方。今回はそのブリーズバンドの精神を生かしたまま、編成を22人へと拡大しました。指揮者は置きません。
上野さんたちの最初の挑戦は「とことん歌い上げる」こと。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」の第2楽章を吹奏楽アレンジで演奏してくれました。この曲はビリー・ジョエルの「THIS NIGHT」はじめ、さまざまな分野でカバーされていています。冒頭はサクソフォン四重奏ではじまり、次第にほかの楽器が加わって音色が変化してゆく様子が見事でした。情感豊かに歌い上げることで、この曲にあるノスタルジーの要素が浮き彫りになっていたと思います。
バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」では、「新たな音色を開発する」ことに挑戦。20世紀ハンガリーの作曲家バルトークは、東欧で採集した民謡をモダンな書法で生まれ変わらせることで独自の作風を築きました。土の香りと斬新さを両立するのがバルトークの音楽。今回は替え指やフラッタータンギングなどを用いることで、作品に新たな彩りが加えられていました。上野さんはソプラニーノ・サクソフォンも使用。濃厚で甘い音色が魅力的でした。
Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」では、「リズムに音色をつけて刻む」ことに挑戦。高速ラップが印象的な曲ですが、吹奏楽でもこんなに小気味よくて鮮やかな表現が可能なんですね。思わず踊り出したくなるような楽しさがありました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)