今週は第一線で活躍する音楽家のみなさんをお招きして、レコードについての思い出を語っていただきました。
今年9月、アメリカレコード協会は上半期の売上げについて、アナログレコードがCDを上回ったと発表しました。このニュースにはびっくりしましたね。背景にはストリーミングサービスなどの音楽配信が優勢になって、CDで音楽を聴く人が減ってしまったことがあるわけですが、レコードには依然として根強い支持があることがわかります。やはりレコードにはCDにない趣味性があるということなのでしょう。
服部隆之さんが持参したLPレコードは、ミシェル・ルグラン作曲の映画「火の鳥」サウンドトラック。「40年ぶりにLPレコードをかけた」とおっしゃる服部さんですが、レコードに針を落とす場面に懐かしさを覚えた方も多いのでは。レコードをかけるときって、緊張するんですよね。よく見ないと、思わぬところに針を落としてしまいます。自動で針を落としてくれるプレーヤーもありますが、やはりこの「儀式」のようなひと手間こそが、レコードの魅力でしょう。
レコードはCDよりもずっと手のかかるメディアです。盤面に埃が付いていたり傷があったりすると「パチパチパチパチ……」というスクラッチノイズが乗ってしまいます。棚にしまうときも注意しないと盤が反ってしまいます。なにかと手がかかるわけですが、それだけに一枚一枚への愛着がわいてきます。
石丸さんの「ヤマト愛」もひしひしと伝わってきました。1978年に公開された映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」サウンドトラック。これは懐かしいですね。そして、アルバムには収録されていなかったと石丸さんを落胆させた、テレビ版のエンディングテーマ「真赤なスカーフ」を、石丸さん、村治佳織さん、宮田大さんの演奏でお届けしました。なんともいえない寂寥感が漂ってくる、すばらしいアレンジ、そしてすばらしい演奏だったと思います。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)