今年5月5日、84歳で亡くなった作曲家の冨田勲さん。テレビや映画音楽の作曲家として、またシンセサイザー音楽の先駆者として、音楽界に大きな足跡を残しました。近年もバーチャルシンガーの初音ミクとオーケストラを共演させるなど、衰えることのない旺盛な創作意欲を発揮していました。
テレビ音楽で懐かしかったのは「新日本紀行」の音楽。これは名曲ですよね。尺八の音色が日本の原風景を思い起こさせます。「今日の料理」のテーマ曲はあまりに有名ですが、冨田勲作曲であることをご存じなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。急遽、番組のテーマ曲を作らなければならなくなり、たまたまそこに居合わせたのがマリンバ奏者とパーカッション奏者だったので、それに合わせて曲を書いたという逸話が知られています。あの軽快なマリンバのサウンドは偶然の産物でもあったんですね。
シンセサイザー音楽家としての冨田さんは日本よりも先にまずアメリカで高い評価を受けました。「月の光」「惑星」「火の鳥」など、クラシックの名曲をシンセサイザーで再創造し、だれも聴いたことがない音の世界を切り拓きました。最初期のシンセサイザーは楽器というよりは機材といったイメージが近いでしょうか。冨田さんがアメリカにシンセサイザーを発注したところ、電話の交換台のような装置が送られてきて、税関に楽器だと認めてもらえずに引き取るまでに苦労をしたといいます。
番組では初音ミクとオーケストラの共演が実現しました。初音ミクの歌唱部分は、あらかじめ録音した歌を再生してそれにオーケストラが合わせたのではありません。指揮者の棒に初音ミクの側が合わせています(もちろん人間の操作を介在してではありますが)。指揮台の横に2次元バーコードのような物が配置されていたのは、CGを合成させるためのマーカーなのだとか。こんなふうに舞台とCGの合成ができるんですね。可能性の広がりを感じます。
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冨田勲の音楽会
投稿日:2016年07月24日 09:30