今週はスタジオにU-zhaanさんと石若駿さんのおふたりの打楽器奏者をお招きしました。インドの打楽器タブラと、西洋楽器のドラム。同じ打楽器といっても、それぞれまったく違った世界が広がっていることに驚かされます。
タブラはほとんどの日本人にとってなじみの薄い楽器だと思いますが、思いのほか澄んだ音の美しさが印象的でした。龍さんが試しに叩いてみても音がしっかり鳴らなかったように、まず芯のある音を出すのが難しそうです。
U-zhaanさんの、タブラには楽譜がないというお話もおもしろかったですね。それぞれの音に呼び方があって、それを師から弟子へと伝える。しかも複数の音をひとつの呼び方であらわすこともある。そんな独自の体系をマスターしなければいけないというのですから、なるほど、これは習得困難な楽器だと納得できます。
一方、石若駿さんは若くしてジャズ・ドラマーとして才能を見出されながらも、東京芸大でクラシック音楽の伝統的な教育を受けたという逸材です。ジャンルの壁など軽々と超えてしまう大器として、注目を集めています。
そんな石若駿さんがビブラフォンを演奏してU-zhaanさんと共演したのが、マイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」。作曲はTOTOのオリジナル・メンバー、スティーヴ・ポーカロ。これは名曲ですね。マイケル・ジャクソンの原曲では、歌詞で歌われる「都会の喧騒のなかで味わう孤独」といった気分が寂しげな曲想ににじみ出ていますが、このタブラ&ビブラフォン・バージョンでは、空が白んで夜明けを迎えるような雰囲気が加えて感じられました。タブラとビブラフォンの音色が独特の浮遊感を醸し出していたのもよかったですよね。
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リズムを楽しむ音楽家たち
若き俊英たちの音楽会
今、日本の音楽界からは若くて優秀なアーティストが次々と登場しています。今週の「若き俊英たちの音楽会」では、3組のアーティストがそれぞれの個性を発揮してくれました。
ピアノの實川風(じつかわ・かおる)さんは昨年のロン=ティボー=クレスパン国際コンクールで第3位(1位なし)に入賞した新鋭です。ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」、本当にすばらしい演奏でしたよね。細部まで彫琢された緻密な演奏でありながら、音楽全体に勢いが感じられる堂々たる本格派のベートーヴェンでした。
実は収録より前に、東京・渋谷で實川風さんのリサイタルが開かれまして、そちらでも「ワルトシュタイン」が演奏されていました。プログラムにはほかにショパン、リスト、ドビュッシー、現代のピアニスト兼作曲家のヌーブルジェらの作品も並べられ、実に多彩。音楽的な視野の広さも感じさせます。将来が、というよりは、すでに次のリサイタルが楽しみなピアニストといってよいかもしれません。
篠笛の佐藤和哉さんは、佐賀県の「唐津くんち」のお囃子が最初の笛との出会いだったそうです。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」主題歌のモチーフとなった佐藤さんの「さくら色のワルツ」には、日本人の琴線に触れるようなノスタルジックな手触りと、今風の洗練されたテイストがともに感じられたのではないでしょうか。
驚きの打楽器アンサンブルを披露してくれたのは Ki-Do-Ai-Raku のみなさん。4人全員がスネアドラム(小太鼓)を叩くと聞いて、「うーん、なんだか変化に乏しい地味なアンサンブルになりそうだな」と思っていたら、まさかあんなにはじけたパフォーマンスを見せてくれるとは! スネアドラムにいろんな種類の奏法があるということにもびっくり。スネアドラムをササッと裏返す場面がありましたが、あんなふうに直接スネア(響き線)をスティックで叩くこともできるんですね。想像以上に表現力に富んだ楽器であることを再認識しました。