今週はひとりで演奏する「ソロ」の曲にスポットを当てました。
ヴァイオリンやチェロのような弦楽器はメロディを奏でる楽器なので、ほとんどの場合、ピアノ等の伴奏が付きます。弦楽器ひとりだけでは音楽にならない……と思いきや、その常識を覆したのがバッハ。さまざまな工夫を凝らして、ヴァイオリン1本、あるいはチェロ1本だけでも、十分に奥行きや立体感が伝わってくる音楽を書きあげました。その代表作が、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ、そして無伴奏チェロ組曲です。
バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータは、3曲のソナタと3曲のパルティータ(組曲の意)からなります。今回、三浦文彰さんが演奏してくれたのは、パルティータ第3番の「ガヴォットとロンド」。ヴァイオリン1本だけの演奏なのに、ときには和音が響いたり、2本のメロディが同時に鳴っているように聞こえませんでしたか。
無伴奏チェロ組曲は第1番から第6番までの6曲が書かれています。古川展生さんが第1番よりプレリュードとサラバンドを披露してくれました。特にこのプレリュードはCMなどでもよく使用される人気曲。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇中では、碇シンジがこの曲を弾いていました。
一方、ピアノはソロで弾く機会の多い楽器です。萩原麻未さんが選んだのはアメリカ民謡「シェナンドー」。これは意外な選曲でしたね。自分自身を見つめなおすような音楽という意味で、「ひとり」にふさわしい楽曲だったと思います。
TiAさんが歌ってくれたのは「アメイジング・グレイス」。伴奏なしで歌うことをアカペラと言います。アカペラとは本来「ア・カペッラ(礼拝堂風に)」。まさしく祈りの音楽になっていました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)