今週は反田恭平さん、小林愛実さん、務川慧悟さんをお招きして、3台ピアノの音楽会をお送りしました。
反田恭平さんと小林愛実さんのおふたりが共演するのは、ご結婚後、これが初めてだとか。最初に演奏してくれたのはシューマンの「小さな子供と大きな子供のための12の連弾小品」より第12曲「夕べの歌」。本当に息の合ったピアノで、反田さんと小林さんが音で対話を交わしているような演奏でした。
反田さんから見た小林さんは「自分の世界観を持った音楽家」。これには納得。小林さんの揺るぎないパーソナリティは聴衆にも伝わっていると思います。一方、小林さんから見た反田さんは「いつまでも少年っぽい音楽家」。おもしろい表現ですよね。その少年っぽさが音楽家としての反田さんの飽くなき探求心につながっているのかもしれません。
続いて演奏されたのはモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」の第3楽章。モーツァルトはたくさんのピアノ・ソナタを書いていますが、2台のピアノのために書いた完成作はこの一曲のみ。「のだめカンタービレ」で主人公のだめと千秋がこの曲を演奏したことから、一段と広く知られるようになりました。この分野の貴重な傑作です。軽快で歯切れ良く、生命力にあふれたモーツァルトでした。
務川慧悟さんは2012年の日本音楽コンクールで反田さんと並んで第1位を獲得。以来、反田さんとは同世代の盟友として信頼関係を築いています。反田さん、小林さん、務川さんによる3台ピアノで演奏したのは、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」。この曲は、まず2台ピアノのための作品として作曲され、続いてオーケストラ版が作られました。構想時からブラームスはオーケストラの響きを念頭に置いていたようです。今回は3台ピアノという珍しい編成による演奏でしたが、シンフォニックでスケールが大きく、オーケストラ版をほうふつとさせました。フィナーレは壮麗でしたね。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)