今回は宮田大さんと服部百音さんがおすすめする「新しいクラシック」をお楽しみいただきました。クラシック音楽を聴いているとつい忘れがちですが、どんな名曲であっても作曲された当時は最新の音楽だったはず。今回、演奏された曲は、いずれも現代の作曲家たちによる作品で「新しいクラシック」と呼ぶにふさわしい魅力を放っていたと思います。
1曲目はノルウェー出身のラルフ・ラヴランド作曲の「ソング・フロム・ア・シークレット・ガーデン」。宮田大さんが「明るくも暗くも聞こえる」とお話ししていたように、さまざまなニュアンスに富んでいます。情感豊かで、初めて聴く人にも懐かしさを感じさせます。
2曲目はポーランドのヴォイチェフ・キラル作曲の「オラヴァ」。キラルはポランスキー監督の「戦場のピアニスト」やコッポラ監督の「ドラキュラ」など、映画音楽の世界で成功を収めていますが、クラシックの分野にもたくさんの作品を残しています。この「オラヴァ」や交響詩「クシェサニ」などが、すでに日本のオーケストラでも演奏されており、まさに「新しいクラシック」と言ってよいでしょう。「オラヴァ」は躍動感にあふれて爽快。聴いていて広大な風景が目に浮かんでくるかのよう。
3曲目はブラジルのハダメス・ニャタリ作曲の「チェロとギターのためのソナタ」第1楽章より。この曲はチェロとギターという楽器の組合せが斬新です。ラテン的なムードが色濃いのですが、即興部分が入るなど、先の予測がつかないおもしろさがありました。
4曲目はトルコのファジル・サイによる「クレオパトラ」より。世界的ピアニストとして知られるサイですが、作曲活動も活発です。「クレオパトラ」は国際ヴァイオリン・コンクールの課題曲として委嘱されました。超絶技巧を用いたエキゾチックな楽想がイマジネーションを刺激します。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)