今週は番組放送2800回記念シリーズの第4弾として、反田恭平さんとジャパン・ナショナル・オーケストラのみなさんに登場していただきました。
最初に反田さんが演奏してくれたのは、ショパンの「猫のワルツ」。ショパンのワルツといえば「小犬のワルツ」が有名ですが、「猫のワルツ」もあるんですね。猫が鍵盤の上に飛び乗って走り回っているかのような様子を連想させることから、この愛称が付いたといいます。俊敏だけれど優雅な楽想を持った曲なので、なるほど、猫の愛称はふさわしいのかも。クラシックには猫に関する名曲は意外と少ないので、貴重な一曲です。
かねてより反田さんは、海外から留学生がやってくるような音楽学校を日本に設立したいと語っています。音楽学校には第一級のオーケストラが必要であるという考えから2021年に設立されたのが、ジャパン・ナショナル・オーケストラ。若い精鋭が集まった腕利き集団で、株式会社として設立されるなど、従来とは違った発想から運営され、話題を呼んでいます。
今回は反田さんがジャパン・ナショナル・オーケストラを指揮しながら、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を演奏してくれました。このようにピアニストがソロを弾きながら指揮をすることを「弾き振り」といいます。特にベートーヴェンやモーツァルトの時代のような比較的小編成のオーケストラの場合、ピアニストが指揮者を兼ねることは決して珍しいことではありません。「弾き振り」であれば、ピアニストの作品解釈をオーケストラとより直接的に共有し、同じビジョンのもとで作品に向き合えるのが利点と言えるでしょう。
テロップで反田さんの作品解釈が示されていましたが、具体的なイメージで表現されていて、とてもわかりやすかったと思います。第2楽章は祈りの音楽。この瞑想的な第2楽章と、喜びがはじける第3楽章のコントラストは実に鮮やか。オーケストラが立奏しているのもカッコよかったですよね。生命力と高揚感にあふれた見事な演奏でした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)