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辻井伸行が挑むカプースチンの音楽会

投稿日:2023年02月11日 10:30

今週は辻井伸行さんの演奏でカプースチンの音楽をたっぷりとお楽しみいただきました。ニコライ・カプースチンは1937年、ウクライナ生まれ。2020年まで存命だった現代の作曲家、ピアニストです。
 カプースチンはモスクワ音楽院でピアノを学ぶ一方、ラジオ放送「ヴォイス・オブ・アメリカ」を通じてジャズへの関心を深め、やがてジャズ・オーケストラの一員として活動するようになりました。早くから作曲にも取り組んでいましたが、作曲家として国際的に知られるようになったのは比較的近年のこと。超絶技巧の持ち主として知られるマルク=アンドレ・アムランら、世界的に著名なピアニストがカプースチンの音楽を演奏したことで、次第にカプースチンをレパートリーとするピアニストが増えてきました。レコーディングでも、今ではずいぶんたくさんのアルバムがリリースされています。
 カプースチンの音楽はぱっと聴いた感じでは、ジャズのように思えるのですが、実は即興演奏ではなく、通常のクラシックの楽曲と同様にすべての音が記譜されています。その点ではクラシックの名曲と変わりありません。しかも、辻井さんのお話にもあったように、ジャズのみならず、さまざまなジャンルの音楽の語法が取り入れられています。結果として、ジャンルを超越した独自の音楽になっていると思います。
 今回、辻井さんが演奏してくれたのはカプースチン作品のなかでもとりわけ人気の高い「8つの演奏会用エチュード」からの5曲。躍動感あふれるすばらしい演奏で、カッコよかったですよね。この曲は「エチュード」(練習曲)と題されてはいるものの、前奏曲で始まって「トッカティーナ」「間奏曲」等々、さまざまな性格の小曲が続くという構成になっており、バロック時代の古典組曲を思わせます。古典的な外枠に、スウィングやロック、ブギウギといった要素が自由に盛り込まれているところがおもしろいと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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