寒い日が続いていますね。今週は、こんなときこそじっくりと味わいたい冬の名曲をお届けしました。
一曲目は「石焼きいも」。この歌、だれが作った曲なのかはわかりませんが、だれもがどこかで耳にしている曲だと思います。今回は上野耕平さんのソプラノサクソフォンと堀内優里ストリングスによる演奏で、かつてない詩情豊かな「石焼きいも」を聴くことができました。ノスタルジーを刺激されます。
ヴァイオリニストの荒井里桜さんが選んだ冬の曲は、ヴィヴァルディの協奏曲集「四季」より「冬」。この曲集は各曲にソネットが添えられており、詩の情景がそのまま音楽で描写されているという珍しい作品です。春夏秋冬、すべての曲が名作だと思いますが、とりわけ「冬」の季節感は際立っています。寒さに震えたり、歯がガチガチしたり……。そんな「寒い」というネガティブな感覚を、これだけ豊かで生気に富んだ音楽で伝えてしまうところがヴィヴァルディの並外れたところでしょう。
サクソフォンの上野耕平さんが選んだのは、松任谷由実の「BLIZZARD」。映画「私をスキーに連れてって」挿入歌に用いられ、スキー場へ行く列車のCMでも使われていました。上野さんのアルトサクソフォンのまろやかな音色がたまりません。特殊奏法を用いたイントロの「吹雪」も効果的でしたね。
ピアニストの福間洸太朗さんが選んだのはドビュッシーの組曲「子供の領分」より第4曲「雪は踊っている」。この組曲はドビュッシーの幼い娘シュシュに捧げられています。ドビュッシーは43歳でエンマ・バルダックとの間に初めての子、シュシュを授かり、娘を溺愛したといいます。「雪は踊っている」で描かれるのはひらひらと雪が舞う幻想的な情景で、聴く人にさまざまなイメージを喚起します。まるで父親が娘に絵本を読み聞かせているような楽曲だと思います。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)