木琴ほど「知っているようで知らない楽器」と呼ぶにふさわしい楽器はないかもしれません。おもちゃの楽器や教育用楽器として触ったことのある方は多いはず。でも、シロフォンとマリンバの2種類の違いがなにかと言われると考えこんでしまいます。番組冒頭で演奏された「チョップスティック」でわかりやすく比較されていましたが、乾いたシャープな音がシロフォン、柔らかく深みのある音がマリンバなんですね。
シロフォンがヨーロッパ出身、マリンバがラテンアメリカの出身の楽器だというお話も興味深いと思いました。どちらかといえば身近に感じていたのはマリンバのほうだったのですが、よく考えてみると、クラシックの有名曲で出番が多いのはシロフォンのほう。サン=サーンスの「動物の謝肉祭」や「死の舞踏」、ショスタコーヴィチの交響曲第5番、ストラヴィンスキーの「火の鳥」、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」など、みんなシロフォンが使われています。マリンバですぐに思いつくのはライヒの「ナゴヤ・マリンバ」など、現代の曲が多いような気がします。
カバレフスキーの「道化師のギャロップ」やハチャトゥリャンの「剣の舞」といった曲は、運動会でもよく使用される曲です。シロフォンの歯切れよく軽快な響きが運動会にぴったりということなのでしょう。カバレフスキーはもともとは児童劇のための組曲として「道化師」を作曲しました。そう考えると学校の運動会に使われるのも無理はないのかも。一方、ハチャトゥリャンの「剣の舞」はバレエ「ガイーヌ」の一場面。こちらはサーベルを持った戦いの踊りを表現した音楽です。後ろから追い立てられるようなムードがあって、やはり体を動かしたくなります。
「実験!もしもシロフォンでヴェルディのレクイエムを演奏したら?」には爆笑。あの重々しく恐ろしい音楽が、すっかり陽気な音楽に変身していました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)