もしもクラシックの大作曲家が人気Jポップをアレンジしたら……? そんな遊び心からスタートした好評企画第6弾、今回は「海の協奏曲の音楽会」をお届けしました。
それぞれの楽章の最大の聴きどころはカデンツァ。協奏曲にはソリストが単独でソロを弾く見せ場が用意されています。ソリストはヴァイオリンの辻彩奈さん、チェロの伊藤悠貴さん、ピアノの髙木竜馬さん。いずれも国際コンクール優勝の経歴を誇る実力者たちです。第一線で活躍する若く優秀なソリストたちが気持ちのこもったソロを披露してくれるのですから、贅沢というほかありません。
第1楽章は、もしもロッシーニが松田聖子「青い珊瑚礁」をアレンジしたら? 「ウィリアム・テル」序曲のギャロップに「青い珊瑚礁」が組み合わされる意外性がおもしろかったですよね。途中から「セビリアの理髪師」序曲も加わって、一気にオペラ風の雰囲気に。ロッシーニの得意技、反復的なクレッシェンドも飛び出して、大いに盛り上がりました。
第2楽章は、もしもドビュッシーがピンク・レディー「渚のシンドバッド」をアレンジしたら? これも意外な組み合わせでしたが、ドビュッシーの代表作といえばなんといっても交響詩「海」。繊細な響きの移ろいのなかに、淡く夢幻的な「渚のシンドバッド」が溶け込んでいました。
第3楽章は、もしもグリーグが「およげ!たいやきくん」をアレンジしたら? ノルウェーの作曲家グリーグのピアノ協奏曲は、ティンパニのトレモロで始まるドラマティックな冒頭で有名です。まるでフィヨルドに注ぐ滝のよう。そんな雄大な光景で、すいすいと泳いでいるのがたいやきくん。途中からは同じくグリーグの「アニトラの踊り」も加わってエキゾチックなムードを醸し出し、最後は大迫力の「山の魔王の宮殿にて」でフィナーレを迎えました。頭から尻尾まであんこがたっぷり詰まったたいやきのような濃密な音楽でした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)