今週は先週に引き続き、各分野で活躍するトップレベルの音楽家のみなさんに、レコードの思い出を語っていただきました。名盤がいくつも登場して、懐かしかったですね。
宮田大さんが選んだのは、シンセサイザーの第一人者、冨田勲の組曲「惑星」。これは歴史的名盤といってもいいでしょう。初期のアナログ・シンセサイザーの可能性を極限まで追求した先駆的な野心作です。原曲はイギリスの作曲家ホルストのオーケストラ曲。ホルストがイメージしていたのは占星術的な意味での惑星でしたが、冨田勲さんのシンセサイザーによってSF的なイメージの楽曲に生まれ変わっていました。チェリストの宮田さんが「このアルバムから物語性を踏まえた音楽表現を心がけるようになった」とおっしゃるのには納得。冨田さんの「惑星」には、まるで宇宙空間を旅するようなストーリー性があるんですよね。
村治佳織さんの「ハイフェッツ・オン・TV」、こちらも名盤です。完璧な技巧により神格化されていたハイフェッツですが、すでに第一線を退いていたところにフランスのテレビ局からのオファーを受けて、70歳にしてこの演奏が実現しました。テレビ収録と並んで、このレコードが制作されたので「ハイフェッツ・オン・TV」というタイトルが付けられています。
服部隆之さんが挙げたのは映画「アンタッチャブル」サウンドトラック。これが「半沢直樹」に影響を与えていたとは! 作曲は「ニュー・シネマ・パラダイス」で知られるエンニオ・モリコーネ。服部さんの「ハーモニカにマカロニウエスタンの味が少し出ている」という解説には目から鱗が落ちました。
最後に演奏された「テーマ・オブ・半沢直樹~Main Title~」は、この日のためのスペシャルアレンジ。日本を代表する名手たちがずらりと顔をそろえました。このクォリティの高さ、カッコよさ、そして格調の高さ。最高の「半沢直樹」でした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)