今週は先頃グラミー賞にノミネートされて話題を呼んだジャズ作曲家、挾間美帆さんをスタジオにお招きしました。グラミー賞といえばアメリカの音楽産業でもっとも栄誉ある賞。そんなグラミー賞に日本人がジャズの分野でノミネートされたのですから、見事というほかありません。
挾間さんがノミネートされたのは「ラージ・ジャズ・アンサンブル」部門。本日の演奏でも挾間さんがアンサンブルを指揮していましたが、弦楽器にピアノ、トランペット、ホルン、ドラムが加わった編成で、とても音色のバリエーションが豊富だったのが印象的でした。一曲目の「RUN」のようにヴァイオリンのソロが活躍する場面があるなど、ジャズバンドでありながらもオーケストラ的な性格を多分に備えているのがおもしろいところ。作曲家が自らアンサンブルを指揮して自作を演奏するのも、モーツァルトやベートーヴェンらクラシックの作曲家がしていたことと変わりありません。その意味でも「ジャズ作曲家」という言葉はしっくりきます。
グラミー賞はポップ、ロック、ジャズ、クラシック、ミュージカル等々、あらゆる音楽のジャンルを対象とした賞です。受賞者を選ぶのはレコーディング・アカデミー。録音された音楽が対象となります。「グラミー」とはなんのことか、ご存じでしょうか。グラミー賞のロゴマークには蓄音機のイラストが使われていますが、グラミーとはグラモフォン(蓄音機)からできた言葉で、元来はグラモフォン賞だったわけです。イギリスのクラシック音楽雑誌にも「グラモフォン賞」がありますが、言葉の由来としては同じなんですね。
恩師山下洋輔さんが語ってくれた挾間さんのエピソードは痛快でした。山下さんをして「鬼バンマス」と呼ばれる挾間さん。自分の音楽を貫き通す姿勢が伝わってきます。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)