今週は世界的なピアニストで、国際音楽コンクール世界連盟役員理事も務める小川典子さんをお招きして、世界の音楽コンクール事情についてお話をうかがいました。
音楽コンクールの役割はなんといっても有望な新人の発掘。よく勘違いされがちなのですが、スポーツの世界選手権やオリンピックのような世界一を決めるための大会ではありません。だから「30歳まで」とか「35歳まで」といったように年齢制限があるのが普通です。コンクールはゴールではなく、スタート。小川典子さんのおっしゃる「この人をもう一回聴くために私はチケットを買うかどうか」という選考基準が、コンクールの意義を言い尽くしているように思います。
若い演奏家にとって、コンクールで入賞することには大きな意味があります。有名なコンクールで入賞すれば、アーティストは自分のプロフィールにその受賞歴を書くことができます。あ、この人はこのランクのコンクールで優勝できるほどの実力があるんだな。そんなふうにプロフィール欄を通して、聴衆や音楽関係者に興味を持ってもらえます。また、賞の副賞として演奏会への出演機会も得られますので、そこで培われる経験や人脈が大きな価値を持つ場合も少なくありません。
小川典子さんによれば世界には約800ものピアノの国際コンクールがあるのだとか。大変な数ですよね。若い音楽家たちがコンクールで実力を競い合っているという裏側には、コンクールの側もすぐれた優勝者を出すために競い合っているという言い方もできるでしょう。数あるコンクールのなかでも、ショパン国際ピアノ・コンクールが最高峰に挙げられるのは、過去にアルゲリッチやポリーニ、ツィメルマンといった優勝者がいるからこそ。ふさわしくない人に1位を与えてしまうと、コンクールの価値が問われかねません。ときどき見かける「1位なしの2位」というコンクール特有の表現からは、そんな微妙なニュアンスが漂ってきます。
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世界の音楽コンクールを知る休日
投稿日:2019年03月09日 10:30
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