今週は気鋭の若手指揮者、川瀬賢太郎さんの大切な一曲、ドヴォルザークの「新世界より」をお届けいたしました。
新世界、すなわちアメリカへとドヴォルザークが旅立ったのは1892年のこと。アメリカにも本格的な音楽院が必要だと考えた富豪の夫人ジャネット・サーバーが、ニューヨークに音楽院を設立し、その院長にドヴォルザークを招いたのです。当初、ドヴォルザークはこの話には乗り気ではなかったようです。しかし、サーバー夫人が破格の報酬を申し出たこともあり、交渉を重ねた末にドヴォルザークはアメリカ行きを決意しました。
なにしろ19世紀のことですので、現代のようにジェット機で飛んでいくことはできません。ヨーロッパからアメリカへ、船で12日間を要する船旅でした。
アメリカに渡ったドヴォルザークは、黒人霊歌や先住民の音楽に出会い、大きな関心を寄せました。そんな音楽的な刺激から誕生したのが「新世界より」。第2楽章のノスタルジックなメロディはよく知られています。まるで民謡のように自然で滑らかなメロディですよね。これがアメリカ風と言われればそんな気もしますし、一方でドヴォルザークの故郷であるチェコ風と言われればそうなのかなとも思えます。日本では「遠き山に日は落ちて」(家路)といった歌詞で唱歌として愛唱されているように、日本語ともよくなじみます。アメリカでもGoin’ Homeの題で歌詞付きで出版されています。望郷の音楽というものは全世界共通なのかも?
ドヴォルザークは鉄道マニアとしても知られていました。蒸気機関車に魅せられて、駅を訪ねてはその様子を何時間も眺めたり、列車の時刻表や運転手の名前まで暗記していたといいます。川瀬さんが第4楽章冒頭を蒸気機関車が発進する音楽とおっしゃっていましたが、これには納得。徐々にスピード感を増していく様子が実にスリリングです。当時の最新テクノロジーへの憧れが反映されているのでしょうか。
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指揮者が愛する「新世界より」の音楽会
投稿日:2018年08月04日 10:30
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