今週はムソルグスキー作曲、ラヴェル編曲の「展覧会の絵」をお聴きいただきました。藤岡幸夫さんによる思い入れたっぷりの解説が熱かったですよね。ムソルグスキーが作品に込めた親友ガルトマンに対するさまざまな気持ちが伝わってきました。この曲が単なる音で描いた絵画ではなく、深い悲しみの念が込められたエモーショナルな作品であるということは、ラヴェルの編曲があまりに華やかなのでつい忘れがち。藤岡さんのお話を聞いて、一段と曲への共感が深まったように思います。
「展覧会の絵」はかなり特異な経緯で広く知られるようになった作品です。もともとこの曲はピアノ独奏曲として書かれたのですが、ムソルグスキーの生前にこの曲が成功を収めることはありませんでした。作曲者の死後、フランスの作曲家ラヴェルがこの曲をオーケストラ用に編曲してから、「展覧会の絵」は世界的に有名な曲になったのです。オリジナルよりも他人によるアレンジのほうがよく知られていて、なおかつコンサートのメイン・プログラムになるような大規模な作品は、クラシック音楽の世界では稀有な存在です。ラヴェルの編曲がヒットしたおかげで、ムソルグスキーの原曲も次第に知られるようになりました。
実は「展覧会の絵」には、ラヴェル以外にもさまざまな編曲が存在します。レオポルド・ストコフスキ版、ヘンリー・ウッド版、セルゲイ・ゴルチャコフ版、レオ・フンテク版など、いくつものオーケストラ編曲があります。ラヴェルの編曲が圧倒的に高い人気を誇ることはまちがいありませんが、指揮者によっては珍しい版を用いたり、自分自身の編曲を使うこともあります。また、シンセサイザーを用いた冨田勲版や、プログレのエマーソン・レイク・アンド・パーマー版といったジャンルを超越した編曲も存在します。ムソルグスキーの原曲には、他のアーティストの創作意欲を刺激する特別ななにかがあるのでしょうか。
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展覧会の絵を味わう音楽会
投稿日:2018年05月19日 10:30
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