寄り添いたいとは思うけれど
2026年07月25日

 最近の高市さんのあれこれ。どう理解すべきか悩む。
 茶化して済むものでもないとは思うのだが、うまい言葉が見つからない。だからといって突き放してしまっては彼女に対して逆に冷たい気もする。
 ではどうするか。まずは心情として高市さんに寄り添ってみることにする。相手の立場になって想像力を働かせることは、人としてあるべき姿のひとつだ。

 その格好の材料を提供してくれたのは高市さん自身だ。「海の日」の祝日だった7月20日のXへの長文投稿の一部を引用する。
 「平日は、公邸に戻ってから、風呂掃除、入浴、夕食、夕食後の洗い物、洗濯、簡単な掃除まででプライベートな時間は精一杯で、後の深夜時間帯は明け方まで官邸から持ち帰りの資料読みや国会答弁資料読みに追われます」のだそうだ。
 だから「今日のお休みは本当に有難く、久々に5時間も睡眠を取れた上(総理就任以来、0時間~3時間睡眠が常態化)、昼からは、手付かずだった大量の洗濯後のアイロンかけと、お裁縫(スカートの裾のほつれのまつり縫いやジャケットの緩んだボタンの補強)を一気に処理」したとある。

 まずは睡眠時間だ。
 実は僕もあまり睡眠時間が長い方ではない。年齢を重ねてからはなおさらで、悩みの種でもある。先々週、夏休みをもらっていた間はさすがにリラックスしたのか、比較的ゆっくり眠ることができたのだが、仕事に戻ってからはまた睡眠の質が落ちた。「エムバペ」と言えずに番組中で3回も噛んでしまったとか、くよくよ考えた挙句に眠りに落ちそこねる。
 僕の場合はせいぜいその程度のことではあるけれど、国の最高責任者のストレスたるや、比べものにならないだろう。眠れないときもあるだろうし、ボヤキたくもなるだろう。

 ボヤキ…いや待てよ。文面をよく読むと、高市さんは別にボヤいているわけではなさそうだ。(総理就任以来、0時間~3時間睡眠が常態化)というカッコ書きの部分に、ぴえんと軽く絵文字でもつけてくれればボヤキに聞こえなくもないが、この体言止めは強烈で、いきなり速球をみぞおちに食らったような威力がある。久々に5時間の睡眠を取れたことが嬉しそうではあるものの、果たして喜ばしいことなのかどうか。

 改めて投稿を読み直すと、僕だけかもしれないが、なんだか妙に引っかかる言葉があった。まつり縫い…
 まつり縫いを知らないわけではない。小学生の時に習った覚えがある。だが、上手にできた記憶はなく、その時以来、半世紀以上にわたって僕はまつり縫いなるものをしたことがない。だからまつり縫いができる高市さんに、すっかり畏敬の念を抱いてしまった。
 そこで、たまたま韓国ドラマに見入っていた妻に聞いてみた。「まつり縫いって、難しいんでしょ?」。「なんで?」と怪訝な表情で聞き返す妻に、「高市さんが、まつり縫いでスカートの裾を直したって投稿してるんだ。へえ、と思ってさ」と説明すると、妻は「ふーん。まつり縫いなんて、別に難しくもなんともないわよ」と気のない返事である。
 これ以上会話が進みそうにないので所在ない気分になり、ぐっすり眠りこけているコタローのそばで一緒に寝転ぶことにした。まつり縫いにいそしんだという高市さんの心情に、十分寄り添うことはできなかった。残念。

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 それにしても、と閉会したばかりの国会について考えてみる。
 皇室典範の改正は、男系男子の皇統をしゃにむに守りたいという人たちのこだわりが露骨に反映された。高市首相が強く念願した国旗損壊罪の創設は、そもそもいま法制化する必要性が全く見えないままだった。お子様ランチの日の丸なら多少傷つけても構わないとかいう説明は、僕にはほとんど理解不能だった。そして会期末ぎりぎりまでもめた副首都構想の関連法は、日本維新の会への義理立てのために国会を振り回した面が否めない。とにかく、終盤国会は高市与党の強引な国会運営が目についた。そのやり方には、どうにも共感できない。
 そして、国民生活を苦しめる物価高対策の議論のうち、首相肝いりの飲食料品の消費税引き下げは、「国民会議」なるもので与野党を巻き込むはずが、議論は空中分解してしまった。そもそも社会保障財源は大丈夫なのかという疑問には全く答えが示されておらず、僕はこの宙ぶらりんの消費税論議にまったく共感できない。

 いけない。「まったく共感できない」とか、ちょっとエキサイトしてしまった。反省しなければ。
 そもそも今回のコラムは、高市さんに心情面で寄り添ってみようという書き出しだった。冬の衆議院選挙で圧倒的な支持を集めたのが現政権である。支持率は低下傾向とは言え、まだまだ高水準だ。支持されるのには理由があるはずだ。高市首相がやりたいことを、できるだけ理解する努力を続けようと思う。

 とはいえがんばって寄り添うのもくたびれたので、気分を変えようとスマホを眺めていると、1枚の写真が目に留まった。サッカーW杯で優勝したスペイン代表が、高々とトロフィーを掲げる歓喜の場面である。その向かって右端には、トランプ大統領が映り込んでいた。
 VTRでも何度も見た場面である。退席をそれとなく促されながら、それでも選手たちのグランドフィナーレに映り込もうとした悪あがきの結果がこの1枚だ。脳内で何かがパチンとはじけたような気がした。

 最高権力者の振る舞いは、個人の行儀の問題にとどまらず、国家の品格に関わってくる。人格面で高市さんをトランプ大統領と同一に論じるつもりはないが、自分のこだわりにしか目がいかず、国の政治を力技で動かすのだとすれば、写真に納まったこの偉大な反面教師と大差ないことになってしまう。高市さんにはそんな風になってほしくない。
 だから視野狭窄にならないための基本動作として、まずはちゃんと寝て休んでほしい。しっかり人に任せることをしてほしい。「忙しいアピール」で同情バリアを作るのではなく、書類の山を盾にするのでもなく、正々堂々と世の中と対峙する心構えで日常を送るべきだ。
 いろいろあった国会の、結局はこれが最大の教訓なのだと思う。

(2026年7月25日)

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