「ジャケ買い」、皆さんはしたことありますか??
アーティストも曲もまったく知らないのに、
ジャケットの印象だけでCDを買う、「ジャケ買い」。
近頃はもっぱら音楽はストリーミングで聴いてしまっていますが、
昔はしょっちゅうしていたなぁ。
お金の無駄だった・・・と後悔することもしばしば。でも、
その中でたまぁーに、「運命の出会い」が、あったりするんですよね。
今このCDに出会えたことが奇跡・・・!と感じるような。
その感覚が、大好きでした。
忘れられない「ジャケ買い」があります。
2011年でした。
3月11日、あの東日本大震災に見舞われた日本。
こんなに先が見えないと感じたことはありませんでした。
すべてがひっくり返ったような感覚。
それから毎日、手探りで報道に向き合うものの、
あまりに自分はちっぽけで、
無力感を痛く覚えることばかりでした。
そんな中、夏のある日、ぶらりと入ったCDショップ。
音が縦横無尽に飛び交い、カラフルな装丁が居並ぶ中、
その一枚に体ごと、吸い込まれるようでした。
Bon Iverというアメリカのフォークバンドのアルバム。
真っ白のキャンパスに描かれたその風景は
どこかもの悲しさをまとっていて、
でも優しく、澄んでいて。
哀しみと痛みと、赦しと癒しが
奇妙に同居するようなそのジャケットは、
その時の私に、傷ついた冬の東北を思い起こさせて、
視聴もせず、そのままレジに直行したんです。
デッキに入れて、再生したとき、
奇跡みたいに感じました。
険しいけもの道を流れて雪解けを誘う沢の水のような、
冬の終わりの夕暮れ時に頬をかすめていく春の風のような、
無理なく清らかに滑らかに凍てついた静寂が綻んでいくような、
生きているものを包み、生きていたものの魂を鎮めてくれるような・・・。
それは初めて聴く音で、心から感動したのを覚えています。
それから東日本大震災に関連する取材に出かけるときや、
あの頃のことを思い出したいときには必ず聴いています。
もうすぐ、震災から5年が経ちます。
まだ5年、もう5年・・・角度によってその捉え方は前者にも後者にもなり得ますが、
時間とともに、記憶は薄れていくことは確かです。
そんな時、イメージや音は、記憶のスイッチを押してくれますよね。
忘れたくないことを忘れないように、聴き続けたい音楽です。