鎮魂歌
2016年02月19日

「ジャケ買い」、皆さんはしたことありますか??
アーティストも曲もまったく知らないのに、
ジャケットの印象だけでCDを買う、「ジャケ買い」。
近頃はもっぱら音楽はストリーミングで聴いてしまっていますが、
昔はしょっちゅうしていたなぁ。
お金の無駄だった・・・と後悔することもしばしば。でも、
その中でたまぁーに、「運命の出会い」が、あったりするんですよね。
今このCDに出会えたことが奇跡・・・!と感じるような。
その感覚が、大好きでした。

忘れられない「ジャケ買い」があります。
2011年でした。
3月11日、あの東日本大震災に見舞われた日本。
こんなに先が見えないと感じたことはありませんでした。
すべてがひっくり返ったような感覚。
それから毎日、手探りで報道に向き合うものの、
あまりに自分はちっぽけで、
無力感を痛く覚えることばかりでした。

そんな中、夏のある日、ぶらりと入ったCDショップ。
音が縦横無尽に飛び交い、カラフルな装丁が居並ぶ中、
その一枚に体ごと、吸い込まれるようでした。

写真

Bon Iverというアメリカのフォークバンドのアルバム。
真っ白のキャンパスに描かれたその風景は
どこかもの悲しさをまとっていて、
でも優しく、澄んでいて。
哀しみと痛みと、赦しと癒しが
奇妙に同居するようなそのジャケットは、
その時の私に、傷ついた冬の東北を思い起こさせて、
視聴もせず、そのままレジに直行したんです。

デッキに入れて、再生したとき、
奇跡みたいに感じました。
険しいけもの道を流れて雪解けを誘う沢の水のような、
冬の終わりの夕暮れ時に頬をかすめていく春の風のような、
無理なく清らかに滑らかに凍てついた静寂が綻んでいくような、
生きているものを包み、生きていたものの魂を鎮めてくれるような・・・。
それは初めて聴く音で、心から感動したのを覚えています。

それから東日本大震災に関連する取材に出かけるときや、
あの頃のことを思い出したいときには必ず聴いています。

もうすぐ、震災から5年が経ちます。
まだ5年、もう5年・・・角度によってその捉え方は前者にも後者にもなり得ますが、
時間とともに、記憶は薄れていくことは確かです。
そんな時、イメージや音は、記憶のスイッチを押してくれますよね。
忘れたくないことを忘れないように、聴き続けたい音楽です。

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