小川彩佳-番組公式ブログ

Singin’ in the Rain
2014年11月06日

雨だけど気分のいい日は、
控えめに水たまりに足を突っ込みながら、
やっぱりいつも口ずさんでしまいます。
名作「時計仕掛けのオレンジ」でのあまりにシュールで残酷な使いっぷりに、
巨匠スタンリー・キューブリックを本気で恨んだ時もあった、
好きすぎる、大好きすぎる曲。

“雨に唄えば”。
誰もが聴いたことのある名曲ですが、
この曲を世に送り出した映画を観たことがあるという方は、
意外と少ないかもしれません。

写真1

映画『雨に唄えば』。
1952年にこんな作品を生む事ができるなんて、
アメリカはやはりショービズの国ですよねぇ。
小さなころから気分をぐいっと持ち上げたいときに必ず観るような、
私にとっては特別なビタミンムービーのひとつ。
サイレント映画からトーキー映画に遷り変わる時の混乱を背景にした小気味のよいストーリー展開も、
登場人物のキャラクターも、軽快なタップダンスも、耳馴染みのよい楽曲の数々も、
ぜーんぶ抱きしめたいくらい好きです。

そんな愛すべき映画がロンドンのウエストエンドでミュージカルとなり、
ついに日本初上陸したわけですから、観に行かないわけにはいかないのでございます。
行ってまいりました。
『シンギン・イン・ザ・レイン 雨に唄えば』@シアターオーブ。
11月1日、土曜日。公演初日です!

写真2

いやぁ・・・。
楽しかった。
もちろん映画のファンとしては、
やっぱり映画越えとはいかないんだなと感じてしまう部分もあったことは否めませんが、
とにかく楽しかった。
舞台の鑑賞というよりは、アミューズメントパークで最高のアトラクションに乗ったような気分。
たちまち、いつもいる場所とは違う世界に連れて行かれて、
カラフルな音や色に次から次へと魅了されて、
終わって欲しくないのに!という余韻の中で
次の一巡を待つ人々が行列を作る前で後ろ髪を引かれながらライドを降りる、
そんな一連の感覚です。

たぶん、そうさせた要素として大きかったのが、
雨。
レイン、です。

雨が降るんですよ!舞台上に!
しかも映画通り、けっこうな土砂降り。
もちろん、「雨に唄えば」を主人公のドンが歌い踊るシーンです。
ドンがタップを刻みながら水たまりの中を飛び跳ねるわけですから、
当然、大量の水しぶきが上がり・・・。
「きゃあああ~」という叫び声とともに、前列の方々が
ビニールシートで水よけをする、という不思議な光景。
ちょっと、曲どころじゃなかったですが(笑)。
他にも客席を、お芝居の中に登場する劇場の客席に見たてるなど、
舞台上と客席が一体になるような仕掛けもあって、
どこか参加型のような楽しさがあったんですよね。

そしてなにより魅せられたのは、主人公ドンを演じたアダム・クーパーさん。
古典をモダンに解釈する人気振付師、マシュー・ボーン氏の「白鳥の湖」の主演で一躍、
バレエのトップダンサーとしてスターダムを駆け上がった方です。
映画「リトルダンサー」のラスト、あのエンドロールに登場する、
青年になった主人公を演じたダンサーといったら、お分かりになる方もいるのでは。
そのクーパーさんが、本作でミュージカルスターとして才能を遺憾なく発揮。
身のこなしのしなやかさ、動きのダイナミックさはさすが素晴らしかったですし、
登場しただけでぱぁっと明るく輝くような華やかなオーラは、舞台全体を圧倒するようでした。
映画でジーン・ケリーが演じたドンはやっぱり特別ですが、
クーパーさんの存在感がなければ、こんなに素敵な舞台にはならなかっただろうなぁ。

もう、劇場入りした時にはすでに期待感でテンション最高潮だったわけで・・・。
観終えて劇場を後にするころには、幸福感に満たされすぎて心が壊れてしまいそうなくらいでした。

うん。
幸福感。
そこにあったのは、幸福感でした。
三階席まで総スタンディングオベーションの中、
公演が終わって劇場が明るくなっても、しばらく拍手は鳴り止まず。
たっぷりと、ふっくらと、ほっこりとした幸福感に、全員が包まれていましたよ。

思いっきり、幸せな気分に浸れる舞台です。
皆様もぜひ!

そしてまた観たくなって、さっそく家で、映画鑑賞。
やっぱりこれだなぁ。いいなぁ。じーん。
映画の良さも再認識です。
このチャーミングな映画を観る人が増えたらいいなと、
改めて思うのです。

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