小川彩佳-番組公式ブログ

慣れ
2012年02月24日

ここのところ、3月11日に向けて、
被災地に取材に訪れています。
この水曜日も、番組のお休みを使って
取材をしてきました。

その中で、被災された70代の女性のお話を伺うため、
仮設住宅にお邪魔しました。
「ごめんなさいね、狭いところで。
どうぞどうぞ、窮屈ですけど、どうぞ」
部屋が小さいと、しきりに恐縮しながらも、
快く私たち取材クルーを部屋に通して下さいます。

可愛らしいカーペットやソファカバーで明るく装飾された部屋を見ると、
彼女がいかに前を向いて歩もうとしているかが、窺い知れるようでした。

ひとしきりインタビューなどを終えて、
女性の淹れてくださったお茶を頂いていると、
表情をふと緩めてボンヤリと遠くを見つめながら、
その方がおっしゃいました。

「人って、慣れるのよね。
最初は、こんな狭い仮設住宅で生活するのなんて、
無理だと思ってたの。
今まで大きい一戸建てに住んでたでしょ。
でも・・・だんだんその時の感覚が薄れてきてるのよね。
慣れちゃうのよね、この部屋に」

そして、滲んだ涙を振り切るように笑って、こう続けました。
「こんなことに慣れるなんてね。
本当は、嫌なんだけれど。人ってこわい」

震災の復旧費として計上された第1次・第2次補正予算は
総額およそ6.7兆円。
そのうち、年末までに使われたのは
55%に過ぎないそうです。
その中でもインフラ整備に充てられた予算の執行率は
2割に満たず、復興住宅に至っては、
ほぼ手付かずの状態なんだそうです。
復興計画が滞っていること、自治体の人手不足などに加え、
国が机上で立てた計画が、被災地のニーズに合っていないことも
大きな原因です。

そんな現状を知ってか知らずか、
今日も永田町では足の引っ張り合い、
我の張り合いが続いているように見えます。

我慢は、長きにわたると、慣れに変わります。
でも、「慣れ」にも限界があります。
そしてそれはボディブローのように
心と体を蝕んでいくものだと思います。

おばあちゃんの言葉は、私にはなんだか
危険信号のように響きました。


OAにはいつまで経っても慣れません・・・。
コーヒーでめぐちゃんとホッ。byトイカメラ

Simon & Garfunkel “Bookends”

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