先週金曜日の「報道ステーション」は、ちょっぴり“報道番組”から逸脱して。
わたくしは、京都から出演いたしました。
ある作品を、ナビゲートするためです。
ここは、信行寺。
頭上に広がっている天井画は、
江戸時代に活躍した「奇想の画家」伊藤若冲、最後の大作です。
去年、200年の沈黙を破って初めて公開され大反響を呼びました。
そして若冲生誕300年の今年、3日間のみ再び公開されるのを前に、
この天井画を生中継でお伝えしたんです。
4月、東京都美術館で開かれた若冲展は、
なんと5時間待ちという日もあったという大盛況。
ニュースにもなり「若冲っていうものすごい画家がいたんだな…」という
ぼんやりとした理解はありました。
ただ、じっくり作品を観たことはなく。
中継の話が決まると、若冲に関する本を4、5冊買い、
まずは若冲を知ることから始まりましたが…
勉強を始めるやいなや。
みるみるうちに。
惹きこまれ…。
青物問屋生まれという利を最大限生かし使われた最高級の画材による鮮やかな極彩色。
当時の日本画壇のトレンドだけでなく、中国や中東、インドなど、
海外の芸術的モチーフを取り入れたエキゾチックなアレンジ。
大胆さと繊細さが同居する挑戦的で革新的な色使い、筆使い。
現代の研究家も唸らせる超絶技巧のなせるものなのか、古びた感じがしないんです。
気高い鳳凰も病葉も、等しく手を抜かず緻密に描かれているのに、
肩が凝らないバランスの良さは、天才的な構図力あってのものなのでしょう。
そして、輪廻転生って本当にあるのかな、と感じさせるような、
草木も花も動物も虫たちも、みんな性格や意外な個性を持ちあわせていそうな、
今にも動き出しそうな、喋りだしそうな生気に満ちた世界観。
果てることなき若冲の宇宙を泳ぐ。
たのしい…。
と、ただうっとりしているだけならこんなに素敵なことはないんですが、
これをもとに何を伝えるか、中継で何を語るか。
0から原稿を書く作業は、普段の報道の中継とはまた勝手が違い、
とても難しかったです。
それでも、200年前の思いのタイムカプセルを開くようで、
本当に貴重で贅沢な経験でした。
楽しんで頂けていたら、嬉しいです。
住職と奥様、お嬢様、そしてスタッフと。
土曜日はついでにひとりで嵐山に足を運び、
紅葉し始めた京都をちょっぴり味わってきましたよ。
あ、そうそう。
着ていたお着物は、小学校からの幼なじみの呉服屋さん、
【錦屋マリエマリエ】さんに貸していただいたんです!
藍染め江戸小紋は、佐藤阿波藍製造所19代目藍師の佐藤昭人さんの作品。
ぶどうの絵があしらわれた赤銅色の帯は季節感を重視して選んでいただきました。
たくさんの「美しいもの」に触れ、癒された気分です。