あれ?
ガムか何かを踏んだかな?
という程度の認識でした。
かかとに走った一瞬の違和感。
雨の日の、駅のホームでのことです。
でも、歩行に問題はなかったので、
そのままてくてく歩いていたら、
不意に左肩をとんとん、とつつかれ、
言われました。
「すみません・・・。落としましたよ」
落としてました。
かかと、落としてました。
かかとというか、靴のヒールそのものではなくて、
そのクッションとなるゴムですね。
そして落としたというか、置いてったんですね。
路上に、ぽつねんと・・・。
ずいぶん前に海外で購入し、気に入ってヘビーローテーションで使っているブーツ。
ヒールもどっしり大きめです。その底のゴムがまさか、しかも何の前触れもなく外れるなんて。
思い出すとかなり恥ずかしい瞬間だったはず、なんですが、
その状況を認識するより前に他の感情が先立ち、
かかとのゴムを手にした私は赤面すらせず、悠々と電車に乗り込んだのでした。
というのは、声をかけられたその瞬間、振り返って目にしたものが、なんとも爽やかだったから。
30代ぐらいの男性です。スーツに黒いコート。
そんな普通のビジネスマンが、両手で丁寧に私のかかとのゴムを掲げていたんです。
そしてこれまた丁寧に、私に渡してきたんですよ。
まるで名刺でも交換するかのように。
まるでガラスの靴でも捧げるかのように。
せいぜい、指をさすぐらいだと思うんです。普通は。
普通といってもこんなシチュエーションなかなかあるものじゃありませんが・・・。
なかなか汚いものですよ、あれは。かかとにくっついて、常に地面を踏んでいる面ですから。
そんなかかとのゴムが仮にホームに置き去りにされていたら、
苦笑いのひとつやふたつ含ませながら、
「あれ、落としたみたいですよ」と指をさすくらいが、
普通なんじゃないかなと思うんですよね。
しかも雨の日でしたし。ホームも結構、びちゃっとしていました。
それをわざわざ拾って、駆け寄って、差し出すなんて。
その所作の柔らかさと、なんの迷いもないすきっとした表情に、
私も思わず、ハンカチでも拾ってもらったかのように
爽やかに受け取ってしまいましたよ。両手で。
とっさの出来事にこそ、人柄とか人となりって出ますよね。
人を思いやれるか、気遣えるか、人助けを衒いなくできるか。
そんなことに通じている気がします。
たかが靴のかかとのゴムでここまで語るのもなんですが(笑)、
ちょっとばかり心を動かされた、そんな、
なんともシュールな出来事でした。
ちゃんと「ありがとう」は、言えてたかな。
さて。
そんな、ほんの少し踏み込んだ優しさが、
身に心にしみる季節を迎えています。
年末が近づいてきました。風が冷たくなってきました。
師走の忙しい時に、選挙もあるようです。
2014年も終わり、2015年が始まることを実感しだすと、
そろそろあれ買わなきゃ、ってなりませんか?
そう。これ。
改めて、皆様にお知らせさせてください。
2015年のアナウンサーカレンダーが、絶賛発売中でございます!
「報ステ」の妹たち2人の、なんともラブリーな一枚もありますぞ。
こちらは撮影風景。
壁掛け、卓上ともに、2015年の毎日に彩りを加えてくれる、素敵な写真ばかりです。
ぜひとも、チェックしてみてくださいね!