つなみのこどもたち
2012年05月11日

ある朝、山手線に乗ろうとホームに出ると、
もう電車が到着し、発車ベルが鳴り始めたころでした。
階段を上りきったところだったので、
あぁもうコレはやり過ごすしかないか、と諦めたんですが、
「駆け込み乗車はおやめください~」
そんな車掌さんの声が耳に届いているのかいないのか、
サラリーマンや学生さんがどっと車両になだれ込んでいくのが見えます。
扉がギリギリ閉まるくらいの所に足をやり、
上部に手をかける危険な体勢のスーツ姿の男性や、
ぐぐーっと中の人々を押し込むようにして
隅に体を無理やり捻じ込むおばちゃん。

みんな必死だな・・・。

自分がその中の1人のときは、一緒になって必死なのですが、
ちょっと引いてみるとその姿は滑稽でもあり・・・。

その時、目に留まりました。
ジタバタせず、大人しく次の電車を待つ人たちの姿。
黄色い線からさらに一歩内側、
背筋をピンと伸ばして立っていたのは、
ランドセルをしょった小学生たちでした。

中学年くらいでしょうか。4、5人です。
静かに電車に押し寄せる人々を見据えています。
その淀みない姿はなんだかかっこよくて、
思わず釘付けになりました。

その時彼らは、目の前の必死な大人たちを、
どんな気持ちで見つめていたのでしょうね。

子どもは、大人をハッとさせる冷静さと視野の広さを、
時に感じさせます。

本日ご出演いただいたジャーナリストの森健さんが
被災地の子どもたちに書いてもらった作文をまとめた本、
「つなみ」と「『つなみ』のこどもたち」を読みました。


消しゴムで何度も消し、鉛筆の芯をすり減らして、
一生懸命書いたんだな、と感じさせる
くしゃくしゃの原稿用紙につづられた言葉は、
驚くほど凛として、逞しいんます。

いろんなことに悲しみ、泣いて、考えて、
隙間がないくらいにパンパンになった心を抱えながらも、
「妹を守る」「家族を守る」
「ボランティアや自衛隊の人たち、世界中の人々に感謝」
「当たり前なことが幸せだったと知った」
「みんなで一緒に復興しよう」
まっすぐに自分と対峙して、
また自分の周りで起きていることを見つめて、
そこから感じとり、学ぼうとしている。
大人以上に視野を広く持って、
前向きに希望を掴まえようとする彼らの姿に、
圧倒されてしまいました。

こどもたちに学んでばかりいられません。
「つなみ」の作文は、震災の年を生きた人たちに向けて
こどもたちが渡そうとしている
希望のバトンなんじゃないかな、と思います。
こどもたちから差し出されたバトンを、
しっかり受け取って次につないでいける大人になりたいです。

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