阪神淡路大震災で被災した子どもたちを励まし、
被災地の思いを表現しようと、
神戸の小学校の先生が作ったメッセージソング、
「しあわせ運べるように」。
東日本大震災の被災地で今歌われ、
日本中に、世界中に広がり始めているというニュースを
先週放送しました。
ストレートで飾り気のない歌詞は、雫が水面に波紋を広げていくように、
聴く者に確かに響き、胸を静かに揺るがします。
それだけ溢れる思い、止まらない思いがあったのでしょう、
先生は、この曲を10分足らずで書き上げたそうです。
こんなシンプルかつ強さを持つ歌詞は、
想像ではきっと書けません。
震災の被害を実際に受けた人でないと、
この曲は書けなかったのではと思います。
今年の3月11日、「報道ステーション」では
岩手県大船渡市、三陸駅のプラットホームから、
震災特番を放送しました。
私もVTR取材に携わり、何度か被災地を訪れました。
訪れる度に感じたのは、「距離」でした。
被災した方々と、そうでない私との間の「距離」です。
お会いした遺族の方々、九死に一生を得た方々の
深い悲しみ、計り知れない喪失感や、そこからもがくような苦しさ。
寄り添おうとすればするほど感じる、
どうしても埋められない距離が、そこにはありました。
それでも、涙を流しながら搾り出すように思いを語ってくださった、
取材に協力してくださった方々との距離、
亡くなった方々との距離を「詰めよう」としなければならないと思いました。
その結果、皆さんの思いのそのかけらの、
10分の1、100分の1でも受け止め、伝えることができたら、
それが私の、震災の一周忌に被災地に立つ意味だ、
そういう気持ちで取材をしていました。
特番の放送は終わりました。
でも被災地では何も終わってはいません。
距離を詰めよう、被災地の思いに近づこうという努力は、
ずっと続けなければならない、
それが震災の年を生きる者としての使命だと、
今改めて感じています。
そんな思いで、「しあわせ運べるように」も
ずっとずっと、聴いていきたいです。
Beatles “Golden Slumbers”
「かつてそこには故郷へと続く道があった」。
そんな歌い出しから、傷ついた心を
優しさで満たしてくれるような曲です。
今も行方不明の方々が一日も早く
家族のもとに戻ってきますように、
被災地の復旧復興が少しでも早く進みますようにと
願いを込めて。