収穫の秋
2014年10月17日

次から次へと起こる自然災害に、
季節がじわりじわりと進んでいく風情を感じる間もなく
時が過ぎていきますが、
収穫の秋を迎えています。
新潟から、お米が届きました。

1

宅配便の伝票に、爽やかで可愛らしい筆跡でしたためられた住所には「十日町」。
そして差出人の名前が目に入った瞬間、心がざわっと湧き立ちます。

2

一年前に取材した、坂下可奈子さん。
あの時は26歳だったから、今は27歳になってるかな。
人口18人の新潟県十日町の“限界集落”にたったひとりで移住し
農業を営みながら町おこしに挑んでいる彼女の思いを追ったんです。
(その時放送した特集がこちら↓
https://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/feature/detail.php?news_id=35014&y_m=13-08

限界集落に移住と聞いて、どうしてまた!?と当時、驚きました。
でも、彼女の思いはいたってシンプルだったんです。
人とつながりたい。役に立ちたい。自分の足で立ちたい。
いたずらに翻弄されない強さを持ちたい。

そんな思いを形作ったのはリーマンショックや、都会で感じた違和感だったそう。
目まぐるしく変化する世の中、便利になりすぎた都会の価値観の限界。
バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災と、翻弄される大人たちを見てきた中で、
このままでいいのか、また新しい価値観を模索していく時期に来ているんじゃないか、という思いが、
彼女の土台にありました。
それは、私も同世代として共感する部分でもありました。
それで行動に移しちゃうところがすごいんですけどね。

取材したとき、坂下さんは移住から3年目を迎えていたんですが、
ひたむきに農業に打ち込む姿は、集落を変えつつあるのを、取材を通して感じました。
「今まで伝えたくても伝える相手がいなかった農作業のノウハウを
坂下さんに教えられる。生きがいが増えたよ」というおじいちゃん。
若い人には負けていられない!とパソコンを習い始めたというおばあちゃん。
農家は保守的で、先祖代々受け継いだ畑や土地は
家で守っていくものだという考え方の方が多いそうなんですが、
「坂下さんを見ていると、農業をやりたいという熱心な若者が来たら、
喜んで畑を託したいと思うようになったんだよね。考えが柔軟になったよ」
と語ってくれた方もいらっしゃいました。
坂下さんがひとり、飛び込んでいった世界は、
そんな一粒の刺激で大きく変わろうとしていたんです。
とても刺激的な取材でした。

3

インターネットで見つけて企画書を書き、番組で初めて実現した自分発の特集だっただけに
個人的には思い入れもひとしお。
そんな彼女から届いた、お米のお便りです。
今も変わらず、あの集落で、
自然と触れ合いながら過ごしているんだなぁと、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

「育てている野菜やお米とは、いつも会話をしてるんです。
美味しく育ってねってずっと声をかけて。
最近は、逆に声が聞こえてくるようになりましたよ」

そういって屈託なく笑った坂下さんの笑顔を不意に思い出しました。

坂下さんは、来月、地元の方と結婚するそうです。
彼女が心を込めて苗を植え、一日も休まず声をかけ、立派に育んだ大地の恵みと同じように、
彼女自身が一から築いた生活も着実に、実を結ぼうとしています。

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