奥森皐月の公私混同<収録後記>
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念願のラジオ(風)配信と60分の大喜利学習!|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第6回
好きな階段は空気階段、好きな公団は空気公団、高校2年生17歳の奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開されています。タイトルのとおり、奥森がプライベートでハマっている人やモノを公の場で熱く深く語り尽くす番組です。 おかげさまで、番組スタートから半年が経ちました。公と私を混同しているだけなのに、ここまで皆さんに観ていただけて続いている事実がうれしいやら信じられないやら。いつもご視聴ありがとうございます。引き続き、応援していただけるとうれしいです。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、公私混同ラジオ・赤嶺総理さんゲスト回・大喜利スピードラーニングの第22回から第24回までの振り返り。 logirlの本編とこの記事を併せてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 #22 奥森皐月の公私混同ラジオ:1200通ものメールをいただけた念願のラジオ(風)配信! ラジオ好きを公言している私が、初めて2時間のラジオに挑戦。今まで憧れていた「ラジオ」の理想像を可能な限り詰め込んだ、夢の回です。究極の公私混同かもしれません。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #22 奥森皐月の公私混同ラジオ』) 第一にうれしかったことは、やはりリスナーの皆さんから最高のメールをいただけたこと。「大喜利公私混同カップ」「街の公私混同」とこれまでできなかった投稿コーナーを設けたため、たくさんメールが届きました。公私混同ラジオの回だけで1200通近く来たそう。これはかなりの数字ではないでしょうか。うれしい、ありがたい限りです。 さてこのラジオの最大の特徴は、「リアクションメールがある」ということ。収録番組なのに次々とリスナーからリアクションメールが届くという画期的なシステムです。 この日はリアルタイムでの感想ツイートも多くいただけたため、本当に生放送をしているかのような不思議な時間が流れました。虚構なのか真実なのか、どこまでが想定範囲か、自分でもよくわからなかったです。「本物ラジオ」さながらの体験ができて、今年の夏の最高の思い出になりました。 ただでさえ、2時間ひとりしゃべりで駆け抜けるのは大変なことだと思います。しかし、その上にリスナーさんからいただいたリアクションメールとつながるトークをするという難易度の高い脳トレのような作業もありました。我ながらやりきったと思います。 本番直前にリアクションメールの内容を箇条書きでもらって、自分の用意したトークと組み合わせていくのは緊張感もありましたが、とても楽しかったです。トークに嘘を混ぜる時間なんて聞いたことのない言葉ですね。金髪で角刈りのケンタウロスの話や合法で無料でマンガを読む話が見どころかと思います。 メールをいただいて読むだけでも相当うれしい出来事なのに、名だたるハガキ職人さんの名前をお読みできたのは最高に幸せでした。いつもラジオで聴いている名前を、自分が読めるというこのうれしさ。言葉にできないくらいの喜びでした。大喜利方面のリスナーさんからもメールが届き盤石の布陣となりましたね。メールのおもしろさは私が保証するので、そこだけでもぜひ聴いていただきたいです。 インデペンデンスデイ久保田(剛史)さんのお悩みを聞くコーナーだけ唯一謎。女子高生が年齢が倍の男性に、淡々と正論を振りかざす新感覚の時間です! そこも含めて最強の2時間ラジオになったのではないでしょうか。ラジオが好きな人、お笑いが好きな人、大喜利が好きな人、みんなに届いてほしいラジオです。 #23 赤嶺総理:大喜利×トークの新企画「ギリーク」 この回から新企画「ギリーク」がスタート。ギリークとは大喜利とトークを掛け合わせた、番組初の造語です。芸人さんの中には一定数、大喜利のイメージがついている方がいらっしゃいますが、その最たる人物が赤嶺総理さんだと思います。大喜利ライブや大喜利企画に多数出演されており、とにかく大喜利に携わられている印象でした。私が赤嶺総理さんの大喜利が好きなこともあり、番組が始まってわりと早い段階からお呼びしたいと思っていた方です。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #23 赤嶺総理』) トークは基本的に大喜利に関する質問が多く、基礎的な考え方や赤嶺総理の大喜利術をいろいろと語っていただけた回になっています。回答の導き方がとにかくロジカル。さらに状況を鮮明にイメージしたり、ほかの回答からの流れを考えたり、あちこち視点を変えて大喜利をされているとのこと。 目から鱗が落ちるお話ばかりでした。少数になりがちな女性プレイヤーとしての強みの話もおもしろかったです。素早く、多角的に考えられるその姿が素敵すぎて、うっとりしてしまいます。 収録を受けて、大喜利を見て学びたいという欲が高まっていたため、告知で挙げられていた大喜利のYouTubeを収録後の1週間で観まくりました。 こちらにまとめてくださっているので皆様もぜひ。さまざまな形の大喜利が観られて楽しかったです。気になるタイトルの動画を観始めると、かなり止まらなくなります。もしかしたら、大喜利には中毒性があるのかもしれません。おいでよ大喜利好きの幸せな世界に。 番組内で赤嶺総理さんから「#18 1人で大喜利」の1答ずつにアドバイスを書いてくださった恐ろしい文字数のノートをいただきました。こんなにうれしいプレゼント、なかなかないです。とにかくうれしくて、収録後に一度抱きしめた。 帰宅してから丁寧に読みましたが、小さな言葉の言い回しや表現について、わかりにくさや「こうするといい」ということなどがぎっしり書かれていました。どれも説得力があって、勉強になることばかり。基本的には改善すべきところが並んでいる中、たまによかった回答に◎をつけていただいていました。これがもう飛び跳ねたくなるうれしさで、アメとムチに完全にやられてしまいましたね。赤嶺総理さんにずっとついていこうと思います。 <赤嶺総理さんを表す四字熟語>頓知頓才 その時その場、機に応じて即座に機転を利かせることができる知恵や才能のこと。(四字熟語辞典より) #24 スピード大喜利ラーニング:これを観れば60分で大喜利力が向上する! 番組初の2週連続ゲスト。#23があまりにも楽しすぎて、もっともっと大喜利について聞きたい!となった私のわがままを聞いていただきました。この回はタイトルのとおり、1時間で授業を受けた人の大喜利力を向上させるプログラムという内容です。そんなうまい話があるわけない、と疑っているあなた。騙されたと思って観てください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #24 スピード大喜利ラーニング』) 赤嶺総理先生の初級・中級・上級・番外編によるステップ授業がとにかくわかりやすい。まったくの大喜利初心者でも回答を出せるようになれるくらい丁寧に説明していただきました。私自身もこれまで「なんとなく」で挑んでいたものがきちんと言葉で理解できて楽しかったです。 初級編の、「要素を挙げてそれらを足し合わせる」という方法は、実践すると本当に回答が出しやすくなりました。選択肢の幅も広がるし、これをうまく使うこなすことでより大喜利が強くなれるのであろうと思います。 赤嶺総理先生のお話はどれも興味深かったのですが、特に印象に残っているのが「好(い)い感情になる答えを出す」というもの。大喜利のお題として「こんな〇〇はイヤだ」が代表されるように、大喜利ではマイナスイメージの回答が多くなりがち。そこを逆手に取って、好い感情になる回答を出すという手法はとても勉強になりました。 大喜利能力が向上しただけでなく、この授業を経たことによって、大喜利ライブもこれまで以上に楽しめるようになりました。回答の流れや、それぞれの回答の特徴を捉えることの楽しさにまで気づくことができる。 こんなにも充実した1時間の授業、観て損することはまずないと思いますよ。 世界初?大喜利界のインターネット教育サービスだと思ってください。 全然関係ないのですが、この回の赤嶺総理さんのメガネ白衣姿がとても好きです。先生役ということで白衣を自前で持ってきてくださった赤嶺総理さん。最高です。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 (写真:『奥森皐月の公私混同』) 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは番組アフタートークが公開されています! 本編に入りきらなかったトークや、収録での出来事など。奥森とTPとゲストさんでお話しさせていただいています。無料でお聴きいただけますので、こちらもぜひよろしくお願いします。 『奥森皐月の公私混同』で大喜利熱が高まった私は、QJWebの連載「奥森皐月は傍若無人」でも大喜利のことについて書きました。 調べれば調べるほどおもしろいです、大喜利ライフの入口にこちらも読んでみてはいかがでしょう。 『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウントあります! 番組の情報や、私からのお知らせ、日常の報告などいろいろツイートしていますよ。 ぜひフォローよろしくお願いします。 番組やこの収録後記の感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 #奥森皐月の公私混同 は、テレ朝動画「logirl」で毎週木曜に最新作を公開中!◆1人ぼっち大喜利60分回◆公私混同2時間ラジオ回◆涙のukka本音トーク回◆おくもりーもこ回など、過去回23作が月額990円で全て見放題なので月初の加入が絶対お得です!! 詳しくはこちらhttps://t.co/JUnIidTe8M pic.twitter.com/W6yULR1sxS — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) September 4, 2021 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、番組の感想、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題、「街の公私混同」のコーナーなどなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 次回のnoteでは「号泣して感動してイチャイチャする!」を中心に書く予定です。お楽しみに。
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ひとり大喜利と、ゲストに“育ての親”?|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第5回
好きな新聞は完熟トマト新聞、高校2年生17歳の奥森皐月です。 ずっと好きなコンビ「ガクヅケ」がKOC準決勝に進出したので毎日踊っています。 logirlにて毎週木曜18時に私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が配信されています。タイトルのとおり、奥森がプライベートでハマっている人やモノを公の場で熱く深く語り尽くす番組です。 と、毎回説明していますが、最近はそのコンセプトを根底から覆す内容の回もあります。これは「ブレている」のではなく「イカれている」と解釈していただきたいです。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、ひとり大喜利回と、ニッポン放送の石井玄さん、放送作家の藤井青銅さん、完熟フレッシュの池田レイラさんがゲストにいらした第18回から第21回までの振り返り。 logirlの本編とこの記事を併せてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 #18 1人で大喜利:前代未聞“女子高生のひとり大喜利” 過去最高のイカレ回です。初のゲストなし放送。 俺スナさんと冬の鬼さんに来ていただいた第16回の反響が大きかったのを受け、大喜利を強化する方針が固まりました。大喜利が強くなりたいという野望はずっと抱いているのです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #18 1人で大喜利』) ゲストや企画については、毎回番組プロデューサーのTPと話し合っています。 あるとき、いくつかTPから提案の連絡が来て。 「芸人さんのゲストを呼ぶ」「またオオギリストを呼ぶ」「ひとり大喜利をする」「オクモリンピック」の4つの選択肢をいただきました。 はじめは、「オオギリストを呼ぶ」がよいと思っていたのですが、気づいたら「ひとり大喜利をする」に決定していました。何かしらの催眠をかけられたのか、「ひとり大喜利やってみましょう!」と返事をしていて怖かったです。 まだまだ大喜利の赤ちゃんである私が、いきなり1時間ひとりで大喜利をする。無謀すぎやしないでしょうか。一歩間違えれば大放送事故になりかねません。 ただ、「松本人志の次に『一人ごっつ』のような大喜利を女子高生がするのは前代未聞すぎる」というワクワク感の一本槍で進みました。 練習のしようもないので、収録までの期間は何回か神社へ行き「ひとり大喜利が無事に終わりますように」と念じました。闘志を奮い立たせるためにMOROHAの曲だけを聴いてテレ朝へ向かったな。奥森皐月あるあるなのですが、ここぞというときMOROHA聴きがち。 うまくできていたか、ダメだったか、は本編を観て判断していただきたいです。ただひとつ言えることは、楽しすぎた。大喜利にのめり込む人々のマインドがよくわかりました。視聴者のみなさんから、最高のお題をたくさんいただけたのもうれしかったです。1時間が一瞬に感じました。今後も大喜利はどんどんやっていく予定。ひとり大喜利もまたやりたい。 セットも衣装も『一人ごっつ』に寄せていて最高だったのでそこにも注目してほしいです。孤軍奮闘とはまさにこのこと。作務衣はマイフレンドみほとけにお借りしました。作務衣と一緒に厄除けのステッカーを授かったのが効いたかも。南無。 #19 石井玄(ニッポン放送):“育ての親”の前でエピソードトーク披露 憧れの方に来ていただけて、ただただ幸せでした。放送内でも言いましたが、私を育ててくれたラジオ番組はみんな石井さんがディレクターを担当されていました。文をキュッと短くすると私の育ての親です。お話しできることがうれしくてうれしくて、ずっとウキウキしていました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #19 石井玄(ニッポン放送)』) オールナイトニッポン元チーフディレクターの前でオープニングトークをするという、かなり重要な機会。いつもOPトークは“いい意味で”気楽にしゃべっているのですが、この回はそうもいかないと気合いを入れました。しっかり1週間で起きたことでのエピソードトークしたよ。ところがこの収録までの1週間、落ち込むことが続いていてハッピートークがまったくありませんでした。緊急事態です。 記憶をたどって、唯一出てきた「ヘコんでいるときにお笑いライブに行ったら、竹内ズの青春コントで号泣してしまった。竹内ズの彼女じゃないと成り立たないくらい泣きながら笑った」というキモエピで乗りきりました。 この場で言ったらトークがブレるので言いませんでしたが、実はこのトークには嘘があります。「竹内ズ・金の国・モシモシの3組のコント、全部で泣いてしまった」が事実です。 トークを盛らずに減らすというよくわからない結果になりました。もっとおもしろくなりたいですね。 なかなか知ることができなかった、石井さんの学生時代のお話やラジオとの出会いについて深くお聞きできました。この番組のゲストの9割は学校が苦手だったタイプという説がありますが、石井さんも大学時代がその期間となっていたそうです。絶対に感想として間違っているとは思うのですが、とても安心できました。 9月15日にKADOKAWAより出版される石井玄さんの初著書『アフタートーク』についてもいろいろとお聞きできました。執筆時のことや出版の経緯など、気になることをお話ししてくださってとても楽しかったです。インタビュー形式での言葉がまとめられた本ではなく「自分で書いている」というところが一番のポイントだそう。石井さんの言葉で、どのようにラジオが語られているのか。発売が楽しみですね。 番組後半で、「今後ラジオ番組を持つべき人材」という質問をさせていただいたところ「奥森皐月」の名前を一番に挙げていただきました。お世辞とかそういうの知らないです。そのまま受け止めます。 元ANNチーフディレクターである石井さんから名前が挙がるタレント。奥森皐月。 ラジオ業界の皆さん、今がチャンスです。奥森は今なんのラジオ番組も持っていません。フリー森皐月です。 ご連絡お待ちしています! よろしくお願いします! (アピールできそうな隙間があれば全力ですることを心がけています) <石井玄さんを表す四字熟語>冬夏青青 節操が堅く、常に変わらないことのたとえ。(新明解四字熟語辞典より) #20 藤井青銅(放送作家):ラジオレジェンドが語った“ラジオ好き必見の1時間” 第19回の収録中、ゲストの石井玄さんに「公私混同にゲストに来てくださりそうなラジオ関係者はいないか」と尋ねたところ「藤井青銅さんはすぐ来る」とのこと。お聞きしたいことはたくさんあるので、いつか来ていただきたいなぁ、と思いその日は終わりました。 そしてその1日、2日後には「次回ゲストは藤井青銅さんに決まりました」との連絡が届いた。本当にすぐ来てくださって驚きました。ありがたいです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #20 藤井青銅(放送作家)』) 最近「ラジオ好きJK」としてお仕事をいただくことが増えましたが、いかんせん17歳なので昔のラジオ番組の知識はありません。そして、ラジオの歴史を知ることはなかなか困難です。ネットで調べても出てこないことばかりなので。 だからこそ、ラジオ業界に半世紀近く携わっている青銅さんにお聞きしたいことはあふれるほどありました。 「作家」としても「放送作家」としても活躍されている青銅さんですが、初めからどちらも志していた、というお話は興味深かった。私はあまりイメージがなかったのですが、青銅さんが活動を初めたころには、作家業と放送作家をどちらもしている有名な方がいらっしゃったそうです。てっきり、どちらかを目指していて結果的に活動の幅が広がったのかと思っていたので意外に感じました。「星新一ショートショートコンテスト」のお話がとてもおもしろかったので、まだ観ていない方はぜひ観ていただきたいです。 私がとても気になっていた「芳賀ゆい」についてたっぷりお聞きできたのも幸せでした。伊集院光さんがラジオ番組に出演し始めたころのことから、レギュラー放送になるまで。そしてリスナーと作り出した架空のアイドルがオールナイトニッポンを担当したこと。嘘だと疑いたくなるくらい素敵なストーリーで、当時番組を聴いていた方が本当にうらやましいです。 ほかにもオードリーさんがブレイクする前のことやオールナイトニッポンのレギュラーにまで羽ばたいたことなど。青銅さんにしか語れないお話を聞き尽くせた、最高の1時間でした。 ラジオ好きには一度観てもらいたい回です。 私も、青銅さんにトークを聴いてもらえる日を夢見てがんばろうと思えました。 <藤井青銅さんを表す四字熟語>達人大観 物事の道理に広く通じている人は、物事の全体を客観的に見渡すことができるということ。(四字熟語辞典より) #21 池田レイラ(完熟フレッシュ):JKタレントのリアルな悩み 公私混同で初の「同学年」ゲスト。私と同じ高校2年生である池田レイラさんと、同級生トークを繰り広げました。 これまでのゲストとは違い、この回では「全編タメ語」というルールを適用。呼び方も「レイラちゃん」「皐月ちゃん」になりました。初めはお互いに距離感を探り合っていましたが、このルールがあったことでいつにも増して込み入ったお話ができたように思います。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #21 池田レイラ(完熟フレッシュ)』) ここ最近のレイラちゃんは、特にYouTubeやTikTok、Instagramなど個人SNSでの注目度が高い印象。流行に敏感な「イマドキJK」タイプだと思っていたので、流行りのものについて教えていただく予定でした。 しかしながらトークを進めていくうちに、これまでの子供らしさを活かした芸能活動とは別のイメージを作るためにSNSに力を入れていることが判明。同世代の私が言うのは変だとは思いますが、高校生とは思えないしっかりとした考え方と仕事へのプライドを感じてとても感動しました。本当に素敵な方です。 半ば強引にお笑い芸人としてデビューしたにもかかわらず、未来への明確なビジョンを持って努力していることがよく伝わり、これまで以上に応援したいと思いました。 また、後半では高校生タレントとしての悩みも聞かせてくださりました。「恋愛系の質問を受けてもどう返せばいいかわからない」というかなりリアルな内容。 私にも明確な答えは導き出せませんが、誰とも共感できない感覚を分かち合えたのはとてもうれしかったです。レイラちゃんも喜んでくださったので何より。後半は、今後の芸能人生設計のようになっていて、かなり新しい内容だったと思います。 テレビでの、明るく溌剌としていて厳しく物申す一面が見えていたからこそ、今回のまじめで繊細で努力家な姿はよけい印象深かったです。 私はあまり、芸能活動について身近な人に相談したり話したりすることがないのですが、今後はレイラちゃんに声をかけたいなと思いました。 またひとり、公私混同をきっかけにお友達ができました、幸せです。 高校生という今の時期を大切にしつつ、未来に向かってそれぞれ活躍の場を広げられたら理想だなぁと思います。 またプライベートで収録の続きをお話ししたいな。 <池田レイラさんを表す四字熟語> 直往邁進:ためらわずにまっすぐ突き進むこと。(新明解四字熟語辞典より) 已己巳己:文字の形が似ていることから、互いによく似ているもののたとえ。(四字熟語辞典より) 第19回からはlogirl公式サイト内「ラジオ」のページにてアフタートークが公開されています! 本編に入りきらなかったトークや、収録での出来事など。奥森とTPとゲストさんでお話しさせていただいています。 無料でお聴きいただけますので、こちらもぜひよろしくお願いします。 『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウント、フォロワーどんどん増えています! 第4回の収録後記を書いたとき、フォロワーが1000人を突破したと書きましたが、現在なんと3000人を超えました。 完全に『99人の壁』に出演させていただいてからの爆増です、やったあ。 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021 番組やQJWebでの連載の最新情報、裏話などを投稿するほか、私もツイートをしています。 ぜひフォローよろしくお願いします。 番組やこの収録後記の感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、番組の感想、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題、「街の公私混同」のコーナーなどなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 次回のnoteでは「奥森、念願の2時間ひとりしゃべりラジオに挑戦」を中心に書く予定です。お楽しみに。
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友達増やしと、あふれ出すオタク感|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第4回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 恐ろしいほどスルスルと会いたい人に会えてしまう 初対面の大人に学校で所属している部活を聞かれたら「バニー部」と答えます。高校2年生17歳の奥森皐月です。 logirlにて毎週木曜18時から、私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が配信されています。 タイトルのとおり、私がプライベートでハマっている人やモノを公の場で熱く深く語り尽くす番組です。 ミュージシャン、芸人、アイドル、大喜利激強一般人など幅広いゲストをお迎えしてディープなトークを繰り広げています。 この番組が始まってからというもの、恐ろしいほどスルスルと会いたい人に会えてしまう。毎週好きな人が来てくれるというこの感動をみんなにも味わってもらいたいです。 『オールナイトニッポン』のように、『〇〇の公私混同』と帯番組にすることを目標にします。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、にゃんぞぬデシさん・スーパー3助さん・俺スナさん&冬の鬼さん・ukkaさんがゲストにいらした第14回から第17回までの振り返り。 logirlの本編とこの記事を併せてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! #14 にゃんぞぬデシ:恐怖すら感じるほど深いラジオ愛 お笑いファンのゲストと、好きを共有するシリーズ第3弾。 にゃんぞぬデシさんとは『ハライチのターン!』(TBSラジオ)のヘビーリスナーという共通点から魅力を熱く語り合いました。よくよく考えるとリスナーだけが集まって愛を語るコンテンツってかなり珍しいですよね。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #14 にゃんぞぬデシ』) にゃんぞぬデシさんを知ったのもラジオがきっかけ。5年ほど前に、Aマッソさんの番組に出演されていた高校生のアーティストがにゃんぞぬデシさんでした。 トークが独特で、曲がとにかくかっこいい。そのギャップが鮮烈に印象に残っています。 ずっと気になる存在だったので、ようやくお会いできてうれしかったです。 音楽を始めたのも、お笑いを好きになったのも、ラジオがきっかけとのことでとても親近感が湧きました。ラジオ愛の強さを感じる1時間。 それにしても、この番組のゲストは学生時代に暗い過去がある人が多すぎる。にゃんぞぬデシさんもつらい学校生活のなかラジオが救いだったとおっしゃっていたのが印象的です。類は友を呼ぶ、という言葉の正しさを痛感します。MCの私が“そっち側”なので無意識に同じ境遇だった人を引き寄せている可能性が高い。 番組を観ていただいた方はおわかりでしょうが、にゃんぞぬデシさんがかなりノリノリで加速しながらトークをしてくださりました。今オススメの芸人さんや『ハライチのターン!』の私的神回もたくさんご用意いただいたのですが、明らかに1時間番組で紹介できる量じゃない。台本が真っ黒になっていて怖さすら感じました。愛が深くて素敵。 ハライチ岩井さんがにゃんぞぬデシさんに道で声をかけられたというトークを、3年ほど前にしていたのが頭に残っていたのですが、その日のことをにゃんぞぬデシさん目線でも聞けたのがうれしかったです。バースデーソング裏話など、『ハライチのターン!』とにゃんぞぬデシさんの歩みを聞くことができた貴重な回になりました。 後半はオタクふたりの喫茶店トークなので、温かな目でご覧いただきたいです。連絡先を交換させていただいたので、今度はプライベートで同じことしたいと思っています。私はこの番組を使って友達を増やそうとしている。公私混同だろ? <にゃんぞぬデシさんを表す四字熟語>独具匠心 詩文や音楽などの芸術に対する、独創的なアイデアや技巧を備えていること。(四字熟語辞典より) #15 スーパー3助:型破りの大暴走 公私混同名物、芸人さん大暴走回。過去最高というか最低を叩き出しました。個人的にはかなり気に入っている回です。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #15 スーパー3助』) 当初の予定では、昨年アンゴラ村長さんと破局されたことから恋バナをメインにしようという計画だったのですが、ものの見事に崩されてしまいました。まず初めに、3助さんがあり得ない量のフリップや手作りお面を用意して持ってきてくださったことが大きな原因だと思います。勝因? 敗因? わからない。 初めは、ワケのわからないお面を被せられて時間を無駄にされて腹が立ちそうになりました。しかしそれらを通じて「スベる」という体験をくださった3助さんに、今は感謝しています。貴重です。聞きたかった話のほとんどは聞けませんでしたが、アングラ時代の強烈なエピソードをいくつか話していただけたのはよかった。 地下芸人、アングラ芸人、職務質問芸人、というものの違いを初めて知りました。アングラお笑い徹底ガイドと呼んでもいいくらい丁寧な説明だったな。 頼んでもいないのに、勝手にフリップのピンネタを披露してくださったり、コーナーを潰されてしまったり、最低限読まなきゃいけない台本が読めなくなったりしたことで、エンディングで私はやってしまいました。メディアに出てはいけないくらいの嫌な顔をしてしまいました。この場を借りてお詫び申し上げます。反省しています。 ただ、ひどい仕打ちを受けたにもかかわらずコンプライアンスに引っかかるような悪口をグッと飲み込んだことは褒めていただきたいです。 3助さんが、耳元でミニ四駆のモーターを回して髪の毛が絡まり取れなくなるという事件も番組終了間際で起こりました。フォローしきれず番組が終わりました。これも謝ります、ごめんなさい。 終了後、絡まりを取ろうとしている3助さんに番組プロデューサーのTPが「もう一回電源入れたら取れるんじゃないっすか」と言ってカメラも回っていないのにもう一度やらせていました。本物のサイコパス。こんな人と第15回までやってきたのかと思うと怖かったです。笑っちゃったけど。 後日、3助さんがネットラジオアプリGERA『スーパー3助のCome back my singer』にて私とTPと番組を絶賛してくださっていて驚いた。この番組を通じて「芸風ヤバイ人ほどいい人」ということがよくわかりました。結局いい人なんかい。 <スーパー3助さんを表す四字熟語>苦心惨憺 心をくだいて非常な苦労を重ね、工夫をこらすこと。(新明解四字熟語辞典より) #16 俺スナ&冬の鬼:ふたりが講師の大喜利塾があったら週6で通う 芸人さんでもタレントさんでもない人を普通に呼ぶ、それが『奥森皐月の公私混同』です。 ついにオオギリストにも手を出しました。 この世には、芸人さんではないけれど大喜利のライブで活躍するおもしろ一般人大喜利プレイヤーという存在がいます。その中でも特に有名なふたりをお呼びしました。おふたりによれば、オオギリストという言葉は厳密に言えば「ない」そうです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #16 俺スナ&冬の鬼』) 普段は大喜利をしている姿しか観られないため、プライベートのことやこれまでのお笑い・大喜利ヒストリーを聞けたのがとても楽しかったです。大喜利ファンのみなさんからの反響も大きく、たくさんの方に観ていただけてよかった。 俺スナさんが、出会って2秒で「ぎょねこ落ちちゃいましたね」と声をかけてくれておもしろかったです。ちょうどキングオブコント1回戦の結果が出たばかりで、私もかなり衝撃を受けていたのでお笑い好きとして共有できて幸せでした。 収録前は緊張しているとおっしゃっていましたが、大喜利が始まるとさすがプロ。 一答も逃さず爆笑をかっさらっていて、ただただカッコよかったです。 また、私が用意した大喜利回答を添削していただく時間がありましたが説得力に圧倒されました。端的かつ的確で、絶対そうしたほうがおもしろい!というアドバイスをしていただけて感動。ふたりが講師の大喜利塾があったら週6で通います。 この収録は、とにかく「俺スナさんと冬の鬼さんにつまらないヤツだと思われたくない!」という一心で臨みました。即興での大喜利では大ケガせず終わったので本当に安心した。 毎回収録後にサムネイル撮影をするのですが、この回のサムネは私が手を開き、冬の鬼さんがピース、俺スナさんがファイティングポーズ、というバラバラの構図になっていて。撮影しながら「あ!じゃんけんであいこだ!」とついこぼした私。大喜利を終えた解放感からか気が抜けて鬼つまらないことを口にしてしまったことを後悔しています。これからもおふたりの大喜利を観て勉強しよう。修行。 <俺スナさん&冬の鬼さんを表す四字熟語>一心精進 ひとつのことに心を集中させて励むこと。 #17 ukka:過去、現在、未来のukkaが知れる1時間 初のグループ! 初のアイドル! 初の同じスターダスト所属! マニアックお笑い番組を久々に抜け出した回です。 メンバーが4人ということで、ふたりずつ前半後半に分かれたこれまでにない構成でお送りしました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #17 ukka』) ukka(旧・桜エビ〜ず)さんが結成された2015年ごろから、私もスターダストで活動をしていたため一方的に同世代の意識を持っていました。私立恵比寿中学さんの番組で放送されていた桜エビ〜ずの活動報告コーナーも欠かさず観て、気づいたときにはファンになっていた私。楽曲を聴いたり活躍を見たりして、元気もやる気ももらってきました。 かなり昔に事務所のレッスンで何度かお会いしていたのですが、それ以外ほとんど関わりはなくてきちんとお話しできたのは今回が初めて! 聞きたいことを聞き尽くせて、とてもいい時間になりました。何よりメンバーのみなさんと少し距離を縮められた気がします、幸せ〜。 先日リリースされた最新ミニアルバム『T.O.N.E』についてトークした場面では、各メンバーのフィーチャー曲について詳しく教えてもらえました。楽曲に対する想いがそれぞれ素敵だし、何より話せば話すほど全員の人柄のよさが伝わってきて最高。ハッキリ言います、ukkaは最高のグループなのです。 メンバーの脱退により、変更が重なった際の苦悩や、窮地に追い込まれてからの努力の話をまっすぐしてくださり心を打たれました。4人で支え合い、絆を深めていったというエピソードに感動して、ちゃんとウルウルしてしまいました。自分でOAを観返しながら、きっちり「お前が泣くんかい」と画面に向かって大声でツッコみました。 これまでのukka、今のukka、これからのukka、3つの面をありのままに伝えてくれて、本当にうれしかったです。 基本的に、同世代のMCとしてきちんと任務を果たそうという心持ちでしたが、ukkaを目の前にすると全員かわいすぎてペースが崩れました。1カ所、村星りじゅさんと芹澤もあさんに「さつきちゃーん♡」と連呼していただくご褒美タイムがあり、しっかり昇天しちゃった。客観的に観て、さすがに私のリアクションが「きも」でしたね。 これからもukkaさんのことをずっと応援しています。またいつでも来ていただきたい。次はオタク感をもう少し薄める努力をします。これに関しては公私混同すぎてファンの方々に怒られないか不安なのです。 <ukkaさんを表す四字熟語>羽化登仙 酒などに酔って快い気分になることのたとえ。天にも昇る心地。羽が生え仙人になって、天に昇る意から。(新明解四字熟語辞典より) 『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウント、おかげさまでフォロワー1000人突破! 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021 番組やQJWeb連載の最新情報、裏話などを投稿するほか、私もツイートをしています。 これまでの放送回の書き起こし文章も上がっていて、なかなかおもしろいですよ。 私の日常的なことも載せているので、ぜひフォローよろしくお願いします。 また番組やこの収録後記の感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、奥森にオススメしたいエンタメ情報、叱咤激励、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題、「街の公私混同」のコーナーなどなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 次回のnoteでは「トーク番組のコンセプト大崩壊! 1時間ひとり大喜利女子高生と化した奥森皐月」を中心に書く予定です。お楽しみに。
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憧れの存在と「下ネタ」のプロが並ぶ大冒険キャスティング!|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第3回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 好きなことを好きなだけできている幸せを感じます 先日知人に「奥森さん、お笑いライブ行ってない日ある?ってぐらい行ってますね」と言われました。 行ってない日もあります、高校2年生17歳の奥森皐月です。 logirlにて毎週木曜18時から、私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が配信されています。 公私混同を観ている人こそが、この世の誰よりも最先端だと言われているそうです。 このnoteを読んでくださっているあなたが、これからはトレンドを作っていくことでしょう。 「ライトな層を完全に置いていく宇宙一マニアックなトーク番組」をテーマに、毎週ゲストの方々とディープなお話を繰り広げています。突然ハガキ職人さんの個人名を挙げたり、昔のラジオ番組のひとつの放送回について語ったりと相変わらず大暴れです。 それでも追いかけ続けてくれる人を、私は一生を懸けて幸せにしてあげたいな。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、諭吉佳作/menさん・囲碁将棋さん・松井咲子さん・ルシファー吉岡さんがゲストにいらした第10回から第13回までの振り返り。 改めて並びを見ると、大冒険キャスティングです。 好きな人をお呼びして、好きなことを好きなだけできている幸せを感じる。 logirlの本編とこの記事をあわせてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! #10 諭吉佳作/men:この胸の高鳴りは…恋? 番組がスタートしてすぐ、番組プロデューサーのTPに会いたい人物としてお伝えしました。 私の大大大好きなアーティストである諭吉佳作/menさん。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #10 諭吉佳作/men』) 音楽活動を始められたばかりのころ、同世代で同じ中学生でこんなにも素晴らしい作品を作る人がいるのかと衝撃を受けました。紛れもなく私が影響を受けているひとりです。 ゲストに決まってからお会いできるまで、ずっとドキドキが止まらなかった。当日も、お会いするまでの時間は味わったことのない胸の高鳴りを感じました。 第9回まではお笑いの話題が中心だったため、私自身も「おもしろさ」を意識していました。ゲストの方にも、おもしろいと思ってもらえるように振る舞っていたのですが、この回はまったく違う。 憧れの諭吉さんに少しでも「かわいい」と思ってもらいたい……という謎の感情が働きました。 いつにも増して涙袋のキラキラも増やしてしまったし。恋? 収録中はただ楽しく幸せな時間でした。 一度、諭吉さんへの想いを語ろうとしたところ完全に泣きそうになった部分があります。これまで積み重ねてきた気持ちが溢れて感情が昂りました。 MCが勝手にしゃべって泣くのはかなり意味がわからないぞ?という冷静な客観の奥森がその涙を抑え込んでくれたのでよかったです。 こんなにもたっぷりと諭吉さんがお話をされる機会は貴重で、とてもありがたかった。 謎に包まれているイメージでしたが、目の前にするとかわいらしく愛嬌のある魅力的な方だなぁと感じました。 そして、「奥森、これやっときな!」のコーナーでは一緒に制服ディズニーをしませんか?という提案をしていただき昇天。 この日が最終回でも許せました、うれしすぎる。 実現した際にはすぐにお知らせしますね。 諭吉佳作/menさんにお会いすることがひとつの目標だったため、それが叶った至福の回でした。 ここからは諭吉さんと仲よくなることが目標。ありがとう公私混同。 <諭吉佳作/menさんを表す四字熟語>鏡花水月 はかない幻のたとえ。目には見えるが、手に取ることのできないもののたとえ。また、感じ取れても説明できない奥深い趣のたとえ。(新明解四字熟語辞典より) #11 囲碁将棋:目の前で囲碁将棋が“囲碁将棋している” 2021年、注目を浴びている芸人さんのひと組なのではないでしょうか。 おふたりとも40歳で芸歴17年目となった今、どうしてここまでの人気になっているのか純粋に興味がありお呼びしました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #11 囲碁将棋』) 何より、ネットラジオアプリGERAにて配信中の『囲碁将棋の情熱スリーポイント』があまりにもおもしろすぎる。おふたりのトークを目の前で見たいという、ファンの願望がTPと合致しました。 本物の囲碁将棋さんは想像を遥かに上回る大きさと、人柄のよさでした。 私からすると囲碁将棋さんはもうベテラン芸人さんなのですが、お会いするなり芸歴1年目かと思うほどのハキハキ挨拶をしてくださって感動しました。お優しい……。 本編では、序盤から私のお笑いを観すぎているオタク感が滲み出てしまったのか「もっと時間を大切にしたほうがいい」「お笑いを観すぎていて変態」と言われてしまいました。 変態呼ばわりされているのに、にこにこ喜んでいる自分が画面に映っていたときは相当キモかったです。気をつけます。 囲碁将棋さんのこれまでについてお聞きしたところ、どこにも明かしていなかった情報をたくさん教えてくださりました。 囲碁将棋は襲名制、現在は8代目、国に守られている芸人であること、などなど。 ファンの方必見の内容だったのではないでしょうか。今からでも遅くないので絶対に観てほしい。おふたりのすべてを知ることができます。 収録中にも言ったのですが、目の前で囲碁将棋が“囲碁将棋している”のを観られて最高でした。ふたりが会話するだけで、もうそれがひとつの漫才みたい。「囲碁将棋ブランド」のようなものを感じました。 お会いしてからより好きになってしまい、収録後すぐに大宮でのライブチケットを予約。すっかり私も囲碁将棋ファンです。 ここから、さらなる活躍が期待されている囲碁将棋さん。 テレビでも囲碁将棋しているところを観たいですね。 ちなみにサムネイルの写真の身長差がエグすぎると、少しTwitterがざわついていたのですが、あれは詐欺写真です。 囲碁将棋のおふたりが少しだけ高さのある台に乗った状態で撮影しました。 ネタバラシするタイミングもなかったので、ここで白状します。 <囲碁将棋さんを表す四字熟語>面目躍如 世間の評価に値する活躍をしていて、生き生きとしているさま。また、名声・世間体などがよりよくなるさま。(新明解四字熟語辞典より) #12 松井咲子:「お茶会」「平甲子園」「トゥーマス」「ポポゴリラ」… お笑いラジオ語り回の第2弾。 松井咲子さんのことはお笑い好き・ラジオ好きとして存じ上げており、ぜひお話をお聞きしたいと思っていました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #12 松井咲子』) 『JUNK 山里亮太の不毛な議論』リスナーとして有名な松井さんですが、そのほかのお笑いの趣味はあまりわかりませんでした。そのため、収録中に好きなお笑いをどんどん知れたのが楽しかったです。 お互いに「あ、この人ガチだな」と確信したためか、かなりフルスロットルでお笑いラジオ愛を語り合えました。 開始早々に松井さんが「ジャーゲジョージさん」という元ハガキ職人で作家さんの名前を挙げていてビビりかけました。すぐに「『SCHOOL OF LOCK!』とかやられている方ですね!」と返せてよかったです。 あの瞬間にこの回の成功が決まったのではないかと思います。 番組中盤からは「私的ラジオ神回ベスト3」と題し、お互いに好きなラジオ放送を発表し合いました。それぞれの好みが出つつ、共感できることも多くて楽しい企画でした。 ちなみにTPもベスト3を考えてくださりましたが、打ち合わせのときに「たった3つに絞るのはあまりにも酷だ」と言っていて笑いました。ベスト3と決めたのはTPなのに……。 スタジオにいる松井さん、奥森、TPの全員がアルピーANNリスナーの家族だという事実がとてもエモーショナルでした。2021年に「お茶会」、「平甲子園」、「トゥーマス」、「ポポゴリラ」、という単語を声に出して言えた幸せな日です。 帰り際、松井さんが台本にメモを残されて帰られていたそうです。 こんなの好きになってしまうに決まっている。いい人すぎる。 お綺麗で、スタイルがよくて、ピアノも弾けて、お笑い好きで、人格者。 何も勝ち目がなくてつらいですが、素敵な人で大好きになりました。 またラジオ振り返り回はやりたいです。 <松井咲子さんを表す四字熟語>一意専心 他に心を動かされず、ひたすら一つのことに心を集中すること。(新明解四字熟語辞典より) #13 ルシファー吉岡:下ネタのプロが放つ最もドラマティックな「きゅんです」 『奥森皐月の公私混同』では最近、サムネイルのおもしろさを追求しがちになっています。 ルシファー吉岡さんも、奥森との並びがよさそうという点から即決定しました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #13 ルシファー吉岡』) もともとルシファーさんのネタが大好きで頻繁にネタ動画は観ているのですが、本人のキャラクターやこれまでのことはあまり知りませんでした。 そのため、芸人さんになるまでのお話をじっくりと聞けてよかったです。 また、何よりも気になっていたのが「下ネタ」について。 上品さすら感じるルシファーさんのネタの不思議を解き明かしたいと思っていました。 照れない、一理あると思わせる、など具体的な説明がどれもわかりやすくおもしろかったです。 私からお聞きしておいて失礼なのですが、女子高生の前で話すのはかなり難易度の高いトークだったかと思います。 ところが、その紳士的な口調と美しい言葉遣いからまったくいやらしさのない、上質なお話をしていただけました。さすが下ネタのプロ。かっこいいです。 トーク中のルシファーさんから醸し出されている「役者感」が凄まじかったのですが、皆さんは感じましたでしょうか。 数年後には、朝ドラの重要な役を演じるような俳優さんになっているのでは? カメラが回っていないときもずっとそのテンションでした、根本からああいう人なのかな。 ルシファーさんに女子高生カルチャーを教えるという、異文化交流の時間もなかなか楽しかったです。「きゅんです」を知らないとのことで、TikTokを教えるといういかにもJKらしいことができました。いい具合にルシファーさんがおじさんでした。 ただ、演技力の高さとおもしろさでTikTok史上最もドラマティックな「きゅんです」が完成してしまいました。 この動画、本当にTikTokに投稿したらバズるのでは? どんな出来になっているかは、番組本編と番組公式Twitterでお確かめください! <ルシファー吉岡さんを表す四字熟語>明目張胆 恐れることなく、思い切って事に当たること。また、はばかることなく、公然と物事をやってのけること。(新明解四字熟語辞典より) 先日『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウントが開設されました。 私が連載させていただいているQJWeb「奥森皐月は傍若無人」との共同運営アカウントです。 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021 番組と連載の最新情報や裏話を投稿するほか、私もツイートをしています! 観に行ったお笑いライブなど、日常的なことも載せているのでぜひフォローよろしくお願いします。 フォローしてくださった瞬間に大きな声でありがとうございます!と叫びますよ。 また、番組やこのnoteの感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、奥森にオススメしたいエンタメ情報、叱咤激励、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題などなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 次回のnoteでは「あれ、この番組のゲスト、学生時代暗かった人が多くない?」を中心に書く予定です。お楽しみに。
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運命的な出会いも、全力の“りーもこ”も!|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第2回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 予想される展開をいかに裏切るか選手権 最近大喜利にハマりすぎて、ついに大喜利のメール投稿を始めてしまいました。奥森皐月と申します。 ほかの人よりほんの少しだけお笑いを見る時間が長いだけの17歳、高校2年生です。 logirlにて毎週木曜18時から『奥森皐月の公私混同』が配信されています。 一部の層で話題だと言われていたり、いなかったりする番組。 「ライトな層を完全置いていく宇宙一マニアックなトーク番組」をテーマに、毎週ゲストの方々とディープなお話を繰り広げています。 マニアックすぎるトークにも果敢についてきてくれる視聴者の皆さんには感謝しかありません。いつもありがとうございます。 お呼びするゲストさんは、私と番組プロデューサーのTP(高橋プロデューサー)による話し合いによって決めているのですが、回を増すごとに「攻めた人選」になってきている気がします。 「予想される展開をいかに裏切るか選手権」のような会議、これがとても楽しいです。 「あの人は今こそ呼びたいね」とか「このゲストの流れはオシャレだねぇ」とか、感覚を麻痺させながら毎週考えています。 さて、このnoteは番組収録のウラ話や収録を通して感じたことをMCの私目線で書く放送後記。 今回は第6回から第9回までを順に振り返っていきます。 logirlの本編とnoteの記事、ともに観ていただけるとより楽しめるのではないかと思います……。 #6 みほとけ:普段から交流のある頼れるお姉さん これまでの公私混同の放送の中で、最も「私」の成分が多かった回。 プライベートでお友達として仲よくしていただいているみほとけさんをお招きしました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #6 みほとけ』) 毎週欠かさずゲストの方をプレゼンするコーナーを設けていますが、みほとけさんとの回だけはそのコーナーもカット。 ただただ「お友達」として1時間楽しくゆるくおしゃべりする。はずでしたが。 みほとけさん持ち前のまじめさが炸裂し、しっかりエピソードトークを何本も用意してきてくださりました。 頼れるお姉さんです、私はほぼ何も考えないで収録に臨んでいたのに。 収録日は私の誕生日が近かったため、サプライズでお祝いもしていただきました。 プレゼントでいただいた単眼鏡がとてもお気に入り。 次にみほとけさんとお寺に行くときは、この単眼鏡を片手に隈なく見て回りたいです。 いつの間にか普段喫茶店で話しているときと同じテンションになり、私はかなり素の状態でトークしていました。放送を観て「こんなに思ったことをそのまま言ってしまっていたのか」と驚いたくらいです。それだけ、みほとけさんといると安心してしまうのでしょうね。 収録後帰宅すると、みほとけさんから超長文のラインが届いていました。 その日の収録についてひとり反省会をした上で、信じられないくらいまじめに感想を綴った文章。 お友達として、いつも他愛ない話を送り合っていたLINEに突如現れた「芸人・みほとけ」のストイックさに感銘を受けました。 そして、この素敵な人が仲よくしてくださっていて幸せだなと感じて。 謎のスイッチが入ってしまい、しばらくアツい会話が続いたので全身に熱気を帯びた状態で果てるように眠りにつきました。 ふたりで出した結論は「ウチら最高の仲間だね」です。 文化祭終わりの学生も同じことを言うと思いますが、私たちの想いは比べ物にならないくらい強いです。 みほさん、今後ともよろしくお願いします。 <みほとけさんを表す四字熟語> 知己朋友 よく自分のことを知ってくれている友人のこと。また、よく待遇してくれる人。(新明解四字熟語辞典より) #7 ムラムラタムラ:随所に表れるりーもこ愛 破壊力抜群の回になることは容易に予想できたので、楽しみな気持ち半分、恐怖心も大きかったです。 「もっこりからのりーもこちゃん」を女子高生にやらせていいのか、とTPも悩んだそう。 ちなみにマネージャーさんからは何も言われませんでした。スターダストプロモーションはりーもこOKの事務所のようです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #7 ムラムラタムラ』) 前半は完全にムラムラタムラさんに主導権を握られてしまい、ただただ、りーもこを全力でやる時間でした。厳しい指導でしたが、随所に表れるりーもこへの愛が素敵だと思いました。なぜ厳しいりーもこの指導を受けなくてはならないのか?という疑問はとっくのとうに捨てています。 番組後半では、ムラムラタムラさんのプライベートの面や“普通”な部分を知ることができてよかったと思います。 カメラが止まると、さらに好青年な部分が出てくるムラムラタムラさん。 「フリーだと大変ですよね」と何気なく言っただけなのに、これまでの芸人生活の変遷やフリーになった経緯、今後どうしていきたいかまで丁寧に教えてくださりました。 この女子高生に、将来のことまで詳しく教えてくれる優しい人です。聞いてもいないのに。 帰り際の「またお願いします」という深いお辞儀が脳裏に焼きついています。 普段の姿を知ってしまうと、ますます舞台で観るムラムラタムラさんがおもしろいです。 このエピソードを踏まえた上で、みなさんにも第7回を観返していただきたい。 新たな発見があるかもしれません。 そして、奥森がノリノリでりーもこをしていることに疑問を抱くはずです。 私も自分で放送を観たときに「なんでこんなに向上心を持ってもっこりからのりーもこちゃんをしているのだろう」と怖くなりました。 ネットラジオアプリGERAで放送中のムラムラタムラさんの番組でも、その人柄が垣間見えるのでぜひ聴いていただきたいです。#6の恋愛について話す回が私のお気に入り。 <ムラムラタムラさんを表す四字熟語> 気骨稜稜 自分の信念を守って、貫き通そうとするさま。(デジタル大辞泉より) #8 エアコンぶんぶんお姉さん:「エアコンぶんぶんお姉さん」を知りたければこれを観るべき! 芸歴2カ月という、今までお呼びした方々の中でも圧倒的にフレッシュなゲスト。 4月に『全力!脱力タイムズ』に出演されたことをきっかけに脚光を浴び始めた、今一番注目度の高い芸人さんのひとりです。 番組内で「こんね」と呼ばせていただくことになったので、ここからは「こんねさん」と書きます。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #8 エアコンぶんぶんお姉さん』) 印象的な名前と、かわいらしい見た目で見る人の心を惹きつけるこんねさん。 しかしながら、調べても調べても素性はわからないし、どんな人なのか想像もつかない謎多き存在でした。 そのようななかで、『奥森皐月の公私混同』がいち早くこんねさんの実態に迫れたのはとてもうれしかったです。 お笑いを始めるまでの人生や普段の様子を知れた上に、想像の何倍も上手だった歌の披露まで。「エアコンぶんぶんお姉さん」を知りたければこれを観るべき!という1時間になっています。 こんねさんの空気感が徐々にスタジオを覆っていくのが見どころ。 ひとつひとつの言葉のチョイスに、鋭さと強い魅力を感じました。 年齢が近いことからシール帳のトークが盛り上がったり、意外な共通点が見つかったり。 近しいものを感じるな、という直感が確信に変わりました。 今後、プライベートでもお話ししてみたい存在です。また違った部分も知りたい。 「タナカ電機」としてコンビでも活動するこんねさん。漫才をしている姿も観に行きたいと思います。 ちなみに、この回の「奥森、これやっときな!」のコーナーでネット大喜利を始めたほうがいいと教えていただいたのもあり、大喜利投稿を密かにスタートしました。 大喜利投稿職人として名が知れるまでは粛々と修行を積みたいと思います。 なぜ修行を積まなくてはいけないのか? その疑問もとっくのとうに捨てています。 こんねさんの願いも背負って、大喜利を学んでいく。 <エアコンぶんぶんお姉さんを表す四字熟語> 花紅柳緑 春の美しい景色の形容。また、色とりどりの華やかな装いの形容。また、人手を加えていない自然のままの美しさのこと。花は紅に柳は緑の意。(新明解四字熟語辞典より) #9 桑原由気:声優界随一のお笑い好き 第8回までのゲストはすべて芸人さんでしたが、ここで突如お呼びした声優さんのゲスト。 しかし結果的にはこれまで以上に「お笑い濃度」の高い放送になりました。 声優界随一のお笑い好きで知られる桑原さん。芸人さんをゲストに呼ぶラジオ番組を放送されていたことをきっかけに、私は桑原さんのことを知りました。寄席を主催していると知り調べてみると、お笑い好きを煮詰めたようなキャスティングで驚いたことをよく覚えています。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #9 桑原由気』) 一方の桑原さんは、私がQJWebにて書いた「うしろシティ星のギガボディが終わるのがしんどい」という内容の記事を読んでくださっていたそう。 お互いにお笑い好きとして、番組でお会いする前から認知していたという事実がまずおもしろかったです。 実際にお会いすると、そのかわいらしさと華やかさに圧倒されました。しかし、トークをすると数十秒で「同じ側の人間だ」とわかり安心。 その優しくて魅力的なお声から「中野twl」「ゲレロンステージ」「虹の黄昏」と地下お笑い用語が次々と飛び出すのが、とにかく幸せ。 私もカメラを忘れるほどお笑いトークに夢中になってしまい、後半は完全にライブ帰りにファミレスで語り合うお笑いファンふたりでした。 「徳原旅行」「レッドブルつばさ」「スクールガールファンタジー」「ファンファーレがきこえる」という4単語をひと息で言ってしまったことは少し反省しています。 そして、1時間の放送の中で桑原さんと私が『マイナビ Laughter Night』という単語を3万回くらい発していました。他局の番組なのに。 どの話をしても通じ合えることが終始うれしかったです。 今後、賞レース後にはお互いにメモを取ったノートを持ち寄って振り返り会をしたいです。 賞レースのメモを取っている人、自分以外で初めて会いました。 これは運命的な出会いな気がしています。 <桑原由気さんを表す四字熟語> 兼愛交利 人を区別なく広く愛し、互いに利益を与え合うこと。中国戦国時代の墨子の思想。(新明解四字熟語辞典より) 番組の感想メールも受付中です こうして振り返ると、バラエティに富んだ番組だということがより鮮明にわかりますね。 先日「奥森皐月の公私混同を通して、ゲストの方を好きになった」という声をいただけたのですが、この意見こそが目指している到着地。 ゲストの方を知らなかった人にも魅力が届くといいな、と思っています。 番組の感想などはすべて s-okumori@tv-asahi.co.jp までお送りください。 ゲスト案、奥森にオススメしたいエンタメ情報、叱咤激励、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題などなんでもOKです。 いつか大喜利をする日が来るのかと思うと恐ろしいのですが、募集しています。 桑原由気さんにお声がけしたのは視聴者の方からのメールがきっかけだったので、ぜひぜひゲスト案も送ってください。 お便りを読むのも毎週の楽しみになっています、よろしくお願いします。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 今後の放送とゲストもお楽しみに。 ちなみに、TPとの会話で「俺スナさん」という単語が何度も出てきていることだけご報告しておきます。 皆さん。どうにかついてきてください。 ツイッターも更新中、フォローよろしくお願いします! 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021
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冠番組が始まりました|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第1回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の「奥森皐月の公私混同」。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆。毎月1回更新する連載コラムです。 起きている時間は常に何かしらのお笑いに触れています みなさん、初めまして。奥森皐月と申します。 どこにでもいるような高校2年生の17歳の女の子。 唯一変わったところがあるとするならば、今年の4月から冠番組がスタートしたことくらいです。 『奥森皐月の公私混同』は、お笑い大好きJK奥森皐月が“プライベート”でハマっている人をゲストに招き、マニアックな質問をぶつけたり、お願いごとを聞いてもらう公私混同上等のトークバラエティ。 幼いころから芸能活動をしてきましたが、まさか高校2年生で自分の番組が持てるとは思いませんでした。人生序盤に起きた急展開です。 しかも、信じられないくらいの自由を授けられています。 番組タイトルも、コーナーの内容も、ゲストも、トークの内容も、私が「こうしたい!」と言ったとおりになる。 大金持ちの子供でもここまでの自由はないだろうなぁと思いながら毎週収録に望んでいます。喜ばしい限りなのですが。 テレ朝さんはいったいどうなっているのでしょう。ただの女子高生の夢を叶えてくれる素敵な会社です、最高ですね。 お笑いを観ることが趣味で、起きている時間は常に何かしらのお笑いに触れている。 テレビ・ラジオ・ライブ・ネット配信・SNS・紙媒体、すべてのお笑いを主食として生きてきた私は、とにかく芸人さんが好きです。 「公私混同」ではその中でも特にお話ししてみたい方をゲストにお呼びして、1時間トークをしています。今のところは芸人さんのゲストばかりですが、今後はいろいろな職種の方が来てくださるはず。 改めて見ると、相当ヤバイ番組名ですね。 ちなみに #公私混同 だけだと汚職のニュースが出てきてしまうので、感想を書いてくださるときは #奥森皐月の公私混同 でお願いいたします。 さて、この「収録後記」では番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを書いていきます。 番組の視聴と共に楽しんでいただければ何よりです。 #1 サスペンダーズ:「この人たちは売れそうだ!」という直感 初回のゲストがこのおふたりで本当によかった。 大事な大事な第1回をサスペンダーズさんが彩ってくださりました。 ライブでの発言の真意を聞いたり、2年前に古川さんが投稿していたnoteについて究明したり。 深過ぎる話題が飛び交い、「ライトな層を完全に置いていく宇宙一マニアックなトーク番組」という方向性が完全に体現された回だったと思います。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #1 サスペンダーズ』) 今年1月に発売された『anan』(マガジンハウス)にて、お笑い好きとして今年注目の芸人さんのひと組にサスペンダーズさんを挙げてから初の対面。 実際にお話しすると、ますます「この人たちは売れそうだ」と思いました。直感ですが。目標を話すときの熱量とパワーが凄まじかったです。 また、尻もちをつくところを見たいというお願いに応えていただいたとき、即興で作ってくださったセリフが本当におもしろくて感嘆してしまいました。 ネタの作り方や、お笑いに対する考えがロジカルで、なるほどと納得できるお話の連続。 「コント師は2度売れなくてはならない」というワードが出てきたときには内心ガッツポーズでした。そこまで話してくださった依藤さんの優しさに感謝です。 番組を観て、サスペンダーズさんに興味が湧いた方は、Podcast番組『サスペンダーズのモープッシュ!』、YouTube『サスペンダーズの稼げ年収1000万チャンネル』がおすすめ。 そして、最新のネタ動画『フクロウカフェ』も最高です。 奥森“モープッシュ”芸人、サスペンダーズさんが2021年大活躍することを願っています。 #2 寺田寛明:今からでも寺田さんの塾に通いたい 『R-1グランプリ2021』が終わって間もなく、ゲストに来ていただくならダントツで寺田寛明さんだろう。番組プロデューサー(TP)と意見が合致してお呼びしました。 共通のアイドルが好き、ラジオ好き、子供のころからお笑いが好き、オタク気質など共通点が多いと思っていたので、トークしたいことのリストも盛りだくさん。 帰り道に「ラジオのこと話しそびれた!」と思ったところ、まったく同じ内容をツイートされていたので笑ってしまいました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #2 寺田寛明』) 現役で塾講師をしている寺田さんへの、授業をしてほしい!という私利私欲にまみれたお願いも叶えていただきました。 説明がわかりやすい、例文がおもしろ過ぎる、先生として優しい、の3点がそろっていて幸せでした。今からでも寺田さんの塾に通いたいです。 ただ、これが思いのほか視聴者のみなさまにも好評。塾の先生の一面を見ることは普段できないからなのでしょうか。 私宛てのファンレターに「寺田さんの塾講師の面を見せてくれてありがとう」という旨が書かれていて、公私混同とはいいものだなぁと思いました。 先月公開された寺田さんの電子書籍が素晴らしかったので、これを読んでいる心優しい文字好きのあなたにおすすめします。読みやすく、随所にある刺激的なエピソードがたまりませんでした。 寺田さん主催の大喜利ライブはとにかく楽しいです。大喜利ライブ初心者の方はぜひ一度観に行きましょう。 おもしろいし、髪がきれいです。すごくきれいなので生で見ていただきたい。本当にきれい。 #3 ランジャタイ:開始2分で再生を止めないでください 日に日に売れている気がします、ランジャタイさん。 5年ほど前からずっと好きで見ていた芸人さんなので、ゲストにお越しくださったのはうれしかったです。 椅子に座ってもらえない、拍手が止まらなくなってトークが進められない、質問に答えてくれない国崎さん。会話はできているのに、なぜか噛み合わなくて終始フワフワした空気になってしまう伊藤さん。 どちらも手強かったです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #3 ランジャタイ』) この収録で初めてランジャタイさんを見た私のマネージャーさんは大きなショックを受けていました。「椅子に座らないって」と連絡が来たくらい。 ただ、トークの中でおふたりの性格や人柄が垣間見られる部分もありました。 開始2分で再生を止めなければ、ランジャタイさんのことがもっと好きになる1時間だったと思います。 オール巨人師匠の等身大パネルを持って来ていただき、実際に目の前で見せていただけたのはいい思い出です。 帰り際、丁寧におふたりで師匠のパネルを袋にしまっていた姿が印象的でした。 YouTube『ランジャタイもういっちょ』にもお邪魔したので併せて楽しんでいただければと思います。 「TPラーメン」という知らない人からするとまったく理解できないフレーズを最近おふたりが頻繁に話題にしていますが、『ランジャタイもういっちょ』を観ればわかりますよ。 ここまでブレイクしてきても、ずっと変わらないスタイルを貫いているのが格好いいです。 本物の欽ちゃんの前で『欽ちゃんの仮装大賞』のネタを披露する日はいつだろうか、と心待ちにしています。 #4 ママタルト:「まーごめ」を徹底解説 昨年一度共演させていただいたことや、収録前月に単独ライブを観に行ったこともあり、とても盛り上がりました。 今や爆笑問題の太田さんも使っている巷で話題の「まーごめ」というフレーズ。 大鶴肥満さん考案のこの言葉について、徹底解説をしてもらったのはこの番組が初ではないでしょうか。 今後より広まっていき、「新語大賞」を獲る可能性もあるまーごめ。 正しい使い方を知り、みなさんもまーごめライフを送りましょう。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #4 ママタルト』) また、大喜利キングの檜原さんには大喜利の極意と必勝法を教えていただきました。 令和ロマンさんのYouTubeで檜原さんが大喜利の解説をしている動画を観て感動したので、直々に学びたいと思いお願いした企画。 自分のキャラを利用することが重要とのことで、奥森皐月の活かし方を考えてくださりました。アドバイスを受けたとおりにやっただけで少し大喜利力が上がった気がします。 教えることも上手なのか...…名選手であり名監督です。 収録後に楽屋で、缶コーラを半分こしてマクドナルドのハンバーガーを食べていたとTPから聞きました。かわい過ぎやしませんか。 朗らかなオーラはおふたり共にじみ出ていますが、その何十倍か穏やかで素敵。 肥満さんの体重の半分くらいは優しさなのかもしれません。 単独ライブのネタが10本中10本おもしろいし、第3回単独ライブも控えているようだし、今後各所でママタルトさんを観られるのではないかと楽しみにしています。引きつづきまーごめです。 #5 まんじゅう大帝国:賞レースでもっと好成績であるべき芸人さん ゲストにお呼びするのはもちろん私が大好きな方々なのですが、まんじゅう大帝国さんはその中でも特にプライベートで応援している芸人さん。 昨年著書を出版された際にサイン会に行ったほど。初めてきちんとお話しすることができてうれしかったです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #5 まんじゅう大帝国』) 映画や本など、2020年は幅広く活躍されていたため、それぞれの裏話をお聞きしました。 ただ、一番聞けてよかったことが『M-1グランプリ』について。 賞レースでもっと好成績であるべき芸人さんだと個人的に思っていたのですが、おふたりも同じように思っているようで安心しました。 『M-1』の審査員さま、頼むのでまんじゅう大帝国を3回戦よりも先に進出させてください。 また、落語についてのお話も伺いました。 ネットラジオアプリGERA内で配信中の落語について語る番組『まんじゅう大帝国の落語良いとこ一度はおいで』が大好きです。 敷居が高い気がするし難しそう、なかなか入りにくかった落語の世界へまんじゅう大帝国さんに誘われました。 演目についての説明がわかりやすく、短くまとめて披露する落語は初心者にぴったり。たくさんの人にオススメしたいラジオ番組です。 本編では、落語を披露するために必要なことも教えていただいています。 高座名をつけてもらう時間がとても幸せでした。 戴いた名前、かなり気に入っているのでどこかで使う日がくるといいなぁと思っています。 映画や本など、2020年は幅広く活躍されていたため、それぞれの裏話をお聞きしました。 ただ、一番聞けてよかったことが『M-1グランプリ』について。 賞レースでもっと好成績であるべき芸人さんだと個人的に思っていたのですが、おふたりも同じように思っているようで安心しました。 『M-1』の審査員さま、頼むのでまんじゅう大帝国を3回戦よりも先に進出させてください。 また、落語についてのお話も伺いました。 ネットラジオアプリGERA内で配信中の落語について語る番組『まんじゅう大帝国の落語良いとこ一度はおいで』が大好きです。 敷居が高い気がするし難しそう、なかなか入りにくかった落語の世界へまんじゅう大帝国さんに誘われました。 演目についての説明がわかりやすく、短くまとめて披露する落語は初心者にぴったり。たくさんの人にオススメしたいラジオ番組です。 本編では、落語を披露するために必要なことも教えていただいています。 高座名をつけてもらう時間がとても幸せでした。 戴いた名前、かなり気に入っているのでどこかで使う日がくるといいなぁと思っています。 まんじゅう大帝国さん出演の映画『実りゆく』は去年観た作品の中でも一番感動したので、自粛のお供にみなさんもご覧ください。DVD発売中です。 著書『笑いの学校』も読み応えがあり、お笑い好きなら読むべき本だと思いました。 「公私混同」は毎週木曜18時に最新回が公開 途中途中に宣伝が挟まりましたが、これはあくまでも私の趣味です。 今後も頼まれてもいない告知をバシバシ入れていきます。 多くの人に、私の大好きな方々を観ていただきたいという一心で毎週番組の収録を楽しみにしています。 少し綺麗事を言い過ぎました。好きな人をお呼びして、私的なお願いまで叶えてもらいたいという気持ちもあります。公私混同なので。 (写真:『奥森皐月の公私混同』) 毎週木曜18時に最新回が公開されます。 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひよろしくお願いします。 次回の記事では、ムラムラタムラさんがカメラが回っていないときは信じられないくらいいい人だったことを中心に書く予定です。お楽しみに。
Daily logirl
撮り下ろし写真を、月曜〜金曜日に1枚ずつ公開
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清乃あさ姫(Daily logirl #195)
清乃あさ姫(せいの・あさひ)2005年9月2日生まれ。千葉県出身 Instagram:asahi.seino.official 『なんで私が神説教』(日本テレビ)綿貫陽奈役で出演中 撮影=石垣星児 ヘアメイク=渋谷紗矢香 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
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汐谷友希(Daily logirl #194)
汐谷友希(しおや・ゆき)2004年9月14日生まれ。静岡県出身 Instagram:yuki__shioya 撮影=石垣星児 ヘアメイク=内山紗弥 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
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田畑志真(Daily logirl #193)
田畑志真(たばた・しま)2005年12月24日生まれ。熊本県出身 Instagram:shiima1224 X:@shima_tabata TikTok:shiii1224 撮影=石垣星児 ヘアメイク=爽来 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
Dig for Enta!
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一夫多妻制は円満なのか? “竜人は救世主♡” 清 竜人25新たな夫人たちの本音
清 竜人25(きよし・りゅうじんトゥエンティーファイブ) シンガーソングライターの清 竜人が結成した一夫多妻制アイドルユニット。前回は2014年〜2017年にかけて活動。今年、清 竜人のデビュー15周年、清 竜人25結成から10周年という節目を迎えるにあたり、完全新メンバーで復活。第101夫人・清 さきな(頓知気さきな/femme fatale)、第103夫人・清 凪(根本凪/ex 虹のコンキスタドール、でんぱ組.inc)、第104夫人・清 真尋(林田真尋/ モデル・舞台女優)、第105夫人・清 ゆな(チバゆな/きゅるりんってしてみて)で活動している。 ※第102夫人・清 嬉唄(島村嬉唄/きゅるりんってしてみて)は7月のお披露目ライブで電撃脱退した Instagram:@kiyoshiryujin25_official 清 竜人25が復活した。“一夫多妻制アイドル”というコンセプトで、一世を風靡し解散したのが2017年のこと。あれから7年。新たな夫人たちを迎え、新生・清 竜人25として再スタートしたのだ。 オリジンの清 竜人25は伝説的な存在だが、現・夫人の4人も負けてはいない。アイドルとしてすでに活躍してきた彼女たちの実力は申し分ない。しかもグループの雰囲気もグッドで、第101夫人のさきなは、「もう家族みたい」と語るほどだ。 10周年だけど、新婚ほやほやの清 竜人25。インタビューで四者四様の夫人たちの魅力に迫ると、大いなる飛躍の予感は、確信に変わった。 目次夫人たちにとって清 竜人は「共通の敵♡」!?さきなは「思考力が深すぎて“ゴリゴリゴリ〜”ってしたくなる」凪は「おっちょこちょいなおばあちゃん」真尋は「素直でめんどくさい女」ゆなは「守りたくなっちゃう癒やし系」竜人くんはみんなの救世主新生・清 竜人25は「観ておかないと、もったいないよ?」KIYOSHI RYUJIN25 REUNION TOUR 「THE FINAL」 夫人たちにとって清 竜人は「共通の敵♡」!? ──なぜ、清 竜人25を復活させたんですか。 竜人 10年前は、アイドルシーンにおいて、男性が女の子と一緒にステージに立つユニットがなかったので、そこに一石を投じる気持ちがありました。そのクリエイション以外の部分で成し遂げたかったことは3年かけていったん完全燃焼した。今回は清 竜人25の10周年というアニバーサリーイヤーだったので、純粋なエンタテインメントグループとして、この時代にできるハッピーなもの作りをしたいなと思ったんです。 ──このメンバーならそれができると思ったんですね。 竜人 うん、そうですね。 ──竜人さんの誕生日でもある5月27日に復活が発表されましたが、いつごろ夫人たちに声がかかったんですか。 さきな 半年以上前かな。もうあんまり覚えてない(笑)。でも私は、お仕事ではなく、もう家族みたいだなと思ってます。最初は、真尋ちゃんがみんなの仲を取り持ってくれたよね。 真尋 私、人見知りしないんで。でも、みんないい人で本当によかった。今では夫人4人がすごく仲よくて、竜人が置いていかれてる感があるんですけど(笑)。 さきな だから、夫人たちの間でギスギスすることはなくて、(ステージ上でのウィンクとか)「みんなに平等にしてよ!」とか逆に竜人にクレームが行くことがあるかも? 1対4で、竜人が共通の敵みたいな♡(笑)。 ──寂しいですね。 竜人 そうっすねえ……(苦笑)。 ──楽曲も次々とリリースされています。竜人さんにとって、どんなポジティブな影響がありますか? 竜人 10年前のデビュー曲「Will♡You♡Marry♡Me?」のリアレンジverをリリースして、SNSなどでたくさんの方に聴いていただけている状況で。解釈を変えて世の中に提示することで、違う時代でも受け入れてもらえてるのは、すごくアーティスト冥利に尽きるなと思います。 ──夫人たちは、竜人さんの楽曲を歌ってみていかがですか。 夫人4人 (キーが)高すぎる! 真尋 あと、歌詞に「スケベ」なんて入る曲を歌ったことがなかったので(笑)、新鮮で楽しいです。 ゆな 歌うのが難しい楽曲ばかりですけど、難しいからこそ、どうやって歌うか考えるのが楽しいです。 凪 壁が高いからこそ超えたくなるよね。「竜人、もっと難しい曲提示してよ」みたいな。負けねえぞ!という気持ち。 竜人 すげえ、ストイック(笑)。 さきな かっこいい〜。私はもう「楽しいなぁ!」ってだけかも。「キーが高くて出ないよ〜、楽しい〜!」みたいな。 凪 「振り付けできないよ〜。楽しい〜」ってね(笑)。最終的には「楽しいなら、いっか!」なグループですね。 さきなは「思考力が深すぎて“ゴリゴリゴリ〜”ってしたくなる」 ──夫人同士のお互いの印象はいかがでしょうか? まずは、さきなさんについて。 凪 私たちの振り付けは、ワークショップ的に先生と一緒に考えることが多いんですけど、さきなちゃんは積極的に意見を言ってくれて、それがキレイなかたちにまとまることが多いんですよ。地頭がいいんだと思ってます。 ゆな さきなちゃんは、もう……このまんま人間! 凪&真尋 あはははは(笑)。 さきな これ以上でも以下でもない(苦笑)。 ゆな すごく明るいし優しいし、裏表がまったくない。あと、すごくいろいろ考えてる。思考力が深すぎて、こんなに明るいのに、こんなこと考えてるんだって思うと、ゴリゴリゴリ〜ってしたくなる。 凪 ゴリゴリゴリ……? ゆな 違う! わしゃわしゃわしゃ〜って頭を撫でたくなっちゃうような感じ、でーす(笑)。 真尋 さきなちゃんは言葉の選び方がすごく上品。私は本当に頭が悪いんで、思ったことをすぐ言っちゃうんですよ……。でも、さきなちゃんは、誰も嫌な気持ちにならない言い方をしてくれるから、すごくありがたい。 さきな うれしい、泣いちゃう……! 竜人は? 竜人 ……3人が言ったことがすべてだよね。 さきな えぇ〜。 ゆな 私は、さきなちゃんのいいところもっと言いたいくらいなのに! 竜人 まじめな子だなあ、と思いますね。 さきな もう、竜人はいつもこれしか言ってくれない。「責任感がある」、「まじめ」。そんなことないのに……まだ私のこと知らないんだね。 凪は「おっちょこちょいなおばあちゃん」 ──凪さんはどうですか? 真尋 癒やし系でほわほわしてるけど、ライブ中は、人が変わったようにすごいんですよ! さきな 憑依型だよね。あと、ツッコミ担当だけど、すっごくおっちょこちょい(笑)。 真尋 リップのフタを逆側にハメちゃって、抜けなくなったり(笑)。さっきは、ドアを半開きにしておく方法がわからなくて、ずっとドアの前でわたわたしてた。「大丈夫?」って聞いたら「ダメです」って(笑)。 さきな 凪ちゃんはひとりでごちゃついてること多いよね。 真尋 おもしろいから、放置してずっと見ちゃう。 凪 助けてくれよぉ〜。 さきな あと、すごく人見知りで、心をすぐに開かない。だから、最近心を許してくれたことが本当にうれしくて愛おしくて。 凪 たしかに、今めっちゃ心開いてる。 さきな 最近は顔を見るたびに抱きしめたくなっちゃう。 凪 さっきは肩揉んでくれましたね。 真尋 おばあちゃんだと思われてない!?(笑) 凪 私は、清 竜人25の「おばあちゃん」担当ですね(苦笑)。ちなみに竜人は何かありますか? 竜人 出会ったころから、いい意味で印象が変わってないかも。 凪 前世のレコーディングのときに出会ったんですよね。「歌が上手だね」って言ってくれて。覚えてる? 竜人 覚えてるよ。いい意味でオンオフの切り替えがはっきりしてて、プロフェッショナルだなと思いますね。 凪 ありがとうございます。普段けっこうダウナーなので、意識して切り替えないと、人の前で歌ったり踊ったりできないんですよ。 さきな 凪ちゃんの本来の人間性と、ステージに立つ人の感覚っていうのが、ギャップがあるんだよね。だからそのまんまの凪ちゃんでは出ていけなくて、スイッチを入れなくちゃいけない。 凪 そうそうそう。けっしてお酒を飲んでステージに上がってるわけではないです。 さきな ナチュラルハイなんだよね。 真尋は「素直でめんどくさい女」 ──真尋さんはどうですか。 凪 真尋〜! 大好き!! 真尋 あはは、私も(笑)。 さきな 屈託のない素直さが魅力。何事にもまっすぐ。たまに良くも悪くもって感じになるんだけど。 真尋 よくわかってる(笑)。 さきな 素直に猪突猛進って感じ。私はこういう女が好き。 真尋 告白……!(笑) さきな でも、まだ見たことないですけど、もし機嫌が悪くなったら、めっちゃ態度に出すタイプだと思います。そういうめんどくさい女(笑)。 真尋 合ってます! さきなちゃん、占い師みたい(笑)。 さきな 私、めんどくさい女が大好きなんですよ。あと、私は真尋ちゃんのことは、ほぼ犬だと思ってます。 真尋 どういうこと!? さきな 誰にでも笑顔でしっぽ振って懐いちゃうから……。この3人の中で彼女にしたら一番不安になっちゃうのが真尋ちゃんだと思う。どっか行っちゃうんじゃないかって。 真尋 やばい女じゃん!(笑) さきな めちゃくちゃムードメーカーで、みんなを朗らかにしてくれる存在です。喜びや怒りはまっすぐ表現する反面、自分の弱さは人に見せない強がりさんなところがあって愛おしい。とても器用だから隠すのが上手すぎて、明るい真尋を演じている瞬間があるのでは?と心配になっちゃうこともあるくらい。 凪 今まで出会ったことのないタイプの明るさを持っている人。なので、人見知りの私でもすぐに打ち解けられた。唯一の同い年で、パフォーマンス力がすごく高くて、ダンスとか教えてくれるから……真尋いつもありがとう。 ゆな 真尋ちゃんは本当に優しくて、犬みたい(笑)。 真尋 え⁉︎ なんでみんな犬って言うの!(笑) ゆな (笑)私は、ひとりだけ加入が遅かったんですけど、初めての顔合わせが写真の撮影日で。もうガチガチで、初めて会う人と一緒に写真撮るなんて、ヤバーい!って緊張してて。 さきな この仕事してたら、初対面で撮影なんてしょっちゅうあるでしょ(笑)。 ゆな でもヤバすぎ〜って緊張してたの! そしたら真尋ちゃんがめっちゃ話しかけてくれて、こんなに優しい人がいてうれしいってなりました。楽しいこともうれしいことも、真尋ちゃんにすぐ言いたくなる。 真尋 うれしい〜! じゃあ、竜人。来いよ! 竜人 なんだろう、すごくガーリーだよね。本番前の舞台袖とかでさ、いつもぷるぷる震えてるじゃん。たぶん緊張しいな部分もあるんだよね。そこもかわいいなって思うよ。 真尋 きゅん♡ かわいいならよかった! ──今日初めて「かわいい」って出ましたね。 凪 本当だ! クレームセンター行きだ(笑)。 さきな クレームの窓口どこだろ。 ゆなは「守りたくなっちゃう癒やし系」 ──最後に、ゆなさんはどうですか? さきな ゆなは、繊細さんで守りたくなる。いい子すぎて、すっごく健気で、がんばり屋さんで。ゆなこそ、すっごくまじめ。こうやってずっとニコニコして、ギャグセンがちょっと高くて、おもしろいこととか言うし、ぽわぽわしてるように見える。でも実はちょっと抱え込みがちだから、守りたくなっちゃう。 真尋 癒やしです。ずっと見てたくなる。いつか誰かに騙されそうで、壺とか買っちゃいそう(笑)。守りたくなるんですよね。 ゆな ぜひ守っていただいて♡ 真尋 うん、みんなで守るよ! 凪 めちゃめちゃかわいくて、きゅるんってしてるのにおもしろいし、親身になって同じ目線になって話聴いてくれるところもある。私はゆなちゃんいないと、無理。依存! さきな 中毒性がある(笑)。 真尋 ゆなちゃんって、よく変なこと言うんですよ。このインタビューでもちょいちょい出てると思いますけど(笑)。 さきな 最近おもしろかったのが、私が「トイレ行ってくる〜」って部屋を出ようとしたら「いいなぁ」って返されて。じゃあ「一緒に行こうよ〜」って誘いました。 凪&真尋 あっはっは(笑)。 真尋 パッと出るひと言がすごくおもしろいんですよ。 ゆな ありがとうございます。竜人くんは? 竜人 ゆなはすごく今っぽいなと思いますね。時代をまとった女。 さきな ナウい。いいなぁ。私にもそういうのつけてよ、二つ名欲しい。 竜人 うーん、考えておく。 竜人くんはみんなの救世主 ──夫人たちは、竜人さんとの「結婚」にためらいはなかったですか。 さきな 私は全然。懸念あった? ゆな ゆなはいっぱいあった。 凪 めっちゃ悩んでたね。 ──お披露目ライブで第102夫人の嬉唄さんが離脱し、急遽交代で入ったのがゆなさんでした。 さきな ゆなちゃんは、すっごくファンを大事にしてて、誰ひとり取り残さないで、みんなを笑顔にしたいタイプだから、けっこう葛藤があったよね。 ゆな でも「やる!」って自分で決めて入ったら楽しかったので、勇気を出してよかったです。 真尋 私のファンからも「結婚」っていうワードに対して「悲しい」って意見もありました。でも結局は、私が幸せなら何をしても応援してくれる人ばかりだから、「ごめんね」じゃなくて、「がんばるから見ててね」って前向きな気持ちになれました。 凪 私のファンの方々は「凪がまた元気に活動してくれて、またグループやってくれるなんて!」って喜んでくださってます。私の健康も気遣ってくれるし……って、これじゃ本当におばあちゃんみたいですね(苦笑)。私のファンにとって、竜人くんは救世主です。「竜人くんは救世主♡」って歌作ってほしい! 竜人 やば!(笑) 真尋 いいじゃん! 次の曲それにしようよ! ──歌詞はご夫人方が書いてもよさそうですね。 凪 1行ずつ書こう! さきな 私たちが書いたら絶対グチャグチャになるよ。 凪 たしかに(笑)。 新生・清 竜人25は「観ておかないと、もったいないよ?」 ──ライブツアーも控えていますが、グループとしての目標はなんでしょうか? ゆな ずっとこんな感じでにこにこ楽しく幸せにやっていきたいです。 凪 どんな状況でも、どんなライブハウスでも、路上ライブだとしても、この5人なら、絶対楽しいし、ハッピーを届けられると思います。元気のない人にも、このハッピーオーラを届けたいですね。 真尋 このハッピーさはみんなに伝えたい。あと、私の前世のグループで叶えられなかった目標があるので、清 竜人25では叶えたいです。 さきな すごい! このグループで、そんな大きな目標が話題になったことなかった。 凪 竜人の頭の中にはあるんじゃないの? 竜人 ん? なに? さきな 今、真尋ちゃんがライブハウスよりも大きいステージにこの5人で立ちたいって言ってたの。 竜人 へぇ、いいじゃん! 真尋 明日にでも予約してくれそうなテンション!(笑) さきな 今、決まりました! 行きましょう。 ──さきなさんご自身の目標はどうですか? さきな やっぱりたくさんの人に見てほしいかな。ライブを観に来てくれたお友達とか家族の反応がすごくいいんです。たぶん私たちが思っているよりも、お客さんのことを楽しませることができてる。だから、「私たちのことを観ておかないと、もったいないよ?」って思います。私も観たいくらいだし。こんなグループもう二度と出てこないと思うから、今のうちに観てほしい。見世物小屋を観に来る感覚でいいから。 凪 寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい! ゆな 凪ちゃんはすごく天然なんですけど……。 さきな 突然どうしたの?(笑) ゆな さっき凪ちゃんのこと説明できなかったから。凪ちゃんはノートに歌詞を書いてて、メモもたくさんしてます。憑依は、そういう努力のおかげだと思う。っていうのも書いておいてください。 凪 優しい……ゆな〜〜! ゆなはメンバーのことを本当によく見てくれてる。 ゆな 照れるからやめてよ〜(笑)。 文=安里和哲 撮影=時永大吾 編集=宇田川佳奈枝 <出演情報>テレビ朝日『ももクロちゃんと!』 11/9(土)11/16(土)2週連続 深夜3:20~3:40 ※詳しくは、番組ホームページで KIYOSHI RYUJIN25 REUNION TOUR 「THE FINAL」 出演:清 竜人25 会場:豊洲PIT 日程:2024年11月14日(木) 時間:18:00開場/19:00開演 http://www.kiyoshiryujin.com/kr25_2024/
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H1-KEYはなぜ“K-POP界のアベンジャーズ”? 4人が持つ能力と特別な関係
2022年にデビューしたK-POPガールズグループ・H1-KEY(ハイキー)の魅力は、高い歌唱力と圧倒的なパフォーマンススキル、そして4人のメンバーによる息の合ったステージングにより、幅広い音楽ジャンルを彼女たちの色に染め上げることができるところだ。 今回は日本で初のリリースイベント、そして音楽フェス『XD World Music Festival』出演で来日した4人に、彼女たちの多彩さがたっぷりと詰まった最新作『LOVE or HATE』にまつわるエピソードや、“H1-KEYらしさ”について語ってもらった。 目次グループのイメージを覆す“挑戦”違うところで育った4人がひとつになったK-POPの“スタンダード”になりたい グループのイメージを覆す“挑戦” ──まず初めに、3rd Mini Album『LOVE or HATE』について改めて紹介してもらえますか? ソイ 今まで私たちが歌ってきた曲は、前向きなメッセージが込められている明るい内容がメインでしたが、今回のアルバムは打って変わって“反抗的な学生が結成したスクールバンド”というコンセプトで作ったものです。なので、歌詞もストレートでアグレッシブなものになっているぶん、新しい姿をお見せできたのではないかと思います。 リイナ もともと私たち自身、ガールクラッシュなコンセプトがずっとやりたかったので、『LOVE or HATE』でまさに念願が叶った感じでした。 ソイ 「これは私たちにとって新たなチャレンジになる」って、すごくうれしかったよね! ただ、みなさんがH1-KEYに寄せている期待を覆すものでもあるので、どんな反応が返ってくるかということは正直なところ少し心配でもありました。 ソイ ──これまでのH1-KEYのイメージをアップデートするようなスタイルですね。タイトル曲「Let It Burn」は、まさにこのアルバムを象徴するようなナンバーです。 イェル 初めて聴いたときはすごく私たち好みだなと感じましたし、ギャップを見せられる曲だなと思いました。 フィソ 歌詞も、あまりアイドルが歌わないような表現だからすごく特別な感じがしたよね。「氷が溶けてしまったアイスティー」や「“チャギヤ(愛する人を親しみを込めて「ダーリン」「ハニー」と呼ぶ際に使う韓国語)”、愛してる」、「心が焦げて灰になってしまっても」とか。 イェル 振り付けも挑発的な歌詞に合っていて、すごく気に入っています! 違うところで育った4人がひとつになった ──ほかの収録曲も聴き応え満載なものばかりですが、特にファンの方々にとって特別な曲になったのは、メンバーのみなさんが作詞に参加された「♡Letter」なのではないかと思います。 フィソ 「♡Letter」の歌詞はそのタイトルどおり、作詞をするというよりは、メンバー同士お互いに向けて手紙を書くつもりで作り上げたものなんです。なので、私たちがどんな気持ちで向き合っているかということが表れていて、すごく美しい曲になったと思います。 イェル メンバーのお誕生日に手紙を贈り合ったりもするのですが、そのときとはまた違った感じでした。大変だった時期のことを思い返しながら、それを乗り越えたことへのお互いに対する感謝を込めて書いたので、この曲を聴くだけで涙が出そうになります。 ソイ 「私たちはすでにひとつ」という歌詞があるのですが、それぞれが違う環境で育ち夢を抱いていた4人がひとつのチームになっていく過程で、お互いに近づいていったH1-KEYらしさがよく表れている箇所だと思います。 リイナ そうだよね。それから「これは夢のような現実」という歌詞は、もともと違うものを持っているお互いが今では不思議なことに似たところもたくさんできたという私たちの、信じがたいくらい特別な関係性を伝えるフレーズです。 リイナ ──「それぞれが違う環境で育った」とは、どういうことなのですか? リイナ H1-KEYは、違う事務所の練習生だった4人が集結して結成したグループなんです。 ソイ そう。だから自分たちのことを「“アベンジャーズ”みたいなチーム」と呼んでいます。全員のキャラクターが明確だし、特色もまったく違うから。 ──“K-POP界のアベンジャーズ”であるH1-KEYは、どんな能力を持ったメンバーが集まっているのでしょうか。まずはリーダーのソイさんについて、教えてください。 イェル 私たちのリーダーであるソイさんは、とにかく歌声が特別。いつも「この曲をソイさんが歌ったら、どんな雰囲気になるかな」って考えますし、想像力を掻き立ててくれる声だなって思います。見た目と歌声のギャップも、魅力的です! フィソ ソイさんは、「これをやり遂げるぞ」って一度決めると目の色が変わって、目標に向かってまい進する情熱的な人です。一方で、たとえまわりが浮足立った状況でも、しっかりと自分のペースを保てる冷静さも兼ね備えています。 ──続いて、フィソさんについてご紹介お願いします! ソイ まずは歌声。どんなジャンルの楽曲でも自分のものにできる、宝物のような声ですね。 イェル さっきソイさんを紹介するときは「『この曲をソイさんが歌ったら……』と想像力を刺激する声」とお話ししたのですが、フィソさんは「この曲はフィソさんが歌えばこうなるだろう!」とはっきりイメージできるほど、個性が明確な歌声の持ち主です。その魅力が最大に発揮される音域帯というのもあるのですが、曲の中でパートが近づいてくると「来るぞ~!」と期待してしまいます。 ソイ ステージ上ではカリスマを発揮しているのですが、性格的にはとてもシャイで、情に厚く優しさにあふれているところも愛らしいです。 ──では、イェルさんは? ソイ グループの末っ子なので、以前は「子供みたいでかわいいな」と思うことも多かったのですが、特に『LOVE or HATE』の成熟したコンセプトがすごくマッチしたのか、最近はお姉さんに見えます。性格もサバサバしていてしっかりしているので、年上である私にとっても頼りがいのあるメンバーです。 フィソ 大きな心を持っていて私たちお姉さんメンバーの面倒もよく見てくれる、まるで長女のような存在です。 ソイ (じっとフィソを見つめる) フィソ ……もちろん、本当の長女はソイさんだよ(笑)! 安心して! 一同 (爆笑) フィソ それからイェルは伝統的な舞踊を習っていたというバックグラウンドがありつつ、ヒップホップの感性も持ち併せているところが特別だと思います。 ──では最後にリイナさんについて。 ソイ クールでチルで、芯がしっかりしている人。私は「誰かに頼りたいな」というとき、真っ先に思い浮かぶのがリイナですね。清純な見た目とハスキーボイス、しっかりとした性格とユーモアセンス……と、本当にたくさんの素晴らしいところを持ったメンバーです。 イェル いつも一生懸命なリイナさんは、日本語の勉強も熱心で、実際にとても上手ですよね。そんな姿を隣で見ていると「私もがんばろう」って思えるので、とてもありがたい存在です。 K-POPの“スタンダード”になりたい ──お互いをリスペクトし合う関係性がとても伝わってきました。それでは、ここからは今後のH1-KEYについてお聞かせください。いよいよ『LOVE or HATE』発売イベントで初めて日本のM1-KEY(ファンネーム)と対面を果たしますね(※取材はイベント開催前に実施)。今のお気持ちは? イェル 『LOVE or HATE』で新しい姿に変身したH1-KEYを、日本のM1-KEYに直接お見せできるのが本当に楽しみです! イェル ソイ 私、すごく気になっていることがあるんです。日本のM1-KEYはいつも、かわいい私たちの姿を好んでくださっているような気がするので、今回のような“ちょっと怖いお姉さん”なH1-KEYを気に入ってくださるかなって。よいリアクションをいただけたらうれしいですね。 ──リリースのたびにいろいろな姿を見せてくれるみなさんに、日本のM1-KEYも魅了されていると思います! では最後にこれから先、達成したい目標を教えてください。 ソイ 今後も日本のM1-KEYに会える機会がたくさんあることを願っていますし、少しずつM1-KEYが増えていけばいいなと思います。ゆくゆくは東京ドームでみんなで一緒に楽しめる日が来たら幸せですね。 リイナ 日本デビューは絶対に叶えたいです。私は日本語の勉強を一生懸命がんばっているのですが、特にバラエティ番組がすごく役立つのでよく観て学んでいます。参考になる上に、とてもおもしろいから。なので、いつか私たちも出演できたらいいなって思っています! あと……小さい役でもいいのでドラマや映画に出演したり、演技のお仕事もやってみたいですね。 フィソ チームとしての目標は、ふたりもお話ししてくれたように日本での活躍をもっともっとすることと、そして『コーチェラ』出演です。個人として夢見ているのは、今一般的に知られているボーカリストとしての魅力だけでなく、実用舞踊科出身ならではのダンスパフォーマンスにおける実力もみなさんにお伝えしたいということですね。 フィソ イェル まずは、私たちが「K-POPとはこういうものだ!」ということをこの世界に知らしめたいです! 一同 おお〜! ソイ ちょっと怖いんだけど(笑)! イェル (笑)。でもそれくらい、H1-KEYのパワーを多くの方に知っていただけたらいいなと思っています。もちろん、M1-KEYが見たい私たちの姿もしっかりお見せしたいですね。それから、私自身はダンスやラップだけでなく作詞作曲もできるし、本当にいろいろな才能を持っているので、これからいろいろな魅力を発揮していけたらいいなって。 あとは、メンバー全員がそれぞれ違うブランドのアンバサダーを務めていたらカッコよくない? ソイ めっちゃいいと思う! 私は、日本のCMに出演することが夢です。私たちは、日本の映像の感性にもバッチリ合うと思いますよ〜(笑)! フィソ 「Let It Burn」には「アイスティー」って単語が出てくるし、お茶のCMとかよさそう! ──みなさん、アピールがすごくお上手ですね! リイナ はい(笑)! ひとつでも夢を叶えていけるようにがんばりますので、これからもたくさんの応援をよろしくお願いします。 編集・文=菅原史稀 撮影=山口こすも
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NewJeans、『Olive』、『シティポップ短篇集』──小説家・平中悠一の気づき
平中悠一。高校在学中に執筆した小説『She’s Rain』(1985年/河出書房新社)が「文藝賞」を受賞、1984年に作家デビュー。その後『Go!Go!Girls(⇔swing-out Boys)』(1995年/幻冬舎)、『アイム・イン・ブルー』(1997年/幻冬舎)、『僕とみづきとせつない宇宙』(2000年/河出書房新社)などの著作を重ねてきたが、デビューから約40年の間に、エッセイや翻訳なども含め出版された単行本が計15冊という寡作な作家。その平中が、今春『シティポップ短篇集』(2024年/田畑書店)、『「細雪」の詩学 比較ナラティヴ理論の試み』(2024年/田畑書店)という2冊の書籍を上梓した。しかも『「細雪」の詩学』に至っては、東京大学大学院にて執筆した博士論文がもとになっている学術書だという。 現在『logirl』のプロデューサーを務めている私自身、デビュー作から追っている作家のひとりで、2作品の同時出版というニュースを知ったときはテンションが上がった。 今回、平中に近著の2作品に関する話を聞くことになったのだが、作品内容だけにとどまらず、本人のスタンスの変遷(=変わらなさ)に関する見解にまで話が及んだ。そこにはタイムリーな「NewJeans」(2022年7月にデビューした、韓国の5人組ガールズグループ)の話題なども加わることに。 ──『シティポップ短篇集』を編纂するにあたっての企図をお伺いできればと思います。 平中 本書のライナーノーツ(解説)にも詳しく書いていますけど、近年シティポップが流行ったから選集を考えたというわけじゃなくて、もともと1980年代にはこのシティポップという言い方はあまり使われてなかったんですが、僕のデビュー作『She’s Rain』が出版されたのは1985年なので、結果的には、僕自身がちょうどいわゆるシティポップの時代に重なるんですよね。 デビュー作の中では、ドビュッシーとかラヴェルとかも書いていますが、実は一番いい場面では登場人物たちは山下達郎を聴いているんですよ、あの小説って。まさにシティポップの真ん中の時代で、シティポップ小説という考え方はなかったけれど、今、回顧的にシティポップと呼ばれているような音楽が出てきていたように、当時すごく都会的な小説もいっぱい出てきていたから、それをまとめたらいいんじゃないかと思っていたんです。 「こういうのをまとめたら、いいものできるよ」って、当時、編集者に言ってはいたんだけど……僕がまとめるという考えはなかった。それを、今ならまとめられるんじゃないかなと思って、作ったんですよ。 「シティポップ時代の日本の短篇集」というのが本当のタイトルで、『シティポップ短篇集』というのは、僕が企画を提案したときの仮タイトルがそのまま残っちゃってるだけなんです。いわば“シティポップ短篇集のようなもの”ということなんですよね。 僕自身、もともとシティポップ音楽も好きで、シュガー・ベイブや大貫妙子、ティン・パン・アレー系とか大瀧詠一、そういうのを好きで聴いていて、近年のシティポップの流行はアジアからの逆輸入ともいわれていますけど、、日本の1980年代の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代の空気感が、経済発展してきた今のアジアの空気にピタッとはまったんだと思うんです。 だから日本のシティポップがオリジナルだからすごいということと同時に、アジアの全体が元気になって、前向きになってきて、1980年代の日本のポジティブで都会的なセンスが共有されるようなってきた。インドネシアにしろタイにしろフィリピンにしろ、最近すごくいいですよね、ポップスがね。 シティポップの話題から、アジア全体のポップスの話へと。平中とアジアンポップスとの邂逅についての話が続く…… 平中 僕は1990年代に入って、ほとんどJ-POPを聴かなくなっていたんだけど、たまたまスカパーをつけたら韓国のチャートをやっていて、すごくおもしろくてびっくりしたんです。それが1998年くらい。そこからK-POPを聴き始めることに。 2、3年後には韓国語もだいたい話せるようになるくらいハマったんですけど、これには自分でも驚きました。最初にトランジットで韓国へ行ったとき、キンポ(国際)空港でソバンチャの3人が歌っているのをテレビで観て、強烈な印象を受けていましたから。それがわずか10年で、ここまでかっこいいポップスをやるようになるとは想像もしませんでした。 1988年のソウルオリンピックのころまでは、韓国は今の北朝鮮のような感じで閉じられていて、日本語も英語も全部放送禁止だった。その後、解放が始まって……最初にキム・ゴンモあたりがレゲエから入ったんですよね。冷戦時代の西側・東側的な政治性から少し離れてるじゃないじゃないですか、レゲエって。だから外国のポップスでもレゲエならいいでしょということで。 僕が一番聴いていた2000年……BoAが出てきたころでもまだ、韓国ではポップスで一番過激なのはロックとヒップホップだといわれていたんですよ。 ヒップホップはメッセージ性もあるし、まだわかるんです。でもなんでロック?なのかというと……ロックはアメリカ文化の典型なので、一番厳しかったみたいなんです。最も反体制的、という感覚があったみたい。 その後、キム・デジュン(大統領/当時)のころから、日本は「侍の、武士の国、武力の武の国」であるけれど、韓国は「文人の国、文の国、文化の国」であるという自己規定をして、カルチャーへ予算をドンと入れていくんですが、2003、4年くらいからK-POPもあんまり僕はおもしろくなくなっていくんです。 なぜかというと、そこまでは、キム・ゴンモからあとも、たとえばパク・ジニョンとか、R&Bというのはこういう音楽ですみたいな……本物志向がすごく強かった。ミュージシャン自身が自分で一番いいと思う音楽をやろうとしてたから……ちょうど日本の1980年前後のシティポップ黎明期のようにね。すごくおもしろかったんです。 それが2003、4年くらいになってくると、もうちょっと売れる感じ……韓国の伝統歌謡、歌謡曲のちょっと下世話な感じまでを取り入れる……ちょっとお色気も入れて、みたいな感じになってきて、ポップな感じとズレていくんですね。結果、どれを聴いても全部おもしろい、というそれ以前のようなよさはなくなってきて。 結局、そのころ、僕自身、ちょっと日本を離れてしまったので……そのあと、日本で韓国の子たちが売れたでしょ? KARAとか少女時代とか、いっぱい。そういう話自体は聞いてたんだけど、あのあたりは全然、僕は知らなくて。だからK-POPファンをやっていて、一番日本で盛り上がっておもしろかっただろうなというあのころは全然知らないんです(※2005〜2015年、平中はパリに住んでいた)。 とまあ、そんな感じだったんですけど……昨年の暮れぐらいからNewJeansを、最初はInstagramのリールか何かでアメリカ人がカバーしているのを聴いて「誰これ? カッコいいじゃん!」と思って調べたらK-POPだっていうから、びっくり!して、原曲を聴いてみたらすごくよかった。 最初に気がついたときは年末くらいだったから、もう『Ditto』が出ていたころだったかな? まずは『Ditto』をすごくいいと思ったんだけど、その前の曲も、『Attention』とかすごくコード進行がジャジーでおもしろいなと思ったりもしたんです。 『Ditto』のときから「あれ? けっこうすごい!」と思っていたんだけど、やっぱり2枚目のEPが出たときに『ASAP』のMVとかを観ると、もう完全に雑誌『Olive』の世界なので……改めてびっくりして、これ『Olive』じゃん!と思って。 マガジンハウスから刊行されていた人気雑誌『Olive』(1982年〜2003年)。その独特な世界観をベースにした編集から根強いファンを持ち、休刊から時が経った現在でも、いまだに回顧系の関連書籍などが出版されている。平中も、かつてこの『Olive』で連載を持っていた 平中 僕は、もともと『Olive』が好きで、デビュー作も『Olive』の読者が想定読者だったんです。デビュー後には『Olive』で声をかけてもらい、結果、連載までやらせてもらいました。もちろん今のNewJeansを作っている人たちは『Olive』には気がついていないだろうと思うんですよね。勝手にやっていると思うんです。自分たちのオリジナルとして。 だけど日本では1980年代のバブルのころに『Olive』みたいなものが出てきていて……当時の読者だった女性からは『Olive』が出てきてどんなに救われたかっていう話を、今でもよく聞くんです。僕自身が『Olive』で書いていたから。 当時の赤文字系雑誌の『JJ』(光文社)や『CanCam』(小学館)は、あくまでいかに男の子にウケるかを考えるということをやっていたんだけど、『Olive』は男の子がどうとかとは関係ないんだ、自分たちがかわいいと思うものがかわいい、かわいいものは全部つけちゃう!みたいな雑誌だった。僕はそれを見ていて、かわいいなぁと思ったわけです。 だから実際に今、NewJeansを見て、あの子たちが自分の好きなものを「ほら、これもこれも!」「これかわいいでしょ、これもかわいいでしょ!」っていうようなあの感じ……あれは当時『Olive』を見ていた感じに、すごく近い。 なるほど、『Olive』とNewJeansの親和性、その世界の中で自律的に自己完結しているというような。その場合、『Olive』読者もBunnies(NewJeansのファンネーム)も、等しくその世界を見つめることに終始することになる。話は、その眼差しに及んでいく…… 平中 1980年代はそういう意味でいうと、ポストモダンの時代でもあったのね。パフォーマティブとかディスクール、コミュニケーションとかそういうものが、すごくプロモートされていた。パフォーマティブでコミュニカティブでないものはだめだ!と否定されてしまうくらい……。でも、すごく豊かな時代というか、多様性が許容できた時代だったということもあると思うんだけど、『Olive』みたいな真逆のものも実はあった……要するにパフォーマティブとかコミュニケーションの基本って、相手に影響を与えようという意図を持って働きかけることで、それが『Olive』の場合、自分がかわいいと思えば、もうそれでいいわけです。人がどう思うかなんて、どうでもいい。そういうものも、パフォーマティブの時代だと思われていた1980年代にちゃんと日本に出てきていた。 そう考えると、シティポップみたいなものがアジアでウケてきている今、NewJeansのようなものが出てくるということは、日本の1980年代を重ねてみると、ひとつ読み解けるんだよな、と。 NewJeans『How Sweet』 日本デビュー曲の「Supernatural」では1980年代に生まれ大ヒットしたニュージャックスイングのスタイルを採用。完全に狙ってる? さらにここから「ノン・コミュニケーション理論」が主体を成す『「細雪」の詩学』へと話が進んでいく。平中の感覚の中でそれぞれの要素がきれいにリゾりながら展開していくさまは、まるで魔法にでもかけられているような気持ちになる。 平中 NewJeansを見ていてなるほどと思ったのは……ちょっと前提から話すと、僕も1980年代に仕事をしていたので、そもそもコミュニケーションが一番大事だと思っていたんだけど、その後、フランスへ行って「ノン・コミュニケーション理論」という、小説はコミュニケーションじゃないという考え方を知ったんです。 ところが日本語というのは、実はコミュニケーションじゃない言葉遣いを失っている。すべてが“言文一致”……話すように書くことで、書き言葉とコミュニケーションの口語を一致させるようになっているので、コミュニケーションじゃない言葉が見えなくなっている。なので、特にわかりにくくなっていると思うんだけど……もともとは“物語”ってコミュニケーションではなくて、別世界なんですよね。たとえば子供に「おじいさんとおばあさんがいました……」というのは、全然別の世界の話なわけです。物語には、そういうところがそもそもあって、これはコミュニケーションでもなんでもないはずなんです。そういうところが今は全然捉えられなくなっています。 ドキュメンタリー番組での「今日は村人たちのお祭りだ」みたいなやつ……ああいうのはフランス語なら、コミュニケーションではなく“物語”なわけです。でも日本のアナウンサーの人たちってそれを一生懸命コミュニカティブに伝えようとしますよね。真逆のことをやっているんです。文章自体は、すっと人から離れたひとつの物語になろうとしているのに、それをコミュニカティブにしようということをやっているので、すごく無理があるんですよね。 フランス語だったら、パッセコンポゼ(複合過去)という日常の会話と、パッセサンプル(単純過去)という、文章でしか使わなくなっている古文のような書き方があって……で、フランス人って、子供におとぎ話を語るときはパッセサンプルなんです。それですっと物語の世界に入っていける。言葉にはコミュニカティブな面とそうでもない面があるということに気がついたのはエミール・バンヴェニストなんだけど、それが本になるのは1960年代以降です。 日本で“言文一致”運動が始まったころにはフランスでもまだ周知されてなかったことなので、現代の日本語に“物語”の言語が確立されていないのは仕方がないところもある。そんななかで、日本の小説家たちはいろいろ工夫してがんばったと思います。 小説というのも“私とあなた”の間のコミュニケーションとは違うところにある“世界”を見せてくれるところが、実はすごくおもしろい。 『細雪』(谷崎潤一郎/1943年〜1948年)なんかはその典型なのだけれど、自分の人生とは別のラインで4年半の時間が流れていて、読んでいると自分の人生がそこのところだけ二股に分かれるみたいな感じがある、別次元のような。なぜそれができるのかというと、別の世界がそこにあって、読者はその世界をのぞき込むように経験するから。 僕の『「細雪」の詩学』では、アン・バンフィールドの「ノン・コミュニケーション理論」に関係して、ヴァージニア・ウルフを紹介しているのだけれど、ヴァージニア・ウルフは意識的にノン・コミュニケーションの小説を書こうと思ってすごく苦しんだ人なんですね。 文章の中にノン・コミュニケーションの部分があるというのはいえるとしても、それだけで1章、2章……と作っていくのは難しいんです。ウルフは『灯台へ』(1927年)でまったく人称性のない章を書いていますけど(第2章)、実はあれはすごく大変で、彼女の日記を見ると、ものすごく苦しんでいるのがわかる。 僕自身の話でいうと『She’s Rain』を書いたときに江藤淳先生から「街の情景の部分が新しいので、あれをもうちょっと発展なさったらいいと思いますね」と言われたので(『She’s Rain』の前日譚になる)次作の『EARLY AUTUMN アーリィ・オータム』(1986年/河出書房新社)のときに、意識的に街の情景を描いてみたんです。カメラアイを用いて街の情景を書いて……ずっと街の情景が続いている中に、人物のセリフがぽっと入る。 映像的にいうと……人物たちが遊んでいるようなシーンに、その画とは関係なしに人物たちの声でナレーションが入るかたちがあるじゃないですか……あれをやりたかった、文章で。 文章でぎっしり4ページくらいはいきたいなと思って書いていたんだけど、全然無理、続かない。やっぱりカメラアイでずっと書くことはすごく大変なんだなと思ったことがあって……ウルフのそういう日記を見て、ああそうだ、これって難しいんだよなと。 ウルフの書いたエッセイには、バンフィールドも取り上げている『The Cinema』(1926年)というのがあって……映画って“中の人たち”は見られていることに気づいていないわけです。こちらを見ない、“こちら”があるとも思っていない。見ていることに気づかれることもない状況でこそ、初めて何か真実の姿が現れる、と言うんですね。 たとえば、映像の中で波が来ても自分の足が濡れることはないし、馬が暴れても蹴られることはない、結局のところ自分たちとは別の世界、逆にこちらの手も届かない世界で起こっている出来事がそこには捉えられている。だからこそ自分たちの日常を離れて、客観的に何か真実が見えてくるというのを『The Cinema』では“映画の美学”として考えている。 そういうものを、ウルフは自分の小説でなんとかやろうとしたんだと思うんです。「ノン・コミュニケーションの美学」はそこにあって、NewJeansの「Bubble Gum」(2024年)とか「ASAP」(2023年)のMVを観ていると感じるのは、そういうもの。こっちで見る者のことを全然意識していない世界が強調的に描かれている。ステージでの「Bubble Gum」のイントロで演じられる小芝居なんか、典型的です(カメラを鏡ということにして、誰にも見られていないていでメンバー同士の内輪の会話が演じられる)。 「ノン・コミュニケーション理論」とNewJeans……コンテンツへの私たちの接し方を考えると、それもあり得る話に思えはするものの、接し方ではなくコミュニケーションという視点に変えることで、モノではなく人、世界になっていく。NewJeansから、話はさらに進む。 平中 若い女の子を眼差しによって消費するのではなく、少女たちに眼差されることがない自分を儚む、みたいな捉え方もあると思うけど、僕はちょっと違って、少女たちがこちらを見返してくれる必要を僕はまったく感じないので……見返されても困るし、持て余しちゃう。あの子たちがああやって遊んでいるのを見て、みんながおもしろいと言って……たぶんそこにはいろいろな楽しみ方があるし、彼女たちの仲間になれる人もいるし、彼女たちに共感したり自分を投影する人もいるだろうし、僕みたいに全然別の“楽しそうだなぁ”と思って見ているだけで自分も楽しくなっちゃう人もいる。そこはやっぱり人によって違うと思う。 ただ僕は、NewJeansを見たときに、これって『Olive』だよね。で、これが『Olive』だということは、NewJeansのこういうノン・コミュニケーション的なところを考えると『Olive』って「ノン・コミュニケーション理論」だったんだよねと思って。 『Olive』からのNewJeans、「ノン・コミュニケーション理論」からのNewJeans、そして『Olive』と「ノン・コミュニケーション理論」、一見すると単なる三段論法のようにも思えるが、深く聞いていくと同じ地平でつながっているのは間違いないことに気づかされる。そしてNewJeansを橋頭堡として、そこへ「シティポップ」もつながってくる。 これはまさに今起こっていること……ここへさらに平中自身の縦軸、デビュー作『She’s Rain』がたどり着いた場所(それは換言すると“普遍性”でもあるのだけれど)の話が続く。 『She’sRain』 装丁はオサムグッズの原田治 平中 僕はずっとこれをやっているんだって、実は最初(デビュー作)から。結局そこで、僕はその子たちに見つめ返されたくない。見つめ返されない自分を悲しむとかはないわけです。なぜかというと、本当に高校生のときから僕はこの子を汚さないというのが僕の考えなわけだから。もう全然、けっこうなわけです。 だから、くるっときれいにつながってくるので、『Olive』と「ノン・コミュニケーション理論」がNewJeansを介して通じたときに、自分がやっていたことが、くるっときれいにつながった感じがしたんです。だからバラバラないろいろなことをやっているようだけど、最終的に僕はそういうことがやりたいんだと思って。 デビュー作『She’s Rain』では、ユーイチとレイコというふたりの高校生の恋物語が描かれる。今風にいうなら“煮え切らない”ように見えるユーイチが抱いているレイコへの思い「僕は、ほんとに好きになったら口説かないでおく。そのコのこと大切に思うから。(中略)そのコをずっと素的なままでいさせてあげる自信なんて、ない」「素的な、一人で歩いて行ける女のコのままでいて欲しい」「束縛したくないんだ(中略)つまんない女のコにしたくないんだ」(『She’sRain』より抜粋)この言葉が、まさにスタンスを体現している。 約40年が経って、改めて変わっていないことに気づかされる、それは自分の志向性が間違っていなかったという自己肯定でもあるのだろう。 取材・文=鈴木さちひろ 平中悠一(ひらなか・ゆういち) 1965年生まれ、兵庫県出身。小説『She’s Rain』で1984年度・第21回「文藝賞」を受賞しデビュー。『それでも君を好きになる』(トレヴィル)、『アイム・イン・ブルー』(幻冬舎)、『僕とみづきとせつない宇宙』(河出書房新社)などの小説、『ギンガム・チェック Boy in his GINGHAM-CHECK』(角川書店)などのエッセイの出版のほか、『失われた時のカフェで/パトリック・モディアノ』(作品社)等の翻訳も手がける。 2024年4月『シティポップ短篇集』(編著)、『「細雪」の詩学 比較ナラティヴ理論の試み』の2冊の書籍を田畑書店から上梓。HP:http://yuichihiranaka.com 『シティポップ短篇集/平中悠一編』(田畑書店) 「1980年代、シティポップの時代」を彩った7人の作家による9つの物語を、自らも小説家である平中悠一が編纂。 (収録作家:片岡義男・川西蘭・銀色夏生・沢野ひとし・平中悠一・原田宗典・山川健一) 平中「読んだあと味がいい……希望が持てる感じかな。1980年代の感覚ってひと言でいうと、大貫妙子さんのアルバムタイトルにもあった『Comin’ Soon』。今にいいことが……一番いいものはこれから来るよみたいな感覚。それがなんだったの?と言ったら何もないまま終わっちゃった、巨大な予告編のようなところもあるのだけど。もっといいものが来るよと思いながら生きていく感じ。そういうあのころの気分のある小説、なにかしら夢が持てる、希望が持てる感じの作品を選びました。 これを僕がまとめなかったら、たぶんまとめられないまま終わっちゃう。ここでいっぺん、こういうものも80年代にはありましたよということをまとめておいたら、いつか誰か拾ってくれるかもしれない。そのときにまた、日本の状況がもうちょっとよくなっていたりしたら……そういう“壜(びん)の中のメッセージ”、タイム・カプセルでもあるんです」 『「細雪」の詩学 比較ナラティヴ理論の試み/平中悠一』(田畑書店) 谷崎潤一郎の「細雪」を、日本では初の試みとなる「ノン・コミュニケーション理論」を用いて解析。三人称小説の在り方、文学作品の客観的な読み解き方を考察する。小説家である平中悠一の、東京大学大学院での博士論文を書籍化。 平中「三人称の小説を自分ではうまく書けないっていうのがまずあって。三人称の小説が一番本格的であるという話もよく聞くし、でも日本語で書かれた三人称の小説は、どうもどれもしっくりこないというか……どうも読んでて三人称ごっこみたいに見えちゃう感じがあるのに『細雪』だけは違和感が何もなくスーッと読めるので、なんでだろう?と。どこが違うんだろう?って、ずっと謎だった。『細雪』という小説自体、どうやって書いたんだろう?というのが全然わからなくて。それが『細雪』を研究のモチーフにしたきっかけです。そこから「ノン・コミュニケーション理論」の勉強を始めて……もしこの理論が使えるようになったら絶対おもしろいことになるぞ、と思ったんです」
BOY meets logirl
今注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開
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飯島 颯(BOY meets logirl #054)
飯島 颯(いいじま・はやて)2001年10月12日生まれ、東京都出身 Instagram:@hayate_kumakun_official 2025年4月に東京・京都にて上演、舞台『青のミブロ』沖田総司役で出演 撮影=まくらあさみ 編集=宇田川佳奈枝 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
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新原泰佑(BOY meets logirl #053)
新原泰佑(にいはら・たいすけ)2000年10月7日生まれ、埼玉県出身 Instagram:taisukeniihara.official X:@T__Niihara 現在放送中のTBS日曜劇場『御上先生』に出演中 2025年夏公開の映画『YOUNG&FINE』で主演 2025年6月上演、7月ツアー公演予定の「ミュージカル『梨泰院クラス』」に出演 『新原泰佑 2025.4-2026.3 calendar』が予約販売中 撮影=矢島泰輔 編集=高橋千里 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
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安西慎太郎(BOY meets logirl #052)
安西慎太郎(あんざい・しんたろう)1993年12月16日生まれ、神奈川県出身 X:@anzaistaff 2月21日(金)より新国立劇場小劇場にて、舞台『MMJプロデュース公演「しばしとてこそ」』スズキ役で出演 撮影=佐々木康太 編集=高橋千里 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>
「初舞台の日」をテーマに、当時の期待感や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語る、インタビュー連載
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好きなことを突き詰めてきた異色のコンビ・十九人が、勝ちを意識した瞬間|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#34
「M−1、嫌いだったんですよ」 『M-1グランプリ2024』でセミファイナリストとなり、敗者復活戦でも爪あとを残した十九人(じゅうきゅうにん)。 初舞台について聞くインタビュー連載「First Stage」では今回、十九人のふたりに『M-1』の大舞台に初めて上がった感想を話してもらった。 そこで飛び出したのが、冒頭の言葉だ。M-1に対する十九人の本音、そして勝負への覚悟を決めた彼らの現在に迫る。 【こちらの記事も】 『M-1』や『おもしろ荘』で注目を集めるコンビ・十九人の脳汁とニヤケが止まらなかった初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#34 目次M-1準決勝敗退はひどいなりトップバッターを任されがちM-1が大嫌いだった何も矯正されず、変人のままで M-1準決勝敗退はひどいなり 左から:ゆッちゃんw、松永勝忢(まつなが・まさとし) ──M-1では、昨年初めて準決勝に進出しましたね。 松永 なんか緊張するっていうよりかは、普通に楽しかった。 ゆッちゃんw ね。めちゃめちゃ気持ちよかったです。 松永 楽屋もけっこう和気あいあいとしてたし。 ゆッちゃんw カメラはすっごい多いです、ずっと密着だし。ホントに気づかないうちに撮ってる。僕たちはカメラ向けられたら、いっぱいふざけようって決めてたんですけど、バレないようにめっちゃ撮られまして。でも、密着のスタッフさんとめっちゃ仲よくなりました。僕たちがふざけてたら「いや、使えるかぁ!」とかツッコんでくれた(笑)。 ──準決勝の出番は4番目でした。 松永 よくないなぁとは思ってました。実際、場が温まりきってない感じはしましたし。 ゆッちゃんw でも、後半すぎると逆にお客さんが疲れちゃうから、僕らみたいなのは、みんなが体力のあるうちに見てもらえてめっちゃありがたかったなと思う。元気じゃないと、見てられないときがあるから(笑)。 ──客席から観ていましたが、十九人で会場が温まった記憶があります。 ゆッちゃんw わー、うれしい! たしかにねぇ。気持ちいいくらいウケて、終わった直後はもしかしたら……とは思ったんですけど、僕たちのすぐあとのスタミナパンさんが相当ウケられていたので、ダメかもなぁって。 ──出番が終わって、結果発表まではどう過ごしたんですか? 松永 結果発表まで3時間ぐらいあったんですよ。オズワルドの伊藤(俊介)さんに誘ってもらって、モツ鍋を食べさせてもらいました。スタミナパンの麻婆さんと、豆鉄砲と、例えば炎の田上で行きましたね。 ゆッちゃんw モツ鍋のあとはカラオケに行って、時間がないから、ひとりずつ「魂の一曲」を歌って。僕はYOASOBIの「群青」を歌いました。でも松永くんがすごい曲歌ってた(笑)。 松永 僕、神聖かまってちゃんの「神様それではひどいなり」。 ゆッちゃんw 最後に「殺してやる!」って叫び続ける曲で、みんなで「まだ落ちてないよ! 大丈夫だよ!」って。でも結局、そのモツ鍋メンバー全員落ちてて、ずこーってなりました(笑)。 トップバッターを任されがち ──敗者復活戦では、準決勝とはネタを変えていました。敗者復活戦では『席を譲ろう』、準決勝でやった『耳が痛い』。なぜ変えたんでしょうか。 松永 敗者復活はトップバッターだったんで、トップバッターで「耳が痛い!」って叫びまくるネタはちょっとかかりすぎてるから引っ込めました。テレビだし、初見の人もいっぱい観てくれるから。 ゆッちゃんw 電車のネタは、僕らの中では伝わりやすい温厚なほうだったんです(笑)。『おもしろ荘』では『耳が痛い』をやったんですけど、総合演出の諏訪(一三)さんは「席譲るやつは伝わりやすいけど、十九人を好きな人からすると、物足りないなぁ」って言われました。「まぁ、しょうがないな。テレビだからなぁ。おじいちゃんおばあちゃんが観てるからな」って(笑)。 ──初めての敗者復活戦はいかがでしたか。 ゆッちゃんw 出る直前に煽りVを見てて、「うわぁ、テレビで観てたあれに出るんだ!」と思ったら、一回「ぐぅ!」ってめっちゃ緊張して。でもマネージャーさんに「めっちゃ緊張してきました……」ってベラベラしゃべってたら、「たぶん緊張してないですよ。アドレナリンが出てるだけです」って教えてもらえて、落ち着きました。 松永 でも正直そんなに手応えはなかったなぁ。 ゆッちゃんw だから勝つぞっていうよりも、僕らのネタで番組が盛り上がればいいかって半分思ってた。『M-1敗者復活戦』という番組が、十九人がいたおかげで盛り上がったっていう印象になればいいなって。 松永 僕らは普段のライブでもトップバッターにされることが多い。十九人で無理やり盛り上がらせようみたいな。 ゆッちゃんw 大きい声っていうか、デカい音を出せるから(笑)。 ──最近の若手芸人は「M-1という番組を盛り上げたい」と言う人が増えている印象があります。 ゆッちゃんw たしかに。「絶対に勝つぞ」って気持ちと、番組を盛り上げたい気持ちだったら、どっちがいいのかはわからないけど。 松永 なんやろ。賞レースで結果出して(メディアに)引き上げてもらうっていうよりは、自分たちがおもしろいと思うことをやって、いいものができればいいよねっていう気持ちが強いのかな。だから勝ち負けはそこまで重要じゃないっていうか。もちろん勝ちたいんですけど。 M-1が大嫌いだった ──気が早いですけど、次のM−1への意気込みはどうですか。 ゆッちゃんw M-1に対して意識が変わりました。今までは15年かけて、いいところまで行けたらっていう感じで。普段のバトルライブも、僕らそんなに得意じゃないから、お笑いは戦うもんじゃないしな、みたいに思ってたけど……うん、松永くん、どうだ? 松永 敗者復活に出てみて、見えてるものがちょっと変わったんですよ。もう一回勝てば決勝なんやっていうのが具体的に見えてきて、これからはM-1に向けたネタを作ろうと。今までは自分たちの好きなことやり続けて、いつか決勝行けたらと思ってたけど、決勝に行ってる人たちはM-1で勝つための4分間のネタを作ってるんだって目の当たりにして、ここをちゃんとやらなアカンなっていう気持ちになった。 ゆッちゃんw 勝ちたくなっちゃったね(笑)。みんながあんなに熱いのはこういうわけだったんだなって思っちゃいました。 松永 僕ら、M−1嫌いだったんですよ。かなり嫌い。 ゆッちゃんw こんなこと言っていいのか(笑)? 松永 僕らなんて、1回戦で3回落とされてるし。1回戦って持ち時間が2分じゃないですか。そんな短い時間で伝わるわけないって、ふて腐れてたんです。ライブではめちゃめちゃウケてるまわりの友達もいっぱい落とされるから、M-1自体が嫌いだった。でもだからといって賞レース至上主義からは逃れられんし……。 ゆッちゃんw 悲しいね。なんか悲しい話だね(笑)。 松永 ふふふふ(苦笑)。嫌なんですよね、お笑いの本質って別にバトルじゃないし。なんなら商売ですらない。 ゆッちゃんw 趣味でやってることにたまたまお金が発生して、超ラッキーっていう状態なので。 松永 そんな感じで僕らは賞レース自体が嫌いだったけど、でもそれをM-1の2回戦で負けてるヤツが言ってても仕方ないじゃないですか。 ゆッちゃんw やっぱ決勝に行ってる人たちってめっちゃすごい。でも別に2回戦で落ちた人がおもしろくないわけじゃない。それがみんなに伝わってほしいなって思うから、僕らが勝ったら「たまたま今日評価されたから勝っただけで、ほかの人もみんなおもしろいんだよ」って言えるようになりたい。そのためにがんばりたいなって思えるようになりました。 何も矯正されず、変人のままで ──これからはどんな仕事をしたいですか。 ゆッちゃんw 事務所の先輩たちがすごいので、そういう人たちと一緒にテレビ番組出られたり、営業とか一緒に回れるぐらい有名になれたらいいなとは思ってます。 松永 やりたいことを、やりたい。今は それについてきてくれるお客さんもいるし。去年単独ライブやったんですけど、それが500人ぐらい来てくれて。そのお客さんを大事にしたいなって思う。 ゆッちゃんw ありがてぇ。 松永 僕らに3000円とか払ってくれる人がそんだけいるっていうのがうれしいから。 ゆッちゃんw 高いよね! 松永 だから、僕らをおもしろいと思ってくれる人たちを喜ばせたいし、僕らはやりたいことをやりたいなって気持ちです。 ゆッちゃんw あと、僕らが好き勝手していい場所がテレビにできたらいいなぁ。冠までは行かなくても、僕らの同世代の何組かで番組させてもらえたりしたらいいなぁ。 ──1997年生まれのおふたりも、テレビへの憧れはあるんですね。 松永 テレビは好きですね。僕らはまだギリギリYouTubeじゃなくてテレビに育ててもらったので。それに「テレビは終わり」みたいに言われるけど、まだ終わってないと思うしなぁ。視聴率が数%でも数百万人が同時に観てるってことで、その規模はYouTubeではあり得ない。やっぱりテレビにしかできんことがあると思うし、そこで自分らがやりたいことをできたらめちゃくちゃうれしいですね。 ゆッちゃんw あと、松永くんは英語もすごくできるから。英語クイズなら負けない。ね! 松永 何それ、あんま関係なくない?(苦笑) ──でもEテレの英語番組とかおふたりでやったらハマりそう。 ゆッちゃんw わぁ、やりたい! たしかに「NHK出てください」はファンの人にめっちゃ言われます。最初の単独ライブで人形劇をやったときテレビ局の人から「アテレコ上手〜」って褒められたよね(笑)。 ──たしかにおふたりとも独特のテンションと声質なので、ナレーションも向いてそうです。 ゆッちゃんw やりたい! 『キョコロヒー』で内田紅多(人間横丁)がやってて、めっちゃうらやましいです。大(おお)友達だから。 ──先ほど「同世代の何組かで番組」と言ってましたが、どのあたりの芸人が浮かびますか。 ゆッちゃんw うわぁ、どうする!? 何組かっていったら、まず人力舎のめっちゃ最高ズかなぁ。おばた(最高)は仕切れるし、(めっちゃ)むつみさんは突破力があって、『はねトび(はねるのトびら)』みたいな番組だったら、虻川(美穂子)さんみたいになれそう。あと、何をしても大丈夫っていう安心感が欲しいのでオッパショ石さん。どんな空気でもなんとかしてくれるし、僕らが好きなことやってもまとめてくれる。あと豆鉄砲とか。 松永 いいなぁ。たしかに今売れてる人って何組かでコント番組とかしてきたイメージあるから、そういうのをうちらの世代でできたらいい。 ゆッちゃんw 地下ライブって「これしかできない」みたいな変人がいっぱいいるんです。そういう人たちがテレビに出ようとすると、直さなきゃいけなくなっちゃうけど、それがもったいないなぁって。何も矯正されずに、変人のままテレビに出られるようになったらいいな。僕もそうなんです。松永くんは器用だからなんでもできるけど、僕は松永くんが書いてくれるネタじゃないと無理だから(笑)。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平 十九人 ゆッちゃんw(1997年9月9日、北海道出身)と、松永勝忢(まつながまさとし、1997年10月29日、大阪府出身)のコンビ。2018年4月、立命館大学の劇団サークルで出会い、コンビを結成。2020年4月に上京し、フリーとして活動。2022年、ASH&Dに正式所属。『M-1グランプリ2024』準決勝進出。2025年元日未明に放送された『おもしろ荘』では3位に入賞した。 【後編アザーカット】
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『M-1』や『おもしろ荘』で注目を集めるコンビ・十九人の脳汁とニヤケが止まらなかった初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#34
『M-1グランプリ2024』で準決勝に進出し、敗者復活戦ではトップバッターとして大会を盛り上げた十九人(じゅうきゅうにん)。結成は2018年4月。その初舞台で、お笑いの虜となった。 TシャツGパンの装いで、長髪を振り乱し叫ぶメガネの女、ゆッちゃんw。そんな彼女に翻弄される昭和レトロな出で立ちの松永勝忢。 漫才を見る限り、どんな人間かまったくイメージがつかないふたりに、その初舞台から振り返ってもらった。 若手お笑い芸人インタビュー連載<First Stage> 注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。 目次脳汁ドバドバ初舞台号泣のセカンドステージお客さんがようやく僕らに慣れてきた「僕」は、あの俳優の影響 脳汁ドバドバ初舞台 左から:ゆッちゃんw、松永勝忢(まつなが・まさとし) ──十九人の初舞台を覚えてますか。 ゆッちゃんw 超覚えてます。最初のボケでウケすぎて、脳汁がドバドバ出たんです。忘れられない。 松永 当時は大阪にいたんですよ。『C★マン』っていうエントリーライブに出ました。大学3年のときか。30組ぐらい出るんですけど、初めて出て、2位になったんです。 ──すごい。 ゆッちゃんw 鬼のように緊張して、出番前は「吐きそう」って言ってたんですよ。でも僕の最初のボケがドカン!とウケて、そこからは「楽しい!」に変わって。ライブのあと、ふたりでサイゼリヤで打ち上げしたんですけど、ウケすぎたのがうれしくてずっとニヤニヤしてて。メニューを開いたり閉じたりして、全然注文もできないし。コップの水が空になっても、ふたりでずっとニヤニヤしてたね。めっちゃ覚えてるなぁ。 松永 僕らは立命館大学の演劇サークルで出会って、僕が誘ってコンビを組んだんです。最初はずっと続けようなんて思ってなかったもんな。 ゆッちゃんw うん。コメディを主にやるサークルだったんですけど、新入生歓迎公演で松永くんがコントの台本を書いてきて、それがおもしろかったんです。だからこの人の台本で演じられるんなら、なんでもいいやって。僕、お笑いは見てこなかったから、正直、漫才とコントの区別すらついてなかったし。でも初舞台がウケすぎて楽しくて、「もっとやりたい! 早く次やりたい!」ってなっちゃいました。 ──演劇では味わったことのない興奮だった? ゆッちゃんw 演劇のお客さんは笑っても「ふふふ」ってレベルだったけど、お笑いだとみんなが口を開けて笑うんですよ! それがめっちゃくちゃうれしかったです。それからは演劇サークルも行くけど、お笑いの稽古を優先してました。 ──どんなネタをしたんですか。 松永 今とそんなに変わらないですね。この人に思いっきり動いてもらってて。僕はツッコミができないタイプなんで、ほぼしゃべらず。 ゆッちゃんw 松永くんは『ハイスクールマンザイ』にも出てたらしいんですけど、そのときはボケだったんだよね。 ──松永さんはボケ気質なのに、自分がツッコミをするのは大丈夫だった? 松永 そうですね。当時、お笑いをやろうと思って、誰に声かけようかなって手札を見たら、 この人に変なことをさせるのが一番おもしろいと思ったので。もちろん自分がボケたくはあったけど、しょうがないかと。 号泣のセカンドステージ ──初舞台でウケて、そこからは順風満帆でしたか。 松永 2回目のライブは、めちゃくちゃスベったんです。初舞台のネタを改良したつもりだったんだけど……。スベりすぎて、舞台からはけた瞬間に、相方が泣き出したんですよ。 ゆッちゃんw 松永くんはほぼしゃべらないネタだから、「スベったってことは、僕が間違ったんだ!」と思って。「ごめん! 次はがんばるから見捨てないでくれ!」って泣きました。 ──でもそこで方向転換するわけではなく、今の十九人と変わらないスタイルを貫いていた。松永さんには、最初から十九人の理想が見えてたんですか? 松永 半分くらいは見えてたかな。相方がすごく騒いで、僕は静かにする、みたいな方向性だけですけど。ライブによっては作家さんがいて、アドバイスされるんですよ。「もっとツッコミをちゃんとしたほうがいい」「出てきたときにこの人のキャラクターがわかるようなボケを入れて」って。そのほうが正しいよなとは思いつつ、「でもなぁ……」ってそのままやり続けて、ここまで来ました。3年目の途中ぐらいまでは事務所にも入らずフリーで好き勝手やってたので、直す機会もなかった。だからもうガラパゴスです。 ゆッちゃんw 独自の発展を遂げました(笑)。でもだんだん認めてくれる大人ばっかりになってきて。ASH&Dにスカウトしてくださったマネージャーの大竹(涼太)さんも、僕らの漫才を見て腹抱えて笑ってくれて。「そのまま好きにやってください」って。 松永 僕らはほとんどネタ見せも受けてきてない。とにかく自由にやってきました。 ──不安になることはなかった? 松永 自分たちのスタイルで迷ったりしたことはないですけど、コロナ禍はキツかったですね。大学卒業して上京したのが2020年の4月なんですよ。 ゆッちゃんw コロナと一緒に東京に来た。 松永 せっかく上京したのに、半年ぐらいほぼなんもしてなかった。親にも「いったん帰ってきたら?」って言われました。 ゆッちゃんw 今、芸人じゃないなぁ、名乗ってるだけかなぁって。 ──そもそも大学卒業後、芸人になることはすんなり決まったんですか? 松永 大学4年の初めごろにASH&Dにスカウトされたんです。それでいったん預かりになってて。当時のASH&Dは、僕らのすぐ上の先輩がラブレターズさんで若手がまったくいなくて、僕らに若手向けのオーディションを回してくれたんです。あと、大学4年の年末に『おもしろ荘』のオーディションで最終選考まで残ったのもあって、親も説得しやすかった。 ──今年頭の『おもしろ荘』に出演されましたが、そんなに前からいいところまで行ってたんですね。 松永 総合演出の諏訪(一三)さんは、もう5、6年、僕らのことを見てくれてますね。 ──諏訪さんはめちゃめちゃ厳しいと聞きますが。 松永 僕らにはめちゃくちゃ優しかったです。「数百組のネタを見てると、どれも同じに見えるんだけど、君らは違う」って。 ゆッちゃんw 「十九人は覚えてられる、忘れない」って言ってくれました。でも番組にはなかなか出られなくて(笑)。 松永 おもしろ荘のオーディションは「映像審査」「諏訪さんの面接」「客前オーディション」と3段階あって、僕らはお客さんのアンケートで落とされるんです。お客さんはみんなお笑い好きじゃない視聴者の方々だから、僕らの漫才は怖がられて、アンケートでバツばっかつけられる。今年ようやく出られたけど、「×」と「◎」の差が一番激しいって言われましたね。 お客さんがようやく僕らに慣れてきた ──コロナ禍で上京してきた十九人はM-1の予選も東京で受けるようになりますが、2020、21年と2年連続で1回戦敗退でした。 松永 上京2年目までが一番キツかったですね。僕らくらいの若手にとって、M-1で勝つ/負けるって正直かなりデカいんで。 ──しかし2022年は3回戦、2023年が準々決勝、2024年は準決勝と毎年ステップアップしています。何かきっかけがあったんですか。 松永 なんだろうなぁ。2022年にこれまで預かりだったASH&Dに所属したことくらいで、別にそれ以外は変わってないんですよね。 ゆッちゃんw お客さんが僕らを見慣れたんじゃない? 松永 たしかに。ライブもできるようになって、東京での仲間も増えて、M-1もだんだん“僕らの世代”になってきたのかもしれない。 ──僕らの世代。 松永 やっぱり世代ってあるなって思うんです。ここ数年は、令和ロマン、真空ジェシカ世代みたいな感じで、なんとなくあったじゃないですか。1回戦を観に来るような熱心なお客さんが、普段見てるライブによく出てる芸人みたいな。その世代が、2022年あたりにちょっとずつ切り替わる感じはしました。 ──十九人が変わったわけではない。 松永 僕らは大学生のころからほとんど変わってないですね。もちろん、うちらが成長して見やすくなったっていうのはあると思いますけど、それ以上にお客さんが見慣れてくれたのは大きい。一昨年の3回戦でやったネタも、今やると全然ウケるんですよ。うちらのメディア露出も、ここ1年でちょっと増えたし、見慣れてもらうってかなり大きいと思います。 ゆッちゃんw あと、僕の滑舌としゃべり方がよくなった(笑)。昔は相当聞き取りづらかったみたいで、それをがんばって改善して。前は「高すぎて聞き取れない」って言われがちだったけど、今は「高いのに太い」って褒められるようになって。 松永 たしかにそれも大きいね。大阪のそれこそ地下でやってたときは、なんかヤバい女が出てきたと思われてたから。「なんか知ってる」とか「名前は見たことある」だけでも安心して見てもらえる。知ってる人が変なことしてるのと、知らない人が変なことしてるのとだったら、知ってる人のほうがいい。 ──私の勝手な推測ですが、マヂカルラブリーやトム・ブラウン、ランジャタイのように漫才の認識を拡張するコンビがM-1の決勝に出てきたことで、十九人の奔放なスタイルも受け入れられたのかと思っていました。かつては「漫才か漫才じゃないか論争」もあったけど、漫才は自由でいい空気が徐々に広まったのかなと。でも、そういう全体的な雰囲気の変化というよりは、自分たち自身が受け入れられたっていう感覚なんですね。 松永 そうですね。変則的な漫才っていうのは常にある。M-1でいうなら、昔ならスリムクラブさんもいました。だから漫才が拡張された、とかはあんま関係ない気がしてます。結局、個々の知られ方が重要で。大きな流れに乗ったっていうよりは、自分たちの受け入れられ方が変わっただけかな。 ゆッちゃんw でも、マヂラブさんが優勝されたあたりから、変な漫才枠がM-1の決勝にできた気がします。ちょっと変なコンビを2組くらい入れて、その人たちが優勝してもまぁ納得みたいな。そういう雰囲気ができて、僕らは助かるなぁって。 松永 たしかに。あと単純に2020年のマヂカルラブリーさんの優勝とか、その前年のぺこぱさんが準優勝っていうのは勇気づけられましたね。変則的なネタでも、そこまでいけるんだって思えたから。 ゆッちゃんw できないことはないんだって思えたね。 「僕」は、あの俳優の影響 ──十九人のnoteで、松永さんが「男女コンビへの『付き合ってんの?』ではない正解の聞き方」で、男女コンビならではのめんどくささについて書いていました。5年前の記事ですけど、今の十九人を見ていると、男女コンビであることってまったく気にならなくて。 松永 君が女性ってあんまり見られてながち、かもな。衣装のTシャツにGパンも、大学時代ずっとその格好だったからってだけですけど、中性的やし。今も普段はスカートよりはパンツのほうが多いよな。 ゆッちゃんw そうだね。 ──以前、蛙亭を取材したときイワクラさんが、コントで抱き合ったりすると「おっぱい当たってんだろ」と言われたりして、それがうっとうしいと言ってたんですよ。 ゆッちゃんw やっぱしそういうのあるんだ。 松永 俺たちは言われないなぁ。ホンマに今までそこ言われたの、モグライダーのともしげさんくらいかも。 ゆッちゃんw たしかに(笑)。「それはいいのかなぁ……」ってオドオドしながら心配されてた(笑)。 ──違和感がなくて忘れがちですけど、ゆッちゃんwさんの「僕」という一人称もいいのかもしれません。芸人になってから言うようになったんですか? ゆッちゃんw いや、生まれてこの方ずっと「僕」って感じで生きてきました。 ──私の娘も6歳で「僕」って言うんですよ。でもそれはあのちゃんの影響とかもあって。 ゆッちゃんw あぁ、たぶんあのちゃんは僕と同年代です。 ──あのちゃんとゆッちゃんwは「僕」世代。 ゆッちゃんw たしかに(笑)。子供のころ、まわりでは「うち」って言ってる子も多かったけど、僕はしっくりこなくて。でも「私」もなんか長いから違うし。 松永 「うち」「ぼく」より「わたし」は1文字多いから。 ゆッちゃんw そうそう。それで「僕」のまま来ちゃった。あと僕、TEAM NACSが好きなんですけど、ちっちゃいときから北海道のテレビで大泉洋さんを見てて。大泉さんの言う「ぼかぁね〜」が刷り込まれてるのかもしれないです。 ──ルーツは大泉洋。 ゆッちゃんw 保育園のときから言ってたみたいです。親も友達もなんにも咎めないから、そのままやってきちゃって。でも一時期、おじいちゃんYouTuberのマネをして、「わしはね〜」って言ってたら、それは友達に「年寄りの言い方だからやめたほうがいいよ」って言われて、「僕」に戻しましたね(笑)。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平 十九人 ゆッちゃんw(1997年9月9日、北海道出身)と、松永勝忢(まつなが・まさとし、1997年10月29日、大阪府出身)のコンビ。2018年4月、立命館大学の劇団サークルで出会い、コンビを結成。2020年4月に上京し、フリーとして活動。2022年、ASH&Dに正式所属。『M-1グランプリ2024』準決勝進出。2025年元日未明に放送された『おもしろ荘』では3位に入賞した。 【前編アザーカット】 【インタビュー後編】 好きなことを突き詰めてきた異色のコンビ・十九人が、勝ちを意識した瞬間|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#34
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芸人たちから愛される70代の“若手芸人”おばあちゃんのネクストステージ|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#33(後編)
2023年6月、よしもとの若手芸人が活躍する、神保町よしもと漫才劇場に激震が走る。なんと76歳の“若手芸人”が、オーディションに勝利し、史上最高齢で劇場入りを果たしたのだ。 「おばあちゃん」という、ひねりがないのに新しい芸名で、笑いをかっさらう彼女。瞬く間に注目されたが、本人は至って平常心だ。 なぜおばあちゃんは、こんなにも飄々と、イキイキしているのか。きっとこのインタビューを読めば、彼女のバイタリティの秘密がわかるはず! 【インタビュー前編】 よしもとの劇場で活躍する70代の“若手芸人”おばあちゃんの初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#33(前編) 目次知らぬ間に芸人になっていた高齢者向けの営業で大活躍『M-1』でも大活躍「ババア!」って言われるのもうれしい 知らぬ間に芸人になっていた ──シルバー演劇をやっていたおばあちゃんが、舞台の基本を学ぼうとしてひょんなことから、よしもとの養成所・NSCに入った。そこまではギリギリわかるのですが、なぜ養成所の卒業後に演劇に戻らなかったんですか。 おばあちゃん NSCでは、お笑いだけじゃなくて、発声や舞台での心得も学べるんです。だから勉強しているうちに、舞台という意味では、演劇もお笑いも同じなのかもしれないと思いました。 ──それでそのまま芸人になった? おばあちゃん いえ、私はこの歳で芸人になれるなんて思いませんでした。事務所の方に「おばあちゃん、なんで所属登録しないの?」と聞かれたときも「私はスマホもできないし、みなさんに迷惑かけるので無理です」と言ってたくらいで。 そしたら「たったそれだけの理由?」「そんなことはこっちでバックアップするから、手続きだけしときなさい」と、おっしゃるんです。 ──その言葉は心強いですね。 おばあちゃん でもね、最初はそう言ってた方がメールを教えてくださったんですけど、私があんまりにも覚えが悪いんで、さじ投げちゃって、ほかの若い事務員さんに指導役が変わりました(笑)。スマホは同期の仲間にも教えてもらいましたし、芸人になれたのは、みなさんのおかげなんです。とはいっても、自分が芸人になったって気づいたのは、卒業してから3年後なんですけど(笑)。 ──3年後に芸人になったことに気づくって、どういうことですか(笑)。よしもとに所属して劇場に出ているのに。 おばあちゃん NSC時代からお世話になっていた作家の山田ナビスコさんの舞台に出させてもらってましたけど、コロナもありましたし、それこそシルバー演劇のように、ときどきネタをやってるだけでしたから、自分がプロの芸人になったなんて思わなかったんです。 でもあるとき、同期の男の子と話してたら年寄りのお節介が始まっちゃって。「あんたさ、芸人になるつもりなの? お母さん心配するから辞めときな」と話してたら、その子に「何言ってんの、おばあちゃん。俺たちもう芸人だぜ」と言われて、「えぇ! 私も芸人!?」ってびっくりしちゃって(笑)。「そうだよ、売れない芸人」という言葉で、やっと自分が芸人だったことに気づいたんです。 ──売れてない芸人ゆえにライブが少なくて、芸人の自覚が芽生えなかった。 おばあちゃん そうですねぇ。神保町の劇場(神保町よしもと漫才劇場)に所属が決まったときも、システムがよくわかってなくてね。夜の舞台が多かったんですけど、私は横浜のほうに住んでるから、早めに劇場を出ないと家に着くのが深夜になるでしょう。だから自分の出番が終わったら、すぐ帰っていたんです。 ──それでバトルライブの結果をずっと知らなかった? おばあちゃん 結局、そういうことだったみたいですね(笑)。スマホもろくに見れないから順位も知らない。ある日「おばあちゃん、おめでと〜」って言われても、何がおめでたいのかさっぱりわからない。「オーディションに受かったんだよ」と聞かされて「ねぇねぇ、これに受かってなんの得があんの?」という具合で、みんなから「いい加減にしてくれよ!」と言われちゃいましたね(笑)。 ──若手芸人たちは、必死で勝ち上がろうとしているバトルライブだから、そう言うのも無理はないですね(笑)。 おばあちゃん もうみんな、そのライブのときはピリピリしてますからね。そこで私はおせんべい配って「みんながんばってねぇ」って。自分もこれから出番なのにね(笑)。 高齢者向けの営業で大活躍 ──おばあちゃんの、小噺のあとに川柳を詠むというネタは、どうやって完成したんですか? おばあちゃん NSCの講師だった山田ナビスコさんが卒業後もネタを見てくださって、「おばあちゃんは漫談をシルバー川柳で締めたほうがいい」とアドバイスしてくださったんです。実際、それがすごくよかった。漫談のオチを忘れそうになっても、川柳に書いてあるから読めばいいんですから(笑)。 ──川柳にはもともとなじみがあったんですか。 おばあちゃん 会社員時代にちょっと詠んだりはしましたけど、本格的にやったことはありません。今でも、ひとつの川柳を作るのに、半年以上かかったりすることもあります。もちろんほかのものも並行しながら作っていますけどね。いったん保留にしておくと、あとでいいものが浮かぶことがあるんです。 ──ネタ作りはどんなタイミングでやるんですか。 おばあちゃん ネタ帳というか、メモ帳を家の至るところに置いてまして、いつでもメモを取れるようにしたんです。たとえば、この時期だと今年の流行語をテレビで見て、メモします。……でも流行のネタって、すぐ使えなくなるんですよ。 ──旬が過ぎると、ウケなくなる。 おばあちゃん そうなんです。最初のころは、流行とか季節のネタをよく作ってましたけど、今は一年中どこでも通用するネタを考えてます。あと、依頼に応じて作ることもありますね。補聴器のPRイベントに呼ばれたときは、耳のネタ。お父さんの耳が聞こえにくいのをネタにしたり、老眼鏡も入れ歯も補聴器も、衰えたことを悲しむんじゃなくて、アクセサリーとして楽しみましょうと。 ──営業の機会は多いですか。 おばあちゃん はい。老人ホームもありますね。ただ、老人ホームでもいろいろあって、国がやってるところは認知症の方が多いでしょう。だからネタなんか聞いてもらえない(笑)。認知症の方には音楽がいいですね。ほとんどしゃべれなくなった人でも、音楽が鳴ると、手を叩いたり、リズムを取ったりします。私の漫談ネタをやるなら有料老人ホームが合ってるんでしょうけど、そういうとこの人は、みんなお金を持ってるから、私のネタを見るくらいなら、自分たちでコンサートとか演劇を観に行ってしまう(笑)。 ──高齢者向けの営業はなかなか大変なんですね。 おばあちゃん でも葬儀屋さんでの営業は楽しかったですねぇ。高齢者をいっぱい集めて終活の説明会をするでしょ。お葬式の準備から、後見人制度、財産分与の説明をして、その付録として私たち芸人がネタを披露させていただくんです。若い落語家さんなんかは、やりにくいでしょうけどね(笑)。そりゃあ控え室からお線香臭くて、祭壇があって、お客さんはお年寄りばかりだからしょうがない。でも私は楽しいですねぇ。 ──葬儀屋の営業ではどんなネタをしますか。 おばあちゃん お父さんに「書いといて」って渡したエンディングノートがメモ帳になってたとか、終活で自宅の整理をしている友人が、私の家にたくさんの不用品を送ってきた話とかしてますね。 『M-1』でも大活躍 ──おばあちゃんは、しゅんP(しゅんしゅんクリニックP)さんと一緒に「医者とおばあちゃん」というコンビで『M-1グランプリ』にも出ていますね。2年連続で3回戦まで進出していて、2024年なんて、10,330組中の408組まで残っていて、すごいです。 おばあちゃん そうなんですかねぇ。私はよくわかんないんですよ。 ──「医者とおばあちゃん」のネタはどうやって作ってるんですか? おばあちゃん しゅんPさんと雑談しながらですね。「最近の若い医者はパソコンばっかり見て、患者の顔を見てないねぇ」とか「患者はボロイスなのに、なんで医者はいい椅子なの?」とかって話すと、ネタにしてくれます。あと、私は友達からネタを仕入れてますね。ばあさんのくせにイケメンの先生のところにしか行かないとか、オシャレしていく場所が病院しかないとか(笑)。 ──そもそも、しゅんPさんとはどういう経緯で組んだんですか。 おばあちゃん これも山田ナビスコさんのおかげです。前々からしゅんPさんに、「お前にぴったりの人が入ったから、組んでみたらおもしろいんじゃないの」と言っていたらしくて。それからコロナがあったり、しゅんPさんのご結婚・出産や、相方との別れを経て、初めてお会いしました。そのとき撮った写真がバズったんですって。お医者さんがババアの脈を測っているポーズで。 吉本に後輩ですが75歳の「おばあちゃん」という芸名のピン芸人がいるのですが、今日劇場でお会いしたので写真を撮ったら完全にただの「医者と患者」になりました。 pic.twitter.com/4n7YvavzsY — しゅんしゅんクリニックP(しゅんP) (@fleming_miya) August 27, 2022 そのあとすぐM-1に応募して、1回戦まで受かりました。そろそろ3回戦より上に行きたいんですけど、欲が出てくると危ないんですよねぇ(苦笑)。 ──M-1は緊張感がすごいですが、おばあちゃんは大丈夫ですか? おばあちゃん 私はね、しゅんPさんがいてくれるから全然気が楽なんです。噛もうが何しようが、かぶせてくれるので、安心感があります。医者っていう安心感もあるんでしょうね。最近は脈を測られても「おばあちゃん正常だな、俺のほうが早えや」なんて言ってますよ(笑)。 「ババア!」って言われるのもうれしい ──よしもとって、先輩・後輩の関係性は絶対というイメージがあるんですが、おばあちゃんもやはり年下の先輩におごってもらうんですか? おばあちゃん そうそう、普段から食事に連れてってくださるんです。「おばあちゃん、なんでもいいから。高くてもいいからね」と言ってくれるんで「ありがとうございます。こんなの食べたことありません」って、特上の天丼を食べさせてもらってね。でも時々、お会計で「お前払えよ」「いや、俺金ねえよ」とやりとりしてる同期の会話が聞こえてきて、「明日食べるごはんあるのかなぁ」と心配になることもあります(苦笑)。でも、私も後輩だから出すわけにはいかないので、そこは「ごちそうさまです」と言いますけど。 ──特に仲のいい芸人さんはどなたですか。 おばあちゃん 喫茶ムーンのレヲンっていう女の子は、NSCのときから、よくごはんに行きます。こないだは八景島の水族館にも行きましたよ。私の自宅が八景島のほうにありまして。 ──八景島から都内まで通われているんですね。 おばあちゃん それで舞台も最後までいられないんです(笑)。でも主人は海が大好きで、あそこから離れられないんですよ。この前、「お父さんが亡くなったら都内に引っ越そうかな」って言ったら、イヤ〜な顔して「お母さんそこまで芸人続かないから考えなくていいよ」って言ってましたよ(笑)。 あとよくしてくださってる芸人は、エルフさん、ヨネダ2000さんですね。あと、ぼる塾さんは4人が同じグループになる前は、劇場の控え室で一緒にお菓子を食べていたんです。それがあっという間に人気者になって、今ではテレビで追っかけしてますね。 ──おばあちゃんが若い芸人たちと仲よくやれている様子は、この高齢社会にあってひとつの希望だなって勝手に思ってしまうんですよ。 おばあちゃん そう言っていただけてうれしいです。最終目標はやっぱり世の中のために役に立ちたい、ですから。この年までね、みなさんのおかげでこうやって生かされたので、お役に立ちたい。最近はね、控え室で私が大福食べてると、ほかの芸人さんが「誰か水持ってきとけよ」とか「掃除機どこにある?」とか言い出すんですよ(笑)。みなさんが私のことを笑いにしてくださるのも、すごくありがたい。 ──変に心配されるよりも、笑い飛ばされるほうが居心地がよかったりしますよね。 おばあちゃん そうそう。今までは「ババア!」って言われると、気にしてたんですよ。でも最近は「おい、ババア!」と言われても「ジジイって言われなくてよかったね!」って言い返して、「お主、やるなぁ」と褒められるようになりました(笑)。芸人の雰囲気ってすごくいいんです。私は本当にまわりの方に恵まれていますね。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平 おばあちゃん 1947年2月12日、東京都出身。2018年、NSC東京校に24期生として入学。2019年4月、72歳で芸人デビューを果たす。2023年6月に、神保町よしもと漫才劇場のメンバーとなる。76歳での当劇場メンバー入りは過去最高齢。FANYアプリ『おばあちゃんのシルバーラジオ』や、YouTubeチャンネル『おばあちゃんといっしょ』なども展開している。 【後編アザーカット】
focus on!ネクストガール
今まさに旬な、そして今後さらに輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載
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趣味は編み物と映画鑑賞──『おいしくて泣くとき』ヒロイン・當真あみのプライベート
#20 當真あみ(後編) 旬まっ盛りな俳優にアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 當真あみ(とうま・あみ)。2020年に沖縄でスカウトされ、『妻、小学生になる』(2022年/TBS)でテレビドラマ初出演を果たす。その後、「カルピスウォーター」の14代目イメージキャラクターに就任、また、『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)など、ドラマへの出演を重ねる。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。後編では、プライベートに関することを聞いてみた。 インタビュー【前編】 目次手芸屋で毛糸を物色、俳優仲間と映画館へ上京後も送ってもらっていた“実家の味” 手芸屋で毛糸を物色、俳優仲間と映画館へ ──プライベートなことも伺いたいのですが、最近ハマっていることはありますか? 當真 映画鑑賞はずっとしています。あと、去年ハマり出したのは、カメラと編み物ですね。編み物は、空いている時間に少しずつ編んで、いろいろと作ったりしています。 ──素材も自分で買いに行ったり? 當真 はい。手芸屋さんへ行って、毛糸を物色したりとか。 ──今まで編んだ中で、一番うまくできたものはなんですか? 當真 ニット帽ですね。けっこううまくいって。夏場は、麦わら帽子になるような素材で、帽子を作ったりもしていました。 ──映画は今、どれくらいのペースで観ていますか? 當真 今年も1月中に3本は観ました。まだまだ観たい作品があって、もうすぐ上映が終わるのかなとか、早く行かなきゃと思っている作品も、今、3つぐらいあります。少なくとも月に1本以上は確実に観たいなと思っています。 ──映画館に行って観るんですか? 當真 そうですね、映画館がすごく好きで。家で観ていると、ちょっと飽きちゃったり、気が散ることもあるのですが、映画館だと大きなスクリーンにすごい音響だったり、本当にその空間がすごく好きなんです。 ──今まで観てきた映画の中で、すごく好きな作品、もしくはこの作品に出ているこの俳優の演技に憧れる、というのはありますか? 當真 お芝居でいうと、杉咲花さんです。昨年観た『52ヘルツのクジラたち』(2024年)と、おととし観た『市子』(2023年)での杉咲さんのお芝居が本当にすごくて……誰かの人生を追いかけて見ているような、そういうリアルなお芝居というか。リアルだし、言葉の一つひとつに、しっかりと伝わってくる強さがあって、そういう相手に届ける力がすごく強い女優さんだなと思いました。 ──お仕事をするなかで、仲よくなった俳優さんはいますか? 當真 『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』というドラマで仲よくなった友達とは、ずっと一緒にいます。みんな映画を観るのが好きなので、最近は一緒に。それこそ『室町無頼』も一緒に観に行きました。共通の好きなものを持っている人がいるのって、すごくいいなと思いながら過ごしています ──今後、やってみたい役柄はありますか? 當真 今、高校卒業間近で、これまでは学生役をいただくことが多くて、今後はさらに先にある大人としての仕事とか、今の学生のさらに先のところで一生懸命にがんばっているような役に挑戦できたらなと思っています。 ──社会人の役などですかね? 當真 そうですね。学生の役では、自分が経験したものだったり、知っている感情をつなぎ合わせて演じていたんですけど、その先となると私もまだ経験したことがないから、たぶんすごく難しいだろうなと思うんです。でもそこを探しながらやるのがすごく楽しいだろうなと思っていて、挑戦してみたいですね。 ──高校を卒業して、成人して、何かが変わる実感はあったりしますか? 當真 成人してですか……まったくないです(笑)。18歳になったからって遅くまで出歩くわけでもないですし、結局あまり変わらないかなというのが大きくて。ただ、学生でも子供でもないというところを意識して、しっかり気持ちを切り替えてかないといけないなとは思っています。 上京後も送ってもらっていた“実家の味” ──俳優以外で、今後やってみたいお仕事はありますか? 當真 ドラマや映画の宣伝で出演するバラエティ番組などで、全然違うジャンルなのに、おもしろくできる俳優さんがいるじゃないですか。すごく明るいキャラクターが出ている感じの……。私は(バラエティでは)うまくしゃべれないぐらいに緊張するので、それをなくせたらなと思っています。 ──書く仕事などは、興味があったりしますか? 當真 あまり考えたことはなかったですね。それよりは、最近カメラを持ち始めてずっと撮っているんですけど、写真を撮るのがすごく楽しくて。その流れで何か挑戦できるものがあったらいいなと思います。 ──写真を撮るときには、ご自分が撮られるときの経験が活きていたりしますか? 當真 いや、まったくないですね(笑)。撮っている対象も友達ばかりですし。画面を通して見ると、また違う人に見えてくるのがおもしろくて、そこはどこかお仕事で活かせたら楽しいだろうなと思います。 ──最後に、改めて映画『おいしくて泣くとき』の見どころを伺えれば。 當真 そうですね。心也くんと夕花の初恋、ラブストーリーではあるんですけど、それだけじゃなくて、ふたりを囲む世界にいる人たちの愛がたくさん感じられる作品だと思います。たとえば30年も相手を思い続ける心也くんの想いや、子供に対する心也くんのお父さんの想いなど、深い気持ちをすごく感じられる作品ですし、人の気持ちの強さ、尊さを感じていただけたらなと思います。 ──タイトルにもつながる、當真さんご自身の「食の思い出」はあったりしますか? 當真 あまり外に出て食べるということをしないのですが、お母さんやおばあちゃんの料理はすごく好きですし、東京に来てからも作った料理を実家から送ってもらっていたことがあって。ハンバーグとか、自分が本当に好きな食べ物を送ってもらっていて、仕事が終わったあとに食べるとすごく体に染み渡りました。ずっと食べてきたものを食べるとすごく安心して、おいしくて。泣くまではいかないんですが、ほっとする料理が身近にあるのは、本当にうれしいことだなと思いました。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 編集=中野 潤 ************ 當真あみ(とうま・あみ) 2006年11月2日生まれ。沖縄県出身。『妻、小学生になる』(2021年/TBS)でテレビドラマ初出演。その後も『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(2024年/TBS)など、ドラマへの出演を重ねる。Netflix映画『Demon City 鬼ゴロシ』が配信中。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。
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最旬女優・當真あみ──松岡茉優や広瀬すずとの共演で培った“演技力”と“人間力”
#20 當真あみ(前編) 旬まっ盛りな俳優にアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 當真あみ(とうま・あみ)。2020年に沖縄でスカウトされ、『妻、小学生になる』(2022年/TBS)でテレビドラマ初出演を果たす。その後、「カルピスウォーター」の14代目イメージキャラクターに就任、また、『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)など、ドラマへの出演を重ねる。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。その作品に関する話から聞いてみることに。 目次心の「居場所」を意識して、作り上げたヒロイン像松岡茉優からもらった「卒業証書」に感銘を受けて 心の「居場所」を意識して、作り上げたヒロイン像 ──映画『おいしくて泣くとき』の話をもらったとき、いかがでしたか? 當真 お話をいただいてから、台本と原作を読んで、すごくあたたかい作品だなと思いました。ほっこりするあたたかさとは違って、人の優しさを知るというあたたかさというか……。私が演じる夕花と、長尾(謙杜)さんが演じる心也との初恋もそうなんですけど、それだけじゃない、人を思いやる気持ちというのがたくさん感じられる作品で、すごく素敵だなと思いました。 ──ご自分の素のキャラクターと夕花とで、似ているところはありますか? 當真 夕花は家庭での複雑な事情があって、少し大人びているところがあるんですけど、その中での芯の強さと、本人のもともと持っている明るさが合わさったときの力強さは私にはないものなので、そこをしっかり出せたらいいなと思いました。 ──撮影していて、特に印象に残っているシーンはありますか? 當真 ひとつだけ挙げるなら、雨の中を帰るシーンですね。実際、その日も雨が降っているというリアルな状況で、楽しいというよりは少し沈んでいる空気を雨が消してくれるみたいな、そういう心情になって。そのあたりの気持ちの作り方を考えて、監督とも相談しながら撮影したこともあって、印象に残っています。 ──ほかにも撮影していて大変だったな、苦労したなというシーンはありますか? 當真 ラストの心也くんとのシーン……気持ちを作るのに少し時間をかけてしまったんですけど、このシーンが大変でしたね。たくさん言葉をかけてくれる心也くんに対して、振り切るかたちで夕花が行ってしまうという行動……すごく大切な部分なので、その気持ちを作るのに時間がかかりました。 ──クランクイン後の最初の撮影、夕花の家でのシーン……けっこう激しいシーンでしたね。 當真 夕花の土台となる、この作品ですごく重要な要素でした。そういった家での状況が中心にあった上で、心也くんとの対話だったり、“子ども食堂”に行っていたりとかするので、重要な部分を最初に撮れたのは、すごくありがたかったなと思います。 ──そこを基準に、役づくりをしていった感じでしょうか? 當真 そうですね。やっぱり家で起きていることが、どんなシーンでも頭をよぎるというか……ふと思い出したりすることができたので、そこはすごくありがたかったです。 ──長尾謙杜さんと共演してみた印象は? 當真 横尾(初喜)監督と長尾さんと私の3人で話すことが多かったので、コミュニケーションを取る機会も多くて、演じる上ですごくやりやすかったです。 ──撮影の合間は、どんな話をしましたか? 當真 撮影地が豊橋だったこともあって、豊橋のおいしい食べ物の話とか……初日は私が緊張しているので、撮影がスムーズにできるような気遣いをしてくださったり。合間では、本当にたわいもない会話や地元の話……図書館のシーンでは、文房具がいっぱい目の前にあったので絵を描いたりとか、そんなこともしていましたね。 ──當真さん自身も、弟役の矢崎滉さんを引っ張っていかなきゃというような意識はありましたか? 當真 やっぱり夕花としては、小さい弟を守らなきゃ!みたいな気持ちもありますし、弟役の矢崎くんも撮影の初日は緊張しているかなとも思ったので、意識的に話しかけたりしました。 ──その様子を見ていて、ご自分が初めて演技したときのことを思い出したりしました? 當真 しました(笑)! やっぱり緊張というか……監督から言われたことを、こうなんだろうか?と考えたりして、本当に難しいなと思っていたことを思い出しました。 ──この映画で見てほしい、ご自分の演技のポイントはどのあたりですか? 當真 (自分の)家にいるときの夕花と、心也くんが作ってくれた居場所にいるときの夕花の違いです。やっぱり、自分にとっての居場所があるというのはすごくうれしいことだなと、撮影の合間にも感じていて……帰ってくることができるという安心感って、たくさんあればあるほどすごく安心できる。その居場所に対する夕花の違いを、見ていただければと思います。 ──當真さんにとっての「居場所」、行き着く場所は、どこなんでしょうか? 當真 やっぱり仲のいい人といる場所……もちろん地元の沖縄のお母さんたち、おうちだったり、おばあちゃんだったり。それと東京に来てから仕事で仲よくなった友達と一緒にいる時間や空間というのも、私にとっての「居場所」だなと思います。 松岡茉優からもらった「卒業証書」に感銘を受けて ──今まで演じてきた作品の中で、一番印象に残っているものはなんですか? 當真 こういう現代の話とは離れたジャンルの時代劇『大奥』(2023年/NHK)と『どうする家康』は、すごく印象に残っていますね。それまでやってきたお芝居とは違って、セリフから所作から何もかも自分の中で新しくやることだったので、すごく難しかった記憶があります。 ──なるほど。時代劇も、今後またやってみたいと思いますか? 當真 そうですね。『大奥』では、特に男女の設定を逆転させて女性のほうが強く押し切るという、実際の歴史とはちょっと違った描き方でしたし、これとはまた違うかたちでの時代劇にもチャレンジしてみたいです。 ──當真さんのInstagramを拝見すると、いろいろな映画作品をご覧になっていますが、最近観た中で印象に残っている作品はありますか? 當真 昨年の12月に観た『侍タイムスリッパー』です。最近観に行ったばかりの『室町無頼』も、現代とはかけ離れた話で、アクションの迫力とか、そういう部分に圧倒されたり。『侍タイムスリッパー』にはコミカルでくすっと笑ってしまうような部分、すごく惹きつけられる部分がたくさんあったので、印象に残っています。 ──以前、憧れている俳優は長澤まさみさんとおっしゃっていましたが、今、憧れている、目標にしている俳優はどなたですか? 當真 変わらずに、長澤まさみさん。それと、ドラマでご一緒した松岡茉優さん、よく出演作品を観ている杉咲花さんです。松岡さんは、ご一緒した撮影現場(『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』)で、すごく圧倒されました。先生役で、ワンシーンがものすごく長くて、セリフもすごい量だったんですけど、長回しで何回も繰り返す撮影でも、毎回ぐっと惹きつけられるお芝居で。観る人だけじゃなく、現場にいる俳優たちも圧倒するようなお芝居が、すごくエネルギーがあって素敵だなと思いました。憧れですし、私もそうできるようになりたいです。 ──松岡さんとの現場での思い出はあります? 當真 松岡さんはすごく優しくて、クランクアップの日は、本当の卒業式みたいに卒業証書をくださいました。一人ひとりが(松岡さんから)ひと言をもらう時間もあって、そこは10話通して撮影してきた中でも本当にラストの卒業みたいな感じになって。撮影中、生徒と松岡さんが演じる先生との間には役柄的にも壁がある感じだったんですけど、撮影が終わると、笑顔で「おつかれさま!」と言っていただいたのも印象に残っています。 ──デビュー以降、初期に演じた作品はいかがでしたか? 當真 長編映画だと最初に演じたのは『水は海に向かって流れる』(2023年)、短編だと『いつも難しそうな本ばかり読んでる日高君』(2022年)ですね。長編では、広瀬すずさんとご一緒しました。お芝居はほぼ初めての状態だったので、監督が撮影1カ月前に何回か個別にリハーサルを組んでくださって、そこでいろいろなアドバイスをもらいながら本番に臨んだので、すごく記憶に残っています。 ──広瀬すずさんとの共演は、どうでした? 當真 一緒のシーンがすごく少なかったのと、映画の内容的にも、私の演じる「楓」が一方的に(広瀬すず演じる「榊千紗」を)敵対視している設定だったということもあって、現場であまりお話しすることはなかったんですよね。ただ、撮影したのが寒い季節だったので、待ち時間にちっちゃいストーブを私のほうに向けて「あったまって!」と言ってくれたりとか、そういう気遣いをしていただいたのは覚えています。 ──実写映画以外では『かがみの孤城』(2022年)での声優経験もありますが、声優と俳優では、どんな違いがありましたか? 當真 声優は、セリフだけで表現しないといけないのがすごく難しいと感じました。俳優だったら表情でやるものを、アニメーションの表情に合わせるにはさらにテンションを上げたり抑揚をつける必要があって、そういう部分がすごく難しかったです。 ──なるほど。ドラマ『ケの日のケケケ』(2024年/NHK)では、ちょっと難しい役柄にも挑戦されていましたが、役づくりはどうされたんですか? 當真 このドラマでは、私が演じた役が持つ「感覚過敏」の方とお話しする機会をいただきました。実際の感覚を教えてもらったり、撮影現場にも来てくださった方から話を聞いたりとか、いろいろと教えてもらいながらやりましたね。たとえば、音や光……駅の騒々しい感じはどれぐらいの大きさに聞こえるんだろう?とか、そういうことを常に想像しながら過ごして、自分の役に取り入れていました。 ──『ケの日のケケケ』で母親役を演じていた尾野真千子さんは、『おいしくて泣くとき』でも大事な役どころで出演されていますね。 當真 ものすごくうれしいですね。尾野さんとまたこうやってご一緒できて。撮影のスケジュール的にはお会いできなかったので、会いたかったなぁ……という寂しい思いもあるんですけど、本当にうれしいです。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 編集=中野 潤 ************ 當真あみ(とうま・あみ) 2006年11月2日生まれ。沖縄県出身。『妻、小学生になる』(2021年/TBS)でテレビドラマ初出演。その後も『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(2024年/TBS)など、ドラマへの出演を重ねる。Netflix映画『Demon City 鬼ゴロシ』が配信中。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。 【インタビュー後編】
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タイを満喫──女優・莉子が語る『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』撮影裏話
#19 莉子(後編) 旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 莉子(りこ)。2018年〜2021年まで雑誌『Popteen』の専属モデルを経て、『ブラックシンデレラ』(2021年/ABEMA)にて連続ドラマ初主演。その後も、ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)や、映画『違う惑星の変な恋人』(2024年)など、さまざまな作品に出演し、女優としての歴を重ねる。2024年10月から放送中のドラマ『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ)では主演を、11月より配信される『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(ABEMA)では、主人公と行動をともにする「広瀬」として、重要な役どころを演じている。前回に続いて、最近の活動にフォーカスする。 インタビュー【前編】 目次「桐谷さんと佐野さんには本当に助けてもらいました」映画『恋僕』では福岡に1カ月滞在キックボクシング、ピラティス、ドライブ──アクティブなプライベート 「桐谷さんと佐野さんには本当に助けてもらいました」 ──最近出演された『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(ABEMA)(以下、『インフォーマ』)についてもお聞きしたいのですが、実際にやってみていかがでしたか? 莉子 本当に楽しかったです! それはやっぱり、桐谷健太さんと佐野玲於(GENERATIONS)さんのおかげだと思っていて。おふたりがいなければ、私はきっとこの現場を乗り越えられなかっただろうなと思うくらい、おふたりが伸び伸びとお芝居できる環境を整えてくださったので、感謝の気持ちでいっぱいです。 ──海外での撮影は今回が初めてでしたか? 莉子 はい、初めてです。修学旅行以来の海外で、4年ぶり。渡航の準備段階から「海外ってどうやって行くんだっけ?」という感じでした(笑)。久しぶりの海外が仕事で、しかも撮影ということで不安もありましたけど、やるしかないと思って飛び込みました。 ──タイでの撮影はいかがでしたか? 莉子 正直、最初は不安と緊張でいっぱいでした。現地はとても暑くて、ちょっと過酷な環境でしたし。どうしようという不安もあったんですが、『Popteen』時代の体育会系精神がよみがえってきて「やるしかない!」と自分に言い聞かせました。 ──印象に残った出来事は、どんなことでしたか? 莉子 タイはどこも室内が寒いんですよ。タイの人たちは暑さを和らげるために、室内をキンキンに冷やしているんです。それがサービスなんですが、私は寒すぎてスウェットを着たいくらいでした。日本の冷房の感覚とは違って、本当に冷え冷えなんです! それと、交通はバイクや車が主流で、タクシーが渋滞に巻き込まれることがしょっちゅうありました。「バイタク」というバイクタクシーも利用しましたけど、日本ではまず見かけない光景なので新鮮でした。撮影では「トゥクトゥク」にも乗りましたし、日本ではなかなかないことをたくさん体験できて、最初の不安はどこかへ消えて、終わってみれば本当に楽しい思い出ばかりです。 ──ご飯はいかがでした? 莉子 実は私、辛いものが苦手で、最初の1週間くらいは現場でも辛い料理ばかりで食べられず、ずっとタイ米だけを食べる生活でした(笑)。そんななか、プロデューサーさんたちが「ヤバい、莉子ちゃん、辛いのダメらしい」と気づいて気を遣ってくださり、辛くない料理を用意してくれるようになって、そこからはだいぶおいしくいただけました! ──撮影中、特に印象に残ったシーンはありますか? 莉子 私自身のアクションシーンは少なくて、体力的にはほかのみなさんほど大変ではなかったんですけど……普通に楽しかったのは、やはり「トゥクトゥク」に乗るシーンです。それと、前作の『インフォーマ』(関西テレビ/2023年)で印象的だったシーンがまた出てきたり、前作を観ていた人が楽しめるネタがあちこちにちりばめられているので、「あ! このシーンはあれだ!」と、ひとりで密かに盛り上がっていました。 ──今回のドラマでは、どのような役づくりを意識されましたか? 莉子 普段はノートに役について書き込むのですが、今回はあえて決め込まずにいこうと思いました。オーディションでお芝居を見ていただいたこともありますし、木原(桐谷)と三島(佐野)との関わりの中で変化していく役柄なので、先入観で固めてしまわないようにしました。 せっかくのタイという場所での撮影ですし、前作にも出てらっしゃる桐谷さんや佐野さんと初共演するなかで、その場の空気感を大切にしながら生まれるお芝居を受け止めて、キチンと返すことに集中しましたね。 ──撮影中、桐谷さんとはどんなお話をされましたか? 莉子 最初に本当に感動したのは、桐谷さんの気遣いです。タイの室内は寒いというのは聞いていて対策していたんですけど、ロケバスで初対面のあいさつをしてから、移動するとき、桐谷さんが「莉子ちゃん、ロケバスの温度大丈夫?」と、すぐ気にかけてくださったんです。初対面で、しかもさっきごあいさつしたばかりなのにすぐに私の名前を呼んで、温度まで気遣ってくださるなんて、本当に素敵な方だなと思いました。あの瞬間から、私も桐谷さんのような人間になりたいと強く思いました。 ──佐野さんとは、いかがでしょうか? 莉子 佐野さんとは、空港のシーンが最初でした。初対面だったのですが、待ち時間などに少し話しかけてくださったりして。佐野さんって本当に温かみのある方で、コミュニケーションの取り方からも、たくさんの経験をされてきた方なんだなと感じました。 ほかにも佐野さんは、タイでおすすめの場所のリストをスタッフさんを通じて送ってくださったり、後輩や私たちのことを気にかけてくれる方でした。今回の現場では、人に恵まれているなと改めて感じましたね。桐谷さんと佐野さんには本当に助けてもらいました。 ──タイでの撮休日は、観光を……? 莉子 そうですね、最初の3〜4週間はタイに滞在しっぱなしだったので、後半にはもう慣れて、ひとりでタクシーに乗ったり、マッサージやショッピングモールにひとりで行ったりしていました。タイでひとり行動できるなんてすごいなと自分で思うくらい楽しんでました(笑)。 ──特に印象に残った場所はありますか? 莉子 とにかくショッピングモールが大きくて、中には水上マーケットがあったりもするんです。色合いや装飾がタイらしくて楽しかったですね。ナイトマーケットも有名で、暑さのなか、汗をかきながらスタッフとご飯を食べたりして……いい思い出ですね。 ──改めて『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』の見どころは、どんなところですか? 莉子 前作でも日本のドラマでここまで作れるんだと思いましたけど、今作ではタイでの撮影ということで、さらに臨場感があります。日本ではなかなかできないカーアクションもかなり入っているので、映画のようなクオリティになっています。 前作を観ていた方にも「『インフォーマ』が返ってきた!」というような楽しんでいただける要素がたくさんありますし、私も含めて新しいキャラクターも登場するので、見どころ満載です。 映画『恋僕』では福岡に1カ月滞在 ──ほかの作品についてもお聞きします。この夏公開していた映画『恋を知らない僕たちは』(2024年)の撮影はどうでしたか? 同世代の方が多い現場でしたよね。 莉子 とても楽しかったです。同世代と一緒だとリラックスできて、休みの日にはくだらない話で盛り上がることも多かったり、本当に学校のような感覚で撮影できました。 ──撮影地の学校のロケーションも素敵でしたね。 莉子 そうなんです、福岡で。学校や海が印象的な原作だったので、福岡のロケーションが作品の雰囲気を引き立てていました。福岡に1カ月ほど滞在して、酒井麻衣監督の映像美が際立つ作品に仕上がっています。 ──ああいう作品に出演するときは、原作のマンガを先に読んでから臨むんですか? 莉子 読みますね。原作がある場合は必ず読んでいます。原作を一度読み込んでから、そこから自分なりに役を落とし込んでいくんです。酒井監督は、キャラクターづくりに対して本当にこだわりを持っていて、髪型も役のために切ったり、持っている小道具も原作と同じ飲み物を用意したりと、細かい部分まで忠実に再現していました。みんなが一丸となってこだわりを持って作り上げる作品だったので、刺激的でした。 ──ボクも観たのですが、原作についてまったく予備知識がなくて、全然違う展開を想像していたので……。 莉子 そうなんですよ! 水野美波先生が作り上げる『恋を知らない僕たちは』(集英社)は、最初は学園恋愛ものに見えるんですけど、意外な方向に矢印が向かうのがおもしろいんですよね。それがリアルな恋愛模様を描いていて、私はその部分にすごく魅力を感じているんです。 ──この作品もですが、ご家族や友達からは、出演した作品への感想などは伝えられます? 莉子 家族は観てくれていると思うんですが、感想はあまり言ってきませんね。父は『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』に出演するのは知っていて、タイでの撮影についても話していたので、前作の『インフォーマ』も観てくれたみたいで、めちゃめちゃハマってましたね。「あれはどうだった?」とか「このあとはどうなるの?」とか聞かれたんですけど、ネタバレはできないので「言わないよー」と返してました(笑)。 キックボクシング、ピラティス、ドライブ──アクティブなプライベート ──ちょっとプライベートなことも伺いたいのですが、最近ハマっていることや好きなことはありますか? 莉子 カメラが好きで、フィルムカメラと……最近ではデジカメも使っています。フィルムカメラは高校2年生のころからずっと愛用していて、最近はハーフカメラも手に入れて、現像してみたらすごくよくて、さらにハマりそうです。映像作品の撮影現場では、フィルムカメラで共演者の写真を撮ったりしています。 ──カメラを始めたきっかけは? 莉子 高校生のときに「写ルンです」ブームが再燃していて、それをきっかけにインスタントカメラではなく、ちゃんとしたカメラが欲しいと思い、父に初めてフィルムカメラを買ってもらいました。今はスマホですぐに写真が見られる時代なので、現像までの待ち時間が新鮮で、フィルムの色味や画質の粗さもすごく好きなんです。ずっと使っています。 ──写真を撮るときに、何か工夫はしていますか? 莉子 特に工夫はしないのですが、人や物を撮るのが好きです。友達が笑っている瞬間など、現場の思い出を撮影して、あとで見返してそのときのことを思い出すのが楽しいんですよね。だから現場にもフィルムカメラを持ち込んでいます。 ──なるほど。普段はどのような休日を過ごしていますか? 莉子 家にいるのが苦手で、じっとしていられないんです。休みが本当にいらないっていう人間なので、それこそ仕事も週6とかでしていたいんですよ。週1の休みがあればじゅうぶんなんです(笑)。 けっこう日々動いていたくて、休みの日も必ずキックボクシングやジム、ピラティスに行っています。撮影期間中は朝から夜まで撮影があるので、運動できないのがストレスになるくらい。午後から撮影の日なんかは、午前中にジムへ行って、体を動かしています。 ──キックボクシングをやろうと思ったのは、エクササイズ目的で……? 莉子 はい。今は、特に本格的なジムに通っているわけではなくて、習い事的な感覚でエクササイズの一環として通っている感じです。体づくりが目的ですね。中学のときはバドミントンを3年間ゴリゴリにやっていたんですが、高校で仕事が忙しくなってからはできなくなってしまいました。でも、20代で運動をしているかどうかで将来が変わるなと感じていて、まわりの大人の方からもそう言われているので(笑)、やれるうちにやっておこうと思って続けています。 ──ほかに、やってみたいことはありますか? 莉子 最近はドライブにハマっていて、車を運転するのがけっこう好きなんです。友達とドライブに行くことが多くて、もっと遠出してみたいですね。あと、今はずっとグランピングに行きたくて。 ──基本、アクティブですね! 莉子 そうなんですよ、アクティブすぎて(笑)。 ──少し話が戻りますが、ドラマ『怖れ』(2024年/CBCテレビ)など、最近はいろいろな役柄を演じていますよね。そんななか、今後やってみたい役柄はありますか? 莉子 ずっと言っているんですけど……悪役をやってみたいです。ファンの方に「えっ、莉子ちゃんが……?」と驚かれるような役を演じてみたいんです。だから、悪役とか、人とケンカしたりいじめたりする役に挑戦してみたいですね。 ──『怖れ』の役にも、少しそういった空気感があるのかな……と。 莉子 たしかにそうですね。でも『怖れ』では役がいくつもあって、完全に悪役というわけではないんです。新しい挑戦でもあって、そういう意味ではすごく楽しかったです。 ──悪役の役づくりを徹底してみたいと……。 莉子 そうなんです。ワンクール通して悪役をやってみたら、自分がどうなるのか気になりますね。本当にやったことがないので、挑戦してみたいと思っています。 ──ありがとうございます。最後に、今まで観た作品の中で、好きな作品はありますか? 映像でも舞台でも構いません。 莉子 最近観たアニメになっちゃうんですけど、映画『ルックバック』(2024年)を観て、すごくよかったです! たった1時間でここまで人の心を動かせるんだと驚きました。しかもアニメーションで! 河合優実さんも声優をされていて、本当に素晴らしいなと思いました。いろいろな表現方法があって、あの短い時間でも伝わるものがあるんだと感じました。最近観た映画で、一番いいと感じた作品ですね。 ──なるほど。声優にも本格的に挑戦してみたいと思いますか? 莉子 やってみたいですね。ただ、声優って本当に難しいです。今までも少しやらせてもらったりオーディションを受けたりとかしたことはあるんですが……声だけで感情を伝えるのがいかに難しいかを実感しました。それでも、これからも挑戦してみたいと思います。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 編集=中野 潤 ************ 莉子(りこ) 2002年12月4日生まれ。神奈川県出身。雑誌『Popteen』(角川春樹事務所)専属モデルを経て、『小説の神様 君としか描けない物語』(2020年)で映画デビュー。その後、ドラマ『ブラックシンデレラ』(2021年/ABEMA)、『最高の教師1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)、映画『違う惑星の変な恋人』(2024年)など、さまざまな作品への出演を重ねる。現在、連続ドラマ『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ)に主演、11月からABEMAで配信される『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』では、主人公と行動をともにする「広瀬」として重要な役どころを演じている。
サボリスト〜あの人のサボり方〜
クリエイターの「サボり」に焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載
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「仕事も趣味も“収集”をモチベーションにする」宇垣美里のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 今回お話を伺ったのは、フリーアナウンサー・俳優の宇垣美里さん。ドラマ出演やラジオパーソナリティ、コラムの連載など、さまざまな顔を持つ宇垣さんに、そのスタンスや切り替え方を聞いた。 宇垣美里 うがき・みさと 1991年、兵庫県生まれ。TBSアナウンサーとして数々の番組に出演し、2019年に退社。現在はドラマやラジオ、雑誌、舞台出演のほか、執筆活動も行うなど活躍の幅を広げている。『週刊文春』(文藝春秋)、『女子SPA!』(扶桑社)などでマンガや映画のコラムを連載中。著書に『今日もマンガを読んでいる』(文藝春秋)、フォトエッセイ『風をたべる』(集英社)など。 ラジオは自分の思いを話すことができる場所 ──現在はさまざまな分野で活躍されていますが、やはりTBSでアナウンサーをされていた経験が、活動の土台になっているところはあるのでしょうか。 宇垣 そうですね。中でもTBSにはラジオがあったので、ラジオで自分の思っていることや人におすすめしたいことなどをしゃべってきた経験は大きいです。こうしたインタビューでもなんでも、振られた質問やテーマに対してすぐに返すという反射神経は、TBS時代に鍛えられました。 また、何か心に残るものがあったら、それについてどうしゃべろうか考えたり、なぜそれがよかったのか、どこが響いたのか、言語化したりする習慣がついたのも、あのころの経験によるものだと思います。 ──TBSラジオというラジオ局もあることで、アナウンサーのみなさんがテレビとラジオ、両方出演されているのはTBSならではですよね。 宇垣 アナウンサーが自分の思ったことを話す機会は、なかなかないんです。番組にもよりますが、ラジオでは「あなたはどう思ったの?」と聞かれることが多いので、とても幸運だったと思っています。私は比較的早いうちからラジオの仕事につくことができて、すごくありがたかったです。 それに、スタッフさんから「あなたは何か書いてあることを話すよりは、それに対してどう思ったのか話すことのほうが好きなんだね」と言われたこともあり、ラジオは自分に向いているメディアなんだと思うようになりました。アナウンサーとしては、いいことなのかどうかわかりませんが。 ──ラジオでの経験というと、フリーになった現在も曜日パートナーを務められている『アフター6ジャンクション』(※)の存在は大きいのではないでしょうか。 宇垣 本が好きです、映画が好きです、舞台が好きです、マンガが好きですと言っていたら、アトロクというカルチャー・キュレーション番組を担当させていただけたので、好きなことを言い続けるのって、大事だなと思いました。 今ではもう実家みたいな存在です。番組もパーソナリティの宇多丸さんも、私たち曜日パートナーのことをひとりのパーソナリティとして大事にしてくださっていて、「この人が輝くもの、おもしろいと感じるものはなんだろう」と考えてくれるんです。だから、曜日によってカラーが全然違うんですよね。一番自分らしくいられて安心できる、とても大切な番組です。 (※)RHYMESTERの宇多丸がパーソナリティを務めるTBSラジオの生ワイド番組。通称『アトロク』。現在は『アフター6ジャンクション2』として放送中。 ──リスナーも、この番組を通じてパートナーの方々の個性を見出し、親しみを覚えているように感じます。 宇垣 そうですね。ある意味では甘やかされているとも思います。でも、たとえばお酒好きの日比麻音子アナウンサーに『おんな酒場放浪記』(BS-TBS)のお仕事が来るようなことって、なかなかないじゃないですか。知られざるパートナーの一面に光を当ててもらえている。私も番組で発信していたから映画のコメントや本のお仕事をいただけるようになったので、すごくありがたい場所だと思っています。 ──宇多丸さんから影響を受ける部分もありますか。 宇垣 それはもう、こんな大人になりたいと常々思っていて。私より忙しいのに、あまりにもたくさんの映画や本、ゲーム、ライブなどに触れていて、意味がわからないです(笑)。あと、インプットを続けているからこそ、自分の考え方が古びていないか常に懐疑的で、だから「おじさんみたいなことを言う!」と感じることが全然ない。それって奇跡みたいなことだなと思っています。私ですら若い世代の人たちに寄り添えているのか、ずっと自信がないのに。 文章の自分が、一番ウソがない ──最近はコラムやエッセイを書く仕事も多いですよね。書くことには立ち止まったり迷ったりしてしまう場面もあるかと思います。文章を書くことについて、どう思われていますか。 宇垣 もともと記者を志望していたくらい、書くことは好きだったんです。それが巡り巡ってお仕事になり、人に読んでもらって褒めていただけて、本当に運がいいなと思います。話す言葉ってパッションが伝わるぶん、思ってもない言葉が出てきたり、強すぎてしまったりすることもあるじゃないですか。でも、書くことは考えたり見返したりして推敲するし、編集者さんの意見や校閲も入るので、伝えたいことについて「これで勘違いされるなら、もうしょうがないよね」と思えるところまで研ぎ澄ますことができる。だからこそ、一番ウソがない、私自身だなと思います。 ──ご自身の濃度が高い文章を世に出して、人に読まれることについてはどう感じられていますか? 宇垣 エッセイはまた違ってきますが、映画評やマンガ評、書評などでは基本的に作品について書くので、あまり気にしていないかもしれません。ただ、私は作品について学術的に書くことはできないので、なぜ心に刺さったのか、自分を介して書くしかない。そういう意味では自分のことを書いているんですけど、書評なら「頼むからこの本を読んでくれ!」という思いがまずあって、そこから読んでくれた人に刺さったらうれしいという気持ちが大きいですね。 ──「自分」の出し方以外にも、ジャンルによって意識の違いはありますか? 宇垣 メディアによって読み心地は変わるべきだと思っています。たとえば『週刊プレイボーイ』(集英社)で連載しているエッセイなら、読んでいて楽しいリズムや読みやすさにこだわるなど。文章がリズミカルであることを大事にしていて、読み心地のために多少創作することもあります。 人の本を読むときも、文体がすごく気になるんですよ。同じことを書いているのにその人らしい文章になるのは、文体にその人が宿っているからだと思うので、自分の文章でも人の文章でも、そこはすごく意識していますね。 ──文体以外にも、エッセイだと「何に引っかかるか」といった着眼点にも個性が出ると思います。宇垣さんはどんなことが心に残りやすいと思いますか。 宇垣 プレイボーイは毎週締め切りがあるので、ネタになると思ったものはすぐに書いちゃうんですよね。ただ、心惹かれたエンタメについては、観ている人と観ていない人がいるので、よっぽど好きでない限りはあまり扱わないです。なので、人が「あるある」と思ってくれるような日常の些細な出来事や、「私だけじゃなかったんだ」と思ってもらえるような自分のダメな瞬間などを書くようにしています。 ──なんだか毎週エピソードトークを用意しているラジオパーソナリティみたいですね。やっぱり締め切りの数日前からソワソワしたりするものなのでしょうか。 宇垣 いや、だいたい締め切りの日になって「書くことなーい!」と絶望することがほとんどです。だから、前回の原稿を書くまでに時間がかかりすぎたときは、その翌週に先週いかにダラダラしていたか書いたりすることもあります。あとは、自分のめんどくさい部分について、心に引っかかったことだけメモしておいて書くこともありますね。たとえば初めて会った人に「どういう性格なんですか?」と聞かれて、どういう性格かひと言で答える人ってちょっとヤバくないか、と思ってしまったこととか。 けっこうメモ魔で、3年日記っていう、1ページが3年分に分かれている日記もずっと続けています。1年前、2年前に書いたことと見比べられるので、「うわ、1年前と同じこと言ってる」みたいな発見でエッセイが1本書けるんですよ。 自分の中の引き出しを埋めていきたい ──宇垣さんはラジオや執筆活動以外にも幅広く活躍されていますが、仕事ごとに求められる役割について、どのように向き合っているのでしょうか。 宇垣 特にテレビのバラエティなどはある種のキャラクターを求められることもありますが、それはお仕事としてできるだけ応えるようにしています。ただ、自分の中から出てこないもの、自分の倫理や思想に反するものはできないので、そこは厳しくジャッジしていますね。5センチぐらい思っていることを30センチにすることはできますが、0から5センチにしてしまったらウソになるので自分が悲しくなるし、責任も取れないです。 ──たしかに、宇垣さんは自分なりの倫理観を大事にされている印象があります。では、そういった求められることと資質がマッチしていると感じる仕事や、自分からやってみたいと思う仕事はありますか。 宇垣 私は表現することがすごく好きなので、書くことでも、しゃべることでも、番組に出ることでも、演じることでも、その媒体に合わせて自分が出したいものを表現するのが向いているなと思っています。 あとは、自分の中の空いている引き出しを埋めるのが好きで、やったことのないことをクリアしていくと、すごく豊かな気持ちになります。ちょっと収集癖に近くて、やったことのないことはなんでもチャレンジしてみたいし、食べたことのないものも食べたいし、行ったことのないところに行きたい。それが自分の原動力になっていますね。 ──珍しい引き出しを埋めた経験としては、どんなものがありますか? 宇垣 演技のお仕事も、最初は空いていた引き出しのひとつで。バラエティ番組のようなある瞬間に集合してパッと解散するような現場と違って、ドラマや舞台は長いスパンをかけてみんなで作り上げていく。チームとしてひとつの作品を作り上げていくという経験は新鮮でしたし、自分はそういうことが好きなんだという発見がありました。 ──では、今後埋めてみたい引き出しは? 宇垣 作る側ですね。映画やドラマの監督、小説家といった0から1を生み出す仕事にすごくリスペクトがあるからこそ、そんなに簡単にできるものではないだろう、と自分の中でハードルが上がってしまうのですが。 ──勝手ながら、小説はすごくイメージできる気がします。 宇垣 短編を書いたことはありますが、自分の中に蓄積がありすぎて、何をやってもダメだと思ってしまいそうなんですよ。自分の中にいろんな方の影響を感じてしまったり、すでに書かれているなと思ったり、そこをどうやって乗り越えていくかですね。あとは、虚実を織り交ぜるエッセイから、小説というウソへの一歩が踏み出せるかどうか。そのあたりはまだわかりませんね。 仕事としても、サボりとしても、本を読む ──原稿の締め切り前についダラけてしまうとおっしゃっていましたが、サボりグセはあると思いますか? 宇垣 ありますね。お仕事する時間はできるだけ短く巻いていくのが好きなんですけど、書くことだけはやる気スイッチ頼みすぎるっていう。結局、締め切りの日にため息をつきながら構成用のノートを広げることが多いです。 そこからまずノートに書きたいことを並べて、書く順番をつけていくんですけど、それができたところで一回「終わった〜」と思ってしまうんですね。それでダラダラしたり、本やマンガを読んだりして、日付が変わってから「うわーっ!!」と慌ててパソコンを開くこともよくあります。それもまた終わりが見えてくるとできた気になって、紅茶を淹れようとしたまま紅茶の並びを入れ替え始めたり……。 ──テスト前の学生みたいですね(笑)。よくわかります。本を読むような腰を据えたサボり方はなかなかできませんが。 宇垣 映画は受動的に観るので、家だとどうしても気が散ってしまう。でも、本は自分で目を動かしながら能動的に読むので、その労力によってムダな力がそがれるというか、無心になって作品に集中できるんですよ。違う世界にダイブしているような感覚ですね。 ただ、ちゃんとお仕事に関係のある本を読んではいるんですよ。エッセイの参考に人の作品を読んでみるとか、書評を書こうとして著者の昔の作品も読んでみるとか、帯コメントを依頼されている作品を読み返すとか、今読む必要があるかどうかは別として、読む理由はあるんです。 ──読書が仕事であり趣味でもあるから、読み分けることがリフレッシュにもなるんですね。 宇垣 そうですね。単に集中力がないだけかもしれませんが、ずっとパソコンの画面をにらみつけているくらいなら、気持ちを切り替えてほかのことをやっちゃったほうがいいような気もして。それに、「いつか絶対に原稿はできる」という自分に対する謎の自信と信頼があるんです(笑)。それが「今日中にやる」から「寝るまでにやる」、「編集者さんが起きるまでにやる」に変わっていったとしても。 ──では、読書以外で、もっとシンプルに息抜きや楽しみになっているものはありますか? 宇垣 1日休みがあれば日帰りで広島に行ったりするくらい旅行も好きなんですけど、最近ハマっているのは、シルバニアファミリーを集めることです。コンビニで売っているのを見て「かわいいな」と買ってしまったのが沼の入口で、ポップアップストアや専門店にまで行くようになりました。 シマエナガの服を着ているアザラシの赤ちゃんとかがいるんですよ。そんなかわいくて平和な世界を眺めてニコニコしています。あとは、ダム。ダムを見に行って、ダムカードを集めるのが好きです。 ──ダムカード? 宇垣 ダムに行くと、そのダムの写真や歴史、情報が載ったカードがもらえるんですよ。大きな人工建造物がすごく好きな上に、収集癖も満たされるところがいいですね。ダムを見ているうちにだんだん解像度が上がってきて、形状や仕組みの違いが見分けられるようになってきました。この前、ついにダムのお仕事もいただいて、またひとつ好きと言っていたものが仕事につながり、ダムカードまでもらえてうれしかったです。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
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「その時々の感じで生きているのが失敗につながって、その失敗がまた気持ちの揺れ、ひいては言葉や文になる」小原晩のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 エッセイ集『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版するや、各方面から反響を呼び、注目の作家となった小原晩さん。そんな小原さんが語る、執筆のきっかけや心が動く瞬間、豪快なサボり方。 小原 晩 おばら・ばん 1996年、東京都生まれ。作家。2022年、デビュー作となるエッセイ集『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版する。2023年、商業出版として『これが生活なのかしらん』(大和書房)を発売。2024年には、『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』が実業之日本社より商業出版される。現在は、多数の媒体でエッセイや小説を連載中。 何もわからず作った本が、1万部のヒットに ──そもそもは、なぜエッセイを書いてみようと思ったんですか? 小原 エッセイをよく読んでいたから、自然とそうなりました。ただ、もともと文学少女みたいな感じだったわけではないんです。18歳で就職して、すごく忙しくしている間に、中学生のころから好きだったピースの又吉直樹さんが芥川賞作家になっていたんです。19歳くらいのころ、仕事を辞めてフラフラしていたときに、下北沢のヴィレッジヴァンガードで又吉さんの作品や好きな本が特集されている「又吉直樹の本棚」を見つけて、『東京百景』(KADOKAWA)というエッセイ集を手に取ったんです。それがもうすごくおもしろくて、又吉さんのほかの作品や、又吉さんが好きだと言っている本などを読むようになり、読書が好きになっていきました。 ──とはいえ、文章を書き始めるのも、書き切るのも簡単ではないと思うのですが。 小原 自分で書いてみて、書くことの難しさを感じたし、改めて今まで読んできた作家さんのことを尊敬しました。でも同時に、自分で書いたり、人の作品を読み返したりすることで、「こういう構成になってたんだ」とか、「こういう仕組みがおもしろさにつながるんだ」とか、いろいろ気づくようになったんです。そうすると、書くことも、読むことも、どんどんおもしろくなって。 ──そこからいきなりデビュー作の『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版で作ろうと思ったのは、なぜでしょうか。 小原 それも仕事をせずに貯金を切り崩しながらフラフラしていたころなんですけど、あと1〜2カ月で貯金もなくなるとなったときに、「最後にやり残したことをやろう」という気持ちになって。自費出版が「リトルプレス」と呼ばれていて、自分で本が作れることは知っていたので調べてみたら、200部の本を5万円で作れることがわかったんです。それで、本を作ることにしました。 ──そうなると、書くこと以外も自分でやらなきゃいけないわけですよね。 小原 そうですね。デザイナーの友達なんていなかったので、表紙の絵だけ絵描きの方にお願いして、あとは自分でわけもわからないまま作っていました。結局、本文の字がすごく小さかったり、失敗もたくさんありました。 ──そこからは、自費出版本を扱ってくれる書店などに売り込んでいったと。 小原 はい。できる限りお客さんとして足を運んで、「自分の本が合うかな?」とか、「置かれるならここかな?」とか考えながら見て回りました。それから、置いていただきたい本屋さんに見本をお送りしていいかメールしていきました。 ──反響を実感するようになったのは、どんなタイミングだったのでしょうか。 小原 独立系書店を中心に、本が売り切れて再入荷するようなことが何回かあったんです。たぶん、独立系書店と呼ばれる本屋さんには、店主の目利きを信用しているお客さんたちがいるので、そういう方々が買ってくれたりするようになったんだと思っています。最初は200部だったのが、たしか1年で5000部ぐらいまでいって、たまたま本を買ってくださったダウ90000の蓮見翔さんに、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんのYouTubeで紹介していただいたことで、1万部くらいになりました。 最悪な思い出も、一歩引いたら喜劇になる ──1万部も売り上げたことで、『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』の商業出版のお話が持ち上がったのでしょうか。 小原 いえ、発売して半年くらいでお話はいただいていたんですけど、別の作品を出版する話が進んでいたので、一度待ってもらっていました。でも、そうしている間に1万部に達して、全部自分でサインして発送していたので、もう無理だとなってしまって。 ──全部にサインしていたんですか!? 小原 9000部くらいまではサインしていました。だから本当に大変で……。お仕事の話もたくさんいただくようになったのに、書く時間が取れなくなったのもあって、急いで商業出版のお話を進めていただきました。 ──状況が一気に変わって、とにかく大変だったと思いますが、たくさんの方に読んでもらったことで、うれしい反応や意外な発見などはありましたか? 小原 編集者の方に言っていただいたことなんですが、「人生は寄りで見ると悲劇だが、引きで見れば喜劇である」という言葉があるじゃないですか。でも、「小原さんの場合は、寄りで見ても喜劇だ」と言ってくださって、なるほど、うれしいな、と思いました。 ──たしかに、深刻になってもおかしくない場面でも、そう感じさせないところがある気がします。ご自身でも意識されていた部分はあるのでしょうか。 小原 特にエッセイに関してはそうですね。エッセイは基本的に自分語りではあるんですけど、だからこそ自分の人生や生活をどう表現するのかを大切にしています。つらかった過去をつらい気持ちのまま書いても、自分の文章ではあまり魅力的にならなかったので、もう少しトーンを意識してみよう、という感じというか。 ──結果としてそれが作風につながっているわけですね。自分の人生を表現するという点では、美容師時代や家族、恋愛について書かれていますが、そこに抵抗などはなかったのでしょうか。 小原 書くこと自体への抵抗はあまりなかったです。『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を書いたときは、それこそ又吉さんの『東京百景』が頭にあって、「東京の生活」をテーマにしていました。ただ、同じようにある場所に付随する思い出を書くのはどうかと思いましたし、又吉さんのように書けるわけでもないので、自分が一番おもしろくなるように書いていこうと考えた結果、自分なりの「東京」をふくらませた感じですね。 ──では、書きながら過去と向き合うなかで、感じたことなどはありますか? 小原 書き始めはものすごくつらいんですよ。「自分の過去って最悪だ」「なんて自分は浅はかな人間なんだ」「どうして人を傷つけるようなことをしたんだろう」「なんだその謎の自信は!」「自分にはおもしろいところはひとつもない」とか考えて、最悪な気持ちになります。そこからあきらめがついて、「自分はつまらない人間だ」と開き直るゾーンに入ってやっと書き始めるんです。 ──一つひとつは苦い思い出として存在しているんですね。 小原 よく明るい人間だと思われて、「こんなふうに生きられたらいいな」と言ってもらえることもあるんですけど、それは、書くことで、過去を捉え直しているからかもしれません。ズタズタになった思い出でも、人には笑いながら話せたりするじゃないですか。悩みを話し始めたはずなのに、なんか話してたら笑ってもらえて、そしたら自分も笑えてくる。そういう感覚に近い気がします。 純粋さがエッセイの素材を引き寄せる? ──エッセイの中には、日常におけるちょっとした出来事を描いた作品などもありますが、気になったことはずっと心に残って記憶されていたりするのでしょうか。 小原 最近はメモを取ったりするようにもなりましたが、最初の作品を書いたときは、思い出のある場所に実際に行ったり、聴いていた音楽を聴き直したりして、当時の出来事を思い出していきました。基本的には、日常のディテールに興味があって、そういうことばかり覚えています。逆に、友達とディズニーランドに行ったことはすっかり忘れていたりするので、非日常にはあんまり興味がないのかもしれないです。 ──ディズニーランドの思い出を忘れちゃうんですか? 小原 写真を見せられても、何も思い出せないくらい。でもやっぱり、どうでもいいことは覚えてるんです。この前、ひとりでお蕎麦屋さんに行ったときに、そこにいたおばあちゃんが「八海山ひとつください」ってお酒を注文したら、一緒にいたおじいちゃんが「“八海さん”じゃなくて、“八海山”ね」って言ったんです。「そんなの知ってるわよ」ってみんなで笑ってるんですけど、何がおもしろいのかさっぱりわからない。でも、なんか「それでいいんだよな」っていう気持ちになって。そういうことのほうが心に残って覚えてるんですよね。 ──それはまさにエッセイ的なアンテナが日常的に張られているのかもしれないですね。同時に、小原さんはちょっと変な人に遭遇したり、おかしなことに巻き込まれたりする頻度も高いように感じるのですが、そういうものを引き寄せてしまうところはあると思いますか? 小原 自分ではあまり思わないですね。自分の人生で起こることは、自分にとっては普通のことなので。ただ、(歌人/エッセイストの)穂村弘さんとトークイベントでご一緒したときに、「純粋な人間ほど、イヤな目に遭ったり、変わった人を惹きつけたりするんだ」みたいなことを言ってくださって、「純粋だったのかな」って思うようになりました(笑)。 ──純粋な人だからこそ、ちょっと無防備だったり、人との距離感が独特だったりするのかなと思うと、納得できる気がします。 小原 純粋なんて、そんないいものだったらいいんですけどね。自分では最悪な人間だと思っているので……。 眠くなったら寝る。何時でも、何時間でも ──失礼なのですが、小原さんにはサボりのネタもあるような気がしています。性格的にサボりがちだなと思うようなところはありますか? 小原 基本はサボってますね。今はサボっている時間も創作の時間といえるので、「ぼーっとすることも大事だから」と自分に言い訳することもありますし。でも、生活と創作が密接なところにあると、線引きが難しくなってきますよね。 ──そんななかでもダメなサボりだと思うのは、どんなことでしょうか。 小原 一番イヤなのは、短い動画ばっかり観てしまうとき。YouTubeでもInstagramでもXでも、短い動画がずっと出てくるシステムになってるじゃないですか。興味もないのにずっと観ちゃったりするので、あのサボりだけは自分の中で悪ですね。世の中からなくなればいいなと思ってます。 ──では、よしとするのはどんなサボりですか? 小原 飲みに行って本を読んだり、散歩に出たり、スーパー銭湯に行ったり、買い物に出かけたりすることですかね。出先で作業しようという気持ちもあるので、一応パソコンも持っていきます。結局開くことなく、焦りだけを残して帰ってくるんですけど(笑)。 ──あるあるですよね、わかります。より後悔のない積極的なサボりとして、リフレッシュに近い気持ちでやることはありますか? 小原 昼寝です。眠くなったら寝る。何時でも、何時間でも、3度でも4度でも寝る。夜眠れなくなっても構わない。 ──カッコいい。バッチリ5時間ぐらい寝ちゃうこともあるんですか。 小原 全然あります。起きたら外が真っ暗で、「ふふふ、こんなことになっちゃった」と思います。 ──睡眠のサイクルがぐちゃぐちゃになりそうですが……そういった世のことわりも気にしない。 小原 そうですね。特に夏の昼間は、たまったもんじゃないぐらい暑いじゃないですか。だから、昼間に起きていても仕方がないっていう気持ちがあって。基本的に夕日が落ちるころに起きて、また朝日が出たときに眠る生活になります。昼間に連絡がつかなくなるのは申し訳ないと思うんですけど。 ──自分では怖くてできそうにありませんが、ちょっと理にかなっているような気もします。なにより自由な感じがしますね。 小原 でも、ルーティンには憧れてるんですよ。モーニングルーティンなんて、めちゃくちゃ憧れてますから。やっぱり「何時に起きて何時に寝る」って徹底したほうがいいんでしょうけど、ただ、その時々の感じで生きているのが失敗につながって、その失敗がまた気持ちの揺れ、ひいては言葉や文になるとも思ってるんですよね。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
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「人生における“サボりの期間”が、その後の糧になる」下田昌克のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 色鉛筆による生き生きとしたポートレートなどで知られる画家/イラストレーターの下田昌克さんは、近年のライフワークとして、キャンバス地で恐竜の被り物を制作している。恐竜の化石が放つ本質的なカッコよさをポップに落とし込んだ被り物を「衝動的に作り始めた」という下田さんに、その創作の経緯などについて聞いてみた。 下田昌克 しもだ・まさかつ 1967年、兵庫県生まれ。1994年から2年間、世界各国を旅行。旅行の絵と日記をまとめた『PRIVATE WORLD』(山と渓谷社)を出版し、絵の仕事を始める。2011年よりプライベートワークでハンドメイドの恐竜のヘッドピースを作り始める。2018年、COMME des GARÇONS HOMME PLUSがAWのメンズコレクションのショーにて、そのヘッドピースを採用。2021年、Virgil Ablohからの依頼で制作したマスク、ヘッドピースがOff-White/Fall 2021/Paris,Franceで使われる。絵本『死んだかいぞく』(ポプラ社)が、イタリアにてボローニャ・ラガッツィ賞2024特別部門「海」で特別賞(Special Mention of the 2024 BolognaRagazzi Awards for The Sea – 2024 Special Category)を受賞。2024年には、音楽劇『死んだかいぞく』が上演された。 何もうまくいかなくて、海外を放浪した2年間 ──下田さんはどんな人に影響を受けて、アートやデザインの世界に興味を持ったのでしょうか。 下田 子供のころは手塚治虫が好きでしたね。10代になってからは、ジョージ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグの映画を意識して観るようになりました。『スター・ウォーズ』や『E.T.』とか、当時は「これが観たかったんだよ!」っていう感じで。 ──その後、美術系の学校に進まれますが、最初からアーティストを志していたわけではないそうですね。 下田 だって、なれると思わないじゃん! 子供のころは絵を描けば褒められたけど、美術の高校に行ったら、クラスで一番ビリで、勉強もできなくて……。クラスのみんなが美大を目指してるのに、ひとりだけ先生から美大進学の話を一回も聞かれないまま卒業したくらいだったので、絵で仕事ができるとはとても思えなかったです。 それで、会社員になったんですけど、全然うまくいかない。結局、会社をクビになったから、親のお金でデザインの専門学校に行かせてもらったものの、就職したデザイン事務所も1年でクビ。それからアルバイトをいろいろやってみたけど、それも全然続かない。本当に何をすればいいのかわかんなくなって、一度、働くということから離れてみようと思いました。 ──そこから、海外を放浪することになったと。 下田 最初は国内を自転車でブラブラ回ってたんですよ。まだ若かったから、人の家に泊めてもらったり、食べ物を食べさせてもらったり、アルバイトさせてもらったりしながら過ごしていたら、初めて貯金できて、100万円くらい貯まった。 ──すごいですね! 下田 それで、そのお金を持って海外旅行に行ったんです。なんとなく日記でも描きそうな気がしたので、スケッチブックと色鉛筆をカバンに入れて。中国からチベット、ネパール、インド、ヨーロッパなんかを回ったんだけど、時間を持て余してやることがなくなったときでも、日記帳に撮った写真を貼ったり、絵を描いたり、日記を書いたりしていました。学校の宿題の日記なんて一度もちゃんとつけたことないのに。旅行していた2年間で、出会った人たちの絵は500枚くらい描いたと思います。 下田さんが海外を旅したときの日記 ──下田さんの視点で旅の空気感がパッケージングされていて、スクラップブックみたいな作品になっていますね。中でも人との出会いは大きかったんですね。 下田 風景を描いてみたりもしたけど、人としゃべりながらその人の絵を描いたりするのが楽しくなって。そこで、「仕事にするのは無理だとしても、こういうことを一生続けていけたらいいな」ってなんとなく思うようになった気がします。 とにかく絵の仕事に専念してみようと「自称絵描きに」に ──ポートレートに関しては、このころからあまり作風が変わらないように思いますが、旅の中で生まれたスタイルなんですかね? 下田 そうですね。ずっと変わらない。持ち運びやすいし、すぐ描き始められるし、どこでも手に入るし、片づけもいらないから、色鉛筆は自分には合ってたと思います。人の描き方も、目の前に座ってもらっているから時間がかけられないし、向かい合ってずっとしゃべりながら描くから正面の顔ばっかりになって、こういう絵になった。 ──それがきっかけで、絵の仕事をされるようになったんですね。 下田 旅行から帰ってきて、写真や絵をまわりの友人などに見せていたら、人づてに週刊誌の連載の話をいただいたんです。もちろん、最初は絵だけじゃやっていけませんでしたよ。でも、絵を描くことで関わったデザイナーさんや挿絵を描いた小説家の方など、会う人たちがおもしろい人ばかりだったので、もっと絵の仕事をやってみたいと思うようになって。 それで、アルバイトの求人もなくなってきた30歳のタイミングで、絵の仕事だけで一度やってみようと思いました。ダメだったら、またバイトして考えようかな、くらいで。 ──「描きたい絵を描く」のと「仕事として絵を描く」のは違うと思いますが、「とにかく絵を仕事にする」という気持ちが大きかったのでしょうか。 下田 そうですね。絵の仕事ならなんでもよかったんですけど、きっかけが旅行中に描いた絵だったから、自分の描きたいものを作らせてもらえることも多かったです。小説の挿絵とか、題材があって「何を描こうか」って考える仕事も大好きですし。自分発信だけでやるほど中身もないから(笑)、両方できてよかったと思ってます。 ──自分から発信する場合、何かテーマや題材などはあったりするのでしょうか。 下田 作りたいものがあって、それをどうやってかたちにするか考えたり。たとえば、最初の絵本は、旅行中に描いた風景画をつなげていったらお話になりそうな気がして、絵本を作ってみたいと思って。とりあえず自分で1冊作ってみて、コピーして製本して出版社を回って、「これが作りたいんだけど、どうしたらいい?」って聞いて回りました。 ──物語を考えたりするのも好きなんですか? 下田 好きは好きだけど、その風景画の絵本のときは、とりあえず絵だけで作ってみて、本になることが決まったときに「文章どうしよう」って聞かれて。誰か文章を書ける人がつけてくれるもんだと思ってたら、「僕が書くの!?」みたいな(笑)。先に絵でお話を作っちゃったから、自分しかいないといえばいないんだけど、本当に何も知らないまま作ってたので。 欲しいものがなかったから、自分で作ることにした ──恐竜の被り物も、なんとなく興味の向くまま手を動かしたことが制作のきっかけらしいですね。 下田 2011年に、恐竜博に行ったのがきっかけで。久しぶりに見た恐竜の骨格標本がすごくカッコよくて、買い物をする気満々でミュージアムショップに行ったら、そのときは欲しいものが何もなくて、図録だけ買って帰ったんです。 家に帰ったら、絵を描くキャンバス用の布が丸めて置いてあって、なんとなくそれを切ってトリケラトプスの角とかを作ってみたんですよね。なんとなくだから、サイズも自分が基準になってて、なんか被れそうなものができ上がったから被ってみたら、「おお〜っ!!」と思って。2次元にはない、原始的な興奮を感じた気がしたんです。 ──絵では表現できない何かを感じた。 下田 しばらくは絵も描かずに、ずっと作ってましたね。 ──キャンバス地で恐竜の被り物を作るのも、意味やテーマはないんですね。 下田 そう。たまたま恐竜博に行って、布があって、ガムテープやホッチキスを使って形にしてみただけで。でも、作っているうちに、だんだん「中に何か詰めたほうがいいな」とか「ミシンを買ってみようかな」とか「身につけるっていうのがおもしろいな」とか思うようになって。だから、全部あとづけ。仕事につながるなんて思いもしなかった。 ──それを周囲の人が見てくれたことで、広がりが生まれたんですか? 下田 でも、最初はちょっと怖がられてましたよ。絵も描かずに急に恐竜を被り始めたから、本当に心配してる人もいて、「今だから言えるけど、あのころちょっと怖かったよ」みたいな(笑)。僕は僕でカッコいいものができたと思ってるから、毎日のように持ち歩いて被ったりしてたんだけど、たしかにちょっと怖いですよね。 ──ただ、中にはおもしろがってくれる人もいた。 下田 そう。たとえば、一緒に絵本を作る仕事で出会った谷川俊太郎さんは、わりと最初から率先して被ってくれました。それで谷川さんと会うときは一番新しい恐竜を持っていくようになったら、谷川さんが「これに詩を書くから、連載できる場所を探してきて」って言ってくれて。それがきっかけで雑誌の連載が始まって、世に出るようになりました。でも、撮影してくれた藤代冥砂さんもそうだけど、仕事というより単に楽しんでくれてたのかもしれない。 原点は、ひとりで行った映画館の暗闇 ──被り物以外にも舞台の美術や小道具、衣装を手がけられたり、活動の幅を広げられていますが、それぞれ向き合い方などは違ったりするのでしょうか。 下田 道具や材料が変わるだけで、一緒ですね。一生懸命やります。スタイルを変えたとか言われることもあるんだけど、全然変えてませんから。そのときの自分のブームによってやることが違ったり、いただいたテーマによってやり方を変えたりしているだけなんで。自分のスタイルみたいなものに特にこだわりがないというか、スタイルと呼べるほどのものを持ってない(笑)。 ──では、「こういうことをやってみたい」「こういう絵を描きたい」といった展望も特にない? 下田 ないですね。そういう作戦とか考えたほうがいいんだよな、本当は。でも、手を動かしていると何かがやってくる感じで。 ──恐竜との出会いはまさにインスピレーションが刺激された経験だと思いますが、同じようにインスピレーションを得た経験はほかにありますか? 下田 なんだろう、映画とかライブとか展覧会とか、いろんな本とか。小学生のときから、ひとりで映画館に行くのが許されてたんですよ。僕は落ち着きのない子供で、授業中にじっとしてられなかったりしたこともあったんですが、劇場や映画館は大好きで、そういうところでは静かに大人しくできた。あと、コンサートやお芝居は親に連れていってもらって、劇場で「ここは大人の場所だから、大人にしてなさい」と母親に言われたのをすごく覚えている。 まわりに子供がいない感じが妙に好きだったんですよ。友達と遊ぶのも好きだけど、ひとりで映画館に行って、暗闇の中で「落ち着く」とか思うような小学生でした。それが中学になると映画を観たついでにジャズ喫茶に寄ったりするようになって、高校になると洋書屋さんに立ち寄ってアートを見たりするようになった。そうやってひとりで観て、読んで、聴くことでふくらんでくるものがあって、いまだに創作の材料になっているような気がします。 ──10代で出会うものって、特別ですよね。 下田 やっぱり一番強烈なんだよなぁ。あのころいっぱい遊んでよかったと思う。当時、地元の神戸でRCサクセション、YMOのライブも観に行ったりしてました。一応学校ではまじめにやってたんですよ、まじめにやってるのに成績がビリだったっていうだけで。一番カッコ悪い(笑)。 創作は、自分の中の“好きな点”がつながることで動き出す ──「サボり」がこの企画のテーマなんですが、下田さんにとっては人生におけるサボりの時間が大きそうですよね。10代の過ごし方もそうですし、2年間海外にいたのも大きな意味でサボりといえそうです。 下田 まあ、学生時代はサボってたんでしょうね。だからこそ、あのころに観たものが深く刺さってる気がする。ずっと取っておいてあるんだよね、当時の映画やお芝居のチケット。今と違ってカッコいいでしょ。 当時のチケットの束 ──すぐに出てくるのがすごいです。 下田 宝物だもん。僕の札束だよ。たまんなくない? ──たまらないですね。このころが特別な時間だったことが伝わってくるというか。 下田 友達と行くこともあったけど、このチケットはだいたいひとりで行ったものだと思う。 ──ひとりだからこそ、自分の中で熟成されるようなこともありますよね。 下田 どうなんだろう。でも、たしかに自分の作るものも、何もないところから湧いてくるんじゃなくて、過去に観たものや、知ったこと、経験したことなんかが点としていっぱいあって、それが何かの瞬間にビャーッとつながる感じですね。そういう“好きな点”がいっぱいあるといいですよね。サボりながら、遊ぶようにその点を作ってこられたことは、自分にとってよかったと思います。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
エッセイアンソロジー「Night Piece」
気持ちが高ぶった夢のような夜や、涙で顔がぐしゃぐしゃになった夜。そんな「忘れられない一夜」のエピソードを、オムニバス形式で届けるエッセイ連載
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悔しくてノートに怒りをぶつけた、いろいろな感情が交錯する夜(箭内夢菜)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 箭内夢菜(やない・ゆめな) 2000年6月21日生まれ、福島県出身。2017年8月、「ミスセブンティーン2017」でグランプリを受賞し、雑誌『Seventeen』の専属モデルとしてデビュー。2018年、ドラマ『チア☆ダン』(TBS)でドラマ初出演、2019年には映画『雪の華』で映画初出演を果たす。以降、ドラマ『ゆるキャン△』シリーズ(テレビ東京)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ)、『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS・TBS)『マイ・セカンド・アオハル』(TBS)などに出演。また、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)の「出川ガールズ」としても活躍。 Instagram @ yumenayanai_official 「夜」 私にとっては“敵”のようにも感じる。 普段は前向きでポジティブな私を、 ネガティブに変えてしまうような気がするから。 なぜなのだろう。 「夜」の自分は自分自身でも理解ができないほど、いろいろな感情が入り交じる。 私自身が矛盾する。 そんな「夜」ばかりだ。 私は毎日、無意識にひとりで反省会をしてしまう。 今日はうまく発言できなかったな…… あのタイミングでこう言っとけばよかったな…… あの人に嫌われていないかな…… うまくみんなの輪に入れてなかったな…… もっとああすればよかった。 もっとこうすればよかった。 でも、今日これを言えたからスッキリした! 自分の気持ちはやっぱり素直に言うようにしよう! みんなに褒めてもらえたのうれしかったな〜。 今日のお昼ご飯おいしかったな〜。 浮き沈みが激しいとは、私のことをいうのだと思う。 そして時々、そんなことを考えているうちに、どんどん考え事のスケールが大きくなっていく。 自分は、人生を生きていく上で何をしたいんだろう。 今の現状に満足しているのかな。 将来、自分はどうなりたいのかな。 人生においての優先順位ってなんだろう。 もしも明日地球が滅びるってなっても、後悔しないかな。 もう、キリがない。 21歳の夏、とある夜 いつものように反省会をしていた。 この何気ない、何か嫌なことがあったわけでもない日に、私は突然爆発した。 なぜか「怒り」が強かった。 でも、この怒りをどこにぶつければいいのかわからず、私は無我夢中で、ひたすらノートに自分の思いを殴り書きした。 その筆圧は、紙を破く勢いだった。 「思うままに、直感でやりたいことをやればいいものを、なぜこんなにもいろいろな思考が入るんだろう。言葉を選びすぎて、結局何を言いたいのかわからなくなってしまう。質問されたことから脱線してしまう。 そして結局伝わらない。 これはどうしたら改善できるの? 私の頭の中のことを代弁してくれる小人でもいればいいのに。 自分がどうしたいのかも理解できていない。 どうしたいのかくらい、自分で決められるようになってくれ……。 人に合わせることばかりじゃなく、 自分の思いを話さないとどんどんおかしくなるぞ。 はぁ、何も考えたくない。 何にも追われたくない。 自分から逃げたい。 自分にもいいところはたくさんあるんだから。 自分に甘いのを乗り越えればもっとできるはず。 支えてくれる人、アドバイスをくれる人、怒ってくれる人、背中を押してくれる人は幸せなことにたくさんいるんだから。 逃げずに自分自身が自分のことを支えてあげたい。認めてあげたい」 そんな内容だった。 自分がわからなくて、ムカついて、悔しくて、涙でぐしゃぐしゃになりながら書いた。 私は「言葉」をうまく人に伝えることが苦手で、とてもとても時間がかかる。 心で思っていること。 自分の意思、意見。 これがスパッと言えるようになったら、どんなに楽だろうか。 声にできない悩みが少しずつ溜まっていって、キャパオーバーになってしまったんだと思う。 まだ芸能界に入りたてで、この世界の難しさと厳しさに耐えることで必死だった17歳のころ、 「何があっても、どんな状況でも、笑顔でいないといけない仕事を、夢菜はしているんだよ。だから、家族に何かあってもテレビの前では笑顔でいなさい。それがプロだからね」 と、母から教わったこの言葉を、私はふと思い出した。 17歳のころは、なんでそんなことを言うの? と、その言葉の重みを感じることはできていなかったが、21歳の私は、その言葉で何度も立ち直ることができていた。 私はこの仕事が好きだし、いくつになってもやっていたい。 そう思える仕事に出会えたことは本当にありがたいことだし、今まで続けられているのもまわりの人が支えてくれているから。 見てくれている人がいるから。 そう思うと、少し涙が落ち着いた。 そして私は肩に力を入れず、楽にこの世界で生きていく方法を考えた。 職場での自分、ひとりのときの自分 家族の前での自分、友達の前での自分 このいろいろな自分を、使い分けることができたらいいのではないか。 でも、これってもしかしたら今まで意識していなかっただけで、普段からしていることなのではないかな。 そうも思えた。 よし、これから意識してみよう。 まずは、身近なところから。 と、いろいろなタイプの「自分」を使い分けてみると、 本当に少し楽になった気がした。 私は、出会う人、一人ひとりにいい顔をしようとしすぎていたんだ。 いろいろな自分も、結局は私自身の中に存在するものだから。 偽りでもなんでもない。 もっと気楽に「楽しむ」ようにしてみよう、そう思い、実践できたとき、頭が軽くなった気がした。 前よりも人と話せるようになった。 あの日 たくさん泣いてたくさん考えて、自分の中のモヤモヤと葛藤して、でも自分は嫌いになりたくなくて、いろいろな感情が交互にあふれてこぼれた夜。 つらかったけど、いい気づきになった。 ある意味、自分を知り、向き合えたいい夜だった。 きっとこの先も悩み、小さな細かい分かれ道を迷い続けて生きていくと思うけど、 ネガティブになりがちな「夜」も自分と向き合い、守ってあげられる時間にしてあげようと思う。 文・写真=箭内夢菜 編集=宇田川佳奈枝
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私が私の背中を押した。巻き戻すことはできない夜(福田沙紀)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 福田沙紀(ふくだ・さき) 1990年9月19日生まれ、熊本県出身。13歳のときに「第10回全日本国民的美少女コンテスト」にて演技部門賞を受賞。2004年にドラマ『3年B組金八先生(第7シリーズ)』(TBS)で俳優デビューを果たし、2005年には高見沢俊彦プロデュースで歌手デビュー。2024年、ショートドラマ配信アプリ『BUMP』の『大人に恋はムズカシイ』で初めて監督を務めた。 夜。 よる。 夜はどちらかというと、わたしは苦手な時間帯かもしれない。 いや “苦手な時間帯かも”ということを含め 好きだったりもするのかもしれない(笑)。 その日の失敗を思い返して 反省しては後悔して 時間を巻き戻すことはできないのに 気にして眠れなかったりしたこともあった。 そんなふうに考えて過ごした時間が思い浮かぶ。 20歳くらいのころだったか、いつか監督をしてみたいな。 そんな好奇心が芽生えたけれど 自分でなにかしらできない理由をつけて、できないもののひとつとして選別していた。 それから十数年変わることはなかったのだが とある日の夜。 たった一度の人生 頭の中にふと浮かんだその好奇心に飛び込んでみてもいいんじゃないか?と自分に問いかけられた。 たしかにそもそもできないと誰が決めたんだ? いつの間にか自分で自分の可能性を狭めているだけだったのではないか? 私のための人生、もっとたくさんの景色を見てみたい。 この夜。 私が、私の背中を押した。 そんなこんなで監督に初挑戦することになったのだが 企画自体は2023年の夏ごろから動き始めた。 まずは先方から企画書をいくつか提案してもらい どんな作品が作りたいのかを打ち合わせをして 作品が決まったら脚本会議で何度もブラッシュアップしていった。 1話3分で全10本のショートドラマ。 作品の登場人物の年齢がスタッフに近いこともあって アットホームな雰囲気の中で進んでいった。 話ごとのテーマと話のフックになる部分を10本分作り 脚本が少しずつ上がってきていた。 その次の会議で思いもよらない大幅な変更が出た。 “ユーザーのみなさんのニーズに合わせて1話1分前後にしたい“ ほう。なるほど……。 1話1分。 “ショートドラマ”とはいえ ショートショートすぎませんか!?!???!???? あまりの尺の短さに驚きつつも やる気に満ちている自分がいた。 2時間だって、1時間だって、30分だって、10分だって、1分だって! そう、やるのみ。 そうなると単純計算で考えて、全体の尺としてはほぼ変わらないとはいえ 話数が増えれば話ごとの構成も変わってくる。 1話ごとに必ず導入部分と、1話の終わりで次が見たくなる構成にしなければならない。 そんなことをしていたらあっという間に1分は過ぎ去ってしまうのだが、私は意外と冷静だった。 さらに脚本会議を行い、構成を変更し、脚本が上がってきて、でき上がった台本をもとにどんどん準備が進んでいった。 キャスティング、ロケハン、美術打ち合わせ、衣装合わせなどなど。 自分の頭の中にあるイメージを共有していく。 そのイメージの一つひとつが小道具や衣装、ロケ現場などに具現化され作品の世界ができ上がっていく。 なんというワクワク感。 どの作業もどの瞬間も愛しくて仕方なかった。 撮影自体は5日間。 毎日、朝から晩までの撮影。 「福田組。クランクインです!!」 “福田組”というワードはなかなか慣れなくて、聞くたびになんとも不思議なふわふわとした気持ちになっていた。 初めてカット割りを伝える際、口にしようとすると少し緊張で喉の奥が詰まった。 もともと私は撮影現場で監督を中心にスタッフさんたちが集まってカット割りをしているところを見るのが好きなのでよく見ていたのだが、もちろんやったことはない。 まさか好きで見ていたような光景の真ん中に自分が立つことになるとは。 と、思いつつカット割りを伝えなければ現場は進まないので、意を決して口を開いた。 “好き”に助けられた瞬間だった。 無事に撮影を終えると編集作業などが待っていて 役者さんのいい表情やお芝居、部分をできるだけ拾って活かしたかったので、OKテイク以外も全素材をもらってチェックした上で編集を行っていった。 現場でも感じていたが、改めて一つひとつのカットを見ると愛しくて愛しくてたまらなかった。 編集作業に没頭して、気づいたら夜になっていた。 その夜、私は宇宙を感じた。 意味合いとしては「世界が広がっていった」ということが伝えたいのだが、頭の中に広がる世界がとても自由で、その暗闇は無限に広がっているように感じた。 行き止まりはない。 どこまでも自由に進んでいけるようで、星がキラキラ輝くように自分の瞳がキラキラ輝いているのを感じた。 そして次に音の最終調整であるMAを行い カラーグレーションで作品の雰囲気を調整していく。 それぞれの仕事が集結し作品ができ上がる。 これまでの役者として作品に参加してきた景色とはまた違う監督という立場で作品作りに携わってみて、改めて作品作りが好きだということを全身で感じた。 各部署の動きや流れはなんとなく把握していたものの、 役者の目線だけでは直接はなかなか見られなかった作業を、今回実際にやってみたり見ることができて、さらに制作することに対しての想いが強まった。 このエッセイを書きながらふと、 小さいころ、自分でカセットテープにラジオ番組を作って収録していたことを思い出した。 「続いてはこの曲!」と曲紹介をして音楽を流す。 音楽はCD プレイヤーで流して、カセットテープに録音している間は自分の声が入らないように黙っていなければならない。 とはいえ紹介する曲は自分が大好きな曲ばかりでついつい口ずさんでしまいそうになりながらも、必死に我慢して録音していた。 たまに録音していることを知らずに私の部屋に入ってきた母の声が録音に入ってしまうと「今、録音してるのに!」とわりと本気で怒って、テープを巻き戻して仕切り直せるところからまた録音し直していた。 何かを作ることが好きで、どんなときも夢中で真剣に取り組んでいたなと思い出した。 思いきって挑戦してみた先に見えた景色は、想像していたよりもすばらしい景色と経験と感情、そして人とのつながりを運んできてくれた。 あの夜がなければきっと出会えなかっただろう。 “好き”という純粋な気持ちをこれからも大切にして 宇宙に飛んでいくような夜を重ねてたくさんの景色に出会っていきたい。 文・写真=福田沙紀 編集=宇田川佳奈枝
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サンタがくれた贈り物、無菌室で育てられた私の夜(佐藤ミケーラ倭子)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 佐藤ミケーラ倭子 元アイドルグループのメンバーで、現在はYouTuber、女優、モデルとして活躍中。YouTubeは登録者数52万人、TikTokはフォロワー数55万人を突破しており、Z世代から支持されている今注目のクリエイター。総再生回数は2億3000万回超。自身をさらけ出した破天荒なスタイルが魅力で、さまざまなシチュエーションを再現したちょっとおまぬけな「あるある動画」が話題沸騰中。飾らない人柄が人気だが、WEBドラマ『港区女子』(『東京カレンダー』)では台本も書き、演技力を発揮する新たな一面も。その他、テレビ/WEBCM『ゴキッシュ』『カジューハイ』、書籍『恋する猿は木から落ちる』(KADOKAWA)、写真集『en』(KADOKAWA)の発売など活動を広げる。最近ではバラエティ番組のサブレギュラー、ニュース番組のレポーターとジャンルを広げ、2025年からはモデルやポッドキャストのMCレギュラーも務めるマルチタレント。 「無菌室で育てられたんだね。」彼はそう言った。 独特なアルコールの匂いが充満している中、私は揺られている。 もう日付も変わる時間。 街のどこにこんなに人がいたんだろうと思うくらい混んでいた。 うずくまり今にも財布が落ちそうなスーツの人、 居酒屋での話の続きをする背の高い人たち、 携帯を持ちながら船を漕いでいる女性、 そんな中で私は吊り革につかまって立っていた。 何か悪いことをしているような気持ちになる。 走っている車内でバランスを取るのが苦手な私は何度もよろけながら携帯を見ていた。 目は携帯に向いているが、何かを“見ている”わけではない。 意識が大きな粘土みたいに重くて動きが悪かった。 ただ携帯の画面をいじくり回しているだけ。でも目だけは冴えていた。 最寄り駅に着いて、改札までつらつらと歩いて外に出る。 スィーっと風を吸って、早歩きで横断歩道を渡った。 水で濡れたレンズで写したみたいな信号がボヤボヤと輝いていて、 バス停の横にツンと止まっているタクシーに駆け寄った。 まるで私を待ってくれていたようだった。 「お願いしまーす」 車内は暖かくて、後部座席に乗るといつも誰かに旅行先まで運転してもらっている気分になる。 安心してシートに深く腰かけた。 私はいつも話しかける。 タクシーに乗ると、運転手のおじちゃんに今日あった悲しいことを話す。 その日、今日もらってきた暴れる悪魔を吐き出した。 おじちゃんは私がいつもそうしているかのように聞いてくれた。 もう二度と会うことのないふたりのプチ旅行。 明るい相づちで私の弱った悪魔がしおしおと出ていった。 身を乗り出して席の間から夜道を見ながら話し続けた。 その時期の私は、まわりの動きとは逆に自分だけ止まっているような気持ちで毎日を過ごしていた。 あるはずという希望に手を伸ばし続けて、 自分がどこまで来ているのか どこに行くのかわからないまま、 でも、何かあると信じて手を伸ばしていなければいけなかった。 夜は苦手だ。 心がガラスでできたウニになってしまうから。 タクシーの中は暖かくてふかふかで、話し続けている私。 おじちゃんの顔は見えなかった。 どんどん家に近づいていく。 木はガサガサ揺れていて、オレンジ色の街灯がすごく大きく見えた。 最後の信号で止まったとき おじちゃんはこう言った。 「お姉ちゃんは、無菌室で育てられたんだね」 すごくうれしかった。 その言葉を聞いたとき、大きな透明の瓶の中に入っている私が浮かんだ。 おじちゃんがどんな意味で言ったかわからないけれど、その瓶を大切に手入れしてくれる人たちのことも優しく思えた。 小さいころは何かが不思議と私の願いを叶えてくれた。 サンタさんは11歳までいた。 まわりの子は半分信じていなくて、少し呆れられていた。 そんな私が、11歳になった年、 今年こそはサンタさんがいるかどうか確かめるためにある作戦を決行した。 家に『急行「北極号」』(あすなろ書房)という絵本がある。 その本は、雪降る夜に主人公の男の子が不思議な汽車に乗るとサンタクロースのおもちゃが作られている場所に到着するお話。 サンタクロースから選ばれた男の子は、何が欲しいか聞かれて サンタのソリについた鈴をもらう。 その鈴を家に帰ってから鳴らすが、妹と男の子にだけ鈴音が聞こえて両親には聞こえない。 サンタクロースを心から信じている人にしかその鈴音は聞こえないという物語。 私はその年のクリスマスに、サンタさんのソリについているベルをプレゼントに願った。 そのベルをもらえばサンタさんがいる証明になる。 私は今までにないくらい心臓が飛び跳ねているのを感じながら、クリスマス前夜は眠りについた。 翌朝12月25日、リビングに行くと食べかけのケーキと飲みかけの牛乳。 そして、ベルが置いてあった。 そのベルはずっしりと重く、明らかに長年使ったように薄汚れていた。 頭についた白いひもは少し茶色く、振っても振っても切れないぐらい太かった。 とんでもないものをもらってしまったと思った。 そのクリスマスは私の人生で特別なものとなり、今でも大切にしている思い出。 その年のずーっとずーっとあとに聞いた話。 誰かが父の部屋にヤスリを借りに来たらしい。 あの日あのとき、私を待っていたかのように佇むタクシーのおじちゃんは今思えばサンタクロースだったのかもしれない。 さっきまでの犬歯の抜けた狼みたいに逃げ腰だった私は、 あのおじちゃんの優しい言葉であたたかい水の中でぷかぷか浮いているような不思議な気持ちになった。 みんなが大切にしてくれた私を私も大切にしよう、という気持ちに気づかせてくれた。 家の近くでタクシーを降りてなぜか何度も おじちゃんにお礼を言って走って横断歩道を渡った。 家に近い最寄り駅はもう終電がなくなっていて、誰もいない。 まぶしいコンビニを横切って、いつもの坂が見えた。 走りながら坂を降りた。 夜は苦手だからぷかぷかした気持ちと一緒に走った。 よく見る夢みたいに、飛べそうなくらい大股で走った。 あごが痛くなって、喉が冷たくなる。 長い坂。 そのまま一気に走って、ゆっくり鍵を差して、 紺色の見慣れたドアを開ける。 「……ただいまー」 私はこの夜のおかげでこれからも瓶の隙間から手を伸ばし続ける。 文・写真=佐藤ミケーラ倭子 編集=宇田川佳奈枝
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~
人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など──漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記
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4年ごとに人類が抱く夢、映像美を追求したスポーツの記録──市川崑『東京オリンピック』
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記 1964年8月21日、ギリシャ・オリンポスの丘で点火されたオリンピックの火は日本へ向かった。 『東京オリンピック』は、1965年3月に公開された1964年の東京オリンピックの公式記録映画である。監督は『ビルマの竪琴』(1956年)や『炎上』(1958年)などで知られる鬼才・市川崑。 東京オリンピックの公式記録映画でありながら市川の「単なる記録映画にはしたくない」という理念のもと作られた本作は、「芸術か? 記録か?」と政治問題にまで発展する議論を巻き起こし、国内動員2000万人超えの大ヒットを記録し、数々の映画賞を受賞した。 本作の特徴はなんといってもその映像美、芸術性にあると思う。スポーツの祭典であるオリンピックの記録映画でありながら、冒頭の真っ赤な太陽の画など、抽象的なショットがたびたび映し出される。 「とにかく、単なる記録映画にはしたくなかったですね。自分の意思とかイメージというものを重く見て、つまり創造力を発揮して、真実なるものを捉えたい、と。」 (「公益財団法人日本オリンピック委員会」インタビューより引用) 市川は本作の制作にあたり、記録映画であるにもかかわらず緻密なシナリオを制作し、スタッフには絵コンテを描いて説明するなど、演出に強くこだわったという。100台以上のカメラ、200本以上のレンズ。世界で初めての2000ミリの望遠レンズまでも使用された。それらを用いて撮影された映像は、選手の肉体美のみならず、内面までも映し出す。 (C)フォート・キシモト 選手の強張った表情が、額を流れる汗が、彼らがオリンピックというものに向ける大きな感情を如実に表現する。 そして市川らのカメラが捉える対象は、選手だけに留まらない。 ケガをした選手を運ぶ救護班。 グラウンドの整備をするスタッフ。 思わず競技に見入ってしまう審判。 休憩中、競技が始まって、思わず仲間たちと顔を見合わせニヤリと笑う警備員たち。 アメリカ人選手とドイツ人選手による一騎打ちとなった棒高跳びのシーンでは、各国の応援をする観客たちのリアルな表情が対比するように映される。 太ったおじさんの二重あごのアップ……ではなく、息を呑む観客の喉元が、こだわり抜かれた映像技術で映し出される。 彼らもまた、東京オリンピックの参加者のひとりである。 また、本作では、ハードル走のシーンで選手が先行しているかわかりづらいであろう真正面からの画角を採用するなど、スポーツ観戦としての正確性より芸術性を重視した挑戦的なカメラワークを採用している。そのため、映像作品としても非常に完成度が高い。 監督である市川は、もともとスポーツというものにはそれほどの関心がなく、本作の総監督の打診もそのことを理由に一度保留にしていたほどだ。そして、自身がスポーツに疎いからこそ「スポーツファンだけの映画にしない」とスタッフ全員に徹底して伝えたという。 市川はスポーツに対し、たとえばその勝敗などよりも、そこに関わっている人間たちのドラマや心の機微に関心があったのだろう。 そのため本作は記録映画としては不十分ではないかという批評を受けることがある。冒頭でも述べたように、当時は「芸術か? 記録か?」と政治問題にまで発展する議論が巻き起こった。試写会で本作を鑑みたオリンピック担当大臣(当時)の河野一郎は、「記録性を無視したひどい映画」と本作を激しく批判し、文部大臣(当時)の愛知揆一もまたこれに同調した。 しかし翌年1965年、『東京オリンピック』が劇場公開されると当時の興行記録を塗り替える大ヒットとなった。 「オリンピックは人類の持っている夢のあらわれである」 冒頭の字幕だ。 本作は、オリンピックのために解体される東京の街を映したシーンから始まる。聖火リレーのシーンで映されるのは沖縄の「ひめゆりの塔」、広島の「原爆ドーム」。市川はのちに「どうしても広島の原爆ドームからスタートさせたかったんです」と語る。 1945年8月6日、市川の母を含む家族8人全員が広島に住んでおり、被爆している。当時東京で暮らしていた市川も原爆投下から数日後に広島へ向かい、その凄惨さを目の当たりにしていた。 オリンピックの理念のひとつに世界平和がある。のちのインタビューで市川はこの世界平和という部分に着目してシナリオを制作したと語っている。 東京オリンピックには、実は1940年にも一度開催が予定されていたが日中戦争の勃発などにより幻となったという経緯がある。戦後復興と高度経済成長を世界にアピールしたい日本にとって、1964年の東京オリンピックは絶好の機会であった。 本作は 「人類は4年ごとに夢をみる この創られた平和を夢で終わらせていいのであろうか」 という言葉で締めくくられる。 森達也をはじめ、さまざまなドキュメンタリー監督がドキュメンタリーにおいて作り手の視点は重要である、という趣旨の発言をしている。ドキュメンタリーとは事実の記録に基づいた作品のことであり、一般的に「意図を含まぬ事実の描写」であると認識されることが多いが、それを撮影、編集し作品として仕上げている以上、制作者の意図や思想、視点が入り込むことになる。 私はドキュメンタリーのおもしろさはこの制作者の視点にあると思っている。制作陣がどういう感情を持ってその対象を観測していたかの記録であり、そしてその視点を我々視聴者が追体験できるという意味で、ドキュメンタリーは非常に価値のあるものだと感じている。 自分がいつかスポーツマンガを描くのなら、私はこういった制作者の視点が、制作者が何に魅力を感じているのかが如実に伝わるような作品が作りたい。 本作はそう強く思える、市川の視点が十二分に込められた素晴らしいスポーツドキュメンタリーだ。 文野 紋(ふみの・あや) 漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月から『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載していた『ミューズの真髄』は2023年に単行本全3巻で完結。2024年7月、WEBコミック配信サイト『サイコミ』連載の『感受点』(原作:いつまちゃん)の単行本を発売。2025年1月から、『週刊SPA!』(扶桑社)にて『トムライガール冥衣』(原作:角由紀子)の新連載がスタートしている。 『東京オリンピック』 Blu-ray&DVD発売中 発売・販売元:東宝 (C)公益財団法人 日本オリンピック委員会
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俳優・東出昌大が導く「生きている意味」
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記 「あいつ、鉄砲の免許持ってて狩猟してるんだよ」 サバイバル登山家・服部文祥の言葉からすべては始まった。 『WILL』は映像作家・エリザベス宮地によるドキュメンタリー映画で、俳優・東出昌大の狩猟生活を追った作品だ。 東出昌大は映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)での俳優デビューから数々の映画やドラマに出演するなど人気の俳優だ。個人的な話になるが、私は東出が将棋棋士・羽生善治を演じた映画『聖の青春』(2016年)をきっかけに、最近では『Winny』(2023年)や『福田村事件』(2023年)などの東出の出演作を観ては彼の魅力に感嘆するいち映画ファン、東出ファンである。彼は世間的に見ると常軌を逸したような、独特な人間を演じるのがうまい。 しかし一般的にはやはり東出といえば、2020年の離婚騒動をはじめとしたスキャンダルのイメージが強いだろう。その後、「山ごもり」が報道され賛否両論となっていたころ、東出は2023年11月放送のABEMAのバラエティ番組『チャンスの時間』に出演した。映画に出演している姿以外ほとんど彼について知らなかった私は、そのあきらめきったような厭世的な様子に少しだけ衝撃を受けた。騒動の印象と端正な顔立ちから、いわゆるチャラい、器用なタイプかと想像していたが、なんとも生きづらそうな人だ、と思った。 俳優・東出昌大はなぜ狩りをするのか。 「カメラ回してもらっても、たぶん僕500時間ぐらい一緒にいないとわからないから」 「カメラ前で主張したいこととかもないし……」 実は本企画は、一度頓挫している。事務所の許可が降りなかったのだ。しかしその半年後、宮地のもとに東出から連絡が届く。2021年10月、再びのスキャンダルにより事務所を離れることになったという。事務所NGがなくなったことで本企画は再び動き出し、宮地は狩りをする東出にカメラを向けることになる。 (C)2024 SPACE SHOWER FILMS 東出は狩猟について「悪」であると語る。 「混沌とすることが、常にまとわりついていて、でも、近くに命があるから……考え続けるし……」 なぜ自身が「悪」と定義する狩猟を、つらい思いを抱えながらも続けるのかと尋ねられた東出はたどたどしく答え、頭を抱える。東出は何に葛藤し、何に悩んでいるのか。きっと自分でもわかっていないのだろう。わからないから狩猟をしているのだろう。東出にとって狩猟は、自身(人間)の根源的な罪を心に刻む、ゆるやかな自傷行為なのかもしれない。 「忙しい中でよくわかんないコンビニ飯食って感謝もしないよか、呪われてるっていう実感持ちながら、そこに張り合い持ってアレの分も……って思ってもらったほうが……とかなんのかな。わからん」 東出から紡ぎ出される言葉はいつも正直で真摯だ。 私は大阪府貝塚市の精肉店を迫ったドキュメンタリー映画『ある精肉店のはなし』(2013年)を見たことをきっかけに、狩猟や屠殺(とさつ)について興味を持ち、関連のドキュメンタリー映画や書籍を読み漁っていたことがある。そうしていわゆる「食育」について学んでいると、「命をいただいている自覚を持って感謝して生きる」といった結論にたどり着くことが多い。それはもちろん間違いではないし、人間として生きていく以上そうして合理化するしかない。だが、屠殺の職に就いているわけでもない「忙しい中でよくわかんないコンビニ飯を食っている」自分にとってその結論は本当に実感を持った正しいものなのだろうかと思う。 もっとわかりやすくいうと、ものすごく耳障りがいい「命への感謝」という概念に違和感があった(これは私が普段食に対して命を実感する生活をしていないことに起因しているため、その結論を出している人たちを批判するものではない)。 東出は自身の銃で鹿を仕留めたとき、ひと言「うぃ〜」と言った。ドキュメンタリーのカメラが回っているにもかかわらず、俳優という世間からわざわざボロを探して叩かれるような人生を送っているにもかかわらず、だ。東出はこのことを振り返って、なんて軽薄なんだと思ったけど、すごくうれしかったから、と語る。こういう素直さは東出の魅力のひとつだ。 作中全編を通して感じることだが、改めて、東出は人間離れした男前である。189cmの長身に、考えられないくらい小さな頭。目鼻立ちもハッキリしており、端正。誰がどう見ても男前なのだ……一般人として生きていけないくらいに。猟友会の中にいる東出は正直、イケメンすぎて浮いている。作中でも狩猟仲間から親戚を紹介され「芸能人」として求められることに苦悩するシーンが映されている。 (C)2024 SPACE SHOWER FILMS スキャンダルや本作中での言動を考えると、東出は本来「芸能人」に向いている性質ではないのだろうと思う。実際、最初はバイト感覚でモデルの仕事をしていたという。だが東出の生まれ持った圧倒的なオーラは、彼が一般人になることを許さない。そして、そのことに葛藤し、もがき苦しんだ東出はよりいっそう俳優として唯一無二な魅力的な存在になっていく。俳優という職業は人生経験が糧になる。彼にしか演じられない役柄が存在する限り、東出は映画界から求められ続けるだろう。 東出は『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』(2023年/ABEMA)の仕掛け人である高橋弘樹プロデューサーとの対談で、俳優の仕事について次のように語る。 「僕の場合は(高橋さんと違って)人が用意した台本でやる。たしかにそれはあるんですけど、“僕の35年の人生があって台本をどう読むか”だから。そこに僕のオリジナリティがまた生まれるんです」 「でも役者の仕事はめちゃくちゃ疲弊するんです。磨耗する、削られる。ちょっと休むとまた欲が出るんです。(中略)また身を粉にするように削られるようにやりながら挑戦したいという欲が生まれる」 2022年、東出が出演する映画作品『福田村事件』の撮影が始まる。監督は、『A』(1998年)、『A2』(2001年)、『FAKE』(2016年)など数々のドキュメンタリー作品でも有名な、森達也だ。東出はオファーを受ける前から森の作品のファンだったという。正義や悪や人間は簡単なものじゃない、虐待事件を起こした側にも家族があり愛がある──そういった森の作品に共感し出演を決めたという。私自身も森の作品には感銘を受け、トークショーにも足を運ぶようなドキュメンタリーファンのひとりだ。東出のこの感覚には非常に共感する。 私は普段はマンガの仕事をしているが、時々、自分には作品を発表する素質がないような気がして何も書けなくなってしまうことがある。なにも自分や自分の作り出したキャラクターの価値観が絶対的に正しいだなんて思っていない。何が正しいことなのかを悩みながら、悩んでいるからこそ生きているし、物を作っている。しかし世間が見るのは「完成品」であり「商品」である。当たり前に自分が作ったものが倫理的に正しくないと指摘されることがある。私の作品を見ることで不快になった(=不幸になった)と言われることがある。これ自体は物を作って発表している以上、仕方のないことだ。折り合いをつけていくしかない。 ただ、私はそういう正しくなさも含めて人間(キャラクター)であり、愛らしさであり、それが滲み出ているものが、それを丸ごと抱きしめてあげたくなるようなものが愛しい作品であると思っている。自分はそういった「抱きしめてあげたいような気持ち」に出会うために生きているような気がする。 調子がいいときはそう思えているのだが、物作りをしているとどうしようもない不安に駆られる瞬間がある。自分の考える「愛らしさ」は世間にとって害であり、自分が物を作り自分の価値観を訴えることは多くの人を不快にする行為なのではないか。そうやって価値観を開示したときに人を幸せにできるか否かこそが物作りをすることに必要な素質の有無なのではないか。正直に自分を開示することは世間から愛されるコツだが、開示して出てくるものが世間とズレていたらもうどうしようもないのではないか。 東出は私にとって非常に「愛らしい」存在だ。 東出はきっと、本当に「こういう人」で、それを我々にある程度素直に開示してくれている。何度世間を賑わせて、叩かれて、殺害予告が届いても。 彼の過去のスキャンダルが倫理的に正しかったかというと、うなずくことはもちろんできない。内容はまったく違うが、個人的には本作を観たときの感覚は圡方宏史監督の『ホームレス理事長』(2014年)を観たときに近い。罪は罪だし行為に対して正しいとも思わないけれど、人間が真摯に生きる姿は惹かれるものがある。そして、「自分はやっぱり人間という生き物が好きだな」と思う。 東出は語る。 「──仕事だったり狩猟だったり、人との出会いだったりっていうのを本気でやってると、何か生きててよかったって僕自身思う瞬間もあれば、生きててよかったって(あなたの)おかげで思いましたって言ってくれる人の言葉があったり、生きててよかったとか、どうしようもなく愛おしいっていう気持ちなんだ、とか。それは物に対しても人に対しても作品に対しても。そういうときに、なんか、生きている意味ってあるんだろうな」 さまざまなスキャンダルやバッシングを受け続けた東出の口から、たどたどしい言葉で紡がれる「生きている意味」は必見だ。 文野 紋(ふみの・あや) 漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月から『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載していた『ミューズの真髄』は2023年に単行本全3巻で完結。2024年7月、WEBコミック配信サイト『サイコミ』連載の『感受点』(原作:いつまちゃん)の単行本を発売。 (C)2024 SPACE SHOWER FILMS 出演:東出昌大 音楽・出演:MOROHA 監督・撮影・編集:エリザベス宮地 プロデューサー:高根順次 製作・配給・宣伝:SPACE SHOWER FILMS
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ファッションが持つ力を信じる、最前線の美しさに込めたメッセージ──関根光才『燃えるドレスを紡いで』
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記 服を作ることは罪でしょうか? 本作はその疑問に真っ向からぶつかる日本人デザイナーを追った作品だ。 『パリ・オートクチュール・コレクション』。 オートクチュールとは「高級仕立服」という意味のフランス語で、『パリ・オートクチュール・コレクション』は、パリ・クチュール組合に加盟する限られたブランド、または招待されたブランドしか参加できない格式高いコレクションである。 本映画は、同コレクションに日本から唯一参加するブランド「YUIMA NAKAZATO(ユイマ ナカザト)」のデザイナーである中里唯馬に密着したリアル・ファッション・ドキュメンタリーである。 映画『燃えるドレスを紡いで』 唯馬は国内外で活躍する日本のトップデザイナーのひとりだ。ベルギーの名門アントワープ王立芸術アカデミー出身である彼の卒業コレクションは、インターネット上で回り回って世界的ヒップホップグループであるThe Black Eyed Peasのスタイリストの目に留まった。同グループの世界ツアー衣装のデザインを手がけたことをきっかけに、唯馬は対話から服を作っていけるオートクチュールに惹かれていった。 その後、唯馬は2009年に前述のブランド「YUIMA NAKAZATO」を設立。日本人では森英恵以来ふたり目となる『パリ・オートクチュール・コレクション』のゲストデザイナーに選ばれている。そんな輝かしい経験を持ち、ファッション業界の最前線を走る唯馬にはひとつの関心事があった。 「衣服の最終到達地点を見たい」 映画は、唯馬がアフリカ・ケニアへ旅立つシーンから始まる。アフリカ・ケニアのギコンバはメディアを通してしばしば「服の墓場」と表現されることがある。 映画『燃えるドレスを紡いで』 チャリティ団体や回収ボックスに寄付された古着がその後どのような道をたどるかご存じだろうか。昨今ファストファッションの流行などにより先進国での衣類の生産量や購入料は実際に必要とされている分よりも遥かに多いとされる。流行のデザインの安価な服をワンシーズンのみ着用するために購入する、ということも珍しくないだろう。そういった服を善意から、廃棄ではなく前述のような手段で寄付というかたちで手放すこともあるだろう。しかし現実には、回収量が必要量を上回っていたり、質などの問題で再利用できなかったり、ニーズに合っていなかったりと問題が多く、運ばれてくる古着のうちそのまま売り物になるのは20%ほどで、ゴミ同然のものも多いという。 ケニアの街の人々は口々に言った。 「服はじゅうぶんにある。もう作らないでほしい」 そうして弾かれたり売れ残ったりしたゴミ同然の古着は「服の墓場」である集積場に廃棄される。ケニアには焼却炉はない。集積場には生ゴミなども廃棄されており、プラスチックゴミの自然発火も相まって、街に入った瞬間から腐敗臭が立ち込めるという。 色とりどりの衣類等のゴミが地平線まで積み重なり、その中を子供たちが歩く様子は我々が想像すらしたことのないような光景でまさに圧巻。37年間、このゴミ山で暮らしているという女性の姿も映し出される。風でゴミたちが巻き上がる。 唯馬は、服の墓場を見て「美しい」とつぶやいた。 唯馬は『さんデジオリジナル』(山陽新聞)のインタビューでそのときのことを振り返り「不快だという思いもあるんですけど、それだけではない何かがあるな……と」、「適切な言葉が思いつきませんでした」と述べている。この「美しい」という言葉には我々には想像もつかないくらいたくさんの感情が込められているのだろう。 安価な服はポリエステルを主としている上、さまざまな原料が混ぜられているので、そう簡単にリサイクルすることはできない。 新しい服を作ることに魅力を感じ、生業としている唯馬にとってケニアでの光景は大きな葛藤を産むものだった。唯馬は「なぜ自分は服を作るのか」と自問自答した。唯馬の動揺がスクリーン越しに強く伝わってくる。 このとき、すでに次のパリコレクションまでの猶予は2カ月ほどしかなかった。この現実を知り、強い落ち込みを感じているのに、それを無視してまったく別のコレクションを発表することなどできない。 その後、唯馬たちはケニア北部のマルサビット地方を訪れる。マルサビット地方ではひどい干ばつが続いており、家畜が死に、食糧危機にも悩まされていた。そんな場所で唯馬が出会ったのは、羊の皮を縫い合わせた服や色とりどりにビーズを使った装飾品を身につけておしゃれを楽しむ現地の女性たちの姿であった。深刻な食糧危機に悩まされるこの地域でも、人々はおしゃれを楽しんでいたのだ。 映画『燃えるドレスを紡いで』 唯馬は彼女らから人が装うことの根源的な意味を考えるヒントを得て帰国し、パリコレクションに向けての制作に入る。 映画の後半では、帰国からパリコレクションまで約2カ月間の奮闘が描かれている。ケニアで売られていた古着の塊を持ち帰った唯馬は、さまざまなハプニング──SDGsとも関係のないものも含めた本当にさまざまなハプニングに見舞われながらも、より美しいコレクションを作るために妥協なしで服作りを進める。 この後半の物語によって、本作はSDGsに関する啓蒙映画という枠にとどまらず、むしろ中里唯馬というひとりの人間の生き様を映した映画になっていると思う。 服の過剰生産に対する問題提議を新しい服を作るという方法で行うのは、一歩間違えたら矛盾と捉えかねられない難しい活動だ。実際、唯馬も社内ミーティングで「(パリコレクションのような消費を促すことが目的の場に)関わっている以上、すでに加担してしまっている」、「そういう中で何を言っても、言い訳にしか聞こえないだろう」と言葉にしている場面があった。しかし、唯馬は方向性を固めてからは、ただひたすら美しさに重点を置き、ストイックにそれを追求していく。 唯馬はきっと芸術、特に美しい衣服の持つ力を心の底から信頼しているのだろう。 唯馬は「オートクチュールはF1レースみたいなもの」だという。技術を集結させ最も美しいものを発表する場だ、と。しかしF1レースで培われた技術は10年後には公道を走る車に応用される。かつては男性のものだったパンツスーツが今は女性の装いとして当たり前のものになっているように。最前線で美しいものを発表することが、人々の装いを、そして価値観までを変えることができる、服の持つ美しさにはその力があると信じているのだろう。 趣味程度だが、私は美術館やギャラリーで絵画や現代アートを見ることが好きだ。それらの作品の中には、戦争や政治、環境問題などに対するメッセージや主張が込められたものが多い。そして、それらはただ単純に文字や言葉での主張ではなく、絵画や彫刻などの美しく心が惹かれるようなかたちに昇華されている。 なぜ人は、理路整然とした言葉や理屈ではなく、美しさを通じて何かを主張しようとするのだろうか。その答えは簡単にわかることではないが、パリコレクションという大きな舞台の本番の直前まで美しさにこだわり、追求し、微調整を続ける唯馬を見ていると、我々もまた美しさの持つ可能性を信じずにはいられなくなる。美しさは時に言葉よりも鮮明に、そして強く物事を主張することができる。 映画『燃えるドレスを紡いで』 「デザイナーにはこれだという主張が必要だけど、彼(唯馬)は常に何か言いたいことがあった」 作中で唯馬について述べられていることのひとつだ。 何かどうしても言いたいことがある人が、美しさの持つ力を圧倒的に信じることで、世の中のデザインや芸術というものはでき上がっているのかもしれない。 『燃えるドレスを紡いで』は環境問題やファッション業界について知ることができるのはもちろんのこと、中里唯馬という人間のかっこいい生き様をのぞける貴重な作品だ。 文野 紋(ふみの・あや) 漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月から『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載していた『ミューズの真髄』は2023年に単行本全3巻で完結。2024年7月18日、WEBコミック配信サイト『サイコミ』連載の『感受点』(原作:いつまちゃん)の単行本が発売予定。 映画『燃えるドレスを紡いで』 出演:中里唯馬 監督:関根光才 プロデューサー:鎌田雄介 撮影監督:アンジェ・ラズ 音楽:立石従寛 編集:井手麻里子 特別協力:セイコーエプソン株式会社 Spiber
マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也
もっとドラマが楽しめる? 映画・ドラマ監督/脚本家の筧昌也が描く、テレビドラマづくりの裏側、こだわり、人間模様——
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#34「ピンチヒッターのピンチ」|マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也
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マンガ『ぺろりん日記』鹿目凛
「ぺろりん」こと鹿目凛がゆる〜く描く、人生の悲喜こもごも——
林 美桜のK-POP沼ガール
K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム
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古家正亨に50の質問! 座右の銘・モテ期・仲のいい芸能人…プライベートまで大公開|「林美桜のK-POP沼ガール」マレジュセヨ編
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 連載「林美桜のK-POP沼ガール」新シリーズ・マレジュセヨ編の第1回には、多数のK-POP関連ライブやイベントで司会を務める名MC・古家正亨さんが登場しました。 ▼第1回はこちら 名MC・古家正亨に直撃!K-POPスターの魅力を引き出すコツは?|「林美桜のK-POP沼ガール」マレジュセヨ編 司会者ならではのお悩みを古家さんにぶつけ、聞き手は「(相手の話を)聞いて、受け止める」ことが大事だと教わった林。 それを踏まえ、今回は古家さんを「50の質問」でさらに深掘り! まだ誰も知らなかったファン必見のパーソナルな魅力を引き出し、読者に伝えることができるのか? 林 ……ということで、古家さんのファン必見! 50の質問~!!(拍手パチパチ) 古家 そんなにバチバチやらなくても……。 林 いや、せっかく古家さんをお迎えしたので、全力で盛り上げていきたいんです! 私、古家さんのご著書やインタビューはすべてチェックさせていただいているんですけど、「50の質問」はこれまでやってこられなかったんじゃないかと。 古家 そうですね! 「50の質問」って、すごくK-POPのファンミっぽい企画(笑)。 林 イベントへ行くと、古家さんの名前が書かれたうちわを持っているファンの方がたくさんいらっしゃるじゃないですか! 古家さんファンのみなさんに喜んでいただきたくて……。私も普段仕事でご一緒してもなかなかお話しする機会がないので、古家さんの仕事以外の一面などいろいろ気になって、企画させていただきました。 古家 だいたい(うちわの)裏を返すと、本命のスターの、ディテールの細かいデコレーションが(笑)。 林 でも、ステージへ登場してあんなに歓声が上がるMCって、なかなかいないですよ。ということで、はりきって始めてまいりましょう! ■Q1.最近のお気に入りの写真は? 古家 (スマホの画面を見せながら)ロウンさんと一緒に撮っていただいた写真。こうやって俳優さんと写真を撮るときって、もちろんこちらは控えめに写るものなんですが、ロウンさんは親しみを持って一緒に写ってくださって、お人柄のよさが伝わりますよね。 この投稿をInstagramで見る 古家正亨(후루야 마사유키/Furuya Masayuki)(@furuya_masayuki)がシェアした投稿 林 素敵〜! ほっこりする一枚です! 先日ファンミにも行かせていただきましたが、古家さんとロウンさんのケミ、大ファンです。 ■Q2.メガネは何個持っている? 古家 4つをローテーションで使ってます。「あの人、いつも同じメガネだよね」って言われたくなくて(笑)。 林 「このメガネをかけてる古家さんはレア!」というのもあるんですか? 古家 真っ赤なのがあるんですけど、派手すぎてもうつけていませんね。今後も使うかどうかわかりませんが、そんな派手なものをかけ始めたら、何か変化があったと捉えていいと思います。 ■Q3.今日の朝ご飯は? 古家 タッポックンタン(닭볶음탕)。もともとはタットリタン(닭도리탕)と呼ばれていたものです。鶏肉とじゃがいもを使った、からい煮物、鶏肉じゃがのようなものです。 林 おいしそう! 奥様の手作りですか? 古家 僕が作りました。数少ない得意料理なんです。韓国に留学時代、下宿先のおばさんが教えてくれて。おいしくて、わりと手軽にできるので、ぜひ作ってほしいです。 ■Q4.朝のルーティンは? 古家 6時50分に、小学生の息子をバス停まで見送ること。 林 毎朝、送ってらっしゃるんですか? 古家 出張で不在のとき以外は。ただ、基本的に家族と過ごすのが好きなので、出張があっても、できる限り日帰りできるようにお願いしています。だいたい毎朝6時前には起きていますね。 ■Q5.平均睡眠時間は? 古家 4~5時間です。 林 短すぎませんか
古家 もともと朝型なんですけど、僕くらい歳を取ると、これくらい寝れば勝手に目が覚めちゃうんです(笑)。 ■Q6.仕事の必需品は? 古家 イヤモニ(イヤーモニター)とストップウォッチ。イベントのときに耳に入れるイヤフォンは、持参しているものです。今のものはたぶん5代目ぐらいです。自分の耳の形に合うもの、音の合うものでないと、けっこう大変です。 林 それで通訳さんや舞台監督さんの声を聴いているんですね。 古家 そうですね、あとアーティストの声も。ストップウォッチは、ラジオのときに「この曲のイントロは何秒か」とかを事前に計るために欠かせません。 ■Q7.願かけはしますか? 古家 あまりいい記憶がないので、こだわりはないですね。 林 冷静なんですね……。ちなみに私は願かけしまくります(笑)。 ■Q8.自分へのごほうびといえば? 古家 家電! 最近購入したものは……。 林 すごくうれしそうな笑顔!! 古家 バルミューダのホットプレートです! ■Q9.ファッションで意識していることは? 古家 とにかくモノトーンを選ぶこと。MCって目立っちゃいけない存在ですから、意図的にそういう服を着るようにしていますね。 林 たしかに、古家さんといえばモノトーンなイメージがあります。 ■Q10.好きなアーティストは? 古家 いっぱいいるから難しい! K-POP限定ですか? 林 K-POPに限らずで大丈夫です! 古家 (しばらく悩んで)……あえて言うなら「Toy」、つまりユ・ヒヨルさんですかね。僕が初めて出会ったK-POPアーティストだからです。 ■Q11.テンションを上げるときに聴く曲は? 古家 K-POPじゃないけど、大江千里さんの「dear」(1990年)……たぶん初めて言います(笑)。あの曲のBPMが自分の歩くスピードに合っているのと、シンプルなのに、よく聴くとかなり凝った清水信之さんの手がけたアレンジが素晴らしい! 林さんはピンとこないと思うんですけど、僕はEPICソニー世代なんです。今はEpic Records Japanになりましたけど、当時EPICソニーに所属していた大江千里さん、渡辺美里さん、TM NETWORKといったアーティストが一世を風靡していた時代があって。毎月『GB』(音楽雑誌)とか買って、今紹介したアーティストの情報を夢中になって読んでたなぁ。 林 大江千里さん、私の勉強不足で存じ上げなかったです……「マツケンサンバ」みたいな感じですか? 古家 全然違うよ!(笑) もともとシンガーソングライターで、今はジャズピアニストとして名を馳せている方。大好きなんです。 ■Q12.悲しいときに聴く曲は? 古家 LOOKの「シャイニン・オン 君が哀しい」(1985年)。これもEPICソニー発ですね。 林 意外! 韓国の曲ではないんですね。 古家 韓国の曲はもちろん聴くんですが、たとえば寝るときなんかに聴くのはJ-POPか洋楽が多いです。 ■Q13.好きな食べ物は? 古家 カレーライス! 林 辛い派ですか、甘い派ですか。 古家 辛い派ですね。 ■Q14.嫌いな食べ物は? 古家 らっきょうですかね。 ■Q15.テンションが上がる、現場の差し入れは? 古家 たまにあるんですけど、スタバのコーヒーをいただいたときは「ラッキー!」って思いますね(笑)。 ■Q16.初恋はいつ? 古家 保育園の年中です。 林 おお、早い! ■Q17.モテ期はいつ? 古家 2024年! 林 えぇっ!? 古家 仕事に、ですけどね。たぶん、今までで一番仕事量が多かった1年で、月平均20本くらいイベントの司会をやっていましたね。 ■Q18.生まれ変わるなら何になりたい? 古家 (熟考して)……鳥? 古家・林 (爆笑) 林 これは、理由をあまり深く聞かないほうがいいですか? 古家 いや、僕、空を飛びたい願望が昔から強かったんです。子供のとき「鳥になりたいなあ」って思っていたことを、今ふと思い出しました(笑)。 ■Q19.オフの日の過ごし方は? 古家 とにかく家にじっとしていられない性格なので、外に出ちゃうかな。公園とか映画館とか。 林 じゃあ仕事がいっぱいあるのは、苦じゃないんですね。 古家 そうですね。ただ、煮詰まってしまうときはあります。そんなときは、ただ何も考えずに歩くことが自分にとって精神安定剤でもあるから、忙しすぎると、その時間が持てないのがつらいですね。家電量販店にも行けないですし。 ■Q20.どんな子供だった? 古家 先生からめったに怒られない、優等生……だったと思います。 ■Q21.得意だった科目は? 古家 地理と生物が、とにかく大好きでした。 ■Q22.最近一番笑ったことは? 古家 うどんが鼻から出たことかな(笑)。 林 (爆笑) 古家 家で家族と一緒にうどんを食べていたとき、くしゃみしたらスポーン!ってキレイに出て。悲しいことに誰も見てなくて、ひとりで笑っていたら「どうしたの?」ってみんなに言われたので「ううん、大丈夫、なんでもないよ」って。 ■Q23.最近泣いたことは? 古家 映画『ドラえもん のび太の絵世界物語』を息子とふたりで映画館に観に行って、ひとりで号泣していました。息子がそんな僕を見て笑っていましたけど。 林 どんなストーリーに、特に弱いですか? 古家 お父さんが出てきたらヤバい。今回の映画『ドラえもん』でも、パパがいいんですよね。それから、よく観る韓国ドラマに出てくるお父さんって、弱い立場のケースが多いじゃないですか。家族に虐げられている姿を見るだけで涙が……。 ■Q24.特技は? 古家 そろばんです。僕、地元の北海道でそろばんのチャンピオンになったこともあるくらい、4歳から中学生まではガチでやってたんです。 林 すごい。そのスキルが、今も活かされることも? 古家 暗算が速いので、たとえばファンミのゲームコーナーで得点を出すときにもすごく役立っていますね。たまにスタッフやお客さんからビックリされます。 ■Q25.リフレッシュ方法は? 古家 テニスは週1、必ずするようにしています。 ■Q26.自分の性格を言い表すなら? 古家 めちゃめちゃシャイ。 林 見えないです。シャイだとできない仕事じゃないですか? 古家 これがね、だからこそむしろできる仕事なんだと思うんです。小・中学生時代、生徒会の役員をやっていたんですけど、その理由は、強制的に人前で話す機会を、シャイな自分に課したかったから。でもいまだに初対面の人と話すのが苦手ですし、仕事仲間以外の友達も本当に少ない。 林 私も友達、少ないです。シャイなのかも。 古家 そうかな……? ■Q27.好きな映画は? 古家 とにかく『ダイ・ハード』。僕の中では、これを超える映画はまだ出てきていません。 ■Q28.短所は? 古家 自分の意見が言えないこと。 ■Q29.長所は? 古家 どんな人にも合わせられること。 林 納得です。私と一緒にお仕事していただいているのも、古家さんが全部合わせてくださっているからですもん。 古家 (笑)。いやいや、そんなことはないです! ■Q30.自信のある顔の向きは? 古家 ……下? とにかく写真を撮られるのが苦手で、鏡を見るのも嫌なんですよ。自分の外見が好きじゃなくて。 ■Q31.人から言われて救われたことは? 古家 「ありがとう」。 林 今までにいっぱいありますよね。 古家 案外、少ないものですよ。MCって、人のために動いて当たり前の仕事じゃないですか。でもイベントって、危機的状況が頻繁に訪れる。そういうときにうまく対処すると、「ありがとう」と言っていただけて。「がんばってよかったな」と。 ■Q32.好きな韓国ドラマは? 古家 『ミセン-未生-』……うーん、やっぱり『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』! これを超えるドラマは、まだないですね。 林 あれはずっと泣けます。 古家 でもこのドラマは、特におじさんに刺さるストーリーだと思いますよ。 ■Q33.尊敬する人は? 古家 学生時代に卒業文集にも書いたんだけど、スティービー・ワンダー。自分のハンディキャップさえもポジティブに受け止めて、パワーに変えている人ってすごく尊敬できるし、魅力的じゃないですか。昔から今まで、ずっと憧れています。 ■Q34.最近後悔していることは? 古家 ロケで韓国に行ったときに「古家さん、そこへ行ったら危ないですよ」と注意されていたのに、構わず進んでいって、うんちを踏んじゃったこと(笑)。 林 あ……でも、運がついたと思えば……。 古家 さすが! ありがとうございます。 ■Q35.自分自身を褒めたいことは? 古家 ここまで同じことをずっと続けてきたことに対して、自分を褒めてあげたいです! ■Q36.座右の銘は? 古家 「為せば成る」。 林 ご著書を読んで、古家さんって本当に即行動派なんだなあって。 古家 後悔したくないんですよね。世の中、やってみないとわからないことばかりだから。 ■Q37.宝物は? 古家 自分のまわりにいる人たち、みんな。 ■Q38.仲よしは誰? 古家 一番メッセージのやりちりが多いのは、家族の次だと、ドランクドラゴンの塚地(武雅)さんかも。 林 ええ!? そうなんですか。でもたしかに、塚地さんってK-POPへの愛情がすごいから、古家さんともたくさんお話しすることがありそう。 古家 直接仕事で会うときよりも、ざっくばらんにK-POPや韓国ドラマの話をしているかもしれません。 ■Q39.最近、恥ずかしかったことは? 古家 とあるイベントで、ずっとパンツの社会の窓(ファスナー)が開いていたこと(笑)。終演後、お手洗いで気づいて焦りました。 ■Q40.プライベートで挑戦したいことは? 古家 時間があるなら、デザインの勉強。もし将来的に、自分で企画してイベントを開催できるチャンスがあれば、すべて自分でプロデュースしたいんですね。そのためには、イベント関連で自分が能力的にできないことを挙げれば、デザインなんです。なので、映像やメインビジュアル、告知ページなどが作れたら、自己完結できるかなぁって。 ■Q41.譲れないこだわりは? 古家 ステージ上では、なるべく椅子に座らない。ソファが用意されているときはさすがにあきらめているんですが、ハイチェアがあるときは、座らずほぼ立っています。 林 その理由は? 古家 座っていると、ステージ全体がよく見渡せないんです。何かあったときに、すぐに動けるようにしたいし。常にステージの状況を把握しておきたいんですよね。あとは、お客さんの死角になりたくないので、みなさんがスターのよく見える位置に立っていたいという気持ちもあります。 林 舞台上の空気を読んだ古家さんの動きの素早さには、いつも驚かされています。 ■Q42.人に対して「うらやましいな」と思うことは? 古家 もしも自分がイケメンだったら、どうだっただろうなって考えることはあります。 林 イケメンですよ!! 古家 お世辞はいりません。でも、僕はもともと、大学の映画・演劇学科か放送学科に進みたかったんです。もしもビジュアルに自信があったら、表舞台に立つ道もあったのかな?って。 ■Q43.自信のあるパーツは? 古家 耳。よくいろんな人から福耳ですねって言われます。 林 みなさん、大注目です!!(笑) 古家 いやいや、適当すぎ!(笑) ■Q44.ファンからかけられたらうれしい言葉は? 古家 これも「ありがとう」かな。 ■Q45.「これだけは許せない!」ということは? 古家 感謝の気持ちを相手に示せないこと。息子にも、いつも「『ありがとう』は必ず言うようにしようね」と伝えているんですが、中にはなかなか感謝できない人もいるじゃないですか。なので、たまに遭遇すると悲しい気持ちになります。 ■Q46.印象的だったK-POPファンミの会場セットといえば? 古家 これはすごいマニアックな質問……。逆に、何も設備がない会場があって、ビックリしました。 林 スクリーンも何も? 古家 そうそう、いわゆる素舞台の中で、スターひとりだけっていうイベントがあって。「このスターのために、自分ができることはすべてやろう」と決意しましたね。 ■Q47.仕事場のこだわりは? 古家 自分の仕事まわりで、唯一お金をかけているのがマイクなんです。自宅でラジオを録音しているから、それにはこだわっています。 ■Q48.印象に残るうちわ、ボードは? 古家 「후루야씨 맛있어요(フルヤシ マシッソヨ/古家さん、おいしいです)」。たぶん「후루야씨 멋있어요(フルヤシ モシッソヨ/古家さん、カッコいいです)」と書きたかったんだと思うんですが……(笑)。 林 かわいらしい間違い! でも、本命にはやっていないことを願いたいです。 古家 そうですね、どなたか見かけたら訂正してあげてください(笑)。 ■Q49.印象に残っているファンは? 古家 本にも書いたんですが、CNBLUEのファンですね。イベントで、メンバーが『のだめカンタービレ』のキャラクター・千秋先輩について話していたんですけど、僕が『のだめ』を知らないせいであまりその内容に触れずに終わっちゃったんです。 すると帰りに、ファンの方から「千秋先輩も知らないんですか?」と言われて。その出来事があったおかげで、以来、幅広い分野まで情報収集するようになりました。 ■Q50.今年の目標は? 古家 とにかく健康でいること! 去年はお医者さんのお世話になったことが何度かあったので、今年は病院に行く必要がない状態でいたいです。 林美桜の取材後記 お話がおもしろくて、すべては載せきれないほど長尺のインタビューになってしまいました。 私は毎年10回以上、舞台上でMCをされている古家さんとお会いしている気がするのですが……みなさんいかがでしたか? よくよく考えてみたら、年に数回しか来日しない最推しの数倍、お会いしているかも。 古家さんのこともいろいろ知りたいけど、仕事上、聞き手をされているため、なかなか人となりを知ることが難しい。 でも、もし知ることができたら……舞台上に推しがふたり、推しと推しの共演? ……ファンミを2倍楽しめる!! そんな思いで「50の質問」を思いつき、伺ってみました。 古家さんファンのみなさんもまだ知らなかった情報が、少しでも引き出せていたらうれしいです。 古家さん、お忙しいなか丁寧に取材にお付き合いくださり、ありがとうございました。 文=菅原史稀 撮影=MANAMI 編集=高橋千里
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名MC・古家正亨に直撃!K-POPスターの魅力を引き出すコツは?|「林美桜のK-POP沼ガール」マレジュセヨ編
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 連載「林美桜のK-POP沼ガール」新シリーズが始動! その名も「林美桜のK-POP沼ガール・マレジュセヨ編」。マレジュセヨとは、日本語で「話してください」という意味。林美桜が話を聞きたい“韓国カルチャー仕事人”に突撃取材し、仕事流儀から細かいノウハウ、アドバイスまで、たっぷりと語っていただきます。 マレジュセヨ編の第1回は、多数のK-POP関連ライブやイベントで司会を務める名MC・古家正亨(ふるや・まさゆき)さんが登場。 林とはテレビ朝日公式YouTubeチャンネル『動画、はじめてみました』内の「動はじK-POP部」で共演。同業者・共演者として、古家さんに教えを乞いたいことがたくさんあるようで……? 司会業の悩み「出演者の下調べ、どこまでやるべき?」 林 美桜(以下、林) 今日は、古家さんにお聞きしたいことをぶつけさせていただきます! 古家さんのことは高校時代から韓国カルチャーを深掘りするテレビ番組などでよく拝見していて。当時はその番組を観ることが日々の唯一の楽しみだったんです。大学時代にK-POPについて書いた卒論でも、古家さんの著書を参考にさせていただいて。 なので初めて共演させていただいたときは、うれしくて泣いたんですよ。それくらい、私にとっては尊敬する特別な存在で……。いきなり長くしゃべってしまいました(笑)。今回は、半分、アナウンサーとしての「お悩み相談」になってしまうかもしれませんが……いろいろ伺っていきたいと思います。よろしくお願いいたします! 古家正亨(以下、古家) そんなことを思ってくれていたなんて……ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします! 林 まずは、年間ものすごい数のイベントのMCを務められている古家さんですが、きっとトラブルなんかも少なくないんじゃないかなと思うんです。アナウンサーも、たとえば「番組がもうすぐなのに、台本到着が遅れている!」というピンチがあったり……私自身は、すごく焦っちゃうタイプで。古家さんも、そういうときにストレスを感じたりしますか? 古家 トラブル、よくありますね。僕はけっして焦らないほうなんだけど、つらいなぁって思う瞬間はもちろんあります。たとえば俳優さんのイベントで、出演作をすべて観て完璧に準備しておいたのに、一度もイベントでその話題が上がらなかったときとか(笑)。「あんなに観たのになあ」って、ちょっと悔しくなっちゃうかな。 林 古家さんとは番組でも共演させていただいていますが、台本にアーティストの性格や個性、ハマり事などパーソナルな情報や、ほかにもびっしり書かれていて、お忙しいなか全部調べているんだなと感激したんです。さらに、それを本番が始まるギリギリまで書き込まれていたのが印象的で……。 ただ、リサーチはとても大切だけど、本当に難しいなと最近思っていて。私は音楽バラエティ番組『M:ZINE(エンジン)』で、出演アーティストの作品やパーソナリティをなるべく調べてから収録に臨んでいるのですが、とにかくコンテンツが膨大だからどこまで調べてよいものか悩んでいます。 古家 僕の場合、MVやオフィシャルで出ている映像モノなど、あくまでベーシックなものだけです。とはいえ、ドラマやオーディション番組の場合は一作品にすごい視聴時間を費やすことになるぶん、大変ですよね。 でも、仕草やセリフなど、細かいところを拾っておくと、現場で出演者の方がすごく喜んでくださるし、ファンのみなさんも盛り上がってくださるから、できるだけ記憶するようにしていますね。 林 なるほど! リサーチの段階で、使えそうなものをある程度ピンポイントで予測しておくんですね。 古家 あとは、SNSでファンの方が「こういうことを聞いてくれたらうれしいな」というポストをしていたら、それをメモしておく。いろいろリサーチしたとしても、ステージで自分の知識をひけらかすだけだと意味がないんです。だって、そんなことはファンのみなさんが一番ご存じだから。重要なのは、ファンの方が知りたいことを、スター本人の言葉で引き出すことだと思うんです。 林 わー……。私は「勉強したから、言いたい!」が勝っちゃうんですよ。 古家 それは、不特定多数の方が観るテレビと、ファンだけが来るイベントという性質の差もあるので、テレビでやるならある意味、林さんのやり方が合っていると思いますよ。テレビの場合は、アーティストや作品の情報が初見という方も想定して発信することが必要だから。 ただ、これは僕自身が先輩からよく言われていたことなのですが、知ったかぶりはしないほうがいいです。さらに掘り下げられて答えられなかったときに、信頼できない人として見られてしまうから。それより、むしろ知らないことは「それってどういうことなんですか?」と相手に聞ける姿勢を持つほうが、一般の方と同じ視点に立てるのでいいと思うんですよね。 林 ファンの方が何を求めているかが気になって、「すべて知らないとダメだ」と思い込んでいたので、すごく勉強になります。何を言うか、もしくは言わないかといった取捨選択を、現場の空気を読みつつ行う技術が、古家さんは本当に素晴らしいです。臨機応変ということでいうと、イベント中は何を意識されていますか? 古家 K-POPや韓流スターのファンミーティングの場合、日本公演であっても、基本的にイベントは、韓国制作であることが最近は多くなっています。ワールドツアーの一環で日本に来ることが増えているからです。なので、舞台監督さんや作家さんはもちろん韓国の方々なのですが、韓国の場合は、イベントをテンポよくというよりは、少しでもスターとの接点を増やすため長時間になる傾向がある一方、日本だとむしろテンポのよさが求められるんです。 だから、公演中に運営から「ここをもっと掘り下げて」という指示が飛んできても、それをすべて汲んでいたら絶対に時間が延びてしまうので、自己判断でスルーするケースも往々にしてあります。もし時間が超過して、予定していたコーナーができなくなってしまうことはあってはならないので。全体を見て、必要なことを優先させるようにしていますね。 林 ラジオDJをされているなかで磨かれた“時間の感覚”も活かされていらっしゃるんですね。n.SSignさんのファンミーティングのMCで一緒にお仕事させていただいたときも、古家さんにすべてお任せ状態で、時間調整の面でも救っていただきました……。すごく俯瞰的な視野をお持ちですよね。 古家 あと、なるべく自分はしゃべらないようにして、スターがしゃべれる機会を作れるようサポートすることを意識しています。個人的には、それがMCの務めだと思うからです。 林 私は、“間”が怖くてすぐにしゃべっちゃうんです。 古家 それは、テレビ的な感覚だと思います。放送業界では、間が空きすぎると放送事故につながってしまうから怖くて当然ですよ。僕も基本的にはラジオ人なので、その感覚、すごくよくわかります。でも、イベントだと逆に、その“間”が大事なんです。そのスターが好きで集まっている人しか会場にいないから、返答を考えている姿も見て楽しめるし、間にも“本人らしさ”が出るから。 林 古家さんは、聞くのがすごくお上手ですよね。MCだからしゃべるお仕事かと思いきや、実は聞き出すのが本業というのが、お仕事ぶりを通じてわかります。 「若いくせに」と言われて傷ついた30歳 林 古家さんって、いまだに悩むことってあるんですか? 古家 いっぱいありますよ! MCって滞りなく進行して盛り上げるのが当たり前の仕事だから、褒められることがあまりないんです。正直それがすごく悲しくて。「古家さんに任せとけば、なんとかなる」ってみんな言ってくれるけど、僕だって大失敗する可能性はあるし、イベントを成功させるっていうことを当然のように期待されるのが、正直ずっとプレッシャーなんですね。それで一番悩んでいたのが、コロナ前の2018~9年くらい、林さんに初めてお会いしたころですよ。 林 ええっ
そうなんですか……そんなことまったく感じられませんでしたが、戦っていらっしゃったんですね。 古家 林さんも、同じような葛藤あるでしょう? 林 たしかに、アナウンサーは比較的ケアはされているほうだとは思うんですけど……たとえばバラエティ番組でコメントをするにしても、そのひと言の裏には演者さんのことを調べたりといった蓄積があるものですが、もちろん誰にも感謝されないわけで。それはやっぱり、たまにはしんどくなるときもあります。楽しい仕事ですけど、「なんかもうちょっと感謝されてみたい……」という思いが頭の中をよぎったりはしますね。 古家 わかるなぁ。僕、今の林さんと同じ30歳のころが一番仕事に悩んでいた時期だったんですよ。当時、ラジオの朝帯をやっていて、もともと時事に興味があったから、そういう話題に触れたら「若いくせに、わかったようなことを言うんじゃない」という苦情が来たりして、すごく傷ついて。それ以来、しゃべる言葉を全部台本に書いてから番組に臨むようになったこともありました。 林 「若いくせに」。そうなんですよね、30代前半ってまだまだ説得力を身につけるのが難しいから、そういう心ない声も少なからずあります。 古家 でもね、そのあと大阪のラジオ局で朝帯をやることになって、同じやり方をしていたらディレクターさんから「古家さんって、普段話すとめっちゃおもしろいのに、番組だとつまんないですね」って言われたんですよ。その言葉で「そうなんだ、自由にしゃべっていいんだ」って目覚めて。実は僕、関西に仕事で住んでいたころに経験したことが、かなり今の自分の形成に大きな影響を与えているんですね。 林 そうそう! 古家さんって、アーティストさんのボケに返すツッコミもすごくお上手じゃないですか。それも関西仕込みなんですね。アナウンサーって、わりとツッコミの役割を期待される機会も多いんですけど、それも悩みなんです。私自身は自分をボケだと自覚しているんですが、自分をなくしてやる私のツッコミって、けっこうキツく聞こえてしまうのか、怖がられることが多くて。古家さんはツッコむけど、印象が柔らかいです。 古家 ここでも一番大事なのは、相手の話をよく聞くこと。ツッコみっぱなしが一番冷たく見えるので、そのあとに相手が何を言ったかをよく聞いて、大きくふくらませてあげるんです。正直、林さんは進行に一生懸命になりすぎて、相手の返しをよく聞いていないでしょう?(笑) 林 よくおわかりで……!! ツッコミのあとに、返しを受け止めることが重要なんですね。 古家 「聞いて、受け止める」を2025年の目標にしたらどうですか? それができたら、仕事がもっと楽しめると思いますよ。 林 古家さんには、全部見抜かれてる(笑)。 “やったことないことをやる”が大事。最終目標は「ファンミ開催」! 林 それでは最後に、古家さんが掲げる今後の野望についてもお聞きしたいです。 古家 「後継者を育成しないの?」とはずっと言われていて、そこにかなり固執してきた時期もあったんです。でも最近は、ちょっと違うビジョンが見えてきたというか……誰かを育てるのではなく、自分と同じような波長で協働できるクリエイターを集めてチームを作るほうが、性格上向いているかなって。そうしたら、今抱えている僕の負担も軽減するでしょうし、それが果てには後継の育成にもつながっていくのかなって。林さんは、野望ありますか? 林 私は、今年中に人気(笑)アナウンサーになって、テレビ朝日アトリウムでファンミをやります。で、そのイベントMCを古家さんにお願いする……というのが野望です(笑)! 古家 ……なるほど(笑)。え、でも本当にやったら? 林 いいんですか!? 古家 誰もやったことのないことをやるって、すごく大事ですよ。僕も、これまで自分が主役になることをあえて避けて生きてきたんだけど、去年、タレントで、俳優で、同業者でもある藤原倫己くんとファンミをやってみたら楽しくて、意外といいもんだなって。だから林さんも、この連載の最終目標を「ファンミ開催」にしてみてもいいかもね。 林 すごい、古家さんとお話しできたおかげで連載のビジョンまで見えてきました! 今日は本当に夢のような時間でした。あと、聞くべきことはないかな? 何か忘れているような気がして、不安……。 古家 あ、またしゃべりながら次のことを考えてる(笑)。最後にひと言だけ、相手が話しているときに、台本に目を移す悪いクセを今年中に克服しましょう! 林 言われたそばから……!! 絶対に直します。親より心に響く、古家さんの言葉を胸に! 林美桜の取材後記 古家さんは日本でK-POPを広めた先駆者であるすごい方なのに、どんな人にも謙虚な姿勢で向き合う一面もお持ちです。 今回のインタビューで、古家さんのすごさを引き出したいと思っていたのに……結局自分の話ばかり気持ちよく聞いていただいてしまったような気がします。反省……。さすが名聞き手です(古家さんご自身は“MC”よりも“聞き手”という肩書のほうがしっくりとくるそう)。アーティストさんや俳優さんが、古家さんにはなんでも話したくなる気持ちがわかりました。 私は仕事で行き詰まったとき、古家さんの著書『K-POPバックステージパス』(イースト・プレス)を読みます。古家さんがK-POPに出会ってから今のお仕事に携わるまでの歴史が書かれているのですが、古家さんの行動力や苦労には目を見張るものがあり……。 それだけでもすごいですが、その原動力が自分のためではなく「自分が魅了されたKカルチャーを、自分以外の人にもぜひ知ってもらいたい。誰かとKカルチャーとの架け橋になれたら」という他者への優しさであることに驚かされます。 そんな分け隔てなく与えてくださる温かい優しさは、アーティストさんや俳優さん、そして観客の私たちにもいつも届いていて、古家さんのMCだからこそ叶う出演者とファンをつなぐ愛のあふれるイベントになっているんだなと思うのです。 ↓まだお読みでない方はぜひ!(書影ビジュアルが一新、重版が決まったそうです) https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781621456 古家さんなしでは、Kカルチャーに魅了されている私は存在していなかったです。 本当に감사합니다.(ありがとうございます) 最後に、今回、古家さんからアドバイスまでいただけて、 今までで一番大きな夢が叶った気持ちです。個人的に、31歳になる今年が自分のターニングポイントになると思っているので、そんな年を古家さんとの対談で幕開けできて、すごく気合いが入りました! がんばります!! ▼古家さんの仕事流儀をもっと知りたい方はこちら! 古家正亨「透明な存在でありたい」韓国カルチャー伝道師の“譲れない哲学” K-POPの名MC・古家正亨「透明な存在でありたい」韓国カルチャー伝道師の“譲れない哲学” 次回は、古家さんファン必見「50の質問」をぶつけてみました。古家さんの仕事観からプライベートまで深掘りしちゃいます! 文=菅原史稀 撮影=MANAMI 編集=高橋千里
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オク・テギョン&イ・ジュンギ出演『K-ドラマフェス2024』レポート|「林美桜のK-POP沼ガール」特別編
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 韓国ドラマをよくご覧になる方で知らない方はいないのではないか……と思われる アジア最大規模のドラマメーカー「Studio Dragon(スタジオドラゴン)」。 火を吹いているかわいらしい青いドラゴンのロゴ!! あーなるほど安心、これなら間違いないわねこのドラマ、となりますよね。 隙のないほど美しい映像美、こだわりのストーリー。 そんなスタジオドラゴンが誇る人気ドラマ 『ヴィンチェンツォ』からは、チャン・ジュヌ役のオク・テギョンさん 『悪の花』からは、ペク・ヒソン役のイ・ジュンギさん おふたりが出演したスペシャルイベント!! 『K-ドラマフェス2024』に行ってきましたので、少しレポートさせていただきます。 まず、一度に世界的俳優ふたりのファンミを楽しめるなんて、あまりないですよね……。 私は初めての経験でしたし、とても豪華でした。 すべてが正しすぎるイケメン、オク・テギョンさん マチネ公演。 最初に登場したのは、 『ヴィンチェンツォ』チャン・ジュヌ役のオク・テギョンさん。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. お城のバルコニーのような素敵な舞台から 颯爽と登場した“俳優の”テギョンさん。 (“俳優の”をだいぶ強調しておられました) 少し動くだけでも歓声を上げたくなってしまうほどの、あまりにもすべてが正しすぎるイケメン。 さんざんファンにキャーキャー言わせて、 急にイタズラっぽく現実的なことを言ってクスッと笑わせる テギョン節、健在でした。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. イベントでは、2021年放送の『ヴィンチェンツォ』についてたっぷりお話を伺えましたよ! 名シーン総選挙では、 「こんなシーンあったなぁ」なんて思い出しながら、さっと振り返れられたのがよかったですし、 それぞれのシーンに対するファンからのメッセージには さすが俳優のテギョンさん、目元の表現だけで反応。目で語る語る。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. 中でも、 ジュヌのような悪役をやることがつらかったというプライベートな話。 『ドラマフェス』ということで、普通のファンミではなかなか聞けないような 俳優として深度のある話も伺えて興味深かったです。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. そしてサプライズで出てきたのは なかなかスキニーなトロッコ。 テギョンさん、このときばかりは全力でアイドル。 1秒ごとにくるくるとファンサで応えていました。 思いがけず近くまで来てくれて贅沢な時間でしたね……(遠い目)。 普段からトロッコの順路にとても厳しい私ですが、 こちらのトロッコは抜け目なく会場を回りきったのを確認いたしました。 穏やかな空気感をまとった、イ・ジュンギさん 次に登場したのは 『悪の花』ペク・ヒソン役のイ・ジュンギさん。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. すっとラフな格好で現れたイ・ジュンギさん。 内から発光するような、柔らかな光を放つお姿に釘づけ。 話し終わりの優しい笑顔……私、溶けました。 Vフリシーンがまた最高にキュンでして(泣)。 観客をかわいらしく煽ってからの、挑戦。 ファンの気持ちを1から10まで熟知した 完璧なVフリ王子。 最後、照れるところまで。一連で何回も観たくなるはずです。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. イ・ジュンギさんが出演された、2020年放送の『悪の花』。 恥ずかしながらドラマを観ずに参加したのですが、 ググッと引き込まれる名シーンを観ながら語られる役柄への理解、作品への想いに感銘を受け、イ・ジュンギさんの持つ「演技」についての哲学的な考えに触れ……。 これは必ず観なければと、心のメモに筆圧高く書きました。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. 脚本家さんからのメッセージも素敵でした。 なかなかないサプライズですよね。 脚本家さんの選ぶ言葉、文章の温かさから イ・ジュンギさんがどれだけまわりの人を大切にしているか、そして愛されているか 改めてお人柄を知れる機会となりました。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. 途中から、どんどんキュートな動作が大きくなってかわいかったです。 トロッコの上からは ポップに、ユニークに、キレキレなファンサを届けてくださいました。 名前もたくさん呼んでくださっていましたね。 私はその穏やかな世界観にすっかり夢中。 ファンの愛を感じる「祝い花」も素敵! また、会場の外も素敵だったんですよ! オク・テギョンさんとイ・ジュンギさんへの祝い花。 どちらもご本人の雰囲気やカラーを大切にされていました。 ファンの愛ですね。 イ・ジュンギさんの祝い花にはベンチが!! かわいい お正月は『K-ドラマフェス2024』放送で癒やされよう さあ、ここでお知らせです。 2025年1月2日(木)よる7:00~CSテレ朝チャンネル1にて <CSテレ朝チャンネル特別版>『K-ドラマフェス2024 with Studio Dragon』を放送予定です。 (C)STUDIO DRAGON by CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED. (C)avex pictures Inc. バタバタするお正月に、ほっとひと息癒やされるのはいかがでしょうか♪ CS限定の舞台裏映像も放送されるようです。 これぞ永久保存版!! お見逃しなく。 文=林 美桜 編集=高橋千里
奥森皐月の喫茶礼賛
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カボチャのムースがピカイチ!喫茶店の未来を考える「カフェ トロワバグ」|「奥森皐月の喫茶礼賛」第10杯
先月、友達と名画座に行ってきた。期間限定で上映している作品がおもしろそうだと誘われ、私も興味があったので観ることに。同じ監督の作品が2本立てで楽しめて、大満足で映画館をあとにした。 2本分の感想が温まっている状態で、その街でずっと営業している喫茶店に行った。けっして広くないお店のカウンターであれこれ楽しく映画のことを話していると、店の奥にいた男女のお客さんの声が聞こえてきた。どうやらそのふたりも私たちと同じ映画を観ていたそうだ。 その街での思い出を、その街の喫茶店で話している客が同時にいて、これこそ喫茶店のいいところだよなと感じた出来事だった。 「3つの輪」を意味する店名とロゴマーク 今回は神保町駅から徒歩1分というアクセス抜群の場所にある「カフェ トロワバグ」を訪れた。 大きな看板と赤いテントが目印の建物の、地下へ続く階段を降りていく。トロワバグとはフランス語で「3つの輪」という意味だそう。輪が3つ連なっているロゴマークが特徴的だ。 店内に入るとまず目に入るのは、かわいらしいランプやお花で飾られたカウンター。お店全体はダークブラウンを基調としていて、照明も落ち着いている。大人の雰囲気をまとっていながらも、穏やかな時間が流れている空間だ。 昼過ぎではあったが、若い女性のグループからビジネスマンまで幅広い客層のお客さんがコーヒーを飲んでいた。独特なフォントの「トロワバグ」が刻まれたお冷やのグラスでテンションが上がる。カッコいいなあ。 横型の写真アルバムのような形のメニューが素敵。一つひとつ写真が載っていてわかりやすく、メニューも豊富だ。 コーヒーのバリエーションが多く、サンドウィッチ系の食事メニューや甘いものなど全部おいしそうで、どれにしようか悩む。喫茶店ではあまり見かけないような手の込んだスイーツも豊富で、すべてオリジナルで手作りしているそうだ。 いつかホールで食べ尽くしたい「カボチャのムース」 今回は創業から一番人気でロングセラーの「グラタントースト」と「カボチャのムース」と「トロワブレンド」をいただくことにした。結局、人気と書かれているものを頼みたくなってしまう。 グラタントーストにはサラダもついている。ありがたい。 ハムやゴーダチーズなどの具材が挟まれたトーストに、自家製のホワイトソースがたっぷり。ボリューミーだけれど、まろやかで優しい味わいなのでもりもり食べられる。 クロックムッシュを置いている喫茶店はたまにあるが、「グラタントースト」というメニューは案外見かけない。わかりやすい名前と誰もが虜になるおいしさで、50年近く愛されているのだという。 カボチャのムースがこれまたおいしい。おいしすぎる。カボチャそのものの甘さが活かされていて、シンプルながら完璧な味。なめらかな舌触りで、少し振りかけられているシナモンとの相性も抜群。添えられているクリームはかなり甘さ控えめで、ムースと食べると食感が少し変わる。 カボチャのムースがある喫茶店は多くないだろうが、トロワバグのものはピカイチだと思う。いつかお金持ちになったらホールで食べ尽くしたい。食べ終わるのが名残惜しかった。 ブレンドは苦味と酸味のバランスが絶妙で、食事にもケーキにも合う。 まろやかで甘みも感じられるので、コーヒーの強い苦みや酸味が苦手という人にも飲みやすいのではないかと思う。 喫茶店が50年も残り続けているのは「奇跡的」 カフェ トロワバグについて、店主の三輪さんにお話を伺った。 オープンしたのは1976年。お母様が初代のオーナーで、娘である三輪さんが2代目として今もお店を継いでいるそうだ。学生時代からお店で過ごし、お母様とともにお店に立たれている時代もあったとのこと。 地下のお店なのでどうしても閉塞感があり、当時はタバコも吸えたので男性のお客さんが多かったそうだ。しかし、禁煙になってからは女性客も増え、最近は昨今の喫茶店ブームで若いお客さんも多いという。 女性店主ということもあり、なるべく華やかでかわいらしさのあるお店作りを心がけているそう。たしかに、テーブルのお花や壁に飾られている絵は店内を明るくしている。 客層の変化に合わせて、メニューも少しずつ変わったとのことだ。パンメニューの中にある「小倉バタートースト」は女性に人気らしい。 若い女性のグループが食事とスイーツをいくつか注文し、シェアしながら食べていることもあるそうだ。これだけ豊富なメニューだと誰かと行ってあれこれ食べてみたくなるので、気持ちがよくわかった。 落ち着きのある魅力的な店内の内装は、松樹新平さんという建築家さんが手がけたもの。特徴的な柱やカウンター、板張りの床などは創業以来変わらず残り続けている。 喫茶店というものは都市開発やビルのオーナーの都合などで移転や閉店をしてしまうことが多い。そのため、50年近く残り続けているのは奇跡的だ。 松樹さんは今でもたまにトロワバグを訪れることがあるそうで、自分のデザインのお店が残り続けていることを喜ばしく思っているそうだ。店内のあちこちに目を凝らしてみると、歴史が感じられる。 店主とお客さん、お互いの「様子の違い」にも気づく これまでにも都内の喫茶店を取材して耳にしていたのだが、三輪さんいわく喫茶店の店主は“横のつながり”があるそうだ。お互いのお店を訪れたり、プライベートでも交流したり。 先日閉店してしまった神田の喫茶店「エース」さんとも親交があったそうで、エースの壁に吊されていたコーヒーメニューの札をもらったそう。トロワバグの店内にこっそりと置かれていた。温かみがあって素敵だ。 神保町にはかなり多くの喫茶店が密集している。ライバル同士でお客さんの取り合いになっているのではないかと思ってしまうが、実際は違うようだ。 たとえばすぐ近くにある「神田伯剌西爾(カンダブラジル)」は現在も喫煙可能なため、タバコを吸うお客さんが集まっている。また「さぼうる」はボリューミーな食事メニューがあるため、男性のお客さんも多い。 そしてトロワバグさんは女性客が多め。このように、時代の流れによってそれぞれの特色が出て、結果的に棲み分けができるようになったとのことだ。 街に根づいている喫茶店には、もちろん常連さんがいる。常連さんとのコミュニケーションについて、印象的なお話を聞いた。 たとえば三輪さんの疲れが溜まっていたり、あまり元気がなかったりするときに、常連さんは気づくのだという。それは雰囲気だけでなく、コーヒーの味などからも違いを感じるのだそう。きっと私にはわからない違いなのだろうが、長年通っているとそういった関係が構築されていくようだ。 反対に、お客さんの様子がいつもと違うときには三輪さんも気づく。「コーヒーを1杯飲むだけ」ではあるが、それが大切なルーティンでありコミュニケーションであるというのは喫茶店ならではだ。喫茶店文化そのもののよさを、そのお話から改めて感じられた。 2号店「トロワバグヴェール」を開いた理由 実は、トロワバグさんは今年の6月に2号店となる「トロワバグヴェール」をオープンしている。同じ神保町で、そちらはコーヒーとクレープのお店。 週末のトロワバグはお客さんがたくさん来店し、外の階段まで並ぶこともあるという。そこで、せっかく来てくれた人にゆっくりしてもらいたいという思いがあり、2号店をオープンしたそうだ。 また、現在のトロワバグのビルもだんだんと老朽化してきていて、この先ずっと同じ場所で営業するというのはなかなか難しいのが現実だ。 その時が来たらきっぱりとお店をたたむという考えもよぎったそうだが、喫茶店業界では70代以上のマスターが現役バリバリで活躍している。それを見て三輪さんも「身体が元気なうちはお店を続けよう」と決心したそうだ。 結果として、喫茶店の新しいかたちを取ることになった。元のお店を続けながら2号店を開く。 古きよき喫茶店は減っていく一方のなか、トロワバグがこの新しい道を提案したことによって守られる未来があるように思える。 三輪さんは喫茶店業界の先を見据えた営業をされていて、店主仲間ともそのようなお話をされているそうだ。私はただ喫茶店が好きで足を運んでいるひとりにすぎないが、心強く思えてなんだかとてもうれしい気持ちになった。 最終回を迎えても、喫茶店に通う日々は続く 時代の変化に伴いながら、街に根づいた喫茶店。神保町という街全体が、多くの人を受け入れてきたということがよくわかった。 喫茶店のこれからを考える三輪さんは、これからのリーダー的存在であろう。大切に守られてきたトロワバグからつながる「輪」を感じられた。神保町でゆっくりとしたい日には、一度は訪れていただきたい名店だ。 昨年12月に始まったこの連載だが、今月が最終回。私も寂しい気持ちでいっぱいなのだが、これからも喫茶店が好きなことには変わりない。 今までどおり喫茶店に日々通って、写真を撮って記録していく。いつかまたどこかで、みなさんに素晴らしいお店を紹介したい。そのときにはまた読んでね。ごちそうさまでした。 カフェ トロワバグ 平日:10時〜20時、土祝日:12時〜19時、日曜:定休 東京都千代田区神田神保町1-12-1 富田ビルB1F 神保町駅A5出口から徒歩1分 文・写真=奥森皐月 編集=高橋千里
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贅沢な自家製みつまめを味わう。成田に佇む“理想の喫茶店”「チルチル」|「奥森皐月の喫茶礼賛」第9杯
これまでに行った喫茶店とこれから行きたい喫茶店の場所に、マップアプリでピンを立てている。ピンに絵文字を割り振ることができるので、行った場所にはコーヒーカップ、行きたい場所にはホットケーキ。 都内で生活をしているため、東京の地図にはコーヒーカップの絵文字がびっしりと並んでいる。少しずつ縮小していくにつれ、全国に散り散りになったホットケーキのマークが見える。 いつか日本地図を全部コーヒーカップの絵文字で埋め尽くしたいなぁと、地図を眺めながらよく思う。 そのためには旅行をたくさんしてその先で喫茶店に行くか、喫茶店のために旅行するか、どちらかをしなければならない。どちらにせよ遠くまで行ったら喫茶店に立ち寄らないのはもったいないと思っている。 旅行気分で、成田の喫茶店「チルチル」へ 今回はこの連載が始まって以来一番都心から離れた場所に行ってきた。JR成田駅から徒歩で12分、成田山新勝寺総門のすぐそばのお店「チルチル」さんだ。 ずっと前から SNSや本で写真を見ていて、いつか行ってみたいと思っていた喫茶店。取材させていただけることになり、成田という土地自体初めて訪れた。 駅から成田山までの参道にはお土産屋さんや古い木造建築の商店などが建ち並んでおり、成田の名物である鰻(うなぎ)のお店も軒を連ねていた。 賑やかな道なので、体感としては思ったよりもすぐチルチルさんまで行けた。よく晴れた日で、きれいな街並みと青空が最高だった。旅行気分。 レンガでできた門に洋風のランプ、緑色のテントがとてもかわいらしい外観。 この日は店の外に猫ちゃんが4匹いた。地域猫に餌をあげてチルチルさんがお世話をしているそうで、人慣れしたかわいらしい猫たちがお出迎えしてくれた。 製造期間20日以上!とっても贅沢な手作りのみつまめ 店内に入り、思わず息を飲んだ。ゴージャスかつ落ち着きのある「理想の喫茶店」といってもいいような空間。 木目調の壁、レトロなシャンデリア、高級感のある椅子やソファ。天井が高いのも開放的でよい。装飾の施されたカーテンや壁のライトは、お城のような華やかさがある。 メニューは喫茶店らしさにこだわっているようで、コーヒー・紅茶・ソフトドリンク・ケーキ・トーストとシンプルなラインナップ。 レモンジュースやレモンスカッシュは、レモンをそのまま絞ったものを提供しているそう。写真映えするのでクリームソーダも若い人に人気なようだ。 ただ、チルチルのイチオシ看板メニューは、手作りのみつまめだという。強い日差しを浴びて汗をかいてしまっていたので、アイスコーヒーとみつまめを注文した。 店内の椅子やソファに使われている素敵な布は「金華山織」という高級な代物だそう。しかし布の部分は消耗してしまうため、定期的にすべて張り替えているとのこと。お値段を想像すると恐怖を覚えるが、ふかふかで素敵な椅子に座ると、家で過ごすのとは違う特別感を味わえる。 アイスコーヒーはすっきりしていておいしい。ごくごくと飲んでしまえる。ちなみにシロップはお店でグラニュー糖から作っているものだそう。甘いコーヒーが好きな人にはぜひたっぷり使ってみてもらいたい。 そして、お店イチオシのみつまめ。「手作り」とのことだが、なんと寒天は房州の天草を使った自家製。さらに「小豆」「金時」「白花豆」「紫豆」の4種類の豆は、水で戻すところから炊き上げまですべてをしているそうだ。完全無添加で、素材の味が存分に活かされたとにかく贅沢なみつまめ。 粉寒天や棒寒天で作るのとは違って、天草から作る寒天は磯の香りがほのかにする。また食感もよい。まず寒天そのものがおいしいのだ。 また、お豆は何度も何度も炊いてあり、とても柔らかい。甘さもほどよく、豆だけでもお茶碗一杯食べたくなるようなおいしさ。花豆はそれぞれ最後の仕上げの味つけが違うそうで、紫花豆は黒砂糖、白花豆は塩味。すべて食べきったあとに白花豆を食べると異なる味わいが楽しめるので、おすすめだそう。 このみつまめすべてを作るのには20日以上かかるとのことだ。完全無添加でこれほど時間と手間がかかっているみつまめは、ほかではないだろう。一度は食べていただきたい。 1972年に創業。店名は童話『青い鳥』から お店について、店主のお母様にお話を伺った。 「チルチル」は1972年11月に成田でオープン。当初は違う場所で、ボウリング場などが入っているビルの中で営業していた。 夜遅くもお客さんが来ることから夜中の0時までお店を開けていたため、毎日忙しく、寝る暇もなかったらしい。当時は20歳で、若いうちから相当がんばっていらしたそう。 2年後の1974年12月25日から現在の成田山の目の前の場所で営業がスタート。もとは酒屋さんが使っていた建物だそうで、1階はトラックが停まり、シャッターが閉まるような造りだったらしい。そこに内装を施して喫茶店にしたため、天井が高いようだ。 店名の「チルチル」は童話の『青い鳥』から。繰り返しの言葉は覚えやすいため、店名に選んだらしい。かわいらしいしキャッチーだし、とてもいい名前だと思う。 「チルチル」の文字はデザイナーさんに頼んだそうだが、お店の顔ともいえる男女のイラストは童話をモチーフにお母様が描いたもの。画用紙に描いてみた絵をそのまま50年間使い続けているとのことだ。今もメニューやマッチに使われている。 記憶にも残る素晴らしいデザインではないだろうか。おいしいみつまめも、トレードマークの看板イラストも作れる素敵な方だ。 「お不動さまに罰当たりなことはできない」 成田山のすぐそばで喫茶店を営業するからには、お不動さまに罰当たりなことはできない、というのがチルチルのポリシーらしい。 お参りをしに来た人がゆったりとくつろげて、「来てよかったな」と思ってもらえるようにやってきたそう。お参りをしてからチルチルに立ち寄る、というルーティンになっているお客さんも多いらしい。 店内は何度か改装をしているが、全体の造りや家具は50年間ほとんど変わりがないとのこと。椅子やテーブルはお店に合わせて職人さんに作ってもらったもので、細やかなこだわりを感じられる。 お店の奥のカウンターとキッチンの棚もとても素敵だ。これも職人さんがお店に合わせて作ったもの。喫茶店の特注の家具は、たまらない魅力がある。 随所にこだわりが光る「チルチル」は、50年間大切に守られてきた成田の名所のひとつであろう。 素通りするわけにはいかないので、成田山のお参りももちろんしてきた。広い境内は静かで、パワーをもらえるような力強さもあった。 空港に行く用事があっても「成田」まで行こうと思うことがなかったため、今回はとてもいい機会であった。成田山に行き、帰りに「チルチル」に寄るコースで小旅行をしてみてはいかがだろうか。 次回もまたどこかの喫茶店で。ごちそうさまでした。 チルチル 9時30分〜16時30分 不定休 千葉県成田市本町333 JR成田駅から徒歩12分、京成成田駅から徒歩13分 文・写真=奥森皐月 編集=高橋千里
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40年前から“映え”ていたクリームソーダにときめく。夏の阿佐ヶ谷は「喫茶 gion」で|「奥森皐月の喫茶礼賛」第8杯
「奥森皐月の喫茶礼賛」 喫茶店巡りが趣味の奥森皐月。今気になるお店を訪れ、その魅力と味わいをレポート 暑さが一段と厳しくなってきたので、大好きな散歩も日中はほどほどにしている。 昼間に家を出ると、アスファルトの照り返しのせいかフライパンで焼かれているようだ。寒さより暑さのほうが苦手な私は、夏の大半は溶けながらだらりと過ごしてしまう。 しかしながら、夏の喫茶店は大好き。汗をかきながらやっとお店に着いて、冷房の効いた席に座るときの幸福感は何にも変えられない。冷たいドリンクを飲んで少しずつ汗が引いていくあの感覚は、夏で一番好きな瞬間だ。 阿佐ヶ谷のメルヘンチックな喫茶店 今回訪れたのはJR阿佐ケ谷駅から徒歩1分、お店が建ち並ぶ駅前でひときわ目立つ緑に囲まれたレトロな外装の喫茶店。阿佐ヶ谷の街で40年近く愛されている「喫茶 gion(ぎおん)」さん。 実はこのお店は、私のお気に入りトップ5に入る大好きな喫茶店。中学生のころに初めて行ってから今日まで定期的に訪れている。取材させていただけてとてもうれしい。 店内はかわいいランプやお花や絵で装飾されていて、青と緑の光が特徴的。いわゆる「喫茶店」でここまでメルヘンチックな雰囲気のお店はかなり珍しいと思う。 どこの席も素敵だが、やはり一番特徴的なのはブランコの席。こちらに座らせていただき、人気メニューのナポリタンとソーダ水のフロートトッピングを注文した。 ブランコ席は窓に面していて、この部分だけ壁がピンク色。店内中央の青色を基調とした空気感とはまた違う、かわいらしさと落ち着きのある空間だ。 店先の木が窓から見える。今の季節は緑がとてもきれいだ。 焦げ目がおいしい!一風変わったナポリタン ここのナポリタンは、一般的な喫茶店のナポリタンとは異なる。大きなお皿にナポリタン、キャベツサラダ、そしてたまごサラダが乗っている。店主さんいわく、このたまごサラダはサンドイッチに挟むためのものだそう。それを一緒に提供しているのだ。 まずはナポリタンをいただく。ハムが1枚そのまま乗っている見た目がいい。このナポリタンは色が濃いのだが、これは少し焦げるくらいまでしっかりと炒めているから。麺にソースがしっかりとついていて、香ばしさがたまらなくおいしい。 次にキャベツと一緒に食べてみると、トマトのソースが絡んで、シャキシャキとした食感が加わり、これもまたいい。 最後にたまごサラダと食べると、まろやかさとナポリタンの風味が最高に合う。黒胡椒も効いていて、無限に食べられる味だ。ボリュームたっぷりだがあっという間に完食した。 トーストもグラタンもお餅も少し焦げ目があるくらいが一番おいしいので、スパゲッティもよく炒めてみたところおいしくできたから今のスタイルになったそうだ。 ただ、通常のナポリタンなら温める程度でいいところを、しっかり焼くとなると手間と時間がかかる。炒めてくれる店員さんに感謝だ。ごく稀に、焦げていると苦情を入れる人がいるそう。そこがおいしいのになあ。 トロピカルグラスで飲む、おもちゃみたいなクリームソーダ これまた名物のクリームソーダ。 正確にいうと、gionで注文する場合は「ソーダ水」を緑と青の2種類から選び、フロートトッピングにする。すると、丸く大きなグラスにたっぷりのクリームソーダを飲むことができる。このグラスは「トロピカルグラス」というそうだ。 gionさんのまねをしてこのグラスを使い始めたお店はあるが、このかわいいフォルムはオープン当初から変わらないとのこと。「インスタ映え」という言葉が生まれる遙か前からこの「映え」な見た目のクリームソーダがあったのは、なんだか趣深い。 深く透き通る青と炭酸のしゅわしゅわ、贅沢にふたつも乗った丸いバニラアイス。どこを切り取ってもときめくかわいさだ。 見た目だけでなく、味もおいしい。シロップの風味と炭酸に、バニラ感強めのアイスが合う。「映え」ではなくなってくる、アイスが溶けたときのクリームソーダも好きだ。白と青が混じった色は、ファンシーでおもちゃみたい。 内装から制服までこだわった“かわいい”世界観 お店について、店主の関口さんにお話を伺った。 学生時代に本が好きだった関口さんは、本をゆっくりと読めるような落ち着いた場所を作りたかったそうで、20代はとにかく必死で働いてお店を開く資金を貯めていたとのこと。 1日に16時間ほど働き、寝るためだけの狭い部屋で暮らし、食べ物以外には何もお金を使わず生活していたとのことだ。 そしてお金が貯まったころから1年かけて東京都内の喫茶店を300店舗ほど回り、どんなお店にしようかと参考にしながら計画を練ったそう。 お店を開くにあたって、設計から何からすべてを関口さんが考えたそうで、1cm単位で理想の喫茶店になるように作って、できたのがこの喫茶 gion。 大理石の床、板張りの床、絨毯の床、どれも捨てがたいと思い、最終的には場所ごとに変えて3種類の床になったらしい。贅沢な全部乗せだ。ブランコはかつて吉祥寺にあったジャズ喫茶から得たエッセンス。 オープン時には資金面でそろえきれなかった雑貨やインテリアも少しずつ集めて、今のお店の独特でうっとりするような空間になっていったようだ。 白いブラウスに黒のリボン、黒のロングスカートというgionの制服も関口さんプロデュース。手書きのメニューもキュートで魅力的だ。 ご自身の好みがはっきりとあり、それを実現できているからこそ、調和した世界観になっているのだとわかった。お店のマークも、関口さんの思い描く素敵な女性のイラストだという。ナプキンまでかわいい。 「帰りにgionに寄れる」という楽しみ 喫茶gionのもうひとつの魅力は、午前9時から24時(金・土は25時)まで営業しているところ。モーニングが楽しめるのはもちろん、夜も遅くまで開いている。阿佐ヶ谷には喫茶店が多くあるが、たいていは夕方〜19時くらいには閉店してしまう。 私は阿佐ヶ谷でお笑いや音楽のライブに行ったり、演劇を観に行ったりする機会が多い。終わるのは21時〜22時が多く、ちょうどお腹が空いている。ほかの街なら適当なチェーン店に入るのだが、阿佐ヶ谷に限っては「帰りにgionに寄れる」という楽しみがある。 ナポリタン以外にもピザやワッフルなど、小腹を満たせるメニューがあってありがたい。夜のgionは店先のネオンが光り、店内の青い灯りもより幻想的になる。遅くまで営業するのはとても大変だと思うが、これからも阿佐ヶ谷に行ったときは必ず寄りたい。 夏の阿佐ヶ谷の思い出に、gion 関口さんの理想を詰め込んだメルヘンチックな喫茶店は、若い人から地元民まで幅広く愛される名店となった。 阿佐ヶ谷の街では8月には七夕まつりも開催される。駅前のアーケードにさまざまな七夕飾りが出される、とても楽しいお祭りだ。夏の阿佐ヶ谷を楽しみながら、喫茶gionでひと休みしてみてはいかがだろうか。 次回もまたどこかの喫茶店で。ごちそうさまでした。 喫茶 gion 月火水木日:9時〜24時、金土:9時〜25時 東京都杉並区阿佐谷北1-3-3 川染ビル1F 阿佐ケ谷駅から徒歩1分、南阿佐ケ谷駅から徒歩8分 文・写真=奥森皐月 編集=高橋千里
AKB48 Team 8 私服グラビア
大好評企画が復活!AKB48 Team 8メンバーひとりずつの撮り下ろし連載
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生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」
仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載(文=山本大樹)
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「才能」という呪縛を解く ミューズの真髄
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 『ブルー・ピリオド』をはじめ美大受験モノマンガがブームを呼んでいる昨今。特に芸術というモチーフは、その核となる「才能とは何か?」を掘り下げることで、主人公の自意識をめぐるドラマになりやすい。 文野紋『ミューズの真髄』も、一度は美大受験に失敗した会社員の主人公・瀬野美優が、一念発起して再び美大受験を志し、自分を肯定するための道筋を探るというストーリーだ。しかし、よくある美大受験マンガかと思ってページをめくっていくと、「才能」の扱い方に本作の特筆すべき点を見出すことができる。 「美大に落ちたあの日。“特別な私”は、死んでしまったから。仕方がないのです。“凡人”に成り下がった私は、母の決めた職場で、母の決めた服を着て、母が自慢できるような人と母が言う“幸せ”を探すんです。でも、だって、仕方ない、を繰り返しながら。」 (『ミューズの真髄』あらすじより) 主人公の美優は「どこにでもいる平凡な私」から、自分で自分を肯定するために、少しずつ自分の意志を周囲に示すようになる。芸術の道に進むことに反対する母親のもとを飛び出し、自尊心を傷つける相手にはNOを突きつけ、自分の進むべき道を自ら選び取っていく。しかし、心の奥深くに根づいた自己否定の考えはそう簡単に変えることはできない。自尊心を取り戻す過程で立ち塞がるのが「才能」の壁だ。 24歳という年齢で美術予備校に飛び込んだ美優は、最初の作品講評で57人中47位と悲惨な成績に終わる。自分よりも年下の生徒たちが才能を見出されていくなかで、自分の才能を見つけることができない美優。その後挫折を繰り返しながら、予備校の講師である月岡との出会いによって少しずつ自分を肯定し、前向きに進んでいく姿には胸が熱くなる。 「私は地獄の住人だ あの人みたいにあの子みたいに漫画みたいに 才能もないし美術で生きる資格はないのかもしれない バカで中途半端で恋愛脳で人の影響ばかり受けてごめんなさい でももがいてみてもいいですか? 執着してみていいですか?」 冒頭で述べたとおり、本作の「才能」への向き合い方を端的に示しているのがこのセリフである。才能がなくても好きなことに執着する──功利主義の社会では蔑まれがちなこのスタンスこそが、他者の否定的な視線から自分を守り、自分の人生を肯定していくためには重要だ。才能に執着するのではなく、「絵」という自分の愛する対象に執着する。その執着が自分を愛することにつながるのだ。それは「好きなことを続けられるのも才能」のような安い言葉では語り切れるものではない。 才能と自意識の話に収斂していく美大受験マンガとは別の視座を、美優の生き方は示してくれる。そして、美優にとっての「美術」と同じように、執着できる対象を見つけることは、「才能」の物語よりも私たちにとっては遥かに重要なことのはずである。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
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勝ち負けから離れて生きるためには? 真造圭伍『ひらやすみ』
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 30代を迎えて、漠然とした焦りを感じることが増えた。20代のころに感じていた将来への不安からくる焦りとはまた種類の違う、現実が見えてきたからこその焦りだ。 周囲の同世代が着々と実績を残していくなか、自分だけが取り残されているような感覚。いつまで経っても増えない収入、一年後の見通しすらも立たない生活……焦りの原因を数え始めたらキリがない。 真造圭伍のマンガ『ひらやすみ』は、30歳のフリーター・ヒロト君と従姉妹のなつみちゃんの平屋での同居生活を描いたモラトリアム・コメディだ。 定職に就かずに30歳を迎えてもけっして焦らず、のんびりと日々の生活を愛でながら過ごすヒロト君の生き方は、素直にうらやましく思う。身の回りの風景の些細な変化や季節の移り変わりを感じながら、家族や友達を思いやり、目の前のイベントに全力を注ぐ。どうしても「こんなふうに生きられたら」と考えてしまうくらい、魅力的な人物だ。 そんなヒロト君も、かつては芸能事務所に所属し、俳優として夢を追いかけていた時期もあった。高校時代には親友のヒデキと映画を撮った経験もあり、純粋に芝居を楽しんでいたヒロト君。芸能事務所のマネージャーから「なんで俳優になろうと思ったの?」と聞かれ、「あ、オレは楽しかったからです!演技するのが…」と答える。 「でも、これからは楽しいだけじゃなくなるよ──」 「売れたら勝ち、それ以外は負けって世界だからね」 数年後、役者を辞めたヒロト君は、漫画家を目指す従姉妹のなつみちゃんの姿を見て、かつて自分がマネージャーから言われた言葉を思い出す。純粋に楽しんでいたはずのことも、社会では勝ち負け──経済的な成功/失敗に回収されていく。出版社にマンガを持ち込んだなつみちゃんも、もしデビューすれば商業誌での戦いを強いられていくだろう。 運よく好きなことや向いていることを仕事にできたとしても、資本主義のルールの中で暮らしている以上、競争から距離を置くのはなかなか難しい。結果を出せない人のところにいつまでも仕事が回ってくることはないし、自分の代わりはいくらでもいる。嫌でも他者との勝負の土俵に立たされることになるし、純粋に「好き」だったころの気持ちとはどんどんかけ離れていく。 「アイツ昔から不器用でのんびり屋で勝ち負けとか嫌いだったじゃん? 業界でそういうのいっぱい経験しちまったんだろーな。」 ヒロト君の親友・ヒデキは、ヒロトが俳優を辞めた理由をそう推察する。私が身を置いている出版業界でも、純粋に本や雑誌が好きでこの業界を志した人が挫折して去っていくのをたくさん見てきた。でも、彼らが負けたとは思わないし、なんとか端っこで食っているだけの私が勝っているとももちろん思わない。勝ち/負けという物差しで物事を見るとき、こぼれ落ちるものはあまりに多い。むしろ、好きだったはずのことが本当に嫌いにならないうちに、別の仕事に就いたほうが幸せだと思う。 私も勝ち負けが本当に苦手だ。優秀な同業者も目の前でたくさん見てきて、同じ土俵に上がったらまず自分では勝負にならないということも30歳を過ぎてようやくわかった。それでも続けているのは、勝ち負けを抜きにして、いつか純粋にこの仕事が好きになれる日が来るかもしれないと思っているからだ。もちろん、仕事が嫌いになる前に逃げる準備ももうできている。 暗い話になってしまったが、『ひらやすみ』のヒロト君の生き方は、競争から逃れられない自分にとって、大きな救いになっている。なつみちゃんから「暇人」と罵られ、見知らぬ人からも「みんながみんなアナタみたいに生きられると思わないでよ」と言われるくらいののんびり屋でも、ヒロト君の周囲には笑顔が絶えない。自分ひとりの意志で勝ち負けから逃れられないのであれば、せめてまわりにいる人だけでも大切にしていきたい。そうやって自分の生活圏に大切なものをちゃんと作っておけば、いつでも競争から降りることができる。『ひらやすみ』は、そんな希望を見せてくれる作品だった。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
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克明に記録されたコロナ禍の息苦しさ──冬野梅子『まじめな会社員』
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 5月に『コミックDAYS』での連載が完結した冬野梅子『まじめな会社員』。30歳の契約社員・菊池あみ子を取り巻く苦しい現実、コロナ禍での転職、親の介護といった環境の変化をシビアに描いた作品だ。周囲のキラキラした友人たちとの比較、自意識との格闘でもがく姿がSNSで話題を呼び、あみ子が大きな選択を迫られる最終回は多くの反響を集めた。 「コロナ禍における、新種の孤独と人生のたのしみを、「普通の人でいいのに!」で大論争を巻き起こした新人・冬野梅子が描き切る!」と公式の作品紹介にもあるように、本作は2020年代の社会情勢を忠実に反映している。疫病はさまざまな局面で社会階層の分断を生み出したが、特に本作で描かれているのは「働き方」と「人間関係」の変化と分断である。『まじめな会社員』は、疫禍による階層の分断を克明に描いた作品として貴重なサンプルになるはずだ。 2022年5月末現在、コロナがニュースの時間のほとんどを占めていた時期に比べると、世間の空気は少し緩やかになりつつある。飲食店は普通にアルコールを提供しているし、休日に友達と遊んだり、ライブやコンサートに出かけることを咎められるような空気も薄まりつつある。しかし、過去の緊急事態宣言下の生活で感じた孤独や息苦しさはそう簡単に忘れられるものではないだろう。 たとえば、スマホアプリ開発会社の事務職として働くあみ子は、コロナ禍の初期には在宅勤務が許されていなかった。 「持病なしで子供なしだとリモートさせてもらえないの?」「私って…お金なくて旅行も行けないのに通勤はさせられてるのか」(ともに2巻)とリモートワークが許される人々との格差を嘆く場面も描かれている。 そして、あみ子の部署でもようやくリモートワークが推奨されるようになると、それまで事務職として上司や営業部のサポートを押しつけられていた今までを振り返り、飲食店やライブハウスなどの苦境に思いを巡らせつつも、つい「こんな生活が続けばいいのに…」とこぼしてしまう。 自由な働き方に注目が集まる一方で、いわゆるエッセンシャルワーカーはもちろん、社内での立場や家族の有無によって出勤を強いられるケースも多かった。仕事上における自身の立場と感染リスクを常に天秤にかけながら働く生活に、想像以上のストレスを感じた人も多かったはずだ。 「抱き合いたい「誰か」がいないどころか 休日に誰からも連絡がないなんていつものこと おうち時間ならずっとやってる」(2巻) コロナによる分断は、働き方の面だけではなく人間関係にも侵食してくる。コロナ禍の初期には「自粛中でも例外的に会える相手」の線引きは、限りなく曖昧だった。独身・ひとり暮らしのあみ子は誰とも会わずに自粛生活を送っているが、インスタのストーリーで友人たちがどこかで会っているのを見てモヤモヤした気持ちを抱える。 「コロナだから人に会えないって思ってたけど 私以外のみんなは普通に会ってたりして」「綾ちゃんだって同棲してるし ていうか世の中のカップルも馬鹿正直に自粛とかしてるわけないし」(2巻) 相互監視の状況に陥った社会では、当事者同士の関係性よりも「(世間一般的に)会うことが認められる関係性かどうか」のほうが判断基準になる。家族やカップルは認められても、それ以外の関係性だと、とたんに怪訝な目を向けられる。人間同士の個別具体的な関係性を「世間」が承認するというのは極めておぞましいことだ。「家族」や「恋人」に対する無条件の信頼は、家父長制的な価値観にも密接に結びついている。 またいつ緊急事態宣言が出されるかわからないし、そうなれば再び社会は相互監視の状況に陥るだろう。感染者数も落ち着いてきた今のタイミングだからこそ本作を通じて、当時は語るのが憚られた個人的な息苦しさや階層の分断に改めて目を向けておきたい。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
L'art des mots~言葉のアート~
企画展情報から、オリジナルコラム、鑑賞記まで……アートに関するよしなしごとを扱う「L’art des mots~言葉のアート~」
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【News】西洋絵画の500年の歴史を彩った巨匠たちの傑作が、一挙来日!『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が大阪市立美術館・国立新美術館にて開催!
先史時代から現代まで5000年以上にわたる世界各地の考古遺物・美術品150万点余りを有しているメトロポリタン美術館。 同館を構成する17部門のうち、ヨーロッパ絵画部門に属する約2500点の所蔵品から、選りすぐられた珠玉の名画65 点(うち46 点は日本初公開)を展覧する『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が、11月に大阪、来年2月には東京で開催されます。 この展覧会は、フラ・アンジェリコ、ラファエロ、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコから、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、レンブラント、 フェルメール、ルーベンス、ベラスケス、プッサン、ヴァトー、ブーシェ、そしてゴヤ、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌに至るまでを、時代順に3章で構成。 第Ⅰ章「信仰とルネサンス」では、イタリアのフィレンツェで15世紀初頭に花開き、16世紀にかけてヨーロッパ各地で隆盛したルネサンス文化を代表する画家たちの名画、フラ・アンジェリコ《キリストの磔刑》、ディーリック・バウツ《聖母子》、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》など、計17点を観ることが出来ます。 第Ⅱ章「絶対主義と啓蒙主義の時代」では、絶対主義体制がヨーロッパ各国で強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての美術を、各国の巨匠たちの名画30点により紹介。カラヴァッジョ《音楽家たち》、ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》、レンブラント・ファン・レイン《フローラ》などを御覧頂けます。 第Ⅲ章「革命と人々のための芸術」では、レアリスム(写実主義)から印象派へ……市民社会の発展を背景にして、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家たちの名画、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む》、オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》、フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》、さらには日本初公開となるクロード・モネ《睡蓮》など、計18点が展覧されます。 15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派まで……西洋絵画の500 年の歴史を彩った巨匠たちの傑作を是非ご覧下さい! 『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 ■大阪展 会期:2021年11月13日(土)~ 2022年1月16日(日) 会場:大阪市立美術館(〒543-0063大阪市天王寺区茶臼山町1-82) 主催:大阪市立美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪 後援:公益財団法人 大阪観光局、米国大使館 開館時間:9:30ー17:00 ※入館は閉館の30分前まで 休館日:月曜日( ただし、1月10日(月・祝)は開館)、年末年始(2021年12月30日(木)~2022年1月3日(月)) 問い合わせ:TEL:06-4301-7285(大阪市総合コールセンターなにわコール) ■東京展 会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月) 会場:国立新美術館 企画展示室1E(〒106-8558東京都港区六本木 7-22-2) 主催:国立新美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社 後援:米国大使館 開館時間:10:00ー18:00( 毎週金・土曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで 休館日:火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館) 問い合わせ:TEL:050-5541-8600( ハローダイヤル) text by Suzuki Sachihiro
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【News】約3,000点の新作を展示。国立新美術館にて「第8回日展」が開催!
10月29日(金)から11月21日まで、国立新美術館にて「第8回日展」が開催されます。日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門に渡って、秋の日展のために制作された現代作家の新作、約3,000点が一堂に会します。 明治40年の第1回文展より数えて、今年114年を迎える日本最大級の公募展である日展は、歴史的にも、東山魁夷、藤島武二、朝倉文夫、板谷波山など、多くの著名な作家を生み出してきました。 展覧会名:第8回 日本美術展覧会 会 場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2) 会 期:2021年10月29日(金)~11月21日(日)※休館日:火曜日 観覧時間:午前10時~午後6時(入場は午後5時30分まで) 主 催:公益社団法人日展 後 援:文化庁/東京都 入場料・チケットや最新の開催情報は「日展ウェブサイト」をご確認下さい (https://nitten.or.jp/) 展示される作品は作家の今を映す鏡ともいえ、作品から世相や背景など多くのことを読み取る楽しさもあります。 あらゆるジャンルをいっぺんに楽しめる機会、新たな日本の美術との出会いに胸躍ること必至です! 東京展の後は、京都、名古屋、大阪、安曇野、金沢の5か所を巡回(予定)します。 日本画 会場風景 2020年 洋画 会場風景 2020年 彫刻 会場風景 2020年 工芸美術 会場風景 2020年 書 会場風景 2020年 text by Suzuki Sachihiro
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【News】和田誠の全貌に迫る『和田誠展』が開催!
イラストレーター、グラフィックデザイナー和田誠わだまこと(1932-2019)の仕事の全貌に迫る展覧会『和田誠展』が、今秋10月9日から東京オペラシティアートギャラリーにて開催される。 和田誠 photo: YOSHIDA Hiroko ©Wada Makoto 和田誠の輪郭をとらえる上で欠くことのできない約30のトピックスを軸に、およそ2,800点の作品や資料を紹介。様々に創作活動を行った和田誠は、いずれのジャンルでも一級の仕事を残し、高い評価を得ている。 展示室では『週刊文春』の表紙の仕事はもちろん、手掛けた映画の脚本や絵コンテの展示、CMや子ども向け番組のアニメーション上映も予定。 本展覧会では和田誠の多彩な作品に、幼少期に描いたスケッチなども交え、その創作の源流をひも解く。 ▽和田誠の仕事、総数約2,800点を展覧。書籍と原画だけで約800点。週刊文春の表紙は2000号までを一気に展示 ▽学生時代に制作したポスターから初期のアニメーション上映など、貴重なオリジナル作品の数々を紹介 ▽似顔絵、絵本、映画監督、ジャケット、装丁……など、約30のトピックスで和田誠の全仕事を紹介 会場は【logirl】『Musée du ももクロ』でも何度も訪れている、初台にある「東京オペラシティアートギャラリー」。 この秋注目の展覧会!あなたの芸術の秋を「和田誠の世界」で彩ろう。 【開催概要】展覧会名:和田誠展( http://wadamakototen.jp/ ) 会期:2021年10月9日[土] - 12月19日[日] *72日間 会場:東京オペラシティ アートギャラリー 開館時間:11:00-19:00(入場は18:30まで) 休館日:月曜日 入場料:一般1,200[1,000]円/大・高生800[600]円/中学生以下無料 主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団 協賛:日本生命保険相互会社 特別協力:和田誠事務所、多摩美術大学、多摩美術大学アートアーカイヴセンター 企画協力:ブルーシープ、888 books お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル) *同時開催「収蔵品展072難波田史男 線と色彩」「project N 84 山下紘加」の入場料を含みます。 *[ ]内は各種割引料金。障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。割引の併用および入場料の払い戻しはできません。 *新型コロナウイルス感染症対策およびご来館の際の注意事項は当館ウェブサイトを( https://www.operacity.jp/ag/ )ご確認ください。 ▽和田誠(1932-2019) 1936年大阪に生まれる。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)を卒業後、広告制作会社ライトパブリシティに入社。 1968年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。 たばこ「ハイライト」のデザインや「週刊文春」の表紙イラストレーション、谷川俊太郎との絵本や星新一、丸谷才一など数多くの作家の挿絵や装丁などで知られる。 報知映画賞新人賞、ブルーリボン賞、文藝春秋漫画賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞、講談社エッセイ賞など、各分野で数多く受賞している。 仕事場の作業机 photo: HASHIMOTO ©Wada Makoto 『週刊文春』表紙 2017 ©Wada Makoto 『グレート・ギャツビー』(訳・村上春樹)装丁 2006 中央公論新社 ©Wada Makoto 『マザー・グース 1』(訳・谷川俊太郎)表紙 1984 講談社 ©Wada Makoto text by Suzuki Sachihiro
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「誰も観たことのないバラエティを」。『ももクロChan』10周年記念スタッフ座談会
ももいろクローバーZの初冠番組『ももクロChan』が昨年10周年を迎えた。 この番組が女性アイドルグループの冠番組として異例の長寿番組となったのは、ただのアイドル番組ではなく、"バラエティ番組”として破格におもしろいからだ。 ももクロのホームと言っても過言ではないバラエティ番組『ももクロChan』。 彼女たちが10代半ばのころから、その成長を見続けてきたプロデューサーの浅野祟氏、吉田学氏、演出の佐々木敦規氏の3人が集まり、番組への思い、そしてももクロの魅力を存分に語ってくれた。 浅野 崇(あさの・たかし)1970年、千葉県出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『ももクロChan』 『ももクロちゃんと!』 『Musee du ももクロ』 『川上アキラの人のふんどしでひとりふんどし』、など 吉田 学(よしだ・まなぶ)1978年、東京都出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『ももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~』 『ももクロちゃんと!』 『川上アキラの人のふんどしでひとりふんどし』 『Musée du ももクロ』、など 佐々木 敦規(ささき・あつのり)1967年、東京都出身。ディレクター。 有限会社フィルムデザインワークス取締役 「ももクロはアベンジャーズ」。そのずば抜けたバラエティ力の秘密 ──最近、ももクロのメンバーたちが、個々でバラエティ番組に出演する機会が増えていますね。 浅野 ようやくメンバー一人ひとりのバラエティ番組での強さに、各局のディレクターやプロデューサーが気づいてくれたのかもしれないですね。間髪入れずに的確なコメントやリアクションをしてて、さすがだなと思って観てます。 佐々木 彼女たちはソロでもアリーナ公演を完売させるアーティストですけど、バラエティタレントとしてもその実力は突き抜けてますから。 浅野 あれだけ大きなライブ会場で、ひとりしゃべりしても飽きがこないのは、すごいことだなと改めて思いますよ。 佐々木 そして、4人そろったときの爆発力がある。それはまず、バラエティの天才・玉井詩織がいるからで。器用さで言わせたら、彼女はめちゃくちゃすごい。百田夏菜子、高城れに、佐々木彩夏というボケ3人を、転がすのが本当にうまくて助かってます。 昔は百田の天然が炸裂して、高城れにがボケにいくスタイルだったんですが、いつからか佐々木がボケられるようになって、ももクロは最強になったと思ってます。 キラキラしたぶりっ子アイドル路線をやりたがっていたあーりんが、ボケに回った。それどころか、今ではそのポジションに味をしめてる。昔はコマネチすらやらなかった子なのに、ビックリですよ(笑)。 (写真:佐々木ディレクター) ──そういうメンバーの変化や成長を見られるのも、10年以上続く長寿番組だからこそですね。 吉田 昔からライブの舞台裏でもずっとカメラを回させてくれたおかげで、彼女たちの成長を記録できました。結果的に、すごくよかったですね。 ──ずっとももクロを追いかけてきたファンは思い出を振り返れるし、これからももクロを知る人たちも簡単に過去にアクセスできる。「テレ朝動画」で観られるのも貴重なアーカイブだと思います。 佐々木 『ももクロChan』は、早見あかりの脱退なども撮っていて、楽しいときもつらいときも悲しいときも、ずっと追っかけてます。こんな大事な仕事は、途中でやめるわけにはいかないですよ。彼女たちの成長ドキュメンタリーというか、ロードムービーになっていますから。 唯一無二のコンテンツになってしまったので、ももクロが活動する限りは『ももクロChan』も続けたいですね。 吉田 これからも続けるためには、若い世代にもアピールしないといけない。10代以下の子たちにも「なんかおもしろいお姉ちゃんたち」と認知してもらえるように、我々もがんばらないと。 (写真:吉田プロデューサー) 浅野 彼女たちはまだまだ伸びしろありますからね。個々でバラエティ番組に出たり、演技のお仕事をしたり、ソロコンをやったりして、さらにレベルアップしていく。そんな4人が『ももクロChan』でそろったとき、相乗効果でますますおもしろくなるような番組をこれからも作っていきたいです。 佐々木 4人は“アベンジャーズ"っぽいなと最近思うんだよね。 浅野 わかります。 ──アベンジャーズ! 個人的に、ももクロって令和のSMAPや嵐といったポジションすら狙えるのではないか、と妄想したりするのですが。 浅野 あそこまで行くのはとんでもなく難しいと思いますが……。でも佐々木さんの言うとおりで、最近4人全員集まったときに、スペシャルな瞬間がたまにあるんですよ。そういう大物の華みたいな部分が少しずつ見えてきたというか。 佐々木 そうなんだよねぇ。ももクロの4人はやたらと仲がいいし、本人たちも30歳、40歳、50歳になっても続けていくつもりなので、さらに化けていく彼女たちを撮っていかなくちゃいけないですね。 早見あかりが抜けて、自立したももクロ (写真:浅野プロデューサー) ──先ほど少し早見あかりさん脱退のお話が出ましたけど、やはり印象深いですか。 吉田 そうですね。そのとき僕はまだ『ももクロChan』に関わってなかったんですが、自分の局の番組、しかも動画配信でアイドルの脱退の告白を撮ったと聞いて驚きました。 当時はAKB48がアイドル界を席巻していて、映画『DOCUMENTARY of AKB48』などでアイドルの裏側を見せ始めた時期だったんです。とはいえ、脱退の意志をメンバーに伝えるシーンを撮らせてくれるアイドルは画期的でした。 佐々木 ももクロは最初からリミッターがほとんどないグループだからね。チーフマネージャーの川上アキラさんが攻めた人じゃないですか。だって、自分のワゴン車に駆け出しのアイドル乗っけて、全国のヤマダ電機をドサ回りするなんて、普通考えられないでしょう(笑)。夜の駐車場で車のヘッドライトを背に受けながらパフォーマンスしてたら、そりゃリミッターも外れますよ。 (写真:『ももクロChan』#11) ──アイドルの裏側を見せる番組のコンセプトは、当初からあったんですか? 佐々木 そうですね、ある程度狙ってました。そもそも僕と川上さんが仲よしなのは、プロレスや格闘技っていう共通の熱狂している趣味があるからなんですけど。 当時流行ってた総合格闘技イベント『PRIDE』とかって、ブラジリアントップファイターがリング上で殺し合いみたいなガチの真剣勝負をしてたんですよ。そんな血気盛んな選手が闘い終わってバックヤードに入った瞬間、故郷のママに「勝ったよママ! 僕、勝ったんだよ!」って電話しながら泣き出すんです。 ああいうファイターの裏側を生々しく映し出す映像を見て、表と裏のコントラストには何か新しい魅力があるなと、僕らは気づいて。それで、川上さんと「アイドルで、これやりましょうよ!」って話がスムーズにいったんです。 吉田 ライブ会場の楽屋などの舞台裏に定点カメラを置いてみる「定点観測」は、ももクロの裏の部分が見える代表的なコーナーになりました。ステージでキラキラ輝くももクロだけじゃなくて、等身大の彼女たちが見られるよう、早いうちに体制を整えられたのもありがたかったですね。 ──番組開始時からももクロのバラエティにおけるポテンシャルは図抜けてましたか? 佐々木 いや、最初は普通の高校生でしたよ。だから、何がおもしろくて何がウケないのか、何が褒められて何がダメなのか。そういう基礎から丁寧に教えました。 ──転機となったのは? 佐々木 やはり早見あかりが抜けたことですね。当時は早見が最もバラエティ力があったんです。裏リーダーとして場を回してくれたし、ほかのメンバーも彼女に頼りきりだった。我々も困ったときは早見に振ってました。 だから早見がいなくなって最初の収録は、残ったメンバーでバラエティを作れるのか正直不安で。でも、いざ収録が始まったら、めちゃめちゃおもしろかったんですよ。「お前らこんなにできたのっ!?」といい意味で裏切られた。 早見に甘えられなくなり、初めて自立してがんばるメンバーを見て、「この子たちとおもしろいバラエティ作るぞ!」と僕もスイッチが入りましたね。 あと、やっぱり2013年ごろからよく出演してくれるようになった東京03の飯塚(悟志)くんが、ももクロと相性抜群だったのも大きかった。彼のシンプルに一刀両断するツッコミのおかげで、ももクロはボケやすくなったと思います。 吉田 飯塚さんとの絡みで学ぶことも多かったですよね。 佐々木 トークの間合いとか、ボケの伏線回収的な方程式なんかを、お笑い界のトップランナーと実戦の中で知っていくわけですから、貴重な経験ですよね。それは僕ら裏方には教えられないことでした。 浅野 今のももクロって、収録中に何かおもしろいことが起きそうな気配を感じると、各々の役割を自覚して、フィールドに散らばっていくイメージがあるんですよね。 言語化はできないんだろうけど、彼女たちなりに、ももクロのバラエティ必勝フォーメーションがいくつかあるんでしょう。状況に合わせて変化しながら、みんなでゴールを目指してるなと感じてます。 ももクロのバラエティ史に残る奇跡の数々 ──バラエティ番組でのテクニックは芸人顔負けのももクロですが、“笑いの神様”にも愛されてますよね。何気ないスタジオ収録回でも、ミラクルを起こすのがすごいなと思ってて。 佐々木 最近で言うと、「4人連続ピンポン球リフティング」は残り1秒でクリアしてましたね。「持ってる」としか言えない。ああいう瞬間を見るたびに、やっぱりスターなんだなぁと思いますね。 浅野 昔、公開収録のフリースロー対決(#246)で、追い込まれた百田さんが、うしろ向きで投げて入れるというミラクルもありました。 あと、「大人検定」という企画(#233)で、高城さんがタコの踊り食いをしたら、鼻に足が入ってたのも忘れられない(笑)。 吉田 あの高城さんはバラエティ史に残る映像でしたね(笑)。 個人的にはフットサルも印象に残ってます。中学生の全国3位の強豪チームとやって、善戦するという。 佐々木 なんだかんだ健闘したんだよね。しかも終わったら本気で悔しがって、もう一回やりたいとか言い出して。 今度のオンラインライブに向けて、過去の名シーンを掘ってみたんですが、そういうミラクルがたくさんあるんですよ。 浅野 今ではそのラッキーが起こった上で、さらにどう転していくかまで彼女たちが自分で考えて動くので、昔の『ももクロChan』以上におもしろくなってますよね。 写真:『ももクロChan』#246) (写真:『ももクロChan』#233) ──皆さんのお話を聞いて、『ももクロChan』はアイドル番組というより、バラエティ番組なんだと改めて思いました。 佐々木 そうですね。誤解を恐れずに言えば、僕らは「ももクロなしでも通用するバラエティ」を作るつもりでやってるんです。 お笑いとしてちゃんと観られる番組がまずあって、その上でとんでもないバラエティ力を持ったももクロががんばってくれる。そりゃおもしろくなりますよね。 ──アイドルにここまでやられたら、ゲストの芸人さんたちも大変じゃないかと想像します。 佐々木 そうでしょうね(笑)。平成ノブシコブシの徳井(健太)くんが「バラエティ番組いろいろ出たけど、今でも緊張するのは『ゴッドタン』と『ももクロChan』ですよ」って言ってくれて。お笑いマニアの彼にそういう言葉をもらえたのは、ありがたかったなぁ。 誰も見たことのない破格のバラエティ番組を届ける ──そして11月6日(土)には、『テレビ朝日 ももクロChan 10周年記念 オンラインプレミアムライブ!~最高の笑顔でバラエティ番組~』を開催しますね。 吉田 もともとは去年やるつもりでしたが、コロナ禍で自粛することになり、11周年の今年開催となりました。これから先『ももクロChan』を振り返ったとき、このイベントが転機だったと思えるような特別な日にしたいですね。 浅野 歌あり、トークあり、コントあり、ゲームあり。なんでもありの総合バラエティ番組を作るつもりです。 2時間の生配信でゲストも来てくださるので、通常回以上に楽しいのはもちろん、ライブならではのハプニングも期待しつつ……。まぁプロデューサーとしては、いろんな意味でドキドキしてますけど(苦笑)。 佐々木 ライブタイトルに「バラエティ番組」と入れて、我々も自分でハードル上げてるからなぁ(笑)。でも「バラエティを売りにしたい」と浅野Pや吉田Pに思っていただいているので、ディレクターの僕も期待に応えるつもりで準備してるところです。 浅野 ここで改めて、ももクロは歌や踊りのパフォーマンスだけじゃなく、バラエティも最高におもしろいんだぞ、と知らしめたい。 さっき佐々木さんも言ってましたけど、まだももクロに興味がない人でも、バラエティ番組として楽しめるはずなので、お笑い好きとか、バラエティをよく観る人に観てもらいたいです。 佐々木 誰も見たことない、新しくておもしろい番組を作るつもりですよ。 浅野 『ももクロChan』が始まった2010年って、まだ動画配信で成功している番組がほとんどなかったんですね。そんな環境で番組がスタートして、テレビ朝日の中で特筆すべき成功番組になった。 そういう意味では、配信動画のトップランナーとして、満を持して行う生配信のオンラインイベントなので、業界の中でも「すごかった」と言ってもらえる番組にするつもりです。 吉田 『ももクロChan』スタッフとしては、番組が11周年を迎えることを感慨深く思いつつ、テレビを作ってきた人間としては、コロナ以降に定着してきたオンライン生配信の意義を今改めて考えながら作っていきたいです。 (写真:『テレビ朝日 ももクロChan 10周年記念 オンラインプレミアムライブ!~最高の笑顔でバラエティ番組~』は、11月6日(土)19時開演 logirl会員は割引価格でご視聴いただけます) ──具体的にどういった企画をやるのか、少しだけ教えてもらえますか? 浅野 「あーりんロボ」(佐々木彩夏がお悩み相談ロボットに扮するコントコーナー)はやるでしょう。 佐々木 生配信で「あーりんロボ」は怖いですよ、絶対時間押しますから(笑)。佐々木も度胸ついちゃってるからガンガンボケて、百田、高城、玉井がさらに煽って調子に乗っていくのが目に見える……。 あと、配信ならではのディープな企画も考えていますが、ちょっと今のままだとディープすぎてできないかもしれないです。 浅野 配信を観た方は、ネタバレ禁止というルールを決めたら、攻められますかねぇ。 佐々木 たしかに視聴者の方々と共犯関係を結べるといいですね。 とにかく、モノノフさんはもちろんですが、少しでも興味を持った人に観てほしいんですよ。バラエティ史に残る番組の記念すべき配信にしますので、絶対損はさせません。 浅野 必ず、期待にお応えします。 撮影=時永大吾 文=安里和哲 編集=後藤亮平
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logirlの「起爆剤になりたい」ディレクター・林洋介(『ももクロちゃんと!』)インタビュー
ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、AKB48 Team8などのオリジナルコンテンツを配信する動画配信サービス「logirl」スタッフへのリレーインタビュー第5弾。 今回は10月からリニューアルする『ももクロちゃんと!』でディレクターを務める林洋介氏に話を聞いた。 林洋介(はやし・ようすけ)1985年、神奈川県出身。ディレクター。 <現在の担当番組> 『ももクロちゃんと!』 『WAGEI』 『小川紗良のさらまわし』 『まりなとロガール』 リニューアルした『ももクロちゃんと!』の収録を終えて ──10月9日から土曜深夜に枠移動する『ももクロちゃんと!』。林さんはリニューアルの初回放送でディレクターを務めています。 林 そうですね。「ももクロちゃんと、〇〇〇!」という基本的なルールは変わらずやっていくんですけど、画面上のCGやテロップなどが変わるので、視聴者の方の印象はちょっと違ってくるかなと思います。 (写真:「ももクロちゃんと!」) ──収録を終えた感想はいかがですか? 林 自粛期間中に自宅で推し活を楽しめる「推しグッズ」作りがトレンドになっていたので、今回は「推しグッズ」というテーマでやったんですが、ももクロのみなさんに「推しゴーグル」を作ってもらう作業にけっこう時間がかかってしまったんですよね。「安全ゴーグル」に好きなキャラクターや言葉を書いてデコってもらったんですが、本当はもうひとつ作る予定が収録時間に収まりきらず……それでもリニューアル1発目としては、期待を裏切らない内容になったと思います。 ──『ももクロちゃんと!』を担当するのは今回が初めてですが、収録に臨むにあたって何か考えはありましたか? 林 やっぱり、リニューアル一発目なので盛り上がっていけたらなと。あとは、ももクロは知名度のあるビッグなタレントさんなので、その空気に飲まれないようにしないといけないなと考えていましたね。 ──先輩スタッフの皆さんからとも相談しながらプランを立てていったのでしょうか? 林 そうですね。ももクロは業界歴も長くてバラエティ慣れしているので、トークに関しては心配ないと聞いていました。ただ、自分たちで考えて何かを書いたり作ったりしてもらうのは、ちょっと時間がいるかもしれないよとも……でも、まさかあそこまでかかるとは思いませんでした(笑)。ちょっとバカバカしいものを書いてもらっているんですけど、あそこまで真剣に取り組んでくれるのかって逆に感動しました。 (写真:「ももクロちゃんと! ももクロちゃんと祝!1周年記念SP」) 「まだこんなことをやるのか」という無茶をしたい ──ももクロメンバーと仕事をする機会は、これまでもありましたか? 林 logirlチームに入るまで一度もなくて、今回がほぼ初対面です。ただ一度だけ、DVDの宣伝のために短いコメントをもらったことがあって、そのときもここまで現場への気遣いがしっかりしているんだという印象を受けました。 もちろん名前はよく知っていますが、僕は正直あまりももクロのことを知らなかったんですよね。キャリア的に考えたら当然現場では大物なわけで、そのときは僕も時間を巻きながら無事に5分くらいのコメントをもらったんですが、あとから撮影した素材を見返したら、あの短いコメント取材だけなのに、わざわざみんなで立ち上がって「ありがとうございました」と丁寧に言ってくれていたことに気がついて、「めっちゃいい子たちやなあ」って思ってました。 ──一緒に仕事をしてみて、印象は変わりましたか? 林 『ももクロちゃんと!』は、基本的にその回で取り上げる専門的な知識を持った方にゲストで来ていただいてるんですが、タレントさんでない方が来ることも多いんですよね。そういった一般の方に対しても壁がないというか、なんでこんなになじめるのかってくらいの親しみ深さに驚きました。そういう方たちの懐にもすっと入っていけるというか、その気遣いを大切にしているんですよね。しかもそれをすごく自然にやっているのが、すごいなと思いました。 ──『ももクロちゃんと!』は2年目に突入しました。今後の方向性として、考えていることはありますか? 林 「推しグッズ」でも、あそこまで真剣に取り組んでるんだったら、短い収録時間の中ではありますが、「まだこんなことをやってくれるのか」という無茶をしてみたいなと個人的には思いました。過去の『ももクロChan』を観ていても、すごくアクティブじゃないですか。だから、トークだけでは終わらせたくないなっていう気持ちはあります。 (写真:「ももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~」) 情報番組のディレクターとしてキャリアを積む ──テレビの仕事を始めたきっかけを教えてください。 林 大学を卒業して特にやりたいことがなかったので、好きだったテレビの仕事をやってみようかなというのが入口ですね。最初に入ったのがテレビ東京さんの『お茶の間の真実〜もしかして私だけ!?〜』というバラエティ番組で、そこでADをやっていました。長嶋一茂さんと石原良純さんと大橋未歩さんがMCだったんですが、初めは知らないことだらけだったので、いろいろなことが学べたのは楽しかったですね。 ──そこからずっとバラエティ畑ですか。 林 AD時代は基本的にバラエティでしたね。ディレクターの一発目はTBSの『ビビット』という情報番組でした。曜日ディレクターとして、日々のニュースを追う感じだったんですが、そもそもニュースというものに興味がなかったので、そこはかなり苦戦しました。バラエティの“おもしろい”は単純というか、わかりやすいですが、ニュースの“おもしろい”ってなんだろうってずっと考えていましたね。たとえば、殺人事件の何を見せたらいいんだろうとか、まったくわからない世界に入ってしまったなという感じがしていました。 ──情報番組はどのくらいやっていたんですか? 林 『ビビット』のあとに始まった、立川志らくさんの『グッとラック!』もやっていたので、6年間ぐらいですかね。でも、最後まで情報番組の感覚はつかめなかった気がします。きっとこういうことが情報番組の“おもしろい”なのかなって想像しながら、合わせていたような感じです。 番組制作のモットーは「事前準備を超えること」 ──ご自身の好みでいえば、どんなジャンルがやりたかったんですか? 林 いわゆる“どバラエティ”ですね。当時でいえば、めちゃイケ(『めちゃ×イケてるッ!』/フジテレビ)に憧れてました。でも、情報バラエティが全盛の時代だったので、結果的にAD時代、ディレクター時代を含めてゴリゴリのバラエティはやれなかったですね。 ──情報番組のディレクター時代の経験で、印象に残っていることはありますか? 林 芸能人の密着をやったり、街頭インタビューでおもしろ話を拾ってきたりと、仕事としては濃い時間を過ごしたと思いますが、そういったネタよりも、当時の上司からの影響が大きかったかなと思います。『ビビット』や『グッとラック!』は、ワイドショーだけどバラエティに寄せたい考えがあったので、コーナー担当の演出はバラエティ畑で育った人たちがやっていたんですよね。今思えば、バラエティのチームでワイドショーを作っているような感覚だったので、特殊といえば特殊な場所だったのかもしれません。僕のコーナーを見てくれていた演出の人もなかなか怖い人でしたから(笑)。 ──その経験も踏まえ、番組を作るときに心がけていることはありますか? 林 どんなロケでも事前に構成を作ると思うんですが、最初に作った構成を越えることをひとつの目標としてやっていますね。「こんなものが撮れそうです」と演出に伝えたところから、ロケのあとのプレビューで「こんなのがあるんだ」と驚かせるような何かをひとつでも持って帰ろうとやっていましたね。 自由度の高い「配信番組」にやりがいを感じる ──logirlチームには、どのような経緯で入ったんでしょうか? 林 『グッとラック!』が終わったときに、会社から「次はどうしたい?」と提示された候補のひとつだったんですよね。それで、僕はもう地上波に未来はないのかなと思っていたので、詳細は知らなかったんですけど、配信の番組というところに興味を持ってやってみたいなと思い、今年の4月から参加しています。 ──参加して半年ほど経ちますが、配信番組をやってみた感触はいかがですか? 林 そうですね。まだ何かができたわけじゃないんですけど、自分がやりたいことに手が届きそうだなという感じはしています。もちろん、仕事として何かを生み出さなければいけないですが、そこに自分のやりたいことが添えられるんじゃないかなって。 具体的に言うと、僕はいつか好きな「バイク」を絡めた企画をやりたいと思っているんですが、地上波だったら一発で「難しい」となりそうなものも、企画をもう少ししっかり詰めていけば、実現できるんじゃないかという自由度を感じています。 ──そこは地上波での番組作りとは違うところですよね。 林 はい、少人数でやっていることもありますし、聞く耳も持っていただけているなと感じます。まだ自分発信の番組は何もないんですけど、がんばれば自分発信でやろうという番組が生まれそうというか、そこはやりがいを感じる部分ですね。 logirlを大きくしていく起爆剤になりたい ──logirlはアイドル関連の番組も多いです。制作経験はありますか? 林 テレビ東京の『乃木坂って、どこ?』でADをやっていたことがあります。本当に初期で『制服のマネキン』の時期くらいまでだったので、もう9年前くらいですかね。いま売れている子も多いのでよかったなと思います。 ──ご自身がアイドル好きだったことはないですか。 林 それこそ、中学生のころにモーニング娘。に興味があったくらいですね。ちょうど加護(亜依)ちゃんや辻(希美)ちゃんが入ってきたころで、当時はみんな好きでしたから。でも、アイドルに熱狂的になったことはなくて、ああいう気持ちを味わってみたいなとは思うんですけど、なかなか。 ──これからlogirlでやりたいことはありますか? 林 先ほども言ったバイク関連の企画もそうですが、単純に何をやればいいというのはまだ見えてないんですよね。ただ、logirlはまだまだ小さいので、僕が起爆剤になってNetflixみたいにデカくなっていけたらいいなって勝手に思っています。 ──最後に『ももクロちゃんと!』の担当ディレクターをとして、番組のリニューアルに向けた意気込みをお願いします。 林 『ももクロちゃんと!』はこれから変わっていくはずなので、ファンのみなさんにはその変化にも注目していただければと思います。よろしくお願いします! 文=森野広明 編集=中野 潤
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言葉を引き出すために「絶対的な信頼関係を」プロデューサー・河合智文(『でんぱの神神』等)インタビュー
ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、AKB48 Team8などのオリジナルコンテンツを配信する動画配信サービス「logirl」スタッフへのリレーインタビュー第4弾。 今回は『でんぱの神神』『ナナポプ』などのプロデューサー、河合智文氏に話を聞いた。 河合智文(かわい・ともふみ)1974年、静岡県出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『でんぱの神神』 『ナナポプ 〜7+ME Link Popteen発ガールズユニットプロジェクト〜』 『美味しい競馬』(logirl YouTubeチャンネル) 初めて「チーム神神」の一員になれた瞬間 ──『でんぱの神神』には、いつから関わるようになったんでしょうか? 河合 2017年の3月から担当になりました。ちょうど、でんぱ組.incがライブ活動をいったん休止したタイミングでした。「密着」が縦軸としてある『でんぱの神神』をこれからどうしていこうか、という感じでしたね。 (写真:『でんぱの神神』) ──これまでの企画で印象的なものはありますか? 河合 古川未鈴さんが『@JAM EXPO 2017』で総合司会をやったときに、会場に乗り込んで未鈴さんの空き時間にジャム作りをしたんですよ。企画名は「@JAMであっと驚くジャム作り」。簡易キッチンを設置して、現場にいるアイドルさんたちに好きな材料をひとつずつ選んで鍋に入れていってもらい、最終的にどんな味になるのかまったくわからないというような(笑)。 極度の人見知りで、ほかのアイドルさんとうまくコミュニケーションが取れないという未鈴さんの苦手克服を目的とした企画でもあったんですが、@JAMの現場でロケをやらせてもらえたのは大きかったなと思います。 (写真:『でんぱの神神』#276/2017年9月22日配信) 企画ではありませんが、ねも・ぺろ(根本凪・鹿目凛)のふたりが新メンバーとしてお披露目となった大阪城ホール公演(2017年12月)までの密着も印象に残っていますね。 ライブ活動休止中はバラエティ企画が中心だったので、リハーサルでメンバーが歌っている姿がとても新鮮で……その空間を共有したとき、初めて「チーム神神」の一員になれたという感じがしました。 そういった意味ではねも・ぺろのふたりに対しては、でんぱ組.incという会社の『でんぱの神神』部署に配属された同期入社の仲間だと勝手に感じています (笑)。 でんぱ組.incが秀でる「自分の魅せ方」 ──でんぱ組.incというグループにどんな印象を持っていますか? 河合 僕が関わり始めたころは、2度目の武道館公演を行うなどすでにアイドルグループとして大きく、メジャーな存在だったんです。番組としてもスタートから6年目だったので、自分が入ってしっかり接していけるのかな、という不安はありました。 自分の趣味に特化したコアなオタクが集まったグループ……ということで、それなりにクセがあるメンバーたちなのかなと構えていたんですけど、そのあたりは気さくに接してもらって助かりました。とっつきにくさとかも全然なくて(笑)。 むしろ、ロケを重ねていくうちにセルフプロデュースや自己表現がすごくうまいんだなと思いました。自分の魅せ方をよくわかっているんですよね。 ──そういったご本人たちの個性を活かして企画を立てることもあるのでしょうか? 河合 マンガ・アニメ・ゲームなどメンバーが愛した男性キャラクターを語り尽くすという「私の愛した男たち」はでんぱ組にうまくハマった企画で、反響が大きかったので、「私の憧れた女たち」「私のシビれたシーンたち」と続く人気シリーズになりました。 やはり好きなことについて語るときはエネルギーがあるというか、とてもテンション高くキラキラしているんですよね。メンバーそれぞれの好みというか、人間性というか……隠れた一面を知ることのできた企画でしたね。 (写真:『でんぱの神神』#308/2018年5月4日配信) ──そして5月に『でんぱの神神』のレギュラー配信が2年ぶりに再開しました。これからどんな番組にしていきたいですか? 河合 2019年2月にレギュラー配信が終了しましたが、それでも不定期に密着させてもらっていたんです。そのたびにメンバーから「『神神』は何度でも蘇る」とか、「ぬるっと復活」みたいに言われていましたが(笑)。そんな『神神』が2年ぶりに完全復活できました。 長寿番組が自分の代で終了してしまった負い目も感じていましたし、不定期でも諦めずに配信を続けたことがレギュラー再開につながったと思うと、正直うれしいですね。 今回加入した新メンバーも超個性的な5人が集まったと思います。やはり今は多くの人に新メンバーについて知ってほしいですし、先ほどの「私の愛した男たち」は彼女たちを深掘りするのにうってつけの企画ですよね。これまで誰も気づかなかった個性や魅力を引き出して、新生でんぱ組.incを盛り上げていきたいです。 (写真:『でんぱの神神』#363/2021年5月12日配信) 密着番組では、事前にストーリーを作らない ──ティーンファッション誌『Popteen』のモデルが音楽業界を駆け上がろうと奮闘する姿を捉えた『ナナポプ』は、2020年の8月にスタートしました。 河合 『Popteen』が「7+ME Link(ナナメリンク)」というプロジェクトを立ち上げることになり、そこから生まれたMAGICOURというダンス&ボーカルユニットに密着しています。これまでのlogirlの視聴者層は20〜40代の男性が多かったですが、『ナナポプ』のファンの中心はやはり『Popteen』読者である10代の女性。そういった人たちにもlogirlを知ってもらうためにも、新しい視聴者層への訴求を意識した企画でもあります。 (写真:『ナナポプ』#29/2021年3月5日配信) ──番組の反響はいかがでしょうか? 河合 スタート当初は賛否というか、「モデルさんにダンステクニックを求めるのはいかがなものか?」といった声もありました。ですが、ダンス講師のmai先生はBIGBANGやBLACKPINKのバックダンサーもしていた一流の方ですし、メンバーたちも常に真剣に取り組んでいます。 だから、実際に観ていただければそれが伝わって応援してもらえるんじゃないかと思っています。番組も「“リアル”だけを描いた成長の記録」というテーマになっているので、本気の姿をしっかり伝えていきたいですね。 ──密着番組を作るときに意識していることはありますか? 河合 特に自分がディレクターとしてカメラを回すときの場合ですが、ナレーション先行の都合のよいストーリーを勝手に作らないことですね。 僕は編集のことを考えて物語を固めてしまうと、その画しか撮れなくなっちゃうタイプで。現場で実際に起きていることを、リアルに受け止めていこうとは常に考えています。一方で、事前に狙いを決めて、それをしっかり押さえていく人もいるので、僕の考えが必ずしも正解ではないとも思うんですけどね。 音楽の仕事をするために、制作会社に入社 ──テレビ業界を目指したきっかけを教えてください。 河合 高校時代に世間がちょうどバンドブームで、僕も楽器をやっていたんです。「学園祭の舞台に立ちたい」くらいの活動だったんですけど、当時から「仕事にするならクリエイティブなことがいい」とはずっと考えていました。初めは音楽業界に入りたかったんですが、専門学校に行って音楽の知識を学んだわけでもないので、レコード会社は落ちてしまって。 ほかに音楽の仕事ができる手段はないかなと考えたときに浮かんだのが「音楽番組をやればいい」でした。多少なりとも音楽に関われるなら、ということで番組制作会社に入ったのがきっかけです。 ──すぐに音楽番組の担当はできましたか? 河合 研修期間を経て実際に採用となったときに「どんな番組をやりたいんだ?」と聞かれて、素直に「音楽番組じゃなきゃ嫌です」と言ったら希望を叶えてくれたんです。1998年に日本テレビの深夜にやっていた、遠藤久美子さんがMCの『Pocket Music(ポケットミュージック)』という番組のADが最初の仕事です。そのあとも、同じ日本テレビで始まった『AX MUSIC- FACTORY』など、音楽番組はいくつか関わってきました。 大江千里さんと山川恵里佳さんがMCをしていた『インディーウォーズ』という番組ではディレクターをやっていました。タレントさんがインディーアーティストのプロモーションビデオを10万円の予算で制作するという、企画性の高い番組だったんですが、10万円だから番組ディレクターが映像編集までやることになったんです。 放送していた2004〜2005年ごろ、パソコンでノンリニア編集をする人なんてまだあまりいませんでした。ただ僕はひと足先に手を出していたので、タレントさんとマンツーマンで、ああでもないこうでもないと言いながら何時間もかけて動画を編集した思い出がありますね。 ──現在も動画の編集作業をすることはあるんですか? 河合 今でもバリバリやっています(笑)。YouTubeチャンネルでも配信している『美味しい競馬』の初期もそうですし、『でんぱの神神』がレギュラー配信終了後に特別編としてライブの密着をしたときは、自分でカメラを担いで密着映像とライブを収録して、それを自分で編集したりもしました。 やっぱり、自分で回した素材は自分で編集したいっていう気持ちが湧くんですよね。忘れかけていたディレクター心に火がつくというか……編集で次第に形になっていくのがおもしろくて。編集作業に限らず、構成台本を作成したり、けっこうなんでも自分でやっちゃうタイプですね。 (写真:『でんぱの神神』特別編 #349/2019年5月27日配信) logirlは、やりたいことを実現できる場所 ──logirlに参加した経緯を教えてください。 河合 実は『Pocket Music(ポケットミュージック)』が終わったとき、ADだったのに完全にフリーになったんですよ。そこから朝の情報番組などいろんなジャンルの番組を経験して、番組を通して知り合った仲間からいろいろと声をかけてもらって仕事をしていました。紀行番組で毎月海外に行ったりしたこともありましたね。 ちょうど一段落して、テレビ番組以外のこともやってみたいなと考えていたときに、日テレAD時代の仲間から「テレ朝で仕事があるけどやらない?」と紹介してもらい、それがまだ平日に毎日生配信をしていたころ(2015〜2017年)のlogirlだったんです。 (写真:撮影で訪れたスペイン・バルセロナにて) ──番組を作る上でモットーにしていることはありますか? 河合 今は一般の方でも、タレントさんでも、編集ソフトを使って誰でも動画制作ができる時代になったじゃないですか。だからこそ、「テレビ局の動画スタッフが作っている」というクオリティを出さなければいけないと思っています。難しいことですが、これを諦めたら番組を作る意味がないのかなという気がするんですよね。 あとは、出演者との信頼関係を大切に…..といったことですね。特に『でんぱの神神』『ナナポプ』といった密着系の番組は、出演者の気持ちをいかに言葉として引き出すかにかかっていますので、そこには絶対的な信頼関係を築いていくことが必要だと思います。 ──実際にlogirlで仕事してみて、いかがでしたか? 河合 自分でイチから企画を考えてアウトプットできる環境ではあるので、そこは楽しいですね。自分のやりたいことを、がんばり次第で実現できる場所。そういった意味でやりがいがあります。 ──リニューアルをしたlogirlの今後の目標を教えてください。 河合 まずは、どんどん新規の番組を作って、コンテンツを充実させていきたいです。これまで“ガールズ”に特化していましたが、今はその枠がなくなり、落語・講談・浪曲などをテーマにした『WAGEI』のような番組も生まれているので、いい意味でいろいろなジャンルにチャレンジできると思っています。 時期的にまだ難しいですが、ゆくゆくはlogirlでイベントをすることも目標です。logirlだからこそ実現できるラインナップになると思うので、いつか必ずやりたいと思っています。 文=森野広明 編集=田島太陽
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』
仙波広雄@スポーツニッポン新聞社 競馬担当によるコラム。週末のメインレースを予想&分析/「logirl」でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(桜花賞)
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(桜花賞) 今週は、樋渡結依さんをゲストに迎えて配信(YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#198)しております。予想するのは4月13日(日)の阪神11R・桜花賞です。 樋渡さんはTCK(東京シティ競馬、大井競馬のことです)公式LIVE「ウマきゅん」に出演しており、先日卒業したばかりです。かのギャンブル芸人じゃいさんの薫陶を受けていますから、本配信とも縁続き…と強弁できなくもありません。趣味は競馬予想と野球観戦で千葉推しとのこと。渋い。 さて先週の大阪杯は◎ベラジオオペラが1着、☆ロードデルレイが2着でした。レース内容的には内優位の高速ラップで外から押し上げたロードデルレイの強さが目立ちました。前のレースで同牝系のシヴァースが勝ったように馬場がぴったりだったのはありますが。桜花賞は3歳牝馬限定戦。馬場コンディションや通るコースの内外より、スムーズにレースできるかが重要です。 ◎②エリカエクスプレス。 正直、もまれそうな枠を見て◎をやめようかと思ったのですが、陣営から「ミストレスが入ってくれてある程度ペースが流れるのは歓迎」とのコメントが出ています。ミストレスはランフォーヴァウの回避で出走が可能になったのですが、明確な逃げ馬が入ることで、よどみないペースの好位が取りたいこの馬には流れが向く、と陣営が判断しているのは大きいですね。これなら大丈夫かと。キャリア2戦で桜花賞を制したのは過去10年で1頭だけ。ただ、その1頭が父エピファネイア、杉山晴厩舎のデアリングタクトなので、経験不足と切って捨てるのも軽率と言えましょう。リファール系、ダンチヒ系、サドラー系と累代ノーザンダンサー系が重ねられた欧州牝系で、エピファネイアはサドラー系との相性がいい。そして桜花賞は母父ノーザンダンサー系と相性がいい。この配合は牡馬に出るとちょっと重そうですが、牝馬だと重苦しくなく軽快な脚が使えます。あと配合はオークスっぽいですが、個人的には桜花賞向きだと思います。仕上げも全力感があります。杉山晴厩舎には今年の3歳、なんと10頭のエピファネイア産駒の名があり、内4頭が2勝。ここ出走の2頭と、牡馬には若葉S勝ちジョバンニがいます。デアリングタクトの牝馬3冠達成による「エピファネイア使い」としてのトレーナーの評価がいかに高いか分かると思います。 ○⑦エンブロイダリー。 巷間、散々言われていますが、クイーンCの勝ち時計1分32秒2は強烈です。前週の東京新聞杯が1分32秒6と古馬のG3より速い。主戦はルメールですが、オーストラリアでローシャムパークに騎乗するため不在。その穴を埋めるのはモレイラですから乗り替わりによる影響も無視できます。あえて言うならメジャーエンブレム感が漂います。メジャーエンブレムもクイーンC1分32秒5の好時計で勝ち、前週の東京新聞杯(スローで1分34秒1)より大幅に速く、単勝1.5倍に推された末に桜花賞は4着。3歳牝馬というのは難しいですね。まあ先達は先達。関東馬ですが栗東入りしており、先達のように輸送の影響を気にする必要はありません。 ▲⑩トワイライトシティ。 杉山晴エピファネイアの二の矢です。アネモネSの時計が平凡なので、僚馬との差はいかんともしがたいところですが、好位に構えられてレースセンスがいい。アネモネSは本番とつながらないとはいえ、もともとフィリーズレビュー除外で回ったレースですし、少々行きたがるレース内容からもペースが上がってもそこそこ走れるのでは、という予感はあります。 馬券は3連単フォーメーション。 <1着>②→<2着>⑦⑩⑯→<3着>⑦⑨⑩⑫⑭⑯。15点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(大阪杯)
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(大阪杯) 今週も、ほのかさんをゲストに迎えて配信(YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#197)しています。予想するのは4月6日(日)の阪神11R・大阪杯です。 今年は1着賞金3億円で前年より1億円アップ。春G1序盤のクライマックスに位置づけられます。ただしドバイターフ、ドバイシーマクラシックと競合するレースだけに、芝中距離の一線級はバラけます。ターフの1着賞金は7.5億、シーマは9億円ですからね…。リバティアイランド、ダノンデサイル、チェルヴィニアらがドバイ遠征。勝負強い面々がいません。このレース、4年連続でG1初Vの馬が勝っているのは偶然ではないでしょう。 ◎⑤ベラジオオペラ。 昨年、4歳でこのレースを制したベラジオオペラが有馬記念からの直行ながら仕上がり万全の態勢で連覇を狙います。昨年このレースを勝った後は、宝塚記念は道悪、天皇賞・秋は切れ負け、有馬記念は距離。それぞれ敗因があっての3、6、4着。阪神3戦3勝。前優位になりがちなこのレースでも、前付け先行で自分から動ける機動力は存分に生きそうです。 ○⑫ステレンボッシュ。 8戦全て馬券圏内の安定感。元より4歳牝馬の同世代同士ではトップクラスの能力と実績を示していますが、もうひと押し感があるのも確か。その意味で天敵ともいえるチェルヴィニアがドバイに遠征しているここはチャンスが広がりました。エピファネイアの一流馬は必ずしも旬が長い馬ばかりではありませんが、そこはウインドインハーヘア牝系の底力に期待。 馬券は3連単2頭軸マルチ。 <軸>⑤⑫→<相手>②③④⑦⑩⑬。36点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(高松宮記念)
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(高松宮記念) 春G1が3月29日(日)の中京11R・高松宮記念で再開し、今週は配信があります!配信(YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#193)のゲストはおなじみのほのかさんです! 近年、日本のスプリント界には長期政権を築くような絶対的な王者がいません。というか、かつてのロードカナロアみたいな存在が例外で、消長の激しさ自体がこの路線の魅力でもあるでしょう。今回の高松宮記念もG1馬はマッドクールとルガル、ママコチャがいますが、下馬評はルメール、モレイラら超一流騎手の補整込みで推移しそうで、ナムラクレアかサトノレーヴのG1未勝利馬が1番人気になりそうな気配。動きはいいのはサトノレーヴとルガル。要するに面白いG1です。 ◎⑥ルガル。 去年のこのレースではあれよあれよで1番人気に推されましたが、レース中の骨折もあったとのことで10着大敗。休み明けのスプリンターズSを9番人気1着。世評に逆らうタイプと言えそうで、今回も休み明けで人気薄なら買いでしょう。調教はさすがスプリントG1馬という動き。ウイングレイテストが内枠を引いたことで、ぶっ飛ばして逃げる気がしています。その流れならルガルが優位に運べそう。 ○⑩サトノレーヴ。 暮れの香港スプリントでは現香港最強スプリンターのカーインライジングと0秒1差3着。昨年のスプリンターズSではわざわざレーンを呼び寄せたのに出遅れて終了とここ一番での勝負強さに懸念はありますが、調教は素晴らしいものでした。 ▲⑧カンチェンジュンガ。 人気上位のルガル、サトノレーヴを本命、対抗に推したこともあり、馬券の肝はこの馬です。ビッグアーサー3頭出しでおそらく最も人気がないのがカンチェンジュンガ。ただし鞍上は武豊。好位組が豊富な組み合わせ、今年のやや荒れた中京芝なら、短縮組がいいかと思いますので、思い切って対抗に抜擢する所存。 馬券は3連単フォーメーション。 <1着>⑥⑩→<2着>⑥⑧⑩⑫→<3着>①③⑥⑧⑩⑫⑭⑮。36点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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WAGEI公開収録<概要・応募規約>
テレ朝動画「WAGEI 公開収録」番組観覧無料ご招待! 2025年1月18日(土)開催! logirl(ロガール)会員の中から抽選で100名様に番組観覧ご招待! 番組概要 テレ朝動画で配信中の伝統芸能番組『WAGEI』の公開収録! 番組MCを務める浪曲師「玉川太福」と、五代目三遊亭円楽一門の落語家「三遊亭らっ好」が珠玉のネタを披露します。 ゲストには須田亜香里と、SKE48赤堀君江が登場!出演者からの貴重なプレゼントも用意する予定です。 超レアなプログラムを是非お楽しみください。 日時:2025年1月18日(土)開場12:30 開演13:00(終演15:15予定) 場所:浅草木馬亭 東京都台東区浅草2−7−5 出演:玉川太福(浪曲師)・玉川みね子(曲師)/三遊亭らっ好(落語家)/須田亜香里/赤堀君江(SKE48) 応募詳細 追加応募期間:2024年12月27日(金)15:00~2025年1月9日(木)17:00締切 応募条件:logirl(ロガール)会員のみ対象(当日受付で確認させていただきます) 下記「応募規約」をよく読んでご応募ください。 応募フォーム:https://www.tv-asahi.co.jp/apps/apply/jump.php?fid=10062 追加当選発表:当選した方のみ、2025年1月10日(金)23:59までに 当選メール(ご招待メール)をご登録されたアドレスまでお送りさせていただきます。 「WAGEI公開収録」応募規約 【応募規約】 この応募規約(以下「本規約」といいます。)は、株式会社テレビ朝日(以下「当社」といいます。)が 運営する動画配信サービス「テレ朝動画」における「WAGEI」(以下「番組」といいます。)に関連して 実施する、公開収録の参加者募集に関する事項を定めるものです。参加していただける方は、本規約の 内容をご確認いただき、ご同意の上でご応募ください。 【募集要項】 開催日時:2025年1月18日(土)13:00開始~15:15頃終了予定 (途中、休憩あり) ※スケジュールは変更となる場合があります。集合時間等の詳細は当選連絡にてお伝えいたします。 場所:浅草木馬亭(東京都台東区浅草2-7-5) 出演者(予定):玉川太福(浪曲師)・玉川みね子(曲師)/三遊亭らっ好(落語家)/須田亜香里/赤堀君江(SKE48) ※出演者は予告なく変更される場合があります。 募集人数:100名様(予定) ※応募者多数の場合は、抽選とさせていただきます。 【応募資格】 ・テレ朝動画logirl(ロガール)会員限定 ・年齢性別は問いません 【応募方法】 応募フォームへの必要事項の入力 ・テレ朝動画にログインの上、必要事項を入力してください。 【ご参加お願い(参加決定)のご連絡】 ■ご参加をお願いする方(以下「参加決定者」といいます。)には、1月10日(金)23:59までに、応募フォームにご入力いただいたメールアドレス宛に、集合時間と場所、受付手続等の詳細を記載した「番組公開収録ご招待メール」(以下「ご招待メール」といいます。)を送信させていただきます。なお、ご入力いただいた電話番号にお電話をさせて頂く場合がございます。非通知設定でかけさせていただく場合もございますので、非通知拒否設定は解除して頂きますようお願いします。 ■当日の集合時間と集合場所は「ご招待メール」に記載します。集合時間に遅ることのないようご注意ください。 ■「ご招待メール」が届かない場合は、残念ながらご参加いただけませんのでご了承ください。 ■「ご招待メール」の送信の有無に関するお問い合わせはご遠慮ください。 ■公開収録の参加は無料です。参加決定のご連絡にあたって、参加決定者に対し、参加料等のご入金のお願いや銀行口座情報、クレジットカード情報等のお問い合わせをすることは、一切ございません。「テレビ朝日」や本サービスの関係者を名乗る悪質な連絡や勧誘には十分ご注意ください。また、そのような被害を防止するため、ご応募いただいた事実を第三者に口外することはお控えいただけますようお願い申し上げます。 ■「ご招待メール」および公開収録への参加で知り得た情報、公開収録の内容に関する情報、及び第三者の企業秘密・プライバシー等に関わる情報をブログ、SNS等への記載を含め、方法や手段を問わず第三者への開示を禁止いたします。また、当選権利および当選者のみが知り得た情報に関して、譲渡や販売は一切禁止いたします。 【注意事項】 ■ご案内は当選したご本人様1名のみのご参加となります。(同伴者はご案内できません) ■未成年の方がご応募いただく場合は、必ず事前に保護者の方の同意を得てください。その場合は、電話番号の入力欄に保護者の方と連絡の取れる電話番号をご入力ください。(保護者にご連絡させていただく場合がございます。) ■開催当日、今回の公開収録の参加および撮影・映像使用に関しての承諾書をご提出いただきます。(未成年の方は保護者のサインが必要となります。) ■1名につき応募は1回までとします。重複応募は全て無効になりますので、お気をつけください。 ■会場ではスタッフの指示に従ってください。指示に従っていただけない場合は、会場から退去していただく場合がございます。 ■会場でのスマートフォン等を用いての録画・録音についてはご遠慮ください。 ■会場までの交通手段は、公共交通機関をご利用ください。駐車場はございません。 ■会場までの交通費、宿泊費等は参加者のご負担にてお願いいたします。 ■当日は、ご本人であることを確認させていただくために、お手持ちのスマートフォン等で表示または印刷した「ご招待メール」と、「身分証明書」(運転免許証・パスポート等、氏名と年齢が確認できるもの)をお持ち下さい。ご本人確認が出来ない方は、ご参加いただけません。 ■荷物置き場はご用意しておりません。貴重品の管理等はご自身にてお願いいたします。貴重品を含む持ち物の紛失・盗難については、当社は一切責任を負いません。 ■公開収録に伴い、参加者・客席を含み場内の撮影・録音を行い、それらの映像または画像等の中に映り込む可能性があります。参加者は、収録した動画、音声を、当社または当社が利用を許諾する第三者(以下、当社および当該第三者を総称して「当社等」といいます)が国内外テレビ放送(地上波放送・衛星波放送を含みます)、雑誌、新聞、インターネット配信およびPC・モバイルを含むウェブサイトへの掲載をはじめとするあらゆる媒体において利用することについてご同意していただいたものとみなします(以下、かかる利用を「本件利用」といいます)。なお、本件利用の対価は無料とさせていただきますので、ご了承ください。 ■諸事情により番組の公開収録が中止又は延期となる場合がありますのでご了承ください。 【個人情報の取り扱いについて】 ■ご提供いただいた個人情報は、番組公開収録への参加に関する抽選、案内、手配又は連絡及び運営等のために使用し、収録後に消去させていただきます。 ■当社における個人情報等の取扱いの詳細については、以下のページをご覧下さい。 https://www.tv-asahi.co.jp/privacy/ https://www.tv-asahi.co.jp/privacy/online.html
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新番組『WAGEIのじかん』(CS放送)
CSテレ朝チャンネル1「WAGEIのじかん」 落語・浪曲・講談など日本の伝統芸能が楽しめる番組。MCを務める浪曲師玉川太福と話芸の達人(=ワゲイスト)たちが珠玉のネタを披露します。さらに、お笑いを愛する市川美織が番組をサポート!お茶の間の皆様に笑いっぱなしの15分をお届けします。 お届けするネタ(3月放送)は、玉川太福の浪曲ほか、古今亭雛菊・春風亭かけ橋・春風亭昇吉・昔昔亭昇・柳家わさび・柳亭信楽の落語、神田松麻呂の講談などが登場します。お楽しみに〜!(※出演者50音順) ★3月の放送予定 3月17日(日)25:00~26:00 3月21日(木)26:00~27:00 3月24日(日)25:00~26:00 ⇩【収録中の様子】市川美織さん箱馬に乗って高さのバランスを調整しました。笑