大越健介の報ステ後記

1月を乗り切るには
2026年01月18日

 1月の後半と言えば、1年の中で最も寒い時期であり、毎年のことながらこれを乗り切るのは結構しんどい。腰が痛くなって(年齢のせいもある)なじみの整骨院に駆け込むと、院長も同じ思いらしく、「1月って、つくづく長いなあって感じません?」とこぼしている。「同感!しかもこの忙しさはなんてこった!」と返そうと思ったが、身体をねじられたままで声が出ず、心の中で毒づいていた。年明け早々からトランプ大統領はベネズエラで派手に軍事作戦を展開させたし、国内では高市首相がまさかの国会冒頭解散をもくろんでいる。

 この年末年始は十分に休みを取った。久々に郷里では高校時代の野球部同級会もやったし、母ともゆっくり会うことができた。自宅ではソファにひっくり返ってドラマ三昧と、十分に英気を養ったはずだった。
 ところが仕事始めからの2週間、あふれかえったニュースの数々に必死に対処するうちにそんな余裕は使い果たし、重い体を引きずりつつも仕事モードは全開だ。
 身体が忙しいと頭の中もせわしく回転し始める。選挙の特番に向けて前回の衆院選の結果を急いで復習しなきゃ。おっと、トランプ政権からちょうど1年だ。激動のアメリカにも飛んで取材がしたい。そうだ、ウクライナでの戦争はまもなく4年になる。じっとしていられない。あれもこれも考え出して頭が沸騰し始める。

 でも、身体はひとつであり、あれもこれもやりたいと無理を言ったらスタッフに迷惑をかける。本当に沸騰して熱でも出そうものなら番組に穴をあけてしまう。こういう時こそ、ひと呼吸おいて冷静にならなければならない。そして、そのやり方を僕は知っているはずだった。そこには野球の経験が生きている。

 大学の野球部時代、本職は投手だったが、本当にやりたかったのはショートかセカンド。難しいバウンドを捕球して矢のような送球…そんな内野手の姿への憧れは消えなかった。
 だから、投手の分際で、他の選手の打撃練習のときには、呼ばれもしないのに内野の守備に入り、ゴロをさばく練習にいそしんだ。そしてコツに気づいたのだ。
 それは、肩の力を抜くということだった。当り前と言えば当たり前なのだが、こういうことだ。打者のスイングの瞬間に、通常、野手は腰を落とし、体勢を低くしてつま先へと体重を移動する。打球に素早く反応するためだという。だが、考えてみると、実際に飛んでくる打球は方向も強さも千差万別なのであり、前のめりの構えは結局もう一度立て直すことにもなる。それは結局無駄になるのではないか、と僕は考えたわけだ。
 そこで、真逆の考えをしてみた。打者のスィングの瞬間はむしろ全身の力を抜く。ふにゃふにゃになるような、無心の構えである。それこそミスなく柔軟にゴロをさばく境地だと気づいたわけだ。ただ、実際にリーグ戦で内野のポジションにつくことはなく、この独自の理論を証明することはなかったわけだが。

 仕事のことで頭がいっぱいの僕は、整骨院で腰の痛みが少しとれたことも手伝って、全てを忘れて散歩に出ることにした。前のめりの体勢を立て直して無心に戻ることこそ大事。仕事や生活でも実践しよう。
 寒さの中休みというか、昼間はぽかぽかと暖かい。散歩コースでは、もうロウバイ(蝋梅)が黄色い鮮やかな花を咲かせ、強い香りを放っている。いつもより開花が早い気がするのは温暖化のせいか。

②

 いいぞ。外の空気に触れて花を愛でるなんて、心が平静を取り戻している証拠だ。足取りがどんどん軽くなっていくのが分かる。そして実際、速度も上がっていった。スマートウォッチをチェックしながら、いつもはだいたい1キロ12分をめどに歩くのが、この日は1キロ11分台前半のペースで来ている。
 ところが、これが自分の心を乱した。陸上選手でもないのに記録(?)への野心が芽生えたのである。登り坂になるとさらにアドレナリンが出た。箱根の山の神、青山学院大の黒田朝日選手にすっかり自分を重ねてしまっている。次の1キロはとうとう10分台の後半が出た。5キロくらいの散歩のつもりが、もっと歩こうと欲が出る。

 速足になるのに合わせて、また脳ミソがぐるぐる回り始めた。
 スタジオに各党の党首を招く機会がまたありそうだ。日中関係は高市首相にどう質問しようか。新党の中道改革連合は野田さん?それとも斉藤さん?それも調整しなきゃ。各党の消費税への向き合い方をきちんと整理しなきゃ。それにしてもトランプ大統領は何を考えているのか。グリーンランドを本当に手に入れるつもりか。イランへのちょっかいはまだ続けるのか…。

 全てを無にして心身を軽くしようと散歩に出たのに、10キロ近くも歩いてしまい、すっかりオーバーワークである。帰ってきたときには身体も頭の中もヘトヘトだった。
 ひとりで力んだり緩んだりしている僕とは違い、コタローはいつもマイペースである。心から日向ぼっこを愛しているのだ、彼は。

①

 まあ、多少の力みは仕方ないにしても、週明けからはできるだけ自然体で仕事に臨もう。自分の仕事は、事実をできるだけ忠実に伝えることにあるわけだから、感情移入はほどほどにしないと。
 ところで、とカレンダーを見た。なんと、まだ1月18日である。仕事初めからまだ2週間しか経っていない。やっぱり1月は長いよ、ホントに。

(2026年1月18日)

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