チャッピー
2023年04月17日

 ♪チャッピーはね 「対話型AI Chat GPT」というんだ ほんとはね
 だけどメンドくさいから 安藤アナがチャッピーと呼ぶんだよ
 かわいいね チャッピー♪
 ※童謡「さっちゃん」の替え歌で歌ってみましょう。

 それにしても、とうとうここまで進化したかというのが、このChat GPTだ。
 聞きたいこと、知りたいことを素直に打ち込めば、最適な(とAIが考える)答えを教えてくれる。パソコンなりスマホで、手順に従ってだれでも自由に使える。その答えは、かなり理路整然としている一方、チグハグなところもあるというのが僕の実感である。
 例えば、「ロシアのウクライナ侵攻をやめさせる効果的な方法について考えを聞かせてください」と打ち込むと、こんな答えが返ってきた(不肖、人間である私が一部要約させてもらいます)。

 複数の方法がありますが、以下はその中でも一部の方法です。
1.他国間の圧力の強化。制裁の強化、政治的圧力、外交交渉などを行い、ロシアが自らの行動を再考するよう求めることができます。
2.軍事力の行使。ただしこれは非常に危険な方法であり、最後の手段として考える必要があります。
3.ウクライナに対する支援の拡大。軍事援助、経済支援、人道支援などを提供することにより、ウクライナ政府はロシアに対して抵抗することができます。
 以上の方法は、考えられる方法の一部です。ただし、解決策を見つけるためには多くの国際的な協力が必要であり、この問題を解決するには時間がかかるかもしれません。

 どうでしょう、みなさん。これがChat GPTの答えです。模範的過ぎるほど模範的。いくつか事例を挙げつつも、これらは方法の一部であり、解決には時間がかかるかもしれないと留保をつけているあたりも秀逸、というか人間的ですらある。
 ♪かしこいね チャッピー♪

 こういうものが登場すると、悪乗りして遊んでしまうのが人間の性(さが)であり、僕の同僚が、「大越健介さんってどういう人?」とChat GPTに直球質問してみた。その答えは驚きだった。要約するとこうである。

 大越健介さんは1992年生まれ、神奈川県出身。モデル、俳優。ファッション誌「メンズノンノ」の人気モデルとして活躍後、舞台「リア王」の主役を務めるなど、俳優としても活躍しています。

 その場は大爆笑になった。生まれた年も出身地も違う。まさか舞台「リア王」の主役を務めた経験はないし、「メンズノンノ」の人気モデルだったこともない。いや、まいった。これでは、僕のことを俳優とかモデルとか勘違いする人が現れかねない。サインでもねだられたらどうしよう。
 ♪おかしいね チャッピー♪

 週が明けて、Chat GPTもちょっとは学習したかもしれないと思って、今度は自分で「大越健介さんってどういう人?」と打ち込んでみた。するとその答えはあっけないものだった。

01

 それはないだろう。あれだけ持ち上げておいて、この落とし方はどういうことだ。人気モデルではなかったのか。舞台で主役を務めるほどの俳優に成長した人ではないのか。それなのに、「私の知る限り存在しません」とはどういう言い草か。

 AIを相手に感情的になったせいか、意識が空中をおかしな感じでさまよい始めた。
 自分はこうやって報道ステーションのキャスターを務めているが、もともとは俳優なのではないか。今は報ステに打ち込むために、俳優業を休んでいるだけではないのか。
 過去のことにしてもそうだ。若いころ、自分にはモデルの誘いを受けていたかもしれない。実際モデルとして表紙を飾ったことがあったような気もしてきた。いや、そうに違いない…。
 ちょっと待て。鏡を見よう。落ち着いて見ればわかる。このずんぐりとした僕がモデルから俳優になった人間であるはずはない。危なく自分を勘違いするところだった。まったく。
 ♪おっかないね チャッピー♪

 これだけわかりやすく混乱する人間はまずいないだろうが、巧みに言葉を操るAIの登場は、偽情報を拡散させたり、個人情報の収集に使われたりと、懸念も付きまとう。いずれ人間の仕事がAIにほぼ取って代わられるのではないかという本能的な恐怖とも無縁ではない。
 しかし、冷静に考えれば、やはりAIと賢く付き合っていくことは、人類にとって必須の課題なのだと思う。Chat GPTを面白がるだけでも、恐れてばかりいてもそれこそ脳がないのであって、このツールが持つ対話機能こそが使いどころなのだろう。

 日本経済新聞オピニオン欄に載った村山恵一氏の分析記事によれば、「問いを発して答えを受け、さらに突っ込んで聞く。対話によって徐々に考えがまとまり、意外な着想につながる感覚がある。一方的に何かを教えるのではなく、こちらの知的活動を刺激する道具にみえる」とある。

 なるほどその通りだ。「大越健介さんってどういう人?」などと、単純極まりない問いを発して、一方的に喜んだり落ち込んだりするのは愚の骨頂ということになる。Chat GPTを、私たちの思考を磨き上げる相棒として使いながら、人間の可能性を伸ばすことこそ、大切なのだろう。
 ♪よろしくね チャッピー♪ 

(2023年4月17日)

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