幻夢は人類の希望だ。
遥かなる太古の昔から夢に描いていた。
飛行能力も、永遠の命も、この私は叶えることができた。
そして今、もう一つ。
私には夢がある。
それは幼い頃、誰もが憧れたヒーローへの変身だ。
本来一人一人が生まれながらに誰かのヒーローなのだ。
大人になると、みんなその純粋な気持ちを忘れてしまう。
閉塞した社会の中で歯車と化し、目的を失い、生きる意味がぼやけてきてしまっている。
勇気を出さないことに慣れ、その使い方を忘れてしまっている。
それではいけない。
それぞれがあの頃もっていた万能感を思い出し、特別な人間であることを自覚し、
充実した日々を取り戻して欲しかった。
自分は誰かに必要とされている。
自分は誰かを守ることができる。
その臨場感を強く感じて欲しかった。
誰かがやらなければならない。
そして私にはその才能がある。
才能を持って生まれたものには、それを全うする責任がある。
多少の犠牲を払ってでも、この仮面ライダークロニクルを完成させることは、
全人類の希望となるはずだった。
しかし、私は倒れた。
人類の希望を前に、それを阻止する者たちによって倒されたのだ。
私は、私の開発したゲームで変わっていく世界を見てみたかった。
退屈に過ぎていくだけの日常から、生の実感が溢れる毎日へ。
人類が変わるその瞬間を見てみたかった。
私の夢は叶わなかったが、私のいなくなった未来を生きる人類には強くあって欲しい。
臆病風に吹かれそうなとき、
逃げ出したくなりそうなとき、
ボロボロになりながらも何度でも立ち上がり、
強く生き抜いたゲンムを思い出してほしい。
人間は自分たちが思っている以上に強い。
理不尽なことに負けないよう、
弱き人たちに手を差し伸べることができるよう、
未来を生きるあなたたちには強くあってほしい。
完璧な人間はいない。
どんなに完璧に見える人でも、取り乱すし、見苦しく泣きわめくし、
しがみついていつだって必死に生きている。
実力不足でも、周りから笑われても、滑稽に映ったって構わない。
ゾンビのように何度でも立ち上がることができる強さを、
それぞれがもっていることを忘れないで欲しい。
あなたが立ち上がることで、勇気をもらえる人はたくさんいるんだ。
最後に、神の才能を持ちながら不死身の力を過信し、
ゲームマスターとしてこの世界の最前線にいる私がそのシステムにメスを入れられ、
さらには自分で分離させた自らの死のデータによって、
人類の希望を前に志半ばで倒れたことを心より恥じる。
3/19が黎斗の命日となりました。
長い冬が終わり、
もうすこしで春がくる。
出会いと別れがあり、
希望と不安を胸に、
新しい生活がはじまる。
素敵な季節ですね。
たくさんの愉快なメンバーに恵まれて、とても幸せな半年間でした。
これから先の人生のいろいろな場面で、檀黎斗を通して出会えたたくさんの人たちに、
何度も背中を押してもらえることになると思います。
応援してくれたみなさん、本当にありがとうございました!