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【開催報告】第4回メディアフォーラム『震災報道を考える』

投稿日:2015年03月03日 11:50

看板

2月27日(金)浜離宮朝日ホール・小ホールにて、テレビ朝日×朝日新聞 第4回メディアフォーラム『震災報道を考える』を開催しました。

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4回目となる今回は、発災から4年を契機に、東日本大震災が引き起こした大災害が残した教訓、そしてその後の社会の変化に焦点をあて、新聞・テレビそれぞれの立場から発表。会場の皆様と意見交換をし、この4年間、メディアはどう伝えてきたのか、役割をきちんとはたしてきたのか・・・また、これから先、どのような役割が求められているか、じっくり考えた3時間でした。
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コーディネーターは池上彰さん
司会は下平さやかアナウンサーが務めました。

まずはじめに、メディアフォーラム第1回~第3回までのダイジェストをVTRで紹介し、池上さんと一緒に振り返っていきました。

『はい!テレビ朝日です』HPでもバックナンバーより過去の動画配信を見ることができます。

 

――――
◆◇◆ 取材現場からの報告 ◆◇◆
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朝日新聞 仙台総局編集委員・石橋英昭記者福島放送・笠置わか菜アナウンサーによる取材報告です。

【~仙台からの報告~「復興の時間差・格差」】 

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石橋記者は、東日本大震災が起きた2011年当時は論説委員で、震災関連の社説も担当。それが一つのきっかけとなり、東北勤務を希望し、2013年9月から仙台総局記者として取材を続けています。

■自治体の間で広がる復興の格差

まずは、震災後初めて生まれたニュータウン「玉浦西」を紹介。
「玉浦西」は、大津波で壊滅的な被害を受けた海沿いの6つの集落が、1つにまとまり移ってきた場所。6つの集落の人々は、震災直後から将来の相談を始め、集団移転の場所を決め、行政と一緒にまちづくりを進めてきた。震災から街の完成までは4年。実際にこの街に住むのは6割弱ですが、この4月には約360世帯、1,000人が住む新しい街がいよいよ始動します。

一方で、9メートルを超える津波に襲われ、もっとも復興が遅れているといわれている「名取市の閖上」は、内陸への集団移転の方法はとらず、もとの土地を約5メートルの高さまでかさ上げし、その上に街の再建を目指している市と住民の意見が食い違い、何度も計画を修正。その分、工事の着手が遅れ、昨年の10月にようやく土地区画整理事業の起工式が行われたばかり。完成見込みは2018年12月。

「被災地では場所によって、時計の進み方がこんなにも違っている。被災の程度が違うことに加え、地形の条件や、自治体の規模、行政の進め方など、要因はさまざまだが、同じ災害で同じつらい思いをした被災者にとっては、住んでいた場所によって復興の格差が開いてゆくことは、残酷だなと感じている。また、各地で大量の復興事業が同時多発的に行われる中で、建設資材や作業員の不足、工事費の値上がり、さらには2020年の東京オリンピックに向けた首都圏での工事増加・・・と、東北の復興がますます遅れるのではないかと心配されている」と話しました。

■仮設に取り残される人たち

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自力で家を建てたり、災害公営住宅もできあがり、一人、またひとりと、仮設住宅を出ていく人が増え、1月末の時点で3割近い部屋が空き部屋になっています。そうした中、宮城県内では未だ3万5千人余りの人がプレハブ仮設住宅で暮らし続けています。一人暮らしのお年寄り、母子家庭、病気の人や障害者を抱えた家庭、震災で仕事を失い次が見つからないなど・・・。暮らしの再建のめどが立たずに、周囲から孤立していることが多く、仮設住宅の催しにも出てこなくなってるのです。

被災者の間にじわりと広がっている生活困窮。
全体からみれば一部とはいえ、そうした人たちのためのセーフティーネットをどう築くかが、被災地の自治体や支援団体の間で大きな課題になりつつあるといいます。

「自治体の間で広がる復興の格差と、先に再建を遂げた人と取り残される人の間で広がる格差。被災地の実情は一言では語れなくなっている。『復興が進んでいる』とも『復興が遅れている』とも言い切れない。『復興』という言葉をたくさん使ってきたが、我々の震災報道は、復興というゴールではない。東北が、日本全体が、あの震災で経験したこと、失ったもの、得たものを問い続け、目の前で起きている復興の複雑さに向き合いつつ、復興を超えて、何を東北から書き続けてゆくかも、考えてゆきたい」

 

【~福島からの報告~「母親たちの選択」】

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笠置アナは、「ふくしまスーパーJチャンネル」のMC(水・木・金)を担当。東日本大震災翌日、津波に襲われ水没した仙台空港、病院の屋上に取り残された人々が助けを求める様子などをANN系列で初めてヘリからリポート。また、福島第一原発事故で県外避難を続けた家族が自宅に戻るまでを長期間にわたり取材してきました。

■震災発生当時の状況と今

地震発生時、情報カメラは津波で壊れ、仙台空港にあるヘリも被災し飛ばすことができなかったため、海沿いの情報がまったく入ってこない状況が続いていました。翌朝6時、笠置アナは日の出とともに東京からやってきたヘリに乗りこみます。実際の映像とともに当時の状況を話しました。

「まず向かったのは7.3メートルの津波を観測した相馬市松川浦。GPS上の地図には、確かに街が広がっている場所なのに、眼下に見えるのはガレキと海だけ。変わり果てた光景がひろがっていた。海の色は真っ黒、濃い茶色、薄い茶色の3色だったのをよく覚えている。いたるところで煙や炎があがっている中で、水に浸かっていた病院を見つけると、屋上には『HELP』『食糧』と書かれた紙を掲げ、必死に助けを求める人々の姿…。見えるものをただ言葉にすることしかできないもどかしさを感じた。」

時を経て、昨年、ヘリでもう一度同じルートを辿った時には、「あの時の病院は、診察を再開しているものの、ひっそりとしていて屋上には誰もいなかった。逆に、当時静まり返っていた仙台空港は人々でにぎわっていた。これが本来の光景だったのか…」と、ようやくかつてのにぎわいを取り戻しているように感じたといいます。

しかし、南下していくと様子は一変。「原発近くの街には田んぼに朽ち果てた漁船が・・・。1隻や2隻ではなく、ほんとに数えきれないほどたくさん。」浪江町で船の撤去作業が始まったのは昨年11月で、3年8か月が経ってようやくのこと。「上空から見ると、福島の復興が遅れているということが浮彫になって見えた」と話しました。

■母親たちの選択~県外避難~

ND3_1548福島第一原発事故で県外避難をした家族がたくさんいます。
笠置アナが取材を続けてきた中村さんは、避難区域外に住んでいましたが、幼い3人の娘を放射線から守るため、郡山市から山形県へと自主避難。父親と離ればなれの生活が続いていましたが、去年4人目の子供を授かり「もう一度家族一緒に住みたい」という思いから2年7か月ぶりに福島県へ戻ってきました。「元のコミュニティに戻れるだろうか」と不安を抱えながらも、久しぶりのふるさとに、「空や景色がきらきらして見える。離れていた分、ふるさとが愛おしくて仕方ないですね。」笑顔で話している姿が印象的なVTRを紹介しました。

中村さんのように、帰還する家族が年々増えてきています。しかし、各家庭それぞれの問題があり、決して前向きな理由ではない場合もあるといいます。

「長引く非難生活で経済的に帰還せざるを得ない家族、避難先で子供がいじめにあってしまった家族など、抱えている問題は様々。また、福島県民の6.1%にあたる12万人の人々が今もなお避難を続けています。自主避難の問題だけをとっても、これだけ様々な思いが入り組む中、福島の抱える課題は他にもたくさんある。前にすすむ人はどんどん進んでいくのに、時が止まったままの人もいる。福島県内でも温度差があり、複雑化していく中で、地元のテレビ局に求められるもの…。とにかくひとつひとつの声を届けていくことに尽きるのではないか。」と、今後も福島から全国に伝えていきたいと力強く語りました。

 


◆◇◆ パネル・ディスカッション ◆◇◆

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後半は、藤代裕之さん(ジャーナリスト)、白石草さん(OurPlanetTV 代表)、長典俊さん(朝日新聞 ゼネラルエディター兼編成局長)、水谷寿彦さん(テレビ朝日報道局ニュースセンター社会部デスク)のパネリスト4人が加わって、活発な話し合いが行われました。

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藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)さん
震災以来、岩手県で地域~と立ち上げるボランティアや、ボランティア情報をインターネット上にあげて、人々を被災地域へと送る活動をしてきた。何度も被災地に取材に行っていて、メディアは「東北」「復興」にフォーカスしすぎているのではないかと感じている。東北の代弁者であると思うが、他の地域でも起きている災害、人口減少、空き家問題などとどうリンクしていくのか…日々たくさんの問題や災害が次々と起きている中で、そういった視点が大切だと思う。他の地域の人々も共通項を学びとして、自分自身の問題として考えられるような報道をするべきではないか。

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白石草(しらいし・はじめ)さん
2001年から活動しているインターネット上のメディア「OurPlanetTV」で、地上波のテレビでは放送しにくい問題も取り上げて放送してきた。震災以降は主に原発事故の問題や南相馬の中学校の子供たちを取材したドキュメンタリーを制作。取材報告にもあったコミュニティー間での意見の違いなど、あらゆる面で問題となる「分断」が起きているのも、政府が決定したものによって「分断させられている」ように感じた。これからの被害を懸念するなかで、国の政策と住民の考えがあって、複雑化している。震災関連も普段の行政と同じで「タテ割り」となってしまい、全体をとらえることが難しくなっているのではないか。メディアはここをどう乗り越えるかが大切だと思う。

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長典俊(ちょう・のりとし)さん
朝日新聞では、「復興」「原発報道」と両方の面から取材を続けている。この1年は、5年という集中復興期間の最後の年。東京からみられる「他人事感」「忘却」、被災地にみられる「分断」、そして「復興の遅れ」とさまざまな問題があるが、現場の記者からは、「町の復興」なのか「人の復興」なのかという問いかけが多い。町の整備が本当に人の幸せなのか…。町ではなく、人そのものに対する支援を優先するべきではないのか…。本当に今のままの復興の在り方でいいのか、また、全国紙の立場として、これまで我々が報じてきたやり方なども含め、改めてこの1年集中的に見直し、考えていかなればならないと思っている。

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水谷寿彦(みずたに・としひこ)さん
毎年感じているが、だんだん現場の状況が複雑化している。現地へ行くと、状況が様変わりしていて、当時の被害を物語るものがなくなっている。また、私自身これまで何十回と津波の映像を目にしてきたにも関わらず、見るたびに強い衝撃を受け、1年経たずとも人の記憶は少なからず薄れているのだと感じた。メディアには後世に伝えていく義務がある。どういう形で伝えていくのが良いのか…。“何年か前に起きた東北の問題”というのではなく、全国に向かってニュースを発信していく中で、「普遍化」させてみなさんに自分自身の問題として捉えてもらうにはどのような番組を作ればいいのか、日々悩んでいる。

 

また、今回も会場のみなさんから「コメントシート」を回収し、たくさんの意見をいただきました。

福島県に住んでいて感じることは、現在、福島とは違う場所で暮らしている人々が、どのくらい福島について知っているのかわからないということ。福島の若者がボランティアをして、もっと小さな子供たちを元気づけるために、地域を活性化するために、何をしているのか。暗いニュースを伝えるだけでなく、復興の歩みの面で、目に見えない心の復興の面も知ってほしい。

誰が被災者で誰がそうでないのかは難しいと感じていた。私も3月11日の地震発生時は仙台駅にいて、生まれて初めて「死」を近くに感じました。でも、津波は見ていません。大学入試で、東京に来てからは、「宮城県出身=被災者」とみられることも多くありました。私にできること、考えさせられます。

昨今ほしい情報はインターネットでひろう時代になっていると感じています。だからこそ、読者・視聴者のニーズをひろっていくべきではないでしょうか?全国紙・全国キー局だからこその影響力はあると感じているからです。

その数、147枚。これらのコメントを紹介しながら、パネリストの挙げた「問題提起」を掘り下げ、「メディアの役割」についてさらにディスカッションを深めていきました。

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ND3_16744回連続で「メディアフォーラム」のコーディネーターを務めた池上さんは、「4回目となると、参加者が減るのではと思っていたが、今回も幅広い年代の方がきてくれて嬉しい。若い人はこれから何をしていけばいいのかという問題意識をもっているし、年配の方は後世にどうやって伝えていけばいいのかという意識がある。メディアは今日みなさんの声を胸に刻まなければいけない。“今何が起きているのか”をきちんと伝える中で、復興の在り方についても現実をリアルに見て、あえて厳しいことも伝え、人々の記憶に残すために記録していかなければいけない。メディアの連携もひとつのテーマ。そして、被災を語ることによって、次の災害を防がなければいけない。これまでの教訓をどう活かしていくかを考え、全国に伝えていく。それがメディアの役割ではないかと改めて感じた。」と締めくくりました。

 

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この模様は、3月15日(日)・22日(日)・29日(日)の
『はい!テレビ朝日です』で3回にわたって放送予定!
(*番組は関東ローカル 放送翌日18時から公式HPで動画配信します。)
朝日新聞では、3月11日(水)朝刊別刷りに掲載予定です!
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