4月22日(土)、東京大学 伊藤国際学術研究センターで開催した、テレビ朝日と朝日新聞共催の「第6回メディアフォーラム “情報をどう受け止め、発信するか”」。
当日の模様を詳しくお届けします!
今回のテーマは“情報”。
インターネットの普及により、誰もが手軽に情報を入手し発信できるようになった一方で、間違った情報や、悪意のある情報が意図的に流される事態も起きています。
そうした中、新聞・テレビなどのメディアはどのような役割を果たせばいいのか、読者・視聴者はどんなことに注意したらよいかを考えました。
討論のコーディネーターは、6年連続で池上彰さん。司会も6年連続でテレビ朝日の下平さやかアナウンサーが担当。
パネリストの、評論家の荻上 チキさん、哲学者・津田塾大学教授の萱野 稔人さん、朝日新聞社の中村 史郎ゼネラルエディター兼東京本社編成局長、テレビ朝日報道局の小木 哲朗AbemaNews担当局長ら4人が白熱した議論を交わしました。
*『はい!テレビ朝日です』HPで動画配信を見ることができます。
◆◇◆問題提起-池上彰さん-◆◇◆
「2016年、最も注目された英単語は「ポスト・トゥルース」。これは、みんながその話に興味を持つかどうかが大事で、真実かどうかは二の次だ、という言葉です。
そして、アメリカの大統領選では「フェイク(偽)ニュース」という言葉が飛び交いました。偽ニュースを作って広告収入でもうける人がいたり、米・仏大統領選ではロシアから偽ニュースが出てきたりとも言われています。
米大統領選の報道では、日米のメディアに反省すべきことが多いと思います。米の有力メディアはトランプ氏が言う「忘れられた人々」の思いをすくい取ることに失敗し、日本のメディアもそれを鵜呑みにしたのではないでしょうか。
政治がメディアを介さず、直接ツイッターで国民に呼びかけられる時代です。自分の見たいものだけを見ているといった中で、情報の送り手であるテレビや新聞はどんな役割を果たせるのでしょうか」
◆◇◆討論◆◇◆
「国会で同じ答弁を見ても、左派のメディアは「大臣が逃げている」といい、右派のメディアは「野党ががつまらない質問で時間稼ぎしている」と報じ方が違う。ポストトゥルースというが、真実だけが伝えられた時代なんてあったのか。ネット社会になってフェイクニュースが氾濫したのではなく、もともとあったジャーナリズムの課題が、ネット社会によってあぶりだされたのだと思う」
「ポストトゥルース、フェイクニュースという言葉が出てくること自体、既存のリベラルなメディアに対する大きな批判が込められている。『困ったヤツらが出てきた』という論調だけで片付けてきたのではないか。見たいものしか見ていないのは、オールドメディアも同じなのでは」
「私たちが発信したいように発信しているというわけでは必ずしもない。その方が本質的だと我々なりの考え方を載せて発信する必要があると思うからだ。一方都合のよいように発信していると思われると説得力を失うので、以前に比べてずいぶん注意して考えながらやっている」
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「我々が物事を見たいように見ているという指摘は、ちょっと納得がいかない。トランプ氏の勝利は、彼の天才性、先見性に米国の既存メディアが負けたということではないのか。新聞各紙には主観的な要素があり、報道・情報番組にも主観を交えて話すコメンテーターがいる。AbemaNewsが意識しているのは、会見をそのまま流し、視聴者の皆さんに判断してもらうことだ」
◆◇◆質疑応答◆◇◆
会場の大学生からは「新聞はそれぞれ視点が異なっていて、何が正しいのか分からない」という質問が。
これに対して池上さんは、「新聞全紙を見ようとせず、一紙を購読し、事実を自分なりに組み立てることが大切」、荻上さんは、「まずは社説を読み比べてみて」とアドバイスしました。
また、今回も会場のみなさんから「コメントシート」を回収し、たくさんのご意見をいただきました。
■私自信、“本当のことを知りたい”というものもありますが、“(Fakeであっても)衝撃的な内容・映像も見たい”ということもあります。ネット検索は、フェイクも頭にいれていますが、大勢の意見だと、真実であるとおもってしまう傾向があります。(40代・助産師)
■私たちのような中学生は、LINEニュースなどがよく友人の間で話題に出ます。学校があるので、ゆっくり新聞やテレビを見られないため、ある一部の情報だけに偏った考えを持ってしまうこともあります。(10代・中学生)
■結局は、一人ひとりが多角的な視点を持って、事象を判断するしかないのではないでしょうか?メディア・ジャーナリストは完全な中立にはなれないと思います。(30代・団体職員)
■「情報をどう受け止め、発信するか」について、学校教育においてきちんと教える必要があると思います。情報の真偽の見分け方、情報発信の責任に関して基礎知識を市民として持つ必要があります。(60代・玉子焼職人)
最後に司会の下平アナウンサーは「情報は、だれが作っているのかが分かると安心する食べ物の流通に似ている」と感想を述べました。池上さんは「情報のトレーサビリティ(生産履歴管理)が大事。情報を誰が作ったのかが分かる、ということが改めて求められている」と締めくくりました。
当日は小学校高学年から70代以上までの幅広い年代が、熱心に討論を聞き、意見を寄せてくださいました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました!