8月25日(月)26日(火)の2日間、高校生を対象に『夏休みメディア講座』を開催し、抽選で選ばれた高校生28名が参加しました!
築地にある朝日新聞社とテレビ朝日、両方の館内見学を通し、「放送の仕組みはどうなっているのだろう?」「新聞ってどう作られるのだろう?」楽しみながらテレビ局と新聞社それぞれの特性や違いを体験。さらに社員による講演会とワークショップを実施し、スタッフも一緒になってみんなでメディアについて語り合いました
一日目: 朝日新聞社
朝日新聞では、「新聞ができるまで」のDVDを鑑賞後、報道・編成局、地域面編集センター、印刷工場、発送室を見学。
実際に記者のみなさんが働いてる部屋の中を通り仕事している様子を見て生の雰囲気を実感したり、新聞の歴史や印刷のしくみも学びました。
◆講演「新聞記者の仕事って?」
見学後は、朝日新聞 東京本社 社会部 二階堂祐介 記者による「新聞記者の仕事って?」と題した講演。
二階堂記者は、社会部で10年以上、事件事故を扱う警察担当、気象や災害を取材する災害担当、様々なジャンルを取材する遊軍担当などを経験してきました。
これまでたくさんの取材をしてきた中でも、今回は二階堂記者が書いた2つの新聞記事を紹介しながら当時の状況、記者の仕事を語りました。
まず1つ目は2008年「秋葉原無差別殺傷事件」
普段から付き合いのある取材先の方から「秋葉原が大変なことになっている」と連絡を受け、たまたまタクシーで近くを走っていた二階堂記者はすぐに現場に向かいました。
秋葉原に着くと、とにかく人だかりで状況が全くわからなかったといいます。
「一体何が起きたのか」
ここで、記者としてまず最初にするべきことは「何があったのかを知ること」。
情報を集めて事件の概要を伝えるために取材をします。
「とにかく目撃者を探し聞き込みをし、点と点を線でつなげていき、ようやく『いつ、どこで、誰が、何を、どのように』ということがわかった。また、こういった事件で重要になるポイントが『犯人は逮捕されたのか』ということ。警察官はなかなか話をしてくれないが、何度も話を聞き「犯人は1人で、すでに逮捕されている」「共犯者はいない」という情報を得ることができた。」
この日はちょうど新聞が休刊の日でしたが、「犯人はどんな人なのか、いつから事件を起こそうと思っていたのか、どうやって事件の準備をしたのか。そして、現場でなにがあったのか。被害者は誰でどんな人なのか。被害者の家族は・・などなど」記者が手分けをして全国を飛び回り取材をし、号外としてみなさまに伝えられました。
2つ目は2011年「東日本大震災」
当時、気象庁担当だった二階堂記者は、地震発生時も気象庁の中にいました。
揺れが大きいというだけではなく、「明らかに気象庁全体の空気がいつもと違った」といいます。
「気象庁の人もどこで何が起きたのかわからないほどの状況でした。どうやら地震によって地震計や津波測定器が壊れ、データが気象庁に送られてこない。僕自身、震災の全容を知ったのはテレビの映像でした。」
その後、現地に取材に入った二階堂記者が着眼したのは「海の目の前に立つビル」。
「実はこのビルは“津波避難ビル”として地元の人に知られていたそう。海の目の前なのに!?と思うかもしれませんが、当時この近くで遊んでいた男の子たちはこのビルの最上階に向かって逃げて助かったのです。もし、男の子たちが自転車で内陸のほうに逃げていたら、すぐに津波に追いつかれてのみこまれてしまったかもしれない・・。海の目の前だから危険と思いがちだが、津波は横に逃げるよりも垂直に逃げるべきだということ伝えたかった。」
と、実際に掲載した記事を見せながら当時の取材背景を語りました。
◆ワークショップ「記事を書いてみよう」
二階堂記者の「記者としての着眼点」「原稿を書くポイント」を聞いたところで、実際にみんなで記事を書いてみました。
新聞記事を書くときは「5W1H」「大切なことは最初に」という朝日新聞社のスタッフからアドバイスもあり、早速模擬プレスリリースと模擬映像をもとに、自分がそこに取材に行ったつもりになって記者体験!
さすが高校生。どんどんペンが進みます。
情報を的確にまとめ、取材した住民の気持ちを盛り込み、そのまま新聞に載せられそうなものもあり、それぞれの発表では自然と拍手が沸き起こりました!
二日目:テレビ朝日
二日目もまずは、館内見学からスタート!
2グループに分かれて、ウェザーセンター、コーポレートデザインセンター(美術)、『スーパーJチャンネル』『報道ステーション』の収録が行われる第4スタジオ、『ワイド!スクランブル』を放送している第5スタジオ、サブ(副調整室)、ニュースフロアーを見学し、番組がどのように作られているのか、どのように放送されているのかを学んでもらいました。
◆講演「君はテレビが好きか?」
見学後は、報道局『報道ステーション』若林邦彦EP(=エグゼクティブプロデューサー)による講演。まず、タイトル通り「テレビは好きですか?」とみんなに問いかけると・・
ほとんどの子が手を挙げてくれて、「まだまだテレビは大丈夫だ!」若林EPもホッと一安心した様子でテレビとネット、新聞の関係について話しました。
「最近はネットが普及していて、テレビと比較されることも多いけれど、僕はテレビとネットは対立ではなく共存すべきだと思う。」
また、それぞれの大きな違いは「制約」だといいます。
「たとえば、ネットはいつでも好きなだけ書けるし動画も流せる。でも新聞には“字数”という制約、テレビには“放送時間”という制約があります。限られた時間の中で何をやるべきなのか、僕らはたくさんの情報の中から選びとって放送をしています。選ぶということは何かを捨てなければなりません。『NEWS』は文字通り『新しい出来事』を伝えなければならない」と語り、担当する番組『報道ステーション』ができるまでの裏側に密着したVTRを見せました。
1つの番組をつくるにはたくさんの人が動いていること、連携プレーと生放送の緊迫した映像に高校生のみなさんにも緊張感が伝わります。
この「画面から伝わる熱量」をずっと大切にして番組をつくっていると語るなかで、若林EPは自身が報道局で新人記者の頃のエピソード話しました。
「当時の総理大臣、田中角栄被告が『ロッキード事件』で収賄と外国為替・外国貿易管理法違反の疑いがあると逮捕された事件の判決の日。私は判決を法廷で聞き、すぐに結果を中継するという役割りでした。法廷は7階でテレビ中継カメラは120メートル離れた入口に設置してある状況。『早く伝えなければ』の一心で階段を駆け下り、民放で一番早く判決を伝えることができました。」
その時、上司に「良かったよ!」と褒められたそうですが、若林EPは「走っただけなのに・・」となぜ褒められるのか分からなかったといい、「今思えば、とにかく伝えることに一生懸命になっていた僕の思いが画面から伝わっていたのだと思う。」と話しました。
最近テレビ離れがおきているといわれていますが、「こういった『熱量』をテレビ画面に出せるコンテンツ(番組)を作り続けられる限りは、テレビは大丈夫だと思っている。これからもその思いを大切に番組をつくっていきたい」と語りました。
◆ワークショップ「テレビ・パズル」
A~Eの5つのグループに分かれ、見学前に真っ白な気持ちで描いてもらった「新聞」と「テレビ」の絵を材料に、みんなで今回のメディア講座を通して感じたこと、考えたことをグループで話し合いました。
各グループには、テレビ朝日(お客様フロント部)、朝日新聞(CSR推進部)のスタッフも参加しました。
最後に、話し合ったことをグループごとに発表。
同じ「新聞とテレビ」というテーマで行ったパズルですが、各グループ異なる視点からメディアを見つめ、短い時間の中で様々な意見をだしてくれました。