「子供のころのまま楽しく過ごしたっていい」M-1決勝に進出したカナメストーンが、ずっと友達でいられる理由|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#44

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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『M-1グランプリ2025』、敗者復活戦から勝ち上がり、ファイナリストとなったカナメストーン。結成15年、最後の挑戦で、初めてにして最後の決勝で披露した、かわいげと狂気がミックスされたネタで、視聴者に強烈な印象を残した。

中学時代の同級生で結成した彼らは、ずっと同居しながら、漫才を磨いてきた。漫才で人をゾクゾクさせたいというふたりに、M-1以前の歴史と、これからを語ってもらった。

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零士に見せるためにボケてた

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左から:山口誠、零士

──カナメストーンのふたりは中学時代に出会ったんですよね。そのときからお笑いは好きだった?

山口 俺はまったくでした。サッカーばっかやってて。テレビは『所さんの目がテン!』と『DASH村(ザ!鉄腕!DASH!!)』だけ。

零士 あと、あれでしょ。『(いきなり!)黄金伝説。』

山口 サバイバルものは好きだったね。あと生き物とかね。

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零士 このへんが山口にとってお笑い番組(笑)。俺はめっちゃお笑い好きの自負もあって。だからお笑いをまったく知らない山口が不思議すぎておもしろかったんですよ。

──お笑いのセオリーを外れたおもしろさ。

零士 そうです。同じサッカー部だったんですけど、普段から「え、なんでそんなことすんの?」ってことばっかだったし、試合中もふざけるんですよ。

──試合中にふざけるんですか?(笑)

零士 味方が攻めててベンチも全員ボールを目で追ってるときに、誰も見てないからって変な走り方するんですよ。俺はキーパーだったから全部見えるんだけど。

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山口 零士だけに見せるためにやってた。

零士 で、俺が「やめろ! 怒られっから!」って小声で注意するみたいな(笑)。

──零士さんは当時からいつか芸人になりたかったんですか?

零士 めっちゃ憧れてました。テレビで芸人さんたちが「いや、こないだ飲み行ったらコイツがさ……」みたいに話すのがうらやましくて。高校卒業のときに絶対に芸人になることは決めてて、山口としかやりたくないからずっと誘ってました。

──山口さんはずっと断ってた?

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山口 俺は零士と何かやりたいって気持ちはあったんですけど、同じくらいサッカーもやりたくて、大学でもサッカーをしてて。でも零士は卒業と入学のタイミングで毎回誘ってきてくれて。

零士 俺は高校卒業したらすぐ養成所に行くつもりだったんで、山口から「大学行くよ」って電話で言われたときはびっくりしました(笑)。急遽、高校からそのまま上がれる大学に行って。

──山口さん待ちの大学生活。

零士 完全に待ちの4年間です。親には「ごめん。本当にお願いします。やっぱ大学入れさせてください。絶対4年で卒業するから」っていう約束して、行かせていただきましたけど。

漫才で人をゾクゾクさせたい

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──大学時代は会ってたんですか?

山口 零士が2週間に1回(大学のあった)静岡まで遊びに来てくれるんですよ。

零士 コイツの気持ちを切らしたら俺の人生終わっちゃうんで……っていうか、一緒にいるのが普通に楽しかったんで。大学生なんていっぱい時間あるし。「あれ? お笑いやんなくても、今も楽しいのか」みたいな(笑)。

山口がプロテストを受けに行ったときは「落ちろ、落ちろ、落ちろ」って祈ってました。落ちてくれたんで「よっしゃ。NSCの願書を取り寄せたから」っつって。

山口 そこで俺もスパッとサッカーはあきらめましたね。もう完全にやりきった。お笑いもどんなもんかは知んないけど、なんか楽しそうだなと思ってたし。

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──大学時代も相変わらずお笑いは見てなかった?

零士 M-1見なよ、とは言いましたね。

山口 M-1教えてくれたの零士っす。2005年の見たほうがいいよって。

零士 ブラマヨさん(ブラックマヨネーズ)の回。すごかったから。

山口 「あの小杉(竜一)さんっていう太ったボケの人さ……」とかって話して。

零士 小杉さんってツッコミじゃないですか。それすら山口はわかってなかった。でもその感覚が斬新だし新鮮で、俺はおもしろかった。

山口 芸人になるって決めてからも、零士も「そのまんまでいいから」って言うんで、そのまんま行かせていただきますって。

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零士 これは不思議なことで、マジでお笑いを知ってないほうが、おもしろいんですよね。だから山口には好きなことだけやっててほしかった。

山口 『DASH村』とか『黄金伝説』が好きで、映画とかもバンバン人が死ぬとか、内臓が飛び出すのが好きなんで、ネタでもすぐ死ぬとか生きるとかってやっちゃう。

零士 俺らがゾクゾクさせてもらったように、人をゾクゾクさせたいから。

──敗者復活は、『エクソシスト』のテーマから始まる怪奇ネタでした。

零士 このネタも映画で見たピアノと一緒に浮いていくのおもしろいじゃんってところから作ったよな。

山口 ホラーってやたら少女だよね、みたいな。

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零士 映画も一緒に観るんですけど、めっちゃおもしろいよなって思うところがだいたい同じで。こないだ観に行った映画も、おばあちゃんが若い子に嫉妬して殺しちゃうんすよ。で、殺したあと、昔習ってたバレエを急に踊り出す。それがめっちゃおもしろくて。

山口 車のライトに照らされながらな。

零士 怖いっていうより、おもしろくなっちゃうんですよね。

──ネタ作りもふたりでやるんですね。

零士 絶対、ふたりでいるときしか作らないです。

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──ネタ帳に書いたりは?

山口 書かなくなりましたねぇ。

零士 書くと、文字に囚われちゃう。

山口 そうだね。だから動画だけ残して。それが消えたらおしまい。

零士 で、動画見返して「こんなおもしろいボケあったっけ? コイツらおもしろ」ってなってます。

まだ倒せない『バスク』の壁

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──話を戻すと、大学卒業後はNSCに入ったと。しかし5年くらいで辞めちゃうんですよね。

山口 吉本では全然劇場にも出られなかったけど、俺らも4、5年で少しずつウケるようにはなってて。まぁ小手先だったのかもしれないけど。

零士 それまではウケてないっていっても、俺らには技術が足りないだけで、いつか絶対まくれると思ってたんです。でも『バスク』っていうライブに出て、ちょっとヤバいってなって吉本は辞めました。このまま吉本にいても出番はないし、俺らは『バスク』に出るような芸人には勝てないと思って吉本を辞めました。

──『バスク』は伝説的なライブです。Aマッソの加納さんと、阿久津大集合さんが主催されていた。

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零士 そこで衝撃を受けたんですよ。街裏ぴんくさんとか本当にヤバくて。どっちかといえば俺らと同じ側の人間なんですよ。わけわかんないはずのネタなのに、めちゃくちゃウケる。それで「自分らはおもしろいけど、お客さんに伝わってないだけ」っていう言い訳ができなくなった。

山口 ぴんくさんにはトイレで初めて会ったんですけど、そのときは「なんだよ、あの……」。

零士 「でぶっちょ。太っちょ」って言ってて(笑)。「出番、俺らの前だけどいけんのか? 頼むぞ」とかふたりでふざけて言ってたら、ぴんくさんがバコーン!ってウケた。そのあとの俺らは萎縮してるからひとつもウケない(苦笑)。

──以前、街裏さんにインタビューしたとき『バスク』でウケて自分は変わったって言ってました。人生で一番ウケたのが『バスク』だったと。

零士 やっぱそうなんすね。俺らは真逆です。あそこで俺らは全然ダメだって気づかされた。俺らと真空ジェシカ、Aマッソあたりが後輩っていうライブで、先輩がモグライダーさんとか、ななまがりさん、メイプル超合金さん、錦鯉さん、虹の黄昏さん……。

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山口 あと、浜口浜村さんな。これだけは出しとかないと。

零士 そうなんだよね。すねちゃうから。

山口 浜村(孝政)さんがすねちゃうから。

零士 ははは。いや、でもすごいメンバーだったね。あそこであの人たちと出られてよかった。全員、全身全霊で笑わせに行く。みんなスタイルは違うけど「は? ふざけんな。俺らが一番おもしろい」っていう人たちが集まって、その熱が渦巻いてた。『バスク』で「一ウケ取りてぇ」って気持ちで作り続けてたらちょっとずつウケ出したんですよね。

山口 そうだね。とにかく人間を見抜かれるライブだった。

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零士 お客さんって見てくるんだよね。小手先で言葉だけのなんかね、届かない。

山口 余裕こいてやってたら、見抜かれる。厳しいお客さんだった。

零士 たぶん、本当に濃い人が観に来てたんだよ。だってぴんくさんが爆ウケだから。今以上にわけわかんないことやってウケてるんだから、ヤバいよね。マジのおもしろいことでもちゃんと伝わるんかいって。

山口 しかもひとりで。

零士 ああいうヤバい人たちの近くにいて、ヤバい人たちに勝ちたいっていう一心でしたね。吉本辞めても、仕事がどうたらとかは一切考えてない。変な話「絶対まくれる」っていう自信はあったんで。

山口 いったんこの人らを倒さねえとなって。

零士 その先に「売れ」があるだろうなと思ってたな。まだ倒せてないけど(笑)。

「辞めたい」は、一回もない

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──吉本を2015年に退所したカナメストーンは、ライブシーンでは台頭していくのに、なかなか賞レースに勝てなかったですよね。この賞レースで結果を出せない10年はどうでしたか。

零士 一番手前の意見でいうと「ライブとまったく同じお客さんがM-1の予選に来ればいいのに」って思ってました。

山口 そうだね。まぁでも俺らのパフォーマンスも、確実にM-1のときだけ違った。

零士 やっぱ“かかっちゃう”んですよね。俺らも緊張している上に、何十組も出てくるんで、お客さんも疲れちゃってる。

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山口 いつもライブでやってるような、遊びの部分が俺らは大事なのに、ガチガチに固めちゃったり。逆に遊びだけのネタやってもゼロウケだし。

零士 もうどうしたらいいんだよ!(笑) なんか今年の対策法みたいなのが噂で回ったりして、それも気になっちゃうんですよ。今の自分だったら、みんなが噂に乗っかってるんなら、逆に違うことやればいいんだよって言えますけどね。でもみんな勝ちたいから、冷静じゃなくなる。大会も、お客さんも、俺らも変わっていく。なんならその日の天気でもウケ方は違うだろうし。

山口 運も大きい。

──ただ、令和ロマンの2連覇があったせいで、賞レースは分析して対策すれば、優勝とはいわなくても、ある程度まで行けるみたいな風潮もありませんか。

零士 あれはもうダメです。俺、めっちゃ悔しかったんですよ。決勝に1回行くのもこんなムズいのに、2連覇しやがって。でもその悔しさがあって、2025年になんとか俺らも行ったなというのは正直あります。

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山口 令和ロマンの2連覇で、現役でM-1に出てる芸人はいったんみんな完全に負けたもんな。

零士 M-1終わるのかなぐらいに思ってた。

──たくさん悔しい思いをしてきて、芸人を辞めたいと思ったことはありませんか?

零士 それは一回もないっすね。

山口 「辞めたい」は一回もないね。

零士 たしかに俺らよりウケてる人なんていっぱいいたよ? でも俺らが一番おもしろいってずっと思ってたよね。こんなおもしろいふたりが辞めちゃダメだよなって。

──カナメストーンが消えるのは、お笑い界の損失。

零士 いや、ホントそうですよ。ふたりでずっと言い合ってるめっちゃおもしろいことを証明したかったんです。今ももっと広いとこで通用すんのかって気持ちで毎日過ごしてます。

漫才が一番

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──やっぱり不思議なんですけど、コンビとして15年、しかも同居し続けていて、息が詰まることとかないんですか。

零士 ないです。それはウケてるからだと思いますね。スベる日もあるけど、ゼロ笑いのことはないんですよ。

山口 うん。

零士 最初のウケない5年間が長かったし、あの時期でも腐らずにやれたんだから、笑ってくれる人がいる今は辞める理由なんかないじゃんって。

山口 同居もまぁ寝るときだけ別だったらよくて、それ以外はずっと一緒にいる。

零士 寝るのはどっちも好きだから。っていうか、中学生のときって仲いいやつとずっと一緒にいたかったでしょ?

──たしかに。

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零士 俺らからしたら、なんで一緒にいて楽しいのに、大人になっただけで離れちゃうんだよって思うんですよ。「大きくなったら一緒に住もうよ、めっちゃ楽しそうじゃん」って、みんな言ってるはずなんですよ。子供のころのそれを今もやってるだけ。だから示したいっすね、「それをやったっていいんだ」って。

山口 でも本当の友達じゃないと難しいんだと思うよ。俺らは絶妙なバランスで。それは言葉では説明できない何かだけど。

零士 いや、マジでそう。

──最後になりますが、M-1が終わった今、今後のことって考えますか?

零士 昔は「テレビスターになりたい」ってインタビューで言ってたこともあるんですけど、そこはちょっとずつ変わってきてて。漫才というものがすごく大事なものになってきてるんですよ。

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山口 そうだね。漫才が一番ジャマされないぞみたいな。

零士 普段ジャマされてる人の言い方になってるよ(笑)。でもたしかに俺らだけを見てもらえる時間っていう意味でも、漫才は一番大事。もちろん、収録でも取材でもお仕事もらえたら全力で応えますけど、それも全部漫才に返ってくればいいなって思ってます。テレビで知ったら、漫才を観に来てください。

──吉本芸人だと全国各地に劇場があって、漫才を続けることが現実的だと思うんですが、カナメストーンはどういうイメージですか?

零士 事務所の先輩にナイツさんがいて、漫才で全国回ってるんですよ。こんな近くにいいお手本がいるんで、そこは心強いです。こないだもお話しさせてもらって、未来が明るくなりました。背中追わせてくださいって感じですね。

山口 ナイツさんって漫才とラジオだもんな。

──たしかに理想的な活動ですね。

零士 そうなんですよ。好きなことやってる。しかもその一方では漫才協会でちゃんと後輩も育ててる。その上、M-1の審査員もやってるし。

山口 すごいよな。

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──漫才協会に入る可能性も?

零士 こないだその話にもなりました。そのとき初めてちゃんと考えたんで、今後気持ちが動く可能性はありますね。たぶん、今俺らが浅草に出ても、ウケないんですよ。

山口 年齢層が違うから。

零士 ママタルトの檜原(洋平)が言ってたのは、今ライブに来てるお客さんと一緒に年取ったら、俺らもお客さんもおじいちゃんおばあちゃんになってウケるよって(笑)。たしかに40年後とかに「りくりゅうペア」って言ったら、「あったなぁ!」ってめっちゃ笑うじゃないですか。それは理想っすね。おじいちゃんになっても漫才する。

山口 最高だね。

零士 漫才やって、ウケて、今日も飲むぞ〜っていつまでもやりたいね。

文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平

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カナメストーン
山口誠(やまぐち・まこと、1986年6月24日、茨城県出身)と零士(れいじ、1986年12月19日、茨城県出身)のコンビ。2010年結成。『M-1グランプリ2025』決勝進出。Podcast番組『カナメストーンのカナメちゃん村』は毎週土曜日更新。YouTubeチャンネル『しゃれこめカナメストーン』は、毎週金曜日21時+不定期更新、月に1回生配信も。

【後編アザーカット】

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